2006年7月

2006/07/31 グリセミック・インデックスで食後血糖値を予測  グリセミック・インデックスで食事を計算するとその食事が血糖値に与える影響の良い予測手段であるとカナダ・トロント大学の研究チームが発表した。食後の血糖値は、脂肪やタンパク質含有量との相関は認められなかったが、炭水化物含有量とグリセミック・インデックス値とは相関関係が認められた。このことから研究者らは糖尿病の食事管理などにグリセミック・インデックスが有用であるとしている。 【文献】 Wolever, T.M.S. et al.: Food glycemic index, as given in Glycemic Index tables, is a significant determinant of glycemic responses elicited by composite breakfast meals. Am. J. Clinical Nutrition 83: 1306-1312. (2006) 2006/07/30 紫外線の影響調査:WHO報告  太陽からの紫外線が原因の悪性腫瘍などで、年間6万人が死亡していると世界保健機関(WHO)が公表した。WHOは、太陽の光は人間が生きていく上で必要なものだが、紫外線を浴びすぎると健康を損なうとして、注意を呼び掛けている。  WHOによると、皮膚がんの中でも悪性の悪性黒色腫で、年間4万8000人が死亡。残る1万2000人が、別の種類の皮膚がんで亡くなっているとしている。  WHOは、くる病や骨軟化症を防ぐビタミンDの生成に紫外線は必要だとした上で、皮膚がんの原因は90%が太陽から降り注ぐ紫外線だと指摘している。  紫外線は目に見えず、感じることもできないが、曇天でも降り注いでおり、直接浴びなくとも、雪や地面、海面で反射したものを浴びる可能性があるとして、十分な注意が必要である。  そのため、直射日光を避けたり、日焼け止めを利用して、過剰な紫外線を浴びないよう呼び掛けている。 WHOのプレスリリースは下記のサイトにある。 http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs305/en/index.html 2006/07/29 世界の幸福度マップ、日本は90位  国民が生活に満足しているかどうかを基準に、世界各国をランク付けした「幸福度マップ」を、イギリス・レスター大学の社会心理学者エイドリアン・ホワイト(Adrian White)氏が世界で初めて作成し、公表した。トップはデンマークで、次いでスイス、オーストリアである(表)。  イラクなどの紛争国を除いた世界178カ国のうち、幸福度が高かったのは、上位3カ国に続きアイスランド、バハマ、フィンランドで。下位はアフリカのコンゴ民主共和国、ジンバブエで、最も幸福度の低い国はブルンジだった。日本は90位という結果だった。  本調査は、国連や世界保健機関(WHO)、英シンクタンク新経済財団(NEF)などによる調査100件以上のデータを用いて各国の幸福度や、それに影響する要因を解析した。  著者は結果について、「小規模な国では国民に共同体としての意識が強く、国の美観を保ちやすいことが、生活への満足感につながっているのではないか」と説明する一方で「一般に共同体意識が強いとされる中国(82位)、日本(90位)、インド(125位)のランクが低かったのは意外だ」と述べている。  研究では、幸福度が平均寿命などの「健康条件」、国内総生産などの「経済条件」、「教育程度」と統計的に有意に関係していることが明らかとなった。  日本が意外と低いのに驚くが、平均寿命、1人当たりのGDP、教育スコアが高いのでその他の要因が低いために順位を落としていると考えられる。  上記報告は9月に心理学雑誌に報告されるが、下記の著者のサイトでその概要を読むことができる。 http://www.le.ac.uk/pc/aw57/world/sample.html 地図をダブルクリックするとその国の順位などが分かる。 表 幸福度ランキング 国       SWLランク SWLインデックス 平均余命 1人あたりのGDP 教育スコア デンマーク     1   273.33    77.2     34.6 スイス       2   273.33    80.5    32.3     99.9 オーストリア    3   260     79     32.7      99.1 アイスランド    4   260     80.7    35.6      08.8 バハマ       5   256.67    69.7    20.2 フィンランド    6   256.67    78.5    30.9     124.5 カナダ      10   253.33    80     34      102.6 米国       23   246.67    77.4    41.8     94.6 ドイツ      35   240     78.7    30.4     99 イギリス     41   236.67    78.4    30.3     157.2 イタリア     50   230     80.1    29.2     92.8 フランス     62   220     79.5    29.9     108.7 香港       63   220     81.6    32.9 中国       82   210     71.6     6.8     62.8 日本       90   206.67    82     31.5     102.1 韓国       102   193.33    77     20.4     97.4 インド      125   180     63.3     3.3     49.9 コンゴ民主共和国 176  110      43.1     0.7     18.4 ジンバブエ    177  110      36.9     2.3     45.3 ブルンジ     178  100      43.6     0.7 注:データの根拠) SWLランク:SWL (satisfaction with life) rating calculated from data published by New Economics Foundation (2006). SWLインデックス:SWL (satisfaction with life) index calculated from data published by New Economics Foundation (2006). 平均余命:Life Expectancy from UN Human Development Report (2003) 1人あたりのGDP:GDP per capita from figure published by the CIA (2006), figure in US$. 教育スコア:Access to secondary education rating from UNESCO (2002) 2006/07/28 平成17年簡易生命表が公表  平成17(2005)年生まれの日本人の平均寿命は、男性が78.53歳、女性が85.49歳で、男女とも前年比で6年ぶりのマイナスとなったことが厚生労働省の簡易生命表で明らかになった。マイナスになったのは昨年のインフルエンザの流行による死者数の増加が原因である。  国際比較では、女性は21年連続で長寿世界一、次いで、香港、スペインの順である。男性は前年の2位から4位に下がった。男性の1-3位は香港、アイスランド、スイスの順である。  平成17(2005)年生まれの人が将来、死亡する原因となる可能性があるのは男女ともがんがトップで、心臓病、脳卒中を加えた3大死因による将来の死亡確率は男性が56.3%、女性が54.2%である。3大死因を克服したと仮定した場合、平均寿命は男性が8.49歳延びて87.02歳に、女性が7.68歳延びて93.17歳になるとしている。 平成17年簡易生命表は下記のサイトで読める。 http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life05/index.html 2006/07/27 乳製品が高血圧を予防  乳製品の摂取が血圧降下に役立つことがアメリカ・ハーバード大学の研究により明らかとなった。  アメリカのFamily Heart Study試験に参加した4,797人を対象に、チーズ、ヨーグルト、牛乳などの乳製品の摂取量(1日3食分以上~1/2食以下)によって4グループに分け、血圧との関係を調べた。  その結果、乳製品の摂取が最も多い群は、最も少ない群に比べ、収縮期血圧が平均2.6mmHg低かった。しかし、飽和脂肪摂取量でみると、血圧に対する効果は飽和脂肪摂取量の少ないグループのみで認められた。このグループでは、乳製品摂取の最も多い群は最も少ない群に比べ収縮期血圧が3.5mmHg低く、また高血圧になるリスクは54%低かったという。  以上の結果より飽和脂肪の摂取に気をつければ乳製品の摂取は高血圧予防に有効であることから、飽和脂肪の多い無調整のものよりも、低脂肪のものがよいとしている。 【文献】 Luc Djousse, L. et al.: Influence of Saturated Fat and Linolenic Acid on the Association Between Intake of Dairy Products and Blood Pressure. Hypertension 48: 335-341. (2006) [doi: 0.1161/01.HYP.0000229668.73501.e8] 2006/07/26 史上最高の熱安定性を持つタンパク質  超好熱菌Pyrococcus horikoshii由来のCutA1(銅イオンと関わるタンパク質)の中性付近での熱変性温度は148.5℃であると理化学研究所などの研究グループが発表した。このタンパク質の熱安定性は、今まで知られていた最も熱安定性の高いタンパク質よりも30℃近くも高い。CutA1タンパク質が約150℃という史上最高の熱安定性を示す理由はタンパク質分子表面のイオン結合にあることが明らかになった。  タンパク質は、熱やpHの変化など、わずかな環境変化で変性するが、温泉の源泉付近など、水の沸騰点近くで生育する微生物が生産するタンパク質は、熱安定性が高いことが知られている。超好熱菌から見つけられたCutA1タンパク質は、イオン結合の数が他タンパク質よりも非常に多く、イオン結合のネットワークを形成している。このイオン結合のネットワークが分子表面で層を形成していてタンパク質分子の断熱材として働くために、150℃近くまで安定して構造を保つことができるとしている。 【文献】 Tanaka, T. et al.: Hyper-thermostability of CutA1 protein, with a denaturation temperature of nearly 150℃, FEBS letters 580: 4224-4230. (2006) 2006/07/24 食事バランスガイド実施で果物不足が明らかに  健康の維持・増進を目的に、食事バランスガイドでは、毎日の食事を5つ(主食、副菜、主菜、牛乳・乳製品、果物)に区分し、区分ごとに摂取適量範囲を示している。  農林水産省が呼びかけた食事バランスガイド調査に応募した4435人の7日間の食事内容を調査した。  その結果、7日間全て食事バランスガイドに沿った食事をとれていた人の割合は全体の0.1%しかなく、反対に1日も守れなかった人の割合は全体の8割以上を占めていた。  適量範囲だったのは主菜と女性の主食のみで、その他の区分では食事量が不足していた。特に果物は男性、女性いずれも適量が2つ(SV)であるのに対し実際に食べている量は約1つ(SV)前後でしかなく、不足が目立った。  参加した人の感想には「朝から野菜を食べないと足りないので前の晩に用意する習慣ができた」(30代男性)という前向きな意見の一方、「考えながら食するのは疲れた」(30代男性)との本音もあった。 農林水産省「食事バランスガイド実践週間」実施結果の概要は下記にある。 http://www.maff.go.jp/www/press/2006/20060721press_7b.pdf 2006/07/23 空腹時血糖値の組み合わせた高血糖測定法  糖尿病や心筋梗塞などの血管障害につながる恐れが高い食後高血糖を1回の血液検査で簡単に見つける方法について毎日新聞が伝えている(07/7/18)。従来の手法では半分程度しか捕捉できなかった糖尿病の初期兆候を80%超の感度で検出できる。  食後、急速に血糖値が高くなりその状態が持続する食後高血糖は、糖尿病の初期の兆候とされる。通常の健康診断で調べる空腹時血糖値では見極めが難しい。  そこで、糖の一種で血液中のブドウ糖の状態と関連する1,5-アンヒドログルシトール(1,5-AG)と空腹時血糖値とを組み合わせた測定法を開発し、糖尿病の診断に使うブドウ糖負荷試験と比較したところ、85%前後の高い感度で把握できていることが分かった。  空腹時血糖値のみを基準にした場合は50%程度しか検出されないので食後高血糖の診断法として有用であるとしている。 【文献】 金沢裕一.1,5-アンヒドログルシトール(1,5-AG)による食後高血糖のスクリーニング―空腹時血糖値の組み合わせ法―.糖尿病 49: 319 (2006) 2006/07/22 日本近海に2種類のマンボウが生息  広島大学の研究から日本近海にマンゴウが2種類いる可能性があることが分かったと毎日新聞が伝えている(06/7/14)。  ミトコンドリアDNAの解析から2種類のうち1種類は豪州近海に生息するマンボウに似ていることから、断定はできないが、約7500キロ離れたオーストラリアと日本を回遊している可能性があるとしている。  国内で捕獲された標本など約70体のマンボウのミトコンドリアDNAを解析し、太平洋側に生息する全長約3mの大型(A群)のマンボウと、太平洋・日本海の両側に生息の約1.3mの小型(B群)の2群の存在が分かった。 【文献】 吉田有貴子ら.日本周辺海域に出現するマンボウMola molaのミトコンドリアDNAを用いた個体群解析.DNA多型.13: 171-174. (2005) 相良恒太郎ら.日本周辺海域に出現するマンボウMola molaにみとめられた2つの集団.魚類学雑誌 52: 35-39. (2005) 2006/07/21 心筋梗塞に関与する遺伝子  心筋梗塞の発症に関与する1塩基遺伝子多型性(SNP)について検討した結果、リスクに関与する遺伝子の型を見つけたと理化学研究所などの研究グループが発表した。  心筋梗塞患者3459人と健常人3955人遺伝子の違いを調べた結果、PSMA6という遺伝子を構成する1個の塩基(SNP)違いが心筋梗塞に関係することが分かった。  心筋梗塞になりやすいGG型の割合は健常人は8.9%であったが、患者では12.4%と多いことから、このGG型を持つ人は、持たない人に比べて心筋梗塞のリスクが1.45倍高くなる。また、この遺伝子の働きを抑制したところ、心筋梗塞の引き金となる心臓血管の炎症作用が抑制された。 【文献】 Ozaki, K. et al.: A functional SNP in PSMA6 confers risk of myocardial infarction in the Japanese population. Nat. genet. Online 16 July (2006) [doi: 10.1038/ng1846] 2006/07/20 食料援助国第1位はアメリカ、次いでヨーロッパ、中国  世界食糧計画(WFP: World Food Programme)は、世界の食糧支援に関する調査報告(the annual Food Aid Monitor 2005) を発表した。  世界食料援助は820万トンと10%増加した。アメリカは世界最大の食料援助国で400万トンを提供した。次いで、ヨーロッパ連合で150万トンの援助を行った。第3位は中国で57万7千トンの援助を行ったがそのほとんどは北朝鮮向けである。  食糧支援の半分以上460万トンは、サハラ以南のアフリカ諸国に送られている。中でもエチオピアは110万トンと世界第1位の食糧支援を受けた。  北朝鮮は約108万トンと世界第2位の食糧支援を受けた。内訳は、中国が約53万トン、韓国が約39万トン、日本は4万8千トン、アメリカは、2万7千トンだった。  また、昨年は、パキスタン地震とスーダンに特別援助が行われた。主な食糧は、小麦と小麦粉で、次いでトウモロコシ、米である。  WFPの事務局長Morrisは、「ODA予算が歴史的に最大規模となっているにもかかわらず、まだ何百人もの人が最低限の食料を得ていない現状を理解できない。食糧支援を第1の方針とする必要があるのではないか」と述べている。 WFPのプレスリリースは下記のサイトで読める。 http://www.wfp.org/english/?ModuleID=137&Key=2166 2006/07/20 血液中のビタミンEと前立腺ガン  血液中のビタミンE(α-トコフェロールとγ-トコフェロール)が高いと前立腺癌のリスクが低いことがフィンランドの50-69歳の男性29,133人の調査から分かった。血液中のα-トコフェロール値が高い人は低い人に比べて51%、γ-トコフェロールでは43%リスクが低くなる。 【文献】 Stephanie, J. et al.: Serum -Tocopherol and -Tocopherol in Relation to Prostate Cancer Risk in a Prospective Study. J. Natl. Cancer Inst. 97: 396-399. (2005) 2006/07/19 肥満と飲料の関係調査  働く男女800人を対象に、飲み物の摂取意識について花王がアンケート調査を行った。それによると1日に摂る飲み物の量は平均1.48リットルと成人に必要な量とほぼ同じであった。よく口にする飲み物はコーヒーや清涼飲料水が35%、アルコール飲料が17%と、高カロリーのものが多かった。  体型評価(BMI)値が25以上ある「肥満者」をみると、よく口にする飲み物は、缶コーヒー46%、アルコール飲料40%、 炭酸飲料30%などで、平日の1日に飲み物から摂るエネルギーは平均279kcalであった。一方、「標準」「やせ型」では208kcalと低かった。 花王のプレスリリースは下記にある。 http://www.kao.co.jp/corp/news/2006/2/n20060530-01re.html 2006/07/15 世界初:ES細胞からマウス誕生  万能細胞とも呼ばれる胚(はい)性幹細胞(ES細胞)からつくった精子を卵子と受精させ、マウスの子を誕生させることにドイツ・ゲッティンゲン大の研究チームが成功した。  ES細胞から精子や卵子ができたとの報告はこれまでにもあったが、子どもに育つ能力を証明したのは世界で初めてである。理論的には人間でも実現可能なことを示した。だが、生まれたマウスには早死になどの異常がみられた。  研究チームは、マウスのES細胞の中から特定のたんぱく質をマーカーとして精子のもとになる細胞を単離し、試験管内で精子へと成熟させた。それを微細なガラス棒で卵子に注入受精し、雌マウスへの移植で計7匹のマウスが生まれ、うち6匹はおとなに成長した。  しかし、6匹とも体が大き過ぎたり小さ過ぎたりしたほか、通常は数年とされる寿命より短い5カ月以内に死んだことから、研究チームは技術的には未完成としている。 【文献】 Nayernia, K. et al.: In Vitro-Differentiated Embryonic Stem Cells Give Rise to Male Gametes that Can Generate Offspring Mice. Dev Cell. 11: 125-132. (2006) 2006/07/14 肉食恐竜ティラノサウルスの生命表  最大級の肉食恐竜ティラノサウルスは、寿命の半分ほどのいわば「中年期」から、命を落とす個体が急増していたとアメリカ・フロリダ州立大などの研究チームが発表した。  カナダ・アルバータ州で発掘された22個体のティラノサウルスの骨の成長線を調べた結果、2~28歳とさまざまな成長段階の個体が含まれていることが分かった。  年齢ごとの生存率を推定した結果、生まれて間もない時期に60%は死ぬが、2歳(体長約2m)まで生き延びるとその後13歳まで生存率はあまり減らない。ところが、繁殖可能になるとみられる14歳から生存率が急激に落ち、28歳程度まで生きて、体長約10mに達するのは全体の2%しかいないことが分かった。  2メートルの体長は他の捕食者から身を守るのに十分な大きさだが、繁殖期には雌の取り合いなどの争いが増え、傷を受けるなどが原因で死亡個体が増えた研究者らは推測している。 【文献】 Gregory M. Erickson, G. M. et al.: Tyrannosaur Life Tables: An Example of Nonavian Dinosaur Population Biology. Science 313: 213 - 217. (2006) [DOI: 10.1126/science.1125721] 2006/07/13 エネルギーの消費の多い高齢者は長生き  70歳~82歳の男女302人を対象に6年間に渡って追跡調査した結果、日々の活動でよりエネルギー消費の多かった人は、そうでない人よりも死亡率が低いことが分かった。  消費エネルギーが1日当たり287kcal増加すると死亡リスクが32%低かった。また、消費エネルギーが1日当たり770kcal以上の人は、521kcal以下の人より死亡リスクが69%低いことも分かった。521kcal/日以下の人の死亡率は24.7%であったのに対し、770kcal/日以上の人死亡率は12.1%であった。  以上の結果より、著者らは、運動も含めどんな活動でもエネルギーの消費量を増やせば高齢者は長生きできると結論づけている。 【文献】 Manini, T. M. et al.: Daily Activity Energy Expenditure and Mortality Among Older Adults. JAMA. 296: 171-179. (2006) 2006/07/12 第55回全国ナシ研究大会で講演  今日は栃木県那須塩原で行われる第55回全国ナシ大会で「ナシの機能性と健康」の講演の予定である。 2006/07/11 OECD-FAO:世界農業見通し2006  経済協力開発機構(OECD)と国連食糧農業機関(FAO)は、2015年までの世界農業見通しOECD-FAO Agricultural Outlook2006-2015を発表した。OECDは世界の農産物需要の伸びが主要15品目のうち14品目で世界人口の年平均増加率見通しである1.1%以上に達すると述べている。特に最貧国で輸入への依存が高まり、食糧の調達が国際商品相場の変動による影響を受けやすくなると予測している。  将来の農畜産物の貿易ではブラジル、インド、中国の重要性が増すとした。また、中国の輸出動向が世界の食糧需給のカギを握ると指摘している。  エネルギー関連では、化石燃料の代替えとしてバイオ燃料の需要が増すと予測している。 OECD-FAOのプレスリリース下記のサイトで読める。 http://www.fao.org/newsroom/en/news/2006/1000349/index.html 2006/07/10 仕事のストレスとメタボリックシンドロームは関連  仕事にストレスがある人は、メタボリックシンドローム(肥満、高血圧、高コレステロール値など心血管系の危険因子が重なった病態)を発症しやすいとイギリス・ロンドン大学の研究グループが発表した。  35~55歳の英国公務員10,308人を14年間追跡した結果、仕事のストレスが増加するにつれ、メタボリックシンドロームの発症率が徐々に上昇することが分かった。特に、長期にわたりストレスがある男性では、ストレスがないと答えた人よりメタボリックシンドロームの発症率が2倍であった。  過去の研究では、職場で公平に扱われていると感じている公務員は心臓病リスクが低く、職場で権限がない人はリスクが高いという報告がある。労働者の仕事に対するコントロール力と参加意識を高めるよう職場を設計し直したところ、病欠で休む日が少なくなった。 【文献】 Chandola, T. et al.: Chronic stress at work and the metabolic syndrome: prospective study. BMJ, 332: 521-525. (2006) 2006/07/08 長野県栄養士会で講演  長野県松本市で「果物と生活習慣病予防」について長野県栄養士会主催の研修会で講演した。 2006/07/08 夜の血圧は心不全と関係している  スウェーデンに住む951人の男性を対象に1990年~1995年まで追跡調査を行った結果、夜に高血圧気味である人は、うっ血性心不全を発症するリスクがそうでない人に比べて約2~3倍高く、潜在的に危険であるとスウェーデンの研究チームが発表した。 【文献】 Ingelsson, E. et al.: Diurnal Blood Pressure Pattern and Risk of Congestive Heart Failure. JAMA. 295: 2859-2866. (2006) 2006/07/07 40代は孤独を感じている  孤独感は、心臓病やうつ病などの疾患や、家庭内暴力など他の問題のリスクを上昇させると考えられているが、成人の3分の1以上は孤独を感じており、特に40歳代でその傾向が強いと、イギリスとオーストラリアの研究グループが発表した。  オーストラリアに住む18歳以上の成人1,289人を対象に30分の電話インタビューを実施した結果、成人の35%が孤独感をもっており、そのレベルは20代で上昇し始め、40~49歳でピークに達することが明らかになった。一方、50歳以上ではレベルが最も低かった。退職した人より失職中の人で孤独感が強く、世帯収入が低い人ほど強く感じていた。また、今回の調査結果は、退職で社会的接触が減少し、年齢とともに孤独感が増すというこれまでの見解とは異なっていた。 【文献】 Lauder, W. et al.: Social capital, age and religiosity in people who are lonely. J. Clinical Nursing 15: 334-340 (2006) [doi: 10.1111/j.1365-2702.2006.01192.x] 2006/07/06 オーストラリア・タスマニア産リンゴの輸入解禁  農水省は7月5日付けでオーストラリア・タスマニア産リンゴの全品種について輸入を解禁すると発表した。輸入するためには、害虫のコドリンガを完全に殺すためのくん蒸処理を行ったリンゴに限られる。また「ジョナゴールド」は、輸入解禁されている「ふじ」と同様の消毒基準を適用し輸入を認める。  オーストラリアはコドリンガの発生国のため、日本は同国からのリンゴ輸入を禁止してきた。しかし、現地確認試験の結果、試験の有効性が認められたことから輸入を解禁した。リンゴで全品種の輸入解禁を認めたのは米国に次いで2カ国目である。 農林水産省プレスリリースは下記のサイトにある。 http://www.maff.go.jp/www/press/2006/20060705press_4.html 2006/07/05 サクランボ果汁で運動による筋肉の回復が早い  サクランボ果汁を飲むと運動後の筋力の回復が早いことがアメリカ・バーモント大学の研究から明かとなった。  14人の男性に対してサクランボ果汁を含む混合飲料を飲む群と、サクランボ果汁を含まない飲料を飲む群に分け、12オンスの飲料を1日2本、3日間飲用し、4日目に片腕の筋肉を20回収縮緊張させる運動を行ったのち、その後4日間、同じ飲料を飲んだ。  その結果、サクランボ果汁には運動で誘発された筋肉損害を緩和する効力があることが分かった。特に、筋力は、サクランボ果汁を含まない飲料群で22%の低下したが、サクランボ果汁入り飲料群では4%であった。 【文献】 Connolly, D. et al.: The efficacy of a tart cherry juice blend in preventing the symptoms of muscle damage. Br. J. Sports Med. Online 21 June 2006 [doi: 10.1136/bjsm.2005.025429] 2006/07/04 日本が高齢化、少子化ともに世界一  日本の人口に占める65歳以上の高齢者の割合は21.0%と世界最高になり、15歳未満は13.6%と世界最低で、高齢化・少子化ともに世界で最も進行した国になったことが、平成17(2005)年国勢調査抽出速報集計から分かった。5年前の平成12(2000)年の調査では、いずれもイタリアに次いで2番目だったが今回逆転した。  昨年の人口は1億2776万人で、5年前より83万人増えた。年齢別では、15歳未満が1740万人、15~64歳は8337万人と、ともに前回より減ったが、65歳以上は481.5万人増の2682万人だった。  日本の高齢者の割合を各国と比べると、1980年に9.1%と先進7カ国で最低だったが、平均寿命の伸びと出生率の低下で急伸した。2000年は17.3%で、人口10万人以上の192カ国・地域中最高だったイタリア(18.2%)に迫り、今回イタリアの20.0%を抜いた。  一方、15歳未満は、前回最低だったイタリアが14.0%で下から4番目になり、日本が最低になった。出生率が改善傾向にあるフランスは18.2%、出生率が2を上回る米国は20.8%となっている。 平成17(2005)年国勢調査抽出速報集計の少子・高齢化のデータは下記のサイトで読める。 http://www.stat.go.jp/data/kokusei/2005/sokuhou/01.htm 2006/07/03 ノルウェーが種子バンク「ノアの箱舟」  ノルウェー政府は北極圏の島に設けた貯蔵庫に、世界各地の農作物300万種類の種子を集め、絶滅の危機に備えて保管する計画であるとBBCなどが伝えている。種子バンクは、自然災害や戦争、病害、気候変動などによってその土地の農作物が絶滅し、多様性が失われる事態を防ぐためノルウェーが建設する。  建設地は北極点から約1000kmのノルウェー領スバルバル諸島で、永久凍土の中にコンクリート製の貯蔵庫を作り種子を保管する。庫内の気温は温度維持システムで低温に保たれるが、万一システムが故障しても、気温が0℃を超えることはなく、種子は数百年または数千年先まで保管できるという。  植物の絶滅に備える種子バンクは、世界各地にすでに約1400カ所設けられているが、その大半は自国の植物のみを対象としている。災害や戦争、財源不足などによって貯蔵施設を維持できない可能性があることから、20年以上前から世界規模のバンク設立が検討されていたものの、種子の遺伝子の所有権などをめぐる問題が解決せず、実現が遅れていた。  スバルバル諸島の構想では、種子を提供する国が所有権を保持し、銀行の貸金庫を使うような形でノルウェー所有のバンク施設を利用する。種子の受け入れは、07年9月に開始される予定である。 ノルウェー農業食料省のプレスリリースは下記のサイトで読める。 http://odin.dep.no/lmd/english/news/news/049051-070027/dok-bn.html 2006/07/02 アリは体内の「歩数計」で距離を把握  アリは、歩数を数えることで、移動距離を正確に把握している可能性の高いことをドイツのウルム大などの研究チームが発表した。  研究チームは、距離測定は歩数で行うとの仮説を立て、アフリカのサハラ砂漠に生息するアリの脚の長さを変えて実験した。  巣穴から10m離れた場所でエサを与えたアリを、1)ブタの毛を竹馬のように履かせて脚を長くする、2)一部を切断して脚を短くする、3)何もしない、の3群に分け、巣穴に戻れるか調べた。ところ、足を長くしたアリは10mを越え、足の短いアリは10mより短い位置で巣を探す行動をした。  次に、巣穴からエサの位置まで歩かせて、戻る距離を測ったところ、3つの群ともに正確に10mの位置の巣穴に戻った。  以上の結果から、研究者らはアリは巣までの距離を把握するのに体内の「歩数計」を利用していると結論づけた。 【文献】 Wittlinger, M. et al.: The Ant Odometer: Stepping on Stilts and Stumps. Science 312: 1965-1967. (2006)  この研究の特徴的な点は、アリの足の長さを長くするテクニック、巣穴を探す行動などアリの生態の理解、統計的な手法である。理科自由研究の延長のような研究であるが興味深い。 2006/07/01 雷雨の中での携帯電話は危険  雷雨の中で携帯電話を使うのは危険であるとイギリスの医師たちが医学雑誌で警告している。携帯電話の金属が雷を誘導し、そのためショックを受けて死亡する可能性があると述べている。15歳の少女はロンドンの公園で電話中、落雷に打たれて心臓停止になった。この場合は、その後の蘇生により回復したが、注意が必要としている。 【文献】 Esprit, S. et al.: Injury from lightning strike while using mobile phone. BMJ. 332: 1513 (2006) [doi: 10.1136/bmj.332.7556.1513-b]