2004年10月


2004/10/31
 ヒト科ヒト属の新種とみられる化石が、インドネシア東部のフロレス島で発見された。身長1メートル弱の女性らしい化石で、少なくとも約1万8000年前まで生存していたと見られる(Brown P., et al., A new small-bodied hominin from the Late Pleistocene of Flores, Indonesia. Nature, 431: 1055 - 1061 (2004): Morwood M. J., et al., Archaeology and age of a new hominin from Flores in eastern Indonesia. Nature, 431: 1087 - 1091 (2004).)。フロレス島西部にあるリアン・ブア洞窟(どうくつ)から見つかったのは、女性と見られるほぼ全身大の化石のほか、別個体7人分の骨や歯など。頭蓋(ずがい)骨の大きさは現代人のものより小さく、脳の大きさは約3分の1程度。あごと歯が残っていた。発見場所にちなんで、「ホモ・フロレシエンシス(Homo floresiensis)」と名付けられた。

下記のNatureのサイトで要約や頭蓋骨の写真が見られる(この研究に対するリポートは無料でアクセスできる)。
http://www.nature.com/news/specials/flores/index.html
下記のCNNのサイトでも何枚かの写真が見られる。
http://www.cnn.com/2004/TECH/science/10/27/
dwarf.cavewoman.ap/index.html



2004/10/30
 厚生労働省が発表した平成15年人口動態統計(確定数)の概況は以下の通りである(04/9/4発表)。

1 出生数は減少
 出生数は112万3610人で、前年の115万3855人より3万245人減少し、 出生率(人口千対)は8.9で、前年の9.2を下回った。合計特殊出生率は1.29で、前年の1.32を下回った。

2 死亡数は増加
 死亡数は101万4951人で、前年の98万2379人より3万2572人増加し、死亡率(人口千対)は8.0で、前年の7.8を上回った。悪性新生物(ガン)の死亡数は30万9543人、死亡率(人口10万対)は245.4で、死亡総数の30.5%を占めており、死因順位の第1位となっている。第2位は心疾患、第3位は脳血管疾患となっている。年齢調整死亡率(人口千対)は男6.0、女3.0で、男女とも前年と同率であった。

3 自然増加数は減少
 自然増加数は10万8659人で、前年の17万1476人より6万2817人減少し、自然増加率(人口千対)は0.9で、前年の1.4を下回った。

4  死産数は減少
 死産数は3万5330胎で、前年の3万6978胎より1648胎減少し、死産率(出産(出生+死産)千対)は30.5で、前年の31.1を下回った。

5  婚姻件数は減少
 婚姻件数は74万191組で、前年の75万7331組より1万7140組減少し、婚姻率(人口千対)は5.9で、前年の6.0を下回った。

6  離婚件数は減少
 離婚件数は28万3854組で、前年の28万9836組より5982組減少し、離婚率(人口千対)は2.25で、前年の2.30を下回った。

詳細は下記のサイトに掲載されている。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei03/index.html


2004/10/29
 今日のTBS「はなまるマーケット」でリンゴについてのQ&Aで簡単なコメントを行った(録画)。


2004/10/28
 新潟県中越地震の土砂崩れで、最初の地震から92時間余りも車に閉じ込められていた皆川優太ちゃん(2)が土砂の中から助け出されたのは、暗いニュースが続く中、希望を感じさせる。東京消防庁のハイパーレスキュー隊員の1人は「雨で水分補給できたのかもしれない。どんなときでも完全にあきらめてはいけない」と話したと共同ニュースが伝えている。
 災害にあった当人も、助ける側も「あきらめてはいけない」と言うことだろう。いい言葉である。簡単に自殺してしまう人たちにも伝えたい。生きていることはそれだけで価値があると思う。


2004/10/27
 昨日は、新宿からスーパー特急あずさで甲府まで行ってきた。講演時間は2時間と長かったが皆さん熱心に聞いていただいた。部屋を出るときにも拍手を頂きうれしかった。

 講義テーマ:果物の力・ファイトケミカルについて
   (独)農研機構果樹研究所品質化学研究室長
   「果物&健康NEWS」編集長 田中敬一

 講習会名称:山梨県学校栄養職員研修会
 日時:2004年10月26日14:10-16:00
 場所:山梨県男女共同参画支援センター
     甲府市朝気1-2-2
 参集範囲:山梨県内学校栄養士(130名)
 主催:山梨県教育委員会


2004/10/25
 昨日は、あるテレビ局の撮影があった。金曜日の朝に放映の予定である。
 今日は、明日の講演(山梨県学校栄養士会)の準備とボランティア試験の被験者の方への血液、糞便採取についての説明を行った。皆さん協力的で大変助かっている。 明日の本欄の更新はできないかも知れない。


2004/10/24
 月と地球の間に働く引力が、地震の引き金になっている可能性が高いことが、カリフォルニア大と防災科学技術研究所が報告している。地殻のひずみがたまり地震が起きそうな状態で、引力が「最後のひと押し」になるとのこと。
 新潟の干潮時刻を調べると23日は午後5時56分で、今回の地震が起きた時刻と同じである。確かに関係があるようだ。

下越(新潟)
日付 20日(水) 21日(木) 22日(金) 23日(土) 24日(日) 25日月)
日の出
日の入
5:57
17:00
5:58
16:59
5:59
16:57
6:00
16:56
6:01
16:55
6:02
16:54
満潮(時間)
潮位(cm)
4:59
(39)

6:06
(38)

7:44
(35)

1:09
(30)
9:28
(33)
1:01
(29)
11:06
(32)
1:09
(28)
12:25
(32)
干潮(時間)
潮位(cm)
13:59
(10)

15:19
(11)

16:47
(12)

4:21
(29)
17:56
(12)
5:50
(25)
18:48
(13)
6:45
(20)
19:32
(14)
潮汐 小潮 小潮 小潮 長潮 若潮 中潮


2004/10/23 23:50
 新潟県中越地方で、午後5時56分ごろマグニチュード6.8の地震があり、新潟県小千谷市で震度6強の激しい揺れが観測されたと報道されている。その後も震度6強の地震が2回、震度6弱の地震が1回起きるなど強い余震が続いている。地震の強度から被害が大きいと推察されるので心配である。電話がつながらない。
 気象庁の地震速報は下記で見られる。情報が、非常に早い。
 http://www.jma.go.jp/JMA_HP/jp/quake/
 地震の震度は0から7までの10段階であり、今度の地震は強いものから2段階目である。震度6強とは、人は立っていることができず、はわないと動くことができない。固定していない重い家具のほとんどが移動、転倒し、戸が外れて飛ぶことがある。 多くの建物で、壁のタイルや窓ガラスが破損、落下する。補強されていないブロック塀のほとんどが崩れる。 耐震性の低い住宅では、倒壊するものが多い。耐震性の高い住宅でも、壁や柱がかなり破損するものがある。 耐震性の低い建物では、倒壊するものがある。耐震性の高い建物でも、壁、柱が破壊するものがかなりある。 ガスを地域に送るための導管、水道の配水施設に被害が発生することがある。
 気象庁震度階級関連解説表は下記
 http://www.kishou.go.jp/know/shindo/kaisetsu.html


2004/10/22
 カンキツなど植物由来のリモネンと二酸化炭素を原料として生分解性のポリカーボネートが合成できたとコーネル大学のグループが科学雑誌に報告した(J. Am. Chem. Soc.126:11404-11405 (2004))。今まで二酸化炭素と石油系のエポキシドからも生分解性のポリカーボネートは合成されていたが、今回、カンキツに含まれているリモネンを原料にして触媒を用いて温和な条件下で合成に成功した。リモネンは世界中にある約300の工場で年間数万トン作られていることから商業的に利用可能であるとしている。二酸化炭素と再生可能な資源から生分解性プラスチックを作るこの方法は環境面からも期待できるとしている。


2004/10/21
 台風23号による死亡者数は過去10年間で最も多いと報道機関が伝えている。その中で、バスの屋根に取り残された乗客たちが全員無事救出されたことは喜ばしいニュースである。

 生々しい体験を朝日新聞(04/10/21)が伝えている。乗客たちは、暗闇の中、迫ってくる濁流をこらえ、寒さをしのぐため「わっしょい、わっしょい」と懸命に声を出し、「上を向いて歩こう」や手の運動を兼ねて「むすんでひらいて」を歌って互いに励まし合って救助を待った。
 京都府舞鶴市の冠水した国道で観光バスが水没し、立ち往生して救助されるまで9時間余り。60代と70代が中心の乗客と運転手の37人はバスの屋根の上で一夜を耐えた。
 バスは20日午後8時過ぎ、みるみるうちに水位が上がり、「窓を割って屋根に上がろう」という声がだれかから上がった。バスに積んであったハンマーで前後2カ所の窓ガラスを男性数人で割った。外したカーテンをちぎり、ロープのようにつないだ。 最初に男性2人が窓からカーテンのロープを屋根に引っかけながら上がった。次に女性から次々と引っ張り上げた。バスの水位はその後も上がり、最後は潜るような状態で脱出したという。
 午前2時ごろ。水位は屋根より高くなり、一時は屋根に立っていても、へその辺りまで来た。周囲は真っ暗だ。肩を組み、ひたすら、励ましあった。「それは、それは怖かった。」と。

 声を出して歌を歌う、声を出して励まし合う、互いに肩を組む。こうしたことが奇跡的な救出につながったのではないだろうか。


2004/10/21
 午前2時、台風23号による雨もやみ静かな夜となっている。ただ、インターネットによる情報では、また、大きな被害が出たようだ。24号も次第に勢力を増し、23号と同じようなコースをたどっているので心配である。


2004/10/20
 「難解な研究の成果を国民に分かりやすく解説できるよう、国の音頭でサイエンスライターを育てるべきだ。」と文部科学省の科学技術・学術審議会の部会が骨子案にまとめたと朝日新聞が伝えている(04/10/20)。
 学問の専門化、細分化が進み、専門家同士でも最先端の研究を理解するのは難しいとして、国を挙げて人材育成に乗り出すべきだとしている。骨子案では「国がイニシアチブをとって、サイエンスライターを育て、日本全体の科学のレベルを上げる方策を検討すべきだ」と盛り込んだ。この中で、科学誌だけでなく、一般誌でも研究成果が取り上げられるように、研究成果を分かりやすく、解説できる人材を育てることが重要と分析した。
 また、国の研究費からライターへの経費支出を認める必要性も指摘した。さらに、研究成果の発表ができるホームページの開設や科学ジャーナルの刊行の支援も必要と盛り込んだ。「納税者である一般の国民に対しても、各家庭レベルでその価値と研究の重要性を分かりやすく説明することが重要」とした。

 上記のもととなる科学技術・学術審議会学術分科会、研究費部会(第2期第13回)議事録(2004年6月25日)は下記のサイトにある。
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu4/
gijiroku/002/04100601.htm



2004/10/19
 10月18日(月)付け、インターネットサイト(サイト名:牧 太郎・二代目・日本魁新聞社)の「新聞記者で死にたい」をぜひ読まれることをおすすめしたい。牧太郎氏は毎日新聞記者で、13年前、脳卒中で倒れた時、言語療法士の女性から『失語症は治らないと言われた』と書いている。でも懸命なリハビリで復活した。
 また、牧太郎氏は、一級の新聞記者である。月曜日から金曜日に下記サイトで読み応えのあるコラムを掲載している。

 牧太郎氏のサイトは下記。ここから「編集長ヘッドライン日記」をクリックし、2004年10月に入ると、18日の「新聞記者で死にたい」が読める。
http://www.maki-taro.net/


2004/10/18
 中国東北部の遼寧省で眠ったままの姿とみられる恐竜の化石が発見された。中国科学院の考古学者らが、英科学誌(XING XU, MA. NORELL, A new troodontid dinosaur from China with avian-like sleeping posture. Nature 431, 838- 841(2004) )に発表した。化石は1億3000年ほど前の恐竜とみられ、体長約53センチ。一般に恐竜の化石は、首を後ろにのけぞらせた姿勢で発見されることが多いが、この化石は、頭を前腕の下に潜らせた姿で見つかった。これは睡眠中の鳥類によくみられる姿勢であるとのこと。骨格の特徴などからみても、鳥類の祖先である可能性が高いという。


2004/10/17
 英オックスフォード大学トリニティ・コレッジのジョン・スタンレー博士は、忙しいビジネスパーソン向けの昼食メニューを考え出した。
 午後の会議前には、チキン・ティカ・マサラにマンゴソースがかかった、全粒粉パンのサンドイッチを勧めている。鶏肉のたんぱく質が脳の神経伝達物質の合成を助け、すっきりと起きていられるほか、疲れに効くビタミンやミネラルも含んでいるという。
 仕事前後にスポーツ・ジムで汗を流すなら、リンゴとピーナツバターを全粒粉パンにはさんだサンドイッチがいいという。低インシュリン・ダイエットで知られるようになった、血糖値の上昇率を食品ごとに測定したGI値(グリセミックインデックス値)が低く、運動中に安定したエネルギー供給が可能なためだ。
 一晩中お酒を飲んだ翌日に働く場合、朝食には全粒粉パンにチョコレートとバナナをはさんだホット・サンドイッチ。血糖値とミネラル分の回復に役立ち、二日酔いの解消になるとしている。
 ストレスが多く疲れやすいマネージャーには、夜よく眠れるよう、伝統的なスモーク・ターキーとクリームチーズのサンドイッチ。ターキーに含まれる必須アミノ酸のトリプトファンが、抗うつ剤として使われ安定感をもたらすとされるセロトニンの脳内分泌を促し、クリームチーズに含まれるカルシウムとビタミンB12が、睡眠パターンを調節する神経伝達物質を作るからだという。
 ハードな1日を終えて、力があまり残っていない人には、イチジクにハチミツ、オレンジとリコッタ・チーズを、厚めの白パンにはさんだサンドイッチがよいという。古代ギリシャではイチジクは精力増強剤として使われ、中世ヨーロッパではハチミツは愛情を高める薬として使われていた。スタンレー博士はこの2つを組み合わせたサンドイッチは、先人の知恵を現代流にアレンジしたものだと話している。

上記ニュースはイギリスパン協会のサイトにある。
http://www.bakersfederation.org.uk/pr_latest_a.aspx?id=32


2004/10/16
 日本高血圧学会が第27回総会で高血圧治療ガイドラインを4年ぶりに改定した(毎日新聞04/10/10、日本農業新聞04/10/14)。高血圧を予防するため、食塩の制限を1日6グラム未満と、これまでの7グラム以下から、より強化された。さらに、野菜・果物を積極的に摂取する項目を追加した。また、65歳以上では目標とする最高血圧を140未満とし、高齢者といえども血圧の重要性を強調している。若年・中年者は130未満で変更はない。高血圧は、脳卒中、心臓病の引き金となり、死因の原因として大きな位置を占める。同学会は「高血圧患者は厳重な血圧管理をし、日ごろから塩分を控え、野菜・果物を積極的に取る必要がある」と、注意を促している。
 秋には、改訂版が出版されるとのこと、全容が明らかになった時点で詳しく報告したい。


2004/10/15
 昨日に引き続いて乳幼児の死亡率についてユニセフの報告書をさらに詳しくみてみたい。日本の新聞やテレビなどではあまり伝えられていないが悲しい現実がある。
 報告書によると、02年に5歳未満で死亡した乳幼児の割合は、世界平均で12人に1人。新生児医療の遅れや栄養失調、マラリアなどの病気が主な死因とみられ、死亡例の半数をサハラ砂漠以南のアフリカ諸国が占めた。 中でも最悪の数字を記録したのはアフリカ西部のシエラレオネでは、5歳未満児1000人当たり284人が死亡していた。この国では、5歳になる前に4人に1人以上の子どもが死亡している。これにニジェール(同265人)、アンゴラ(同260人)が続き、4位はアフガニスタン(同257人)だった。逆に、最も死亡率が低かったのはスウェーデンで1000人当たり3人。日本は同6人、米国は同8人だった。
 乳幼児死亡率が高い国では何が悪いのか?それは、出産時の環境が不適切であるためで、母親・妊産婦への保健医療サービスが殆ど、あるいは、全く整備されていなかったり、出産に熟練した助産婦が足りないためと報告書は指摘している。下痢や肺炎などの急性呼吸器疾患に続き、マラリアやはしかなどの感染症や寄生虫症が、大きな死亡原因になっている。急性呼吸器疾患や下痢は、乳幼児の死因の3分の1を占めている。
 また、死亡原因の根底には栄養不良の蔓延がある。死亡した乳幼児の半数以上が栄養不良状態であった。不衛生な飲料水や不十分な衛生状態も子どもの死の原因の一つである。
 年間の改善率がマイナスになってしまった国もある。サハラ以南のアフリカ地域や独立国家共同体(CIS)の一部の国々では1990年より子どもが5歳の誕生日を迎えることが難しくなっている。
 サハラ以南のアフリカ地域では、HIV/エイズが、乳幼児死亡率の主な要因の一つとなっている。乳幼児死亡率の上昇が、ボツワナが世界で2番目、ジンバブエが3番目、スワジランドが4番目に高いが、これらの国ではHIV/エイズの罹患率がそれぞれ37%、25%、39%と世界で最も高い国だからである。乳幼児死亡率の急上昇に影響を与えている他の要因として、イラクやアフガニスタンなどに見られる武力紛争や社会不安の存在が挙げられる。


2004/10/14
 世界は「子どもの命を守る」約束を果たしていない-と、国連本部でユニセフが乳幼児死亡率について報告書を公表した(04/10/07)。
 2000年、ニューヨークで開かれた「ミレニアム・サミット」で約束された「2015年までに乳幼児死亡率を3分の2削減する」の目標に98カ国が到達していない。予防接種のように、低コストで効果が実証された方策があるにもかかわらず、子どもたちの死亡率の削減が遅々として進んでいない。90カ国は、2015年までに乳幼児死亡率を3分の2に削減する目標を達成できるものの、他の98カ国は、達成できる状況になく、また世界全体を見ても、改善の速度があまりにも遅すぎるとユニセフは訴えている。
 改善速度が現在のままだと、5歳未満児死亡率は世界平均で、2015年までにおよそ4分の1しか削減されない。この数値は、「ミレニアム・サミット」で世界の指導者たちが合意した目標に遠く及ばない。
 「子どもの生きる権利は平等、可能性、そして自由をはかる第一の指標です」と、ユニセフ事務局長のキャロル・ベラミーは述べている。「すばらしい技術と医学の時代に、子どもたち、特に貧しい人々や社会の周辺に追いやられた人々の生存が危機にさらされていることは信じがたいことです。私たちは、現状をもっと良くすることができるはず」と述べている。
 「子どもの死亡率を改善する手段を、世界はすでに手にしています。問題はそれらの手段を行使しようという意志があるか否かです」。「ワクチン、ビタミン剤、殺虫剤を染み込ませた蚊帳は高価なものではありませんが、何百万人もの子どもたちを救うことができます。しかし、これら簡単な命を守る道具や手段さえ、すべての子どもたちの手に行き渡っていません。これこそが変えてゆかなければならない状況です。子どもたちの状況の改善がほとんど進まないまま、10年間を手をこまねいて見過ごすことは、もう、どの政府にも許されません。世界の指導者たちは、合意した目標の達成に責任を持たなければいけません」と訴えている。

 ユニセフの報告書は下記のサイトにある。
 ttp://www.unicef.org/media/media_24252.htm


2004/10/13
 リンゴ、ナシ、ブドウ、カキなど日本の果物が、北京で開催されている中国農産物交易会に初出展された。「甘みも酸味も強く、おいしい」と試食した人々から好評だ。生鮮流通業の陳達さんも「ナシを筆頭に甘みが格別。高価だが、包装で高級感を出せば贈答用として価値が増す」と。
 日本産の農産品は関税などを加えると販売価格は日本の3割高、中国産の10倍を超すが、先行して上海市内の百貨店で販売されたリンゴやナシは、贈答用として富裕層から好評だ。とりわけ、1玉88元(1元=13円)のナシ「新高」が人気を集めていると朝日新聞が伝えている(04/10/13)。


2004/10/13
 今年はクマの被害が各地で報告されているが、リンゴにも被害が出た。9月中旬から兵庫・波賀町の原観光りんご園に、ツキノワグマが出没し、1ヶ月間で1万個のリンゴを食べてしまう被害がでたと毎日新聞が伝えている(04/10/13)。
 同園では、1800本の木に、例ならばリンゴ約15万個が実が、今年は8月末の台風16号で7割以上が落ちた。その上、9月中旬から毎夜、5、6頭のツキノワグマがあらわれ残り少ないリンゴを食べ荒らした。「けが人が出なかったのがせめてもの救い。クマにプレゼントしたとあきらめるしかないが‥」と同園。


2004/10/12
 地産地消について各地で取り組まれている。その例を日本農業新聞の紙面から。
 1.リンゴ産地の青森県で、廃棄物を出さない、環境に優しい果樹栽培の可能性を求める挑戦が始まった。リンゴ加工の際に出る搾りかすなどを融雪材に利用したり、糖質資源を作り出す試験など、ゼロエミッション(廃棄物ゼロ)についての研究。

 2.北海道大滝村では村と農家が一体となってアロニアの特産化を進め、加工品開発にも積極的に取り組んでいる。今年は果実を真空凍結乾燥して粉末にしたアロニアパウダーを開発。そのパウダーを活用したアロニアそばを村内のレストランで限定販売したところ、人気を呼んだ。


2004/10/11
 今年は、日本同様アメリカもハリケーンでフロリダ州などが大きな被害を受けた。AP通信によると、米本土だけで122人が死亡したと伝えている。また、農産物の被害も大きく、フロリダ州のグレープフルーツは、壊滅的な打撃を受けた。フロリダ州のグレープフルーツを含む柑橘類の収穫は平年の6割程度に落ち込み、住宅などを含めると同州の被害総額は200億ドル(約2兆2000億円)を超す見通しとのことである。そのため、日本などの輸入国にも影響は及ぶ見通しである。グレープフルーツやオレンジの価格が上がるかも知れない。


2004/10/10-11
 マサチューセッツ工科大(MIT)は、ホウレンソウを使った「太陽電池」を開発した。植物の光合成は、光のエネルギーを利用して有機物をつくるが、この働きを発電に応用した。光合成を担うたんぱく質が働くためには、水と塩が必要であるが、固体電池には両者とも致命的である。そこで、研究チームは、ペプチドで出来た膜の中に、光合成を担うたんぱく質を包み込む方法を考え、この方法を用いると乾燥状態でも長持ちすることを発見した。そこで、入手が簡単なホウレンソウから抽出した光合成を担うたんぱく質複合体を使い、ガラスと特殊な半導体で挟んだサンドイッチ構造のソリッドステート光合成太陽電池を作成した。この方法で作成された電池にレーザー光を当てると、弱い電流が生じた。「今回の電力変換効率は12%くらい。多層構造にするなどの工夫で、実用に耐えうる20%を突破したい」と研究チームは説明している。
 MITのニュースサイトは下記。ほうれん草太陽電池の写真も掲載されている。
 http://web.mit.edu/newsoffice/2004/spinach-0915.html
 アイデアとしては今までもあったが、MITのグループの光合成タンパク質を固定するペプチドの発見は独創的である。将来は、携帯電話など応用したいとの期待を持っているようだ。


2004/10/08-09
 10月4日の本欄で有人宇宙船スペース・シップ・ワンの飛行成功で、宇宙観光時代の到来が近いと書いたが、宇宙観光産業として成り立たせるためにはリスクの評価など様々なハードルがある。例えば、乗客に、宇宙旅行の危険性について情報を知らせる必要があるが、何を知らせなければならないかが、まだ明らかにされていない(リスクに対するインフォームド・コンセプトの必要性)。身体的能力が異なれば、リスクの程度も当然異なる。そのため、一般の人を乗客として乗せるためには、宇宙空間でおきる重力変化による心理的・医学的要因の変動について研究が必要である。
 また、スリルを求める人が乗る場合のリスクと一般乗客のリスクの程度も異なり、一般乗客のためには非常に高い安全性が確保される必要がある。こうした問題を解決しないと宇宙観光事業は成功しない。そのため、アメリカ政府は、新産業として期待される宇宙観光事業についての検討を始めたようだ。今回の件も含めて、アメリカは、研究レベルから産業レベルへ展開する場合の対応に優れていると感じた。


2004/10/07
 食品安全委員会プリオン病専門調査会委員の山内一也東大名誉教授は、日本農業新聞の取材に答え、「科学的には牛海綿状脳症(BSE)の検査対象の線引きは判断できない。全頭検査をあと数年は続けるべきだ」との考えを示した。また、過去3年間の検査で20カ月齢以下の牛から感染牛を見つけられなかったことを盛り込んだが、同氏は「科学的に検査対象見直しの線引きについての見解を示したものではない」としている。(日本農業新聞2004/10/05)


2004/10/07
 リンゴのポリフェノールに筋力増強や脂肪を減少させる効果があることをアサヒビールと日体大のグループが、マウスを使って明らかにしたと読売新聞(2004/10/04)が伝えている。
 リンゴポリフェノールを5%混ぜた固形エサを3週間与えたマウスと、普通の固形エサを与えたマウスを比較した。その結果、ポリフェノールを食べたマウスは、筋力が16%高く、内臓脂肪は27%少なかったという。今後、ヒトでも同様な効果が得られるのかどうか検討する必要がある。


2004/10/06
 本年度のノーベル化学賞が発表された。イスラエル工科大のアーロン・チカノバー教授(Aaron Ciechanover :57)とアブラム・ハーシュコ教授(Avram Hershko :67)、カリフォルニア大アーバイン校のアーウィン・ローズ博士(Irwin Rose :78)が受賞した。残念ながら今年は科学部門での日本人の受賞はなかった。
 受賞理由は、「ユビキチンが仲介するタンパク質分解の発見について」("for the discovery of ubiquitin-mediated protein degradation")である。3氏は、生物の細胞内では、必要なたんぱく質の合成と、不要になったたんぱく質の分解が常に行われているが、たんぱく質の合成に失敗した不完全なタンパク質には「目印」がつけられ、その目印だけを選んで壊す仕組みを発見した。この目印は、たんぱく質の一種である「ユビキチン」である。ユビキチンが関係するタンパク質分解は、細胞分裂やDNA修復、タンパク質合成、免疫防御など、生物が生きていくうえで重要な役割を担っている。このたんぱく質分解の仕組みに異常が起きると、パーキンソン病やがんが発現すると考えられている。
http://nobelprize.org/chemistry/laureates/2004/


2004/10/05
 ノーベル物理学賞が発表された。カリフォルニア大学サンタバーバラ校のデビッド・グロス教授(David J. Gross 63)と、カリフォルニア工科大のデビッド・ポリツァー教授(H. David Politzer 55)、マサチューセッツ工科大のフランク・ウィルチェック教授(Frank Wilczek 53)の3人が受賞した。3氏は、物質を形作る究極の基本粒子「クオーク」がなぜ単独で取り出せないかを理論的に解き明かした。(受賞理由:"for the discovery of asymptotic freedom in the theory of the strong interaction")
http://nobelprize.org/physics/laureates/2004/

2004/10/04
 2004年のノーベル医学生理学賞を、米コロンビア大のリチャード・アクセル(Richard Axel)教授(58)と米フレッド・ハッチンソンがん研究センターのリンダ・バック(Linda B. Buck)博士(57)に授与すると発表したと新聞各紙が伝えている。授賞理由は「におい受容体ときゅう覚系の機構の発見」("for their discoveries of odorant receptors and the organization of the olfactory system")。両氏は91年、におい物質を鼻の奥で受け止めて脳に伝える受容体が約1000種類あり、それぞれが個別の遺伝子からつくられていることを突き止めた。人間の全遺伝子(約3万種類)の3%もの遺伝子が、においの感知にかかわっていることを明らかにした。
 においは複数のにおい物質によって生じる。ひとつひとつの受容体は特定のにおい物質にしか反応せず、においごとに反応する受容体の組み合わせが異なる。人間はその違いを脳で認識し、受容体の種類を上回る種類のにおいをかぎ分けていた。
 両氏はその後、この仕組みが味覚やフェロモンによる性行動とも共通していることも解明した。バック博士は、アクセル教授の研究室で博士研究員として働き、91年に共著の論文を発表した。女性が自然科学分野でノーベル賞を受賞するのは95年以来とのことである。

 下記サイトで上記ノーベル賞の受賞者を発表している。ノーベル賞のメダルを見ることもできる。明日(5日)は物理学賞、6日は化学賞が発表される。ノーベル賞受賞者のインタビューなども動画で見ることができる。
 http://nobelprize.org/index.html

 Prize-Awarding Institution:The Nobel Assembly at Karolinska Institutetは下記サイト
 http://nobelprize.org/medicine/prize-awarder/index.html


2004/10/04
 米国の有人宇宙船スペース・シップ・ワンが4日早朝、カリフォルニア州のモハベ砂漠上空で2回目の宇宙飛行に成功し、無事帰還した。高度100キロを上回っており、2週間以内に2度の宇宙飛行を達成した民間チームに贈られる「アンサリX賞」(ANSARI X PRIZE)の賞金1000万ドル(約11億円)を獲得したと新聞各紙が伝えている。
 英ヴァージン・グループはスペース・シップ・ワンをもとにして5機の宇宙船をつくり、07年にも商用宇宙飛行を実現させると発表しているので、もうすぐ「宇宙観光」時代がやってくる。
 アンサリX賞のホームページは下記。ビデオも見られる。
 http://www.xprize.org/


2004/10/03-04
 メジャー年間最多安打記録(257安打)を更新したイチローの言葉を記録しておきたい。

 「ちょっと言葉にはできない。自分の野球人生の中で最高の瞬間でした」

 「熱かったですね。僕の野球人生の中では、最高に熱くなりました」。監督、チームメートらがベンチを出て、イチローを取り囲む。「全く予期していなかった。うれしかった」

 「こちらに来て強く思ったのは、体が大きいことに、そんなに意味はない。僕は大リーグに入ってしまえば一番小さい部類です。でも、こういう記録を作ることもできた。大きさや強さに対するあこがれが大きすぎて、自分自身の可能性をつぶさないで欲しい。自分自身の持っている能力を生かせれば、可能性はすごく広がると思う」

 ―自分の年間最多安打は破られるだろうか。
 「84年もなかったので簡単ではないと思うが、ここにやってしまった人(自分)がいる。願わくば自分が(もう一度)破りたい」

 ―打率4割への挑戦はどうか
 打率はコントロールできてしまう。「野球が好きでグラウンドに立ちたい」というのがぼくの原点。打率を目標にしたら、打席に立ちたくなくなる可能性がある。それは本意ではないから、目標にはできない。

 ―自分にとって、満足できるための基準は
 少なくとも誰かに勝った時ではない。自分が定めたものを達成した時に出てくるものです。

 ボブ・メルビン監督、ポール・モリターコーチからアドバイスを受け、4月は選球にフォーカスを置いた。結果は、屈辱の打率2割5分5厘。モリターコーチは誤りを認め、イチローに積極策を授ける。つまり、元のアグレッシブなスタイルに戻しなさいと。これを、無駄な回り道ととらえる声もあるが、イチローは涼しい顔で言った。
 「僕にとっていい経験だったと思ってます。決して無駄なことではないですし、野球っていうのは、無駄なことを考えて、無駄なことをしないと、伸びない面もありますから。だから、決して(回り道になったとは)思っていないです」

 「他人を目標にするのは若手の選手がやるアプローチ。他人の記録は自分の限界じゃない可能性がある。自分の記録を追うのは大変なこと」


2004/10/02
 がんによる死亡の決定的因子は、リンパ節転移と遠隔転移である。がん細胞は、転移するとき自分でリンパ管を新しく作る(「リンパ管新生」)。京都大大学院の久保肇助教授らのグループは、この「リンパ管新生」を抑えて転移を防ぐことに世界で初めて成功し、福岡市で開会中の日本癌学会で報告したと読売新聞が伝えている(読売新聞04/10/01)。
 研究チームは、がん細胞が分泌するVEGF-C(リンパ管新生因子)という特殊な物質を、リンパ管が受け取って増殖しないようブロックする抗体を合成し、胃がんの細胞をネズミに移植して実験したところ、抗体を使わなかったネズミでは16匹中12匹(75%)の高率でリンパ節に転移したのに対し、抗体を使ったネズミは16匹のうち3匹(19%)しか転移しなかった。
 久保助教授グループのホームページは下記。
http://sentan1.hmro.med.kyoto-u.ac.jp/teams/index_kubo.html


2004/10/01
 イチゴは、7月~10月にかけて国内ではにほとんど生産されていない。そのため、この期間は、ケーキ用などのため海外から大量に輸入されている。そこで、(独)農研機構東北農業研究センターは、夏に生食できるイチゴの育種に取り組み、新品種「なつあかり」を育成し、9月30日に命名登録した。果実重量は平均13.2gで、糖度は9.4と高く、食味も良い。現在、東北6県で普及に向けた栽培試験を始めている。