2005年6月


2005/06/30 アイガモロボット
 毎日新聞の雑記帳(6/29東京朝刊)に、アイガモロボットを使って無農薬・無化学肥料栽培についての記事が掲載されています。
 アイガモは動きにムラがあり、田全体を完全に除草出来ないなどの弱点があるため、山形県立長井工業高校などは、除草ロボット「デジガモ」を開発し、稲の間を自由に動き回って雑草を刈り、水中をかき混ぜて水を濁らせ、雑草の生育を妨げるという計画です。
 同高によると、水田の高低差や狭い稲間の移動など技術的課題は山積しているとのこと。それでも生徒らは「自宅が農家なので除草の大変さは分かる」といっているそうです。

記事のサイト
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/zakki/

▽ 愛地球博で連日、様々なロボットが紹介されています。でも、何か足りないと感じていました。例えば、農業に役立つロボットは作られていないのではないでしょうか。ぜひ、ロボットに関心のある高校生、関係者の皆さん、楽しい農業用ロボットを作ってください。
 科学に興味のある子供たちにロボットは人気ですが、農業や自然と調和したロボットができればもっと科学的興味が深まるのではないかと思っています。


2005/06/29 「フグ肝特区」評価案
 猛毒のため食用が禁じられているフグ肝を特別な養殖法で無毒化して地域限定で解禁する「フグ肝特区」の認定をめぐり、食品安全委員会かび毒・自然毒等専門調査会は、「現時点では安全性の確保は困難」との評価案をまとめた。今後、一般からの意見聴取を経て答申にまとめられる。
 フグが毒を持つのは食物連鎖の結果であり、食物連鎖を断つ養殖をすれば無毒化できるという長崎大などの研究成果をもとに、佐賀県と同県嬉野町が昨年6月に提案し、厚生労働省が今年1月、同委に安全性の評価を求めていた。
 しかし、同委調査会ではフグの毒化の機構は十分には解明されていないと評価した。食物連鎖を断った養殖で約5000匹を無毒化できたという長崎大などのデータも、佐賀県などが申請している施設で測定したものではないので現時点では十分ではないとしている。

食品安全委員会かび毒・自然毒等専門調査会の資料は下記のサイトで読める。
http://www.fsc.go.jp/senmon/kabi_shizen/k-dai5/index.html

「佐賀県及び佐賀県嬉野町が構造改革特別区域法(平成14年法律第189号)に基づき提案した方法により養殖されるトラフグの肝」に係る食品健康影響評価についての評価案は下記のサイト
http://www.fsc.go.jp/senmon/kabi_shizen/k-dai5/kabi5-siryou1.pdf

▽ 約5000匹のフグのデータは、学問的には大変貴重なデータであるが、人に食べさせるとなるとやはり不安が残る。カビ毒の専門家ではないが、評価案と同じ結論である。ほんの少しでも疑念が残れば安全とはいえない。それが食品の安全・安心と言うことだと改めて思った。


2005/06/28 記憶力の維持に葉酸
 老化に伴う記憶力などの低下を防ぐために、葉酸が有効との研究結果を米ワシントンで開かれたアルツハイマー病の国際学会でオランダのDutagaらが発表した(文献下記)。
 50-75歳の健康な男女818人を2つのグループに分け、一方のグループには葉酸800μgの錠剤を、別のグループにはダミー錠剤を、毎日1回ずつ投与し続け、3年後に記憶力と認知速度を検査した。
 その結果、葉酸を服用したグループは記憶力の検査で、実年齢より平均5.5歳も若い人たちと同等のレベルを維持していることが分かった。このグループは認知速度でも、平均1.9歳若い人たちに並ぶ成績を挙げたという。

【文献】 Dutga, J., et al.: Effect of 3-year folic acid supplementation on cognitive function in older adults. A randomized, double blind, controlled trial. Alzheimer's Association International Conference on Prevention of Dementia. HT-002 (2005)

▽ 葉酸の豊富な食品は、イチゴやサクランボ、キウイフルーツ、クリなどです。上記論文はアルツハイマー病を予防できるとしているわけではありませんが、大変興味深い研究です。これまでに葉酸は、心臓病、脳卒中の予防に有効との結果が報告されており、果物の有用性がまた一つ明らかになったと思っています。


2005/06/27 哺乳類に毒牙:カナダで化石発見
 カナダ・アルバータ大の研究チームは、毒蛇のように獲物を毒牙で獲物を捕獲していたとみられる小型哺乳類の化石をカナダ西部の6000万年前の地層から発見したと英科学誌ネイチャーに発表した(文献下記)。
 犬歯に毒液を導くためとみられる細長い溝があるのが特徴である。こうした構造は毒蛇に見られるが、哺乳類では絶滅した種も含めて似たものはないという。研究チームは絶滅した哺乳類の中に毒牙を持っていた種がいたことを示す初めての証拠としている。
 カナダ・アルバータ州中央の暁新世後期の地層の岩で見つかった保存状態の良好な複数の化石標本から、絶滅哺乳類の毒分泌器官の証拠を得た。小さなハリネズミかモグラに似た哺乳類で、小型のネズミくらいの大きさで、切歯や犬歯、臼歯などがそろったあごの部分などが見つかった。
 この小型の肉食性真獣類はどうやら、ナミヘビ類と比肩するくらいに、有毒な唾液やその分泌機構を独立に何度か進化させたとみられるとのことである。

【文献】 Richard C. Fox and Craig S. Scott: First evidence of a venom delivery apparatus in extinct mammals. Nature 435: 1091-1093. [doi: 10.1038/nature03646]


2005/06/26 「くだもののはたらき」改訂版
 「くだもののはたらき」の校正作業が終了しました。7月中に発行が予定されています。おかげさまで、「くだもののはたらき」(初版)は1万部、ご購入していただきました。改訂版は、最新の食事バランスガイドなど新たな項目の追加と、五訂増補日本食品標準成分表で変更された点などを修正しています。どうぞよろしくお願いします。


2005/06/25 サクランボが最盛期
 6月21日に山形県寒河江市でサクランボ品評会が行われたそうです。今年は、雹の被害などで生産量は少ないそうであるが、果実は例年になく美味しいそうです。

サクランボの品評会のニュースは山形放送の動画サイトでご覧ください。
通信環境が56kの場合
http://www.ybc.co.jp/HTM/050622/0622-5a.wvx
通信環境が256kの場合
http://www.ybc.co.jp/HTM/050622/0622-5b.wvx


2005/06/24 箱根登山鉄道のあじさい
 梅雨に入りじめじめした日が続いています。6月の雨に似合うのはやはりあじさい。あじさいで有名な箱根登山鉄道周辺の開花状況 は、 前年より4~5日開花が遅れているそうです 。
下記のサイトで開花状況が確認できます。
http://www.hakonenavi.jp/ajisai/kaika.html


2005/06/23 食事バランスガイドの目的
 平成12年3月に文部省(当時)、厚生省(当時)、農林水産省により「食生活指針」が策定され、それを受けて食に携わる関係者の取組方針を定めた「食生活指針の推進について」が閣議決定されるなど、心身ともに健康で豊かな食生活の実現に向けた普及・啓発が進められてきた。しかし、野菜の摂取不足、食塩・脂肪のとり過ぎ等の食生活上の問題が見られ、男性を中心として肥満者が急速に増加する中で、国民一人一人が自らの食事を選択する際に「何を」「どれだけ」食べればよいのかの拠り所をわかりやすく示すことが必要となってきている。

 食生活指針は広く国民に対して望ましい食生活に関するメッセージを伝えたものであり、毎日の生活の中で一人一人が自らの食生活上の問題点を容易に把握でき、具体的な行動に結びつけることを目的とした情報やツールを提供することが大きな課題となっていた。また、生活習慣病の予防を中心とした健康づくりという観点からは、とりわけ、30~60歳代男性の3割が肥満である状況を改善に導くこと、単身者や子育てを担う世代に対して栄養・食生活についての関心や必要な知識・スキルを身につけてもらうことが必要である。

 このため、食生活指針を具体的な行動に結び付けるものとして、食事の望ましい組合せやおおよその量をわかりやすくイラストで示した食事バランスガイドを策定することとした。

 食事バランスガイドは、誰もが親しみやすいものになることを目指して策定したものであり、一人一人が自分自身又は家族の食生活を見直すきっかけになるものとして、より多くの方々に活用されることが重要である。このためには、国を始め、地方公共団体、食品事業者、管理栄養士、栄養士、地域における食生活改善推進員等が連携して、普及活用の取組を進めていく必要がある。とりわけ、日々の食べ物を購入・消費する小売店、外食の場等で活用されることが必要である。

 このような取組を進めることにより、「バランスのとれた食生活の実現」が図られ、国民の健康づくり、生活習慣病の予防、食料自給率の向上に寄与することが期待される。

▽ くだもの200グラムを最初に提唱したとき、果樹研究所のなかに反対があった。そして、その後、果樹研究の主要目標からも外されるというようなことが起きていた。ぜひこの食事バランスガイドの目的をよく読み、内容を理解してもらいたいものである。果樹農業の現状をしっかり把握しないと趣味的研究に埋没し、果樹農業が衰退してしまうだろう。


2005/06/22 食事バランスガイド公表:果物は1日2つ
 生活習慣病予防や健康づくりのため、厚生労働省と農林水産省の検討会は21日、食生活の指針となる「食事バランスガイド」をまとめ公表した(サイトは下記)。
 こまをイメージした逆三角形のカラーイラストで、ごはんや肉、魚、野菜、乳製品、果物をバランス良く食べる目安を示している。
 特に30-60代の肥満男性、単身者、子育て世代を対象に、野菜不足や朝食抜き、食塩や脂質の取りすぎなどを改善するのを狙いとしている。スーパーやレストラン、給食施設、弁当などに表示してもらい、夏から普及させたいとしている。

 食事バランスガイドは、成人が1日に食べる目安を、1つ、2つなどを単位(またはSV)で提示している。(1)ご飯やパンなどの主食は5-7つ、(2)野菜など副菜は5-6つ、(3)肉や魚の主菜は3-5つ、(4)牛乳・乳製品は2つ、(5)果物は2つ、とした。

【主食(ごはん・パン・麺など)】<5~7つ(SV)>
 毎食、主食は欠かせない。主菜、副菜との組合せで、適宜、ごはん、パン、麺を組み合わせる。
【副菜(野菜・いも・豆・海藻など)】<5~6つ(SV)>
 日常の食生活の中で、どうしても主菜に偏りがちになることが多い。従って、できるだけ意識的に主菜の倍程度(毎食1~2品)を目安に十分な摂取を心がける。
【主菜(肉・魚・卵料理・大豆食品など)】<3~5つ(SV)>
 多くならないように注意する。特に油を多く使った料理では、脂質及びエネルギーの摂取が過剰に傾き易くなる。
【牛乳・乳製品】<2つ(SV)>
 毎日コップ1杯の牛乳を目安に摂取
【果物】<2つ(SV)>
 毎日、適量を欠かさず摂るように心がける。


プレスリリースのサイトは下記。
http://www.maff.go.jp/www/press/cont2/20050621press_2.html
食事バランスガイドは下記。
http://www.maff.go.jp/www/press/cont2/20050621press_2b.pdf

▽ 1日に食べる果物2つは、ミカンなら2個、リンゴなら1個、カキなら2個、ナシなら1個、ブドウなら1房、モモなら2個です。果物は牛乳・乳製品と同等と位置づけられました。今までの努力が実ったのがうれしい。これから、皆さんに実際に食べてもらい、健康になってほしいと願っています。





2005/06/21-22 アルツハイマー病予防に果物・野菜ジュース
 米・ワシントンD.C.で開催中のアルツハイマー病に関する国際会議(June 19-21)で、果物や野菜ジュースを愛飲すると発症リスクが4分の1に抑えられるという発表された。
 果物・野菜ジュースの効果は、南フロリダ大のBorenstein教授らの研究チームが、米ワシントン州シアトルに住む65歳以上の日系人男女1836人を7~9年間にわたり追跡した健康調査のデータから示された(Kame Project cohort)。
 コップ1杯(約240ml)の果物・野菜ジュースを週に最低3回飲む人は、週1回未満の人に比べて、アルツハイマー病の発症リスクが73%低かった。また、週1-2回でも32%発症リスクが下がった。一方、サプリメント(ビタミンE、C、β-カロテン)の摂取ではアルツハイマー病 に対する予防効果が認められなかった。
 以上の結果から、果物や野菜のジュースに含まれているポリフェノールが過酸化水素に対する神経細胞の保護やタンパク質の酸化を防ぐ働きによるのではないかと考察している。

【文献】 Borenstein,A.R., et al.: Consumption of fruit and vegetable juices predicts a reduced risk of Alzheimer's disease: The Kame project. Alzheimer's Association International Conference on Prevention of Dementia. P-161 (2005)

▽ 日系人を対象としたこの研究は追加調査が必要であるが、果物と野菜ジュースがアルツハイマー病に有益である可能性が高い。予防効果を示す成分としてポリフェノールのほかに葉酸なども考えられるのではないか。最近、果物がアルツハイマー病予防に効果的との情報が次々に発表され、科学的証拠が蓄積している。


2005/06/21 「ちちの日」に乳搾り
 父の日に乳をかけた「ちちの日」の19日、愛知県渥美町で「デイリーパラダイス」を経営する酪農家の伊藤さんは、牧場を一般に開放するオープンファームを開いたと日本農業新聞が伝えている(05/6/20)。幼稚園児や小学生、保護者らが参加し、乳搾りや餌やりなどを体験した。伊藤さんは「動物に直接触れ合うことで、驚きや感動があり、生命の大切さを学ぶことができる。体験を通して酪農を理解してもらい、良き支援者になってもらいたい」と語っている。このイベントは、全国約240牧場でつくる地域交流牧場全国連絡会が呼び掛けて、全国的に行っている。

▽ 農業の現場はそれぞれにがんばっている。まだまだ、実を結んでいるとは思えないが、いつかきっといいことがあると思いたい。


2005/06/20 地球に似た惑星発見
 全米科学財団(NSF)は、これまでで大きさが最も地球に似た小型の惑星を、地球からわずか15光年という太陽系のすぐ近くで発見したと発表した。
 回っている恒星との距離が近いため、表面は200-400℃の超高温で、地球と同じような生命が存在できる環境ではない。だが、地球に似た惑星が今後も見つかるとの期待を膨らませる発見だ。
 この惑星は質量が地球の約7.5倍と、太陽系外で見つかった惑星の中で最小である。この大きさから、発見済みの太陽系外惑星のほとんどを占める木星のようなガス惑星ではなく、岩石成分が多い地球型の惑星である可能性が高いと考えられている。

全米科学財団(NSF)のプレスリリースのサイトは下記。惑星の写真も見られる。
http://www.nsf.gov/news/news_summ.jsp?cntn_id=104243


2005/06/19 東アフリカ沖のシーラカンスは同じグループ
 アフリカ南東沖の複数の海域で見つかっている「生きた化石」と呼ばれるシーラカンスは、互いの遺伝子に大きな違いはなく、元は1つのグループだったとみられるとの研究結果を、Schartlらのチームが英科学誌Natureに発表した(文献下記)。
 シーラカンス( coelacanths: Latimeria chalumnae)は1938年、アフリカ南東部のインド洋で初めて捕獲されて生存が確認された。その後、1952年にマダガスカル島の北西にあるコモロ諸島で発見されて以降、ケニア、タンザニア、モザンビーク、南アフリカなどアフリカ南東部に沿った海域で次々に見つかった。
 アフリカ沖のシーラカンス47匹についてミトコンドリアDNAの配列などを分析した結果、チトクロームbのDNA配列には全く違いが見られなかったが、制御領域には6つの違いが認められた。そのためチームは、海域が違っても、遺伝子には大きな違いないことから単一の大きな集団に属していると推定した。また、 海流の流れから東アフリカ沖のコモロ諸島に生息していたシーラカンスの子孫と考えられるとしている。

【文献】 Manfred Schartl, M., et al.: Genetics: Relatedness among east African coelacanths. Nature, 435: 901 [doi: 10.1038/435901a]


2005/06/18 NASA:月の土から酸素抽出に懸賞
 米航空宇宙局(NASA)は、月面の土から酸素を取り出す技術の開発者に25万ドル(約2700万円)の賞金を与えるコンテストを行っています。今回の賞は「ムーンロックス(MoonROx)」と名付けられ、NASAが宇宙関連技術の発展を促進する目的で取り組む「センテニアル(100年)チャレンジ(Centennial Challenges)」プロジェクトの一つです。

NASAのコンテストのプレスリリースのサイトは下記です。
http://www.nasa.gov/home/hqnews/2005/may/
HQ_05128_Centennial_Challenge.html


Centennial Challengesの最初のページは下記です。
http://exploration.nasa.gov/centennialchallenge/cc_index.html

 この技術が確立すれば、月面基地での生活や宇宙船の燃料に酸素を利用できるようになります。具体的には、月の表面を模した物質から8時間以内に、呼吸できる酸素5キログラムを取り出すことが条件です。締め切りは2008年6月1日。月の土から少量の酸素を抽出する方法はすでにいくつか考案されているが、NASAが必要としているのは1度に大量の抽出を可能にする技術だそうです。

 過去200年以上にわたり、賞金付きコンテストは科学、技術、工学などの分野で、新たな発展を促す役割を果たしてきたとNASAの責任者は語っています。例えば、20世紀初頭、大西洋横断無着陸飛行に成功したリンドバーグも、コンテストの賞金を狙っていました。昨年10月には、民間宇宙飛行の一番乗りを競う「X(エックス)プライズ」では、「スペースシップワン」が栄冠を勝ち取っています。


2005/06/17 アリは触角で仲間を識別
 昆虫のアリの多くは別の巣のアリと出会うと攻撃する習性がある。尾崎らの研究グループは、アリは触角で相手の体の表面にある化学物質を認識し、仲間かどうかを確かめていることを明らかにした。

【文献】 Ozaki, M., et al.: Ant Nestmate and Non-nestmate Discrimination by a Chemosensory Sensillum. Science [DOI: 10.1126/science.1105244] (2005)


2005/06/17 父の日に牛乳(ちち)贈ろう
 「父の日に牛乳(ちち)贈ろう」キャンペーンを展開する熊本県酪農女性部協議会の代表3人が15日に農林水産省を訪問し、農相や副大臣らに牛乳を贈り、消費拡大を訴えたと日本農業新聞が伝えている(05/6/16)。キャンペーンは2001年から始めたとのことである。特別仕様の900ミリリットル牛乳の販売を全国に広げていく考えだ。


2005/06/16 果物食べて生活習慣病を予防がサンデー毎日に
 今週発売されたサンデー毎日(6.26号)に「いまどきの医療・健康法●果物食べて生活習慣病を予防」が掲載されました(84巻31号p104-105)。1冊300円ですが読んでいただきたいとおもいます。くだもの・科学・健康ジャーナルも紹介されています。筆者は渡辺勉記者です。


2005/06/15 C型肝炎ウイルスを世界初の培養に成功
 東京都神経科学総合研究所のチームなどが、ヒトの培養細胞の中でC型肝炎ウイルスを作り出すことに世界で初めて成功した(文献下記)。C型肝炎ウイルスは増える力が弱いため生体の外での培養は実現しておらず、そのため、ワクチンも開発されていない。
 一方、C型肝炎の患者は全国に200万人といわれ、ウイルスが作られる仕組みが明らかになれば、新しい抗ウイルス薬やワクチン開発に結びつくと期待される。
 C型肝炎は数十年かけて慢性肝炎から肝硬変、肝臓がんに移行することが知られており、インターフェロンなどが治療に使われているが、患者の半数は効果が十分でないとされている。
 C型肝炎のウイルスは複数確認されているが、ウイルスの遺伝子は複製力が弱く、生体外でウイルスは増えないと考えられていた。しかし、脇田らは、劇症肝炎を起こすウイルスは増える力が強いことに着目し、劇症肝炎患者の血液から採取したウイルスを使い、培養したヒトの肝細胞に感染させウイルスを増やすことに成功した。

【文献】 Wakita, M., et al.: Production of infectious hepatitis C virus in tissue culture from a cloned viral genome. Nature, [doi:10.1038/nm1268] (online 12 June 2005)
脇田らの仕事は下記のサイトで日本語で読める。
http://www.tmin.ac.jp/topics/002/002.html


2005/06/14 土星の惑星タイタンに火山
 土星最大の衛星タイタンに、火山のようなドーム型の地形が発見された。タイタンの大気は主に窒素とメタンから成り、太古の地球によく似ているとされるが、この火山から凍ったメタンが噴き出した可能性があると英科学雑誌ネイチャー(文献下記)に報告された。
 土星を周回する無人探査機カッシーニが昨年10月、タイタンに接近した際に撮影した赤外線画像を分析した結果、火山ドームは直径が約30kmで、ここからメタンと氷の混合物が噴出したと考えられるとしている。現在は活動がみられないが、別の場所にある同様の火山から、メタンの噴出が続いている可能性もあるという。
 タイタンにはメタンの液体がたまった「海」があるとも考えられていたが、カッシーニの観測では今のところ見つかっていないため、火山がメタンの供給源である可能性が高い。

【文献】 Prockter, L., et al.: Shades of Titan. Nature, 435: 749-750. [doi: 10.1038/435749a]

タイタンの火山の写真はNASAのサイトで見られる。
http://www.nasa.gov/mission_pages/cassini/
multimedia/pia07965.html


NASAのCassini-Huygensミッションのホームページは下記のサイト。
http://www.nasa.gov/mission_pages/cassini/main/index.html


2005/06/13 当選するには「有能そうな」顔
 顔が「有能そう」に見えることが、選挙で当選するためにかなり重要らしいと米プリンストン大のチームが米科学誌サイエンス(Science下記)に発表した。童顔は有能でないと評価されやすいので不利だという。
 チームは過去の米連邦議会選挙の当選者、落選者の顔写真を2枚一組にして計数百人の学生に1秒程度見せ、有能に見える方を選んでもらった。この方法で「より有能」と評価された方が実際に当選していた例が約70%もあり、チームは有権者が受けるこうした印象が、投票行動にかなり影響している可能性があるとみている。

【文献】 Todorov, A., et al.: Inferences of Competence from Faces Predict Election Outcomes. Science, 308:1623-1626. (2005) [DOI: 10.1126/science.1110589]

▽ ケネディー、カーター、クリントン各大統領など劣勢を押しのけて当選した大統領はやはり顔がよいからか。アメリカでの調査なので、世界共通かどうかは不明であるが、メディア選挙と言われているアメリカでは顔が大きく影響するのだろう。


2005/06/12 農業高校:最新の授業や取り組みを発表
 全国高等学校農場協会、財団法人全国学校農場協会の第54回全国大会が東京・永田町の星陵会館で開かれ、2農業高校の活動と、岡山県の「高等学校農業科ディジタルコンテンツ開発・活用授業研究会」の取り組みが報告されたと毎日新聞が伝えている(06/6/10)。

◇北海道立岩見沢農業高校
 フードシステム学科群では生産から加工、流通販売まで一連の活動を体系化し、環境保全学科群では資源循環型の農業を行なう技術者育成や環境・生態系を重視した造園空間の創造を目指している。

◇福井県立坂井農業高校
 「自ら考え主体的に取り組む生徒の育成を目差した」取り組みを紹介した。具体的には、農業祭で「わら細工」「フラワーアレンジメント」の体験コーナーや「ふれあいミニ動物園」を開いた。特産のらっきょうをつかったクッキーなどのお菓子づくり、そばづくりなどをする「小学生親子アグリ体験学習」には70組140人の親子が参加したという。

◇高等学校農業科ディジタルコンテンツ開発・活用授業研究会
 岡山県南の4農業高校の教員らは、ITを活用した効果的な指導方法の研究を報告した。「農業の実習では、間にほかの授業が入るので、播種から収穫までのような一連の作業を続けて学ぶことができない。だが、ITを活用すると授業の板書や画像などを蓄積できるので、前回の作業を振り返ったり、目的を確認でき、授業の流れを意識できる」「植物の育つ様子、病害虫の被害に遭った作物、溶接のような危険を伴う作業の様子など、普段は見られないものがデジタルコンテンツなら見られる」「手元の細かい作業などをスクリーンに映し出して、クラスの生徒全員が同時に同じ学習素材を共有できる」などIT機器、デジタルコンテンツのメリットを紹介した。

毎日新聞の記事サイトは下記
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/edu/
news/20050610k0000e040091000c.html



2005/06/11 食育基本法が成立
 子どもの「食」に関する教育に国や自治体が取り組むことを定めた「食育基本法」が参院本会議で可決、成立した。
 食への理解を深めるための体験活動や、伝統的な食文化への配慮などが含まれている。また、生涯にわたり健全な食生活の実現に努め、食育の推進に寄与するよう努めるとしている。

食育基本法は下記のサイトで読める。
http://www.shugiin.go.jp/itdb_gian.nsf/html/
gian/honbun/houan/g15902009.htm

参議院での議案審議情報
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/gian/16205159049.htm

要旨抜粋
 本法律案は、近年における国民の食生活をめぐる環境の変化に伴い、国民が生涯にわたって健全な心身を培い、豊かな人間性をはぐくむための食育を推進することが緊要な課題となっていることにかんがみ、食育に関する施策の基本となる事項を定めようとするものであり、その主な内容は次のとおりである。

一、食育に関し、国民の心身の健康の増進と豊かな人間形成、食に関する感謝の念と理解、食育推進運動の展開、子どもの食育における保護者・教育関係者等の役割、食に関する体験活動と食育推進活動の実践、伝統的な食文化、環境と調和した生産等への配意及び農山漁村の活性化と食料自給率の向上への貢献、食品の安全性の確保等における食育の役割を内容とする基本理念を定める。

三、教育関係者等及び食品関連事業者等は、基本理念にのっとり、積極的な食育の推進等に努めるものとするとともに、農林漁業者等は、基本理念にのっとり、農林漁業に関する多様な体験の機会の積極的な提供等に努めるものとする。

四、国民は、家庭、学校、保育所、地域その他の社会のあらゆる分野において、基本理念にのっとり、生涯にわたり健全な食生活の実現に自ら努めるとともに、食育の推進に寄与するよう努めるものとする。

六、食育に関する基本的施策として、家庭、学校、保育所等における食育の推進、地域における食生活改善のための取組の推進、食育推進運動の展開、生産者と消費者との交流の促進、環境と調和のとれた農林漁業の活性化等、食文化の継承のための活動への支援等、食品の安全性、栄養その他の食生活に関する調査、研究、情報の提供及び国際交流の推進等を定める。


2005/06/10 関東甲信地方が梅雨入り
 気象庁が、関東甲信地方が梅雨入りしたとみられると発表しました。平年より2日遅く、昨年に比べると4日遅いとのことです。本州では最も早い梅雨入りとなった。

気象庁の梅雨入り情報は下記のサイトで読めます。
http://www.jma.go.jp/JMA_HP/jp/kishojoho/chihou.03/762657756.html


2005/06/10 自給率向上のための行動計画決まる
 農水省は食料自給率向上に向けた2005年度の行動計画を決めた。柱となる食育の推進では、米や肉、野菜・果物などの品目ごとに適正な摂取量を分かりやすく示す「フードガイド」を6月中に作り、年度末に20%の国民認知度を目指す。
行動計画は食料消費と農業生産の2本柱で設けた。食料消費面は、食育と米を中心とする国産農産物の消費拡大策が中心。米飯給食を早期に週3回とすることや、現状は13%しかない米粉食品の認知度を20%まで向上させる。
 農業生産面では農地集積のほか、現在79カ所の飼料増産重点地区を120カ所に増やし、飼料自給率を高める。産地ブランドの開拓に向け、食品産業と農業の連携を強める取り組みも5年間・45カ所で行う。

上記の農林水産省プレスリリースは下記
http://www.maff.go.jp/www/press/cont2/20050530press_2.html


2005/06/09 ミカンに肝障害予防効果
 ミカンを多く食べると肝機能障害や動脈硬化の予防に役立つことが、(独)農研機構果樹研究所の杉浦実らの疫学調査で分かった。温州ミカンの産地でわる静岡県三ケ日町の男女1073人を対象に調査した結果、ミカンに含まれるカロテノイドの一種、β-クリプトキサンチンの血中レベルが高い人ほど、アルコール性肝障害の指標となるγ-GTP値や、動脈硬化の度合いを示す数値が低かった。同じカロテノイドの一種のβ-カロテンについても同様の結果だった。
 ミカンは、オレンジの約10倍のβ-クリプトキサンチンを含み、過去の調査ではミカンを多く食べると血中濃度が高くなることも分かっている。
プレスリリースは下記のサイトで読める。
http://www.fruit.affrc.go.jp/announcements/
kisya/h17-06-07/eiyo_Carotenoid.html



2005/06/08 園児が田植え、お父さんも参加
 京都の幼稚園、保育園の園児63人とその父母らの田植えを朝日新聞が伝えている(サイトは下記:写真付き)。園児のお父さんの一人は大阪市内で育ち、田植えは初めての経験、「子どもに教わりながら植えました。土の感触が気持ちいいですね」と満足げだったとのことである。
http://mytown.asahi.com/kyoto/news01.asp?kiji=4722
▽ お父さんにも、お母さんにも一緒に農業の体験をしてほしいと思っています。きっと子供たちとのコミュニケーションが広がることと思います。


2005/06/07 うんしゅうみかんとりんごの適正生産出荷量
 5月23日に開催された平成17年度第1回食料・農業・農村政策審議会生産分科会果樹部会の概要について資料は下記のサイトで公表されている。
 17年産うんしゅうみかん及びりんごの適正生産出荷見通し(案)については、内容が適切であるとしている。
http://www.maff.go.jp/www/press/cont2/20050526press_1b.html


2005/06/06 死亡率が高いのは「やせた人」
 約1万1000人を対象にした疫学調査から、日本人の中高年では、男女ともにやせた人の方が肥満や標準体格の人より死亡率が高いとする結果を林らのグループが発表した(文献下記)。
 1993年に群馬県内の40-60才の男女に身長、体重、生活習慣などを尋ね、以後7年間追跡して死亡率を調べた。
 その結果、体格指数(BMI)が標準的(22-24.9)な人に比べ、やせとされる18.5未満の人は、死亡率が男性で2.59倍、女性で2.93倍高かった。BMIが28以上の肥満の男性は1.63倍、女性は2.71倍で、男女ともにやせの死亡率の方が肥満を上回った。
 また、がんや循環器疾患などの死因別に見た場合や喫煙者を除いた場合でも、同様の傾向を示した。

【文献】 Hayashi, R., et al.: Body Mass Index and Mortality in a Middle-aged Japanese Cohort. J. Epidemiology. 15: 70-77. (2005)

▽ 疾病と肥満との関係はよく知られているが、やせにも問題があることが今回の調査で明らかとなった。特に、肥満体よりもやせすぎの方が死亡率が高いことは注目すべき点である。やせすぎの場合、栄養バランスがくずれているため疾病にかかりやすいのではないかと考えられる。


2005/06/05 日本では子供の事故が多い
 厚生労働省がまとめた「子どもの事故予防のための市町村活動マニュアルの開発に関する研究」で、1~14歳の子どもの死亡原因(2003年)は、事故が24%を占め、がん14%、先天奇形9%、心臓病7%などで、0歳で152人、1~4歳で230人、5~9歳で221人が不慮の事故で亡くなったとしている。
 そのため、子どもの事故防止指導に必要な「市町村活動マニュアル」を開発することとしている。
上記報告書は下記のサイトで読める。
http://www.niph.go.jp/soshiki/shogai/
jikoboshi/public/pdf/manual-all.pdf

子供の事故防止支援サイトは下記(国立保健医療科学院)
http://www.niph.go.jp/soshiki/shogai/jikoboshi/index.html
厚生労働省のプレスリリースのサイトは下記
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2005/05/h0510-2.html


2005/06/03 元日本兵についての報道を考える
 毎日新聞が伝えている元日本兵の報道についての記事はいろいろなことを考えさせられる。今回の報道は誤報のようである。何故、こうした誤報が大きく取り上げられるようになったのか、毎日新聞は取材を通じて詳しく検証している。記事は下記のサイトで読むことができる。
http://www.mainichi-msn.co.jp/today/
news/20050603k0000m040152000c.html

 取材とは何か。情報の裏を取るとはどういうことか。記事にするとは。噂が飛び交うインターネット情報をどう考えればよいのか、などなど。改めてメディアとは何かを問い直す必要があるのではないだろうかと思った。


2005/06/02 04年人口動態調査結果
 厚生労働省の04年の人口動態統計から晩婚化・晩産化の傾向が進んでいることがわかった。生まれた子どもの数は111万835人と前年より1万1775人少なく4年連続の減。1899年に統計を取り始めて以来の最少を更新した。少子化に歯止めがかからない実態が浮かび上がった。
 日本人女性1人が産む子どもの数の平均を示す合計特殊出生率については、「1.29」と正式に発表した。細かくは1.2888だったが、小数点以下第3位は四捨五入して表すのが国際的慣行といい、同省は「横ばいだが、下げ止まったともいえない」としている。

平成16年人口動態統計月報年計(概数)の概況は下記のサイトで読めます。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/
jinkou/geppo/nengai04/index.html



2005/06/01 現代サラリーマンの太りやすい生活行動
 花王が「現代サラリーマンの太りやすい生活行動」調査の結果(回答数323人)を発表している。その報告によると、6割以上のサラリーマンが「早食い」「不規則な食事時間」といった食生活などから、自らの生活が「太りやすい」と分かっているにもかかわらず、生活習慣を変えられず、減量できないことを自覚していることが分かった。
 全体の43%が減量に挑戦したが、そのうち57%が再び体重が増え、失敗しているという。「太りやすい」人の生活習慣が端的に表れるのは休日の過ごし方で、「休みぐらいは、ゆっくり過ごしたい」と「夜型」、日ごろの疲れから「家でごろごろ過ごしてしまう」という回答が半数を超えた。
 上記報告のサイトは下記。
 http://www.kao.co.jp/corp/news/2005/2/
n20050530-01re.html