2006年11月


2006/11/30 札幌にて記者懇談会
 札幌にて「毎日くだもの200グラム運動」の記者懇談会に出席し、『本当はすごいくだものの科学』―くだものでできる「ダイエット」と「ガン予防」「糖尿病予防」-について説明した。札幌ではもう雪が降っていた。


2006/11/29 心筋梗塞に血中コレステロール値は関係、卵は無関係
 約9万人(男性43,319人、女性47,416人)を対象に心筋梗塞との関係を調べたところ、血液中の総コレステロール値が高いほど、心筋梗塞リスクが高くなっていた。総コレステロール値が180mg/dL未満の人に比べると240mg/dL以上の人の心筋梗塞のリスクは2倍であった。また、卵を「ほとんど毎日食べる」グループが、卵を食べる回数が少ないグループより心筋梗塞のリスクが高いわけではなかった。
 以上の結果より、心筋梗塞予防には、総コレステロールを低く保つことが重要であり、卵以外の動物性脂肪などで総コレステロール値の上昇が起きると考えられる。

【文献】
Nakamura, Y. et al.: Egg consumption, serum total cholesterol concentrations and coronary heart disease incidence: Japan Public Health Center-based prospective study. Br. J. Nutr. 96: 921-928. (2006)


2006/11/28 大腸ガンのリスクは男性の方が高い
 大腸ガンの原因となるポリープは、女性よりも男性に多くみられることをポーランドの研究グループが発表した。
 大腸内視鏡を用いた大腸ガン検診プログラムに参加した40~66歳の被験者50,148人のデータを調べた。そのうち40~49歳の被験者は大腸ガンの家族歴がある人で、他の被験者は平均的リスクの人である。調査の結果、50~66歳では5.9%、40~49歳では3.4%に進行した大腸の病変またはポリープがみられた。また、男性では女性よりも73%多く、統計的に有意であった。

【文献】
Regula, J. et al.: Colonoscopy in Colorectal-Cancer Screening for Detection of Advanced Neoplasia. New Engl. J. Med. 355: 1863-1872. (2006)


2006/11/27 健康長寿の危険因子
 ハワイに住む日系人の中年男性5,820人を40年間追跡調査したところ、冠動脈疾患、脳卒中、ガン、慢性閉塞性呼吸器疾患、パーキンソン病、糖尿病や認知機能障害、0.5マイル歩行不能な身体障害などの危険因子が6つ以上ある人の85才の生存の確率は9%であったのに対して、1つもないグループでは55%であった。
 以上の結果から、中年期の危険因子を出来るだけ多く回避すれば、健康で長生きできると研究者らは述べている。

【文献】
Willcox, B. J. et al.: Midlife risk factors and healthy survival in men. J. Am. Med. Assoc. 296: 2343-2350. (2006)


2006/11/26 あすのそら色
 TBSテレビ「あすのそら色」(午後6:25~6:30)でリンゴの健康機能性について話しました。短い時間でしたがリンゴの不思議なはたらきを解説しました。


2006/11/22 睡眠が不足すると体重が増加
 アメリカで女性看護師68,183人を16年間追跡調査したところ、睡眠時間が5時間以下のグループでは、7時間のグループと比べて体重が1.14kg多いことが分かった。また、6時間のグループでは0.71kg多かった。8時間と9時間以上のグループでは、7時間のグループと同程度であった。
 16年間に15kg以上体重が増加した人の割合は、7時間のグループと比べて、5時間以下のグループでは1.28倍、6時間のグループでは1.11倍であった。8時間と9時間以上のグループでは、7時間のグループと差がなかった。
 以上の結果から睡眠不足は体重の増加や肥満に関連すると研究者らは述べている。

【文献】
Patel, S. R. et al.: Association between reduced sleep and weight gain in women. Am. J. Epid. 164: 947-954. (2006)


2006/11/21 丸ごとの果物は子供の体重を減らす
 アメリカ・ペンシルベニア大学の研究から、丸ごとの果物の摂取が多い子供の体重は、そうでない子供と比較して減少していることが分かった。
 また、今までに行われた研究では、果汁の摂取量と子供の体重増加とはリンクしていなかったが、今回の研究では、太り過ぎの傾向のある未就学児の場合、果汁の摂取は体重を増やす傾向が認められた。
 ただし、この結果は果汁の摂取を止めると言うことではなく、適切な量を摂取する必要があることを意味すると研究者らは述べている。

【文献】
Faith, M. S. et al.: Fruit Juice Intake Predicts Increased Adiposity Gain in Children From Low-Income Families: Weight Status-by-Environment Interaction. Pediatrics 118: 2066-2075. (2006) [doi:10.1542/peds.2006-1117]


2006/11/20 糖尿病予防のための生活指導は、終了後も効果
 フィンランドの研究によると、食事や運動に関するカウンセリングによって、2型糖尿病リスクの高い人の生活習慣を改善し、発症率を減らすことができることが明らかになった。
 血糖値の高い糖尿病の予備軍に、生活習慣改善の個別指導を4年間行ったところ、終了から3年後も効果が続き、糖尿病の発生のリスクが36%下がった。
 こうした結果から研究グループは、糖尿病予備軍に対する個別指導は、指導が終わってからも生活習慣の改善効果が持続し、糖尿病の発生率の低下につながると結論している。

【文献】
Lindstrom, J. et al.: Sustained reduction in the incidence of type 2 diabetes by lifestyle intervention: follow-up of the Finnish Diabetes Prevention Study. Lancet 368: 1673-1679. (2006) [DOI: 10.1016/S0140-6736(06)69701-8]


2006/11/19 世界で年間316万人の人が高血糖で死亡
 高血糖は糖尿病、心疾患、脳卒中とリンクしており、世界で年間316万人が死亡していることが、アメリカ・ハーバード大学の研究から分かった。
 世界各地の52カ国の血糖値のデータから最適値を超える血糖が心疾患および脳卒中による死亡に及ぼす影響を調べた。その結果、2001年に高血糖に起因する糖尿病により死亡したのは95万9,000人、同じく高血糖による心疾患および脳卒中による死亡はそれぞれ149万人、70万9,000人であった。これは、心疾患による死亡の21%、脳卒中による死亡の13%が高血糖に起因する。
 高血糖による死亡数316万人は、糖尿病による死亡数を大幅に上回り、喫煙(480万人)、高コレステロール(390万人)、過体重・肥満(240万人)による死亡数に匹敵する。
 そのため、研究者らは高血糖を危険因子(リスクファクター)として捉え、高血圧や高コレステロールと同じように、高血糖リスクを一般に知らせる必要性があるとしている。

【文献】
Danaei, G. et al.: Global and regional mortality from ischaemic heart disease and stroke attributable to higher-than-optimum blood glucose concentration: comparative risk assessment. Lancet 368: 1651-1659. (2006) [DOI:10.1016/S0140-6736(06)69700-6]


2006/11/18 明日を元気に くだもの教室 開催

 荏原文化センター(東京都品川区中延1-9-15)
 2006年11月18日(土曜日) 参加無料
 午前 くだもの料理教室 フードプロデューサー 土井善晴氏
     (親子料理教室は定員にが少ないので申し込みはお早めに)
 午後 シンポジウム「知っトク、納得、おいしいくだものの不思議」
 パネラー:和洋女子大副学長 坂本元子氏 農研機構果樹研究所 田中敬一
       東京青果(株) 柿下秋男氏    フードプロデューサー 土井善晴氏
   問合せ先:03-6418-6511 (財)中央果実生産出荷安定基金協会
   http://www.kudamono200.or.jp/event/18kudamono-day.pdf



2006/11/17 メルマガ128号の配信は21日(月)に
 ほぼ週刊メールマガジン「果物&健康NEWS」第128号の配信は配信システムが不安定なため21日月曜日になります。特集「果物摂取とぜん息予防」とクルミの記事です。しばらくお待ち下さい。


2006/11/16 女子学生は体重に対する意識は男子学生と大きく異なる
 女子学生は男子学生よりやせる必要があると考えダイエットしているとアメリカ・ネブラスカ大学の研究チームが報告している。
 研究者らは286人の大学生を調査したところ、男子学生の45.2%は、太りすぎか、肥満体であったが、女子学生は13.9%と少なかった。しかし、痩せる必要があると考えている男子学生は28.6%であったのに対し、女子学生は57.4%と、必要以上に多くが痩せたいと回答していた。
 また、一度もダイエットしたことのない男子学生は79.1%であったが、女子学生は65.6%であった。男子学生も体脂肪に関心を持っているが女子学生ははるかに敏感であった。
 大学生は脂肪、ナトリウムの摂取量が多く果実、野菜の摂取量が少ないなど、その食習慣は悪化の傾向がある。そのため、栄養改善の指導を行う必要があるが、男子学生と女子学生のダイエットに対する意識の違いを考慮した指導を行う必要があると研究者らは述べている。

【文献】
Davy, S. R. et al.: Sex Differences in Dieting Trends, Eating Habits, and Nutrition Beliefs of a Group of Midwestern College Students. J. Am. Diet. Assoc. 106: 1673-1677. (2006)


2006/11/15 睡眠不足の子供は肥満になりやすい
 イギリス・ブリストル大学の研究から睡眠不足の子供は、肥満になりやすいことが明らかにされた。
 睡眠不足は正常な代謝が阻害され、ホルモンが変化し食事の摂取量が増加する。また、睡眠不足による疲労が運動不足を引き起こす可能性がある。
 摂食の抑制とエネルギー代謝の活性化に強く働きかける飽食因子(抗肥満ホルモン)ホルモンのレプチンが、毎晩8時間就寝する人より5時間の人で約15%低く、逆に、空腹のシグナルとして胃から分泌されるホルモンのグレリンが8時間睡眠の人より5時間の人で約15%多い。
 以上のことから、睡眠と肥満との関係は、食事や運動と同じくらい重要であるとしている。

【文献】
Taheri, S.: The link between short sleep duration and obesity: we should recommend more sleep to prevent obesity. Arch. Dis. Child. 91: 881-884. (2006) [doi: 10.1136/adc.2005.093013]


2006/11/14 サプリメントは心臓病予防に役立たない
 抗酸化成分やビタミンなどのサプリメントを摂取しても心疾患や脳卒中の原因となるを予防できないとアメリカ・ジョーンズホプキンス大学の研究者らが発表した。
 今までに試みられた16の臨床試験の結果を分析した結果、サプリメント(葉酸塩、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンE、ビタミンC、β-カロテン、セレニウム)を摂取してもアテローム性動脈硬化の進行を防ぐ効果がないことが分かった。

 この結果は、サプリメントに心疾患などの予防効果がないことを示しているが、食事からのビタミンなど栄養素の摂取を重要性を否定しているわけではないことに注意が必要である。

【文献】
Bleys, J. et al.: Vitamin-mineral supplementation and the progression of atherosclerosis: a meta-analysis of randomized controlled trials. Am. J. Clin. Nutr. 84: 880-887 (2006)


2006/11/13 アメリカ人は減量のためのサプリメントの”誇大宣伝”を信じている
 アメリカの成人は、減量のためのサプリメントを誤解していることがコネティカット大学の電話による調査から明らかになった。
 調査に応じた1,444人のうち60%以上は減量のためのサプリメントは、FDAによって調査され安全で(65%)で、有効である(63%)と立証されていると誤ってい信じていた。また、アメリカ食品医薬品局(FDA)は減量のためのサプリメントを全く承認していないが、54%以上の人がFDAにより減量のためのサプリメントが承認されていると信じていることがわかった。

下記のサイトで調査の詳細が読める(英文)。
http://www.csra.uconn.edu/pdf/National_Dietary_Survey.pdf


2006/11/12 減量後の体重を維持すには行動計画が必要
 減量した後にその体重を維持するには、リバウンドに備えて行動計画(自己規制プログラム)を立てることが重要であるとアメリカ・ブラウン大学の研究チームが発表した。
 体重を減らすときには、洋服が似合うようになり、体重計の数字は下がり、周りの人が声をかけるなどがあるが、体重維持期に入るとこうしたことが少なくなり、リバウンドしやくなる。
 そこで、米ブラウン大学の研究者らは、過去2年間で以前の体重より最低10%以上を減量した男女314人(平均で19.3kg(20%)減量)を対象にリバウンドに備えるための研究を行った。
 被験者は3群に割り付けられ、「対照群」は、食事や運動習慣について書かれたニュースレターを年4回受けとった。「対面式対応群」は、定期的な体重測定に加えて専門家による助言やカウンセリングを直接受けた。「インターネット対応群」は定期的な体重測定に加えて専門家による助言やカウンセリングをインターネットで受けた。研究期間の18カ月後、約2.3kg以上体重が増加したのは、対照群で72%、インターネット群で55%、対面対応群では46%だった。
 研究者らは、対面式対応群の成功には、毎日の体重測定だけではなく、体重報告の義務や、行動計画の必要性が関与していると述べている。

【文献】
Rena R. Wing, R. R. et al.: A Self-Regulation Program for Maintenance of Weight Loss. New Engl. J. Med. 355: 1563-1571. (2006)


2006/11/11 スウェーデンのカロリンスカ研究所の砂糖について報告
 スウェーデンのカロリンスカ研究所の研究グループが、ソフトドリンクなど砂糖をたくさん含む飲み物や食べ物を多く取る人は、そうでない人よりすい臓ガンを発症する危険性が最大約90%高いとする調査結果を報告した。
 この発表の中ですい臓ガンのリスクを高める要因の1つとして「クリームの付いたフルーツ」とある。この料理は、スウェーデンでよく食べられている砂糖を使うスープのようなもののようであるが、まだどんな料理か分かりません。
 ただ、この論文は、「Consumption of sugar and sugar-sweetened foods and the risk of pancreatic cancer in a prospective study. (Am. J. Clin. Nutr. 84:1171. 2006)」で、果物がすい臓ガンと関係していると述べているわけではなく、添加した砂糖についてのデータである。
 また、研究者らが添加した砂糖がすい臓ガンのリスクを高める理由として「血糖値を調整するインスリンを分泌する膵臓のがんと、砂糖の取りすぎによる高血糖とに関連があるのかもしれない」としている。
 果物は単糖類を含むが食物繊維も含まれているので、食べても血糖値を上げず、インシュリンの分泌も上げないことは科学的に明らかになっている。
 一方、カリフォルニア大学の研究グループは果物の摂取はすい臓ガンのリスクを下げると報告している(Vegetable and Fruit Intake and Pancreatic Cancer in a Population-Based Case-Control Study in the San Francisco Bay Area. Cancer Epid. Biomark. Prev. 14:2093. 2005)。従って、果物がすい臓ガンのリスクを高めることはない。


2006/11/10 講演会「イチジクの機能性と健康」
 千葉県君津合同庁舎で千葉県内のイチジク生産者を対象に「イチジクの機能性と健康」について講演します。多くの方が参加してくださるようです。
 千葉県ではイチジクが約20ヘクタール栽培されていて地元市場や直売などで販売しており、わずかですが増加傾向にあるそうです。講演が生産者の皆さんに役立つと良いのですが。


2006/11/09 今週号のメルマガ「果物&健康NEWS」
 今週号(Vol.127)のメルマガの話題はギンナンです。予告してあった「ぜん息とビタミンC」は来週掲載します。明日の講演会の準備と重なったので少々焦っています。締め切りに間に合えばよいのですが。


2006/11/08 低GIの食事は、女性の体重増を避けられる
 食物繊維を多く摂取している女性では年齢に伴う体重の増加を避けることが出来るとデンマークの研究者らが発表した。果物や野菜など食物繊維を多く含む食品のグリセミックインデックス値(GI値)は低く、キャンディや白パンなどの食品のGI値は高い。
 男性185人と女性191年を対象に6年間行われた研究では、GI値の低い食事をしていた女性の体重はGI値の高い食事をしていた女性に比べて体脂肪、体重などが低いことが分かった。特に座業的な仕事が多い女性で顕著な違いが認められた。しかし、男性ではこうした傾向は認められなかった。

【文献】
Hare-Bruun, H. et al.: Glycemic index and glycemic load in relation to changes in body weight, body fat distribution, and body composition in adult Danes. Am. J. Clin. Nutr. 84: 871-879. (2006)


2006/11/07 海洋生態系調査の衝撃:2048年には魚が食べられなくなる
 世界の海で現在のような乱獲や汚染が続けば、人間が食べる魚介類は、2048年までに消滅すると国際研究チームが科学研究雑誌に報告された。
 全世界の海洋調査、国連食糧農業機関(FAO)の集めた魚類に関する時系列データ(1950年~2003年)、各大陸の沿岸部に関する地層や考古学研究の結果などを基に、世界の海洋生態系について考察した。
 その結果、乱獲と汚染が原因で、海洋生物の多様性が著しく失われていることが分かり、このままでは、人間が口にする魚介類が2048年までに消滅すると予測している。
 一方、保護対策が取られている世界48カ所の海域では、生物の多様性が保たれ、その結果として、海洋生物資源の生産性が高くなっている。そのため研究者らは、まだ海洋生態系の回復は可能であると考えている。

【文献】
Worm, B. et al.: Impacts of Biodiversity Loss on Ocean Ecosystem Services. Science 314: 787-790. (2006)


2006/11/06 健康情報を探索する人は、情報源をチェックしない
 アメリカのインターネットユーザーの7%(1千万人)がウェブ上で健康について検索しているが、このうち、情報源と日付をチックしているのは4分の1に過ぎない。また、チックしている人のうち15%の人は、定期的に健康情報のソースと日付をチェックしているが、10%の人は時々である。
 その理由として、健康ウェブサイトで情報ソースや日付を提示しているところが2%しかないためと、検索が一般的なサーチエンジンであるGoogleやYahooを使っているためとしている。
 最近、医学の話題だけに焦点を当てたサーチエンジンが利用可能になったので、今後、消費者の行動が変わる可能性があると研究担当者は述べている。

上記調査は下記のサイトで読める。
http://www.pewinternet.org/PPF/r/190/report_display.asp


2006/11/05 メタボリックシンドロームでも血圧が正常なら動脈硬化のリスクは同じ
 メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)は、生活習慣病の危険を高め、心臓病や脳卒中を招く動脈硬化につながるとされている。しかし、血圧が正常であれば、メタボリックシンドロームであっても、アロテーム性動脈硬化症(心臓病や脳卒中の主因)のリスクは同じと東京大病院の石坂信和らの研究チームが報告している。
 1994年-2003年に人間ドックを受診した人のうち血圧がやや高めだが正常範囲である(140Hg未満/90Hg未満)の5661人を対象に、メタボリックシンドロームの有無とアロテーム性動脈硬化症のリスクとの関係を調べた。
 その結果、男女とも、同じ血圧でも降圧剤に頼っていない人の動脈硬化のリスクは、メタボリックシンドロームがあってもなくても、変わらなかった。
 以上の結果から、研究者らはメタボリックシンドロームとアロテーム性動脈硬化症とは関係ないのではないかと示唆している。

【文献】
Ishizaka, N. et al.: Metabolic Syndrome May Not Associate With Carotid Plaque in Subjects With Optimal, Normal, or High-Normal Blood Pressure. Hypertension 48: 411 - 417. (2006) [doi: 10.1161/01.HYP.0000233466.24345.2e]


2006/11/04 シーバックソーン・ベリーから健康成分を高回収
 グミ科のシーバックソーン・ベリーはチベットや中国、ロシアでジュースとして飲まれている。この果汁にはコレステロールを低くする成分などが含まれているが現在の製造工程では回収率が悪いことが知られていた。そこで、インドの研究グループは高圧プレスにる製造方法を開発し、パルプオイル、ジュースを効率よく回収できた。
 パルプオイルにはカロテノイドが4096-4403mg/kg、トコフェロールが1409-1599mg/kgが含まれていた。また、ジュースにはポリフェノールが2392-2821mg/kg、フラボノイドが340-401mg/kg、ビタミンCが1683-1840mg/kg含まれていた。

【文献】
Arimboor, R. et al.: Integrated processing of fresh Indian sea buckthorn (Hippophae rhamnoides) berries and chemical evaluation of products. J. Sci. Food Agr. 86: 2345-2353. (2006) [doi: 10.1002/jsfa.2620]


2006/11/03 レスベラトロール摂取で高カロリー食による寿命短縮防止
 脂肪分が多い高カロリー食を摂取したマウスの寿命は標準食を摂取したマウスに比べて寿命が短くなる。ところがブドウなどに含まれるポリフェノール一種である「レスベラトロール」を、高カロリー食を一緒にマウスに与えると寿命短縮を防ぐ効果があったと、アメリカ・ハーバード大などの研究チームが発表した。
 体重の増加を減らす効果はあまり大きくはなかったが、血糖値やインシュリンの分泌の改善が認められ統計的に有意の寿命の伸びが認められた。マウスに与えられたレスベラトロールの量はキログラム当たり22.4mgなので、ヒト(60kg)に換算すると1.344gとなることから投与量としては多いわけではない。また、今回の論文ではデータが示されていないが5.2mg/kgでも効果があったと記載されているので、この場合をヒトに換算すると312mgとなる。
 以上の結果は、哺乳動物の肥満関連の疾病に対してレスベラトロールのような低分子が効果的であることを示している。
 この研究は、肥満に関連した疾病予防に対する新しいアプローチであることから今後の展開が待たれる。しかし、コレステロールや中性脂肪に変化がないなど解明すべき点も残されているので、人への応用も期待されるがまだ先だろう。

【文献】
Baur, J. A. et al.: Resveratrol improves health and survival of mice on a high-calorie diet. Nature Online Nov. 1, (2006) [doi: 10.1038/nature05354]


2006/11/2 積極的な感情は低血圧につながる
 メキシコ系アメリカ人2564人(65歳以上)を対象に積極的な感情と血圧との関係を調べた結果、積極的な感情をもつ人の血圧は、そうでない人と比べて統計的に有意に低いことが分かった。

【文献】
Ostir, G. V. et al.: Hypertension in Older Adults and the Role of Positive Emotions. Psych. Med. 68: 727-733. (2006)


2006/11/01 ω-3脂肪酸とアルツハイマー病との関係
 ω-3脂肪酸のサプリメントを摂ることで、軽いアルツハイマー病患者の認識力低下を遅くするかもしれない。しかし、より進行した症状に対する効果についてはあまり期待できない。
 スウェーデンの研究グループは、ω-3脂肪酸サプリメントと偽薬を使ってアルツハイマー病との関係を比較した。6カ月間、1.7gのドコサヘキサエン酸(DHA)と0.6グラムのエイコサペンタエン酸(EPA)を摂取した89人の患者(女51人、男38人)が1.7グと偽薬を摂取した85人の患者(女39人、男46人)を比較した。そのあとの6カ月間、両グループともω-3脂肪酸を摂取した。
 2つのグループ間には、認知機能低下の速度の違いは全くなかった。しかしながら、偽薬を取った人々と比べて、非常に軽い認識的な損傷の32人の患者では、認識力の低下が遅くなった。

【文献】
Freund-Levi, Y. et al.: ω-3 Fatty Acid Treatment in 174 Patients With Mild to Moderate Alzheimer Disease: OmegAD Study. Arch. Neurol. 63: 1402-1408. (2006)