2005年12月


2005/12/31 大晦日
 風もなく暖かい大晦日である。車の数もかなり少ない。特に、トラックにはほとんどすれ違わなかった。

 今年最後のメールマガジン「果物&健康NEWS」85号は6994部発行した。科学と健康の情報誌として受け入れられつつあるのではないかと思う。
 ホームページのトップの数字は24700で、最近は1日平均70-80件のアクセスがある。Alexaのトラッフィク・ランクは80万前後なので、個人のページとしてはまずまずと思うが、もう少しアクセス数を上げたいところだ。

 研究所に上意下達のフラット制組織が導入されようとしている。この組織により研究員は二極に分けられる。下へ追いやられた研究者たちは、研究の希望も、生活の権利を奪われるだろう。また、研究に必要な「出る杭」を紡ぐ奇人変人も減るだろう。
 反対に、たくさんの外形的な点数を挙げた優等生は勝ち組となり、でかい顔をして優先席に座り、下流の研究員に命令するのだろう。
 この制度のもとでは、科学や技術を飛躍的に前進させる画期的な成果はほとんど出ないだろう。新しい時代を切り開くエポックメーキングには反逆の思想があるからだ。また、例えそうした成果を上げても勝ち組にはなれない。なぜなら、そうした反逆者を評価するシステムにはなっていないからだ。


2005/12/31 今年の科学の画期的進歩
 アメリカ科学誌サイエンスは、今年の科学の画期的進歩として「進化研究」を選んだ。進化研究は、国際チームによるチンパンジーのゲノム(全遺伝情報)解読や、ヒト遺伝子の個性を探る大規模共同研究の成果などから、進展著しい分野としてトップになった。

上記サイエンスの記事は下記サイトにある。
http://www.sciencemag.org/cgi/content/full/310/5756/1878

また、次点として9つ研究成果を選んだ。その記事は下記のサイトで読める。
http://www.sciencemag.org/cgi/content/full/310/5756/1880a


2005/12/30 「ヘッドライト・テールライト」を聞きながら
 中島みゆきの「ヘッドライト・テールライト」を聞きながら今年を振り返っている。

  語り継ぐ 人もなく
  吹きすさぶ 風の中へ
  紛れ散らばる 星の名は
  忘れられても ‥‥

 虚しく、はかない想いが漂う。燃えるような理想は衰退し、創造力は軽視され、借り物の感覚的「原理」や「組織体制」が導入され、科学の客観性が軽んじられる。

 しかし 旅はまだ終わらない


2005/12/30 食事からのマグネシウムの摂取で骨密度が高まる
 2,038人の男女(70-79歳)を対象に骨密度と食事との関係を調査したところ、白人の女性と男性では、マグネシウムの摂取量が多いとこと密度が高まることが分かった。一日100mg多く摂取すると骨密度が1%高くなる。しかし、黒人ではこの関係は見いだせなかった。

【文献】
Ryder, K.M., et al.: Magnesium Intake from Food and Supplements Is Associated with Bone Mineral Density in Healthy Older White Subjects. J. Amer. Geriatrics Soc. 53: 1875-1880. (2005) [doi: 10.1111/j.1532-5415.2005.53561.x]


2005/12/26 物忘れとホモシステイン
 年配のイギリス人の記憶喪失のリスクは血液中のホモシステインの増加と葉酸の減少と関係していることがオックスフォード大学の調べで分かった。
 すでに、ホモシステインは冠状動脈性心臓病、脳卒中などのリスクを上げることが知られており、血液の中のホモシステインのレベルは食事の内容と遺伝に強く影響される。一方、葉酸とビタミンB群は、ホモシステインのレベルを下げる。
 2,100人(65~67歳)以上を対象に1992-1993年、及びその6年後に血液中のホモシステイン、葉酸、ビタミンB12と記憶力を測定した。その結果、標準テストで記憶障害が認められたヒトはホモシステインレベルが高く、葉酸レベルが低いことが分かった。

【文献】
Nurk, A., et al.: Plasma total homocysteine and memory in the elderly: The Hordaland Homocysteine study Ann. Neurology. 58: 847-857. (Published Online: 27 Oct 2005) [DOI: 10.1002/ana.20645]


2005/12/24-25 サンタさん北極に帰る
12/25 18:00 サンタさんはハワイに到着した。このあと、眠っていなかった子供のところをもう一度回ってプレゼントを届けたあと北極に帰るとのこと。メリークリスマス。
16:30 サンタさんをのせたそりは、ヨーロッパを回り終わり、夏の南アメリカへ行き、今はカナダを移動中。
7:00 現在朝7時、太陽が東の空に出てきた。少し雲があるがまずまずの天気である。日本はすでに25日クリスマスであるが、イタリアは今が夜中。サンタさんはローマを移動中。これから大西洋を渡って南北アメリカへと移動する。
12/24 23:00 サンタは東京上空を通過中、新幹線より100倍速いスピードで移動しているとのこと。
19:15 ニュージーランドの北島から南島へ移動中。
18:17 サンタさん北極から南へ
 北極に現れたサンタさんはベーリング海峡を南下している。ニュージーランドへ向かうのか。

サンタさん発見情報は下記のサイトで。
http://www.noradsanta.org/jp/tracking.php


2005/12/24 サンタはいる
 今日はクリスマスイブ。子供たちはサンタクロースが来るのを待ちかねているだろうか。小学生になるとサンタさんはいるか、いないかの議論が始まる。4年生では、いる派が優勢で、5年生になると劣勢になるように思うが、最近はもっと早いのだろうか。
 いる派の子供たちも、町で見かける白いひげをつけて赤い服を着ているサンタが本物のサンタではないことを知っている。また、いない派の子供たちにサンタは両親だといわれているので、いる派の子供たちは、ほしいものを絶対、両親にはいわないと誓っている。
 それでも、クリスマスの朝、ほしかったプレゼントが枕元にちゃんとあるではないか。父さんや母さんはほしいものを知らないはずだ。やっぱりサンタさんはいるのだ。それ以外考えられないではないか。
 次第に、サンタがいる派が少数派となってしまうのだが、このことで少数派がいじめられたということは聞かない。何故だろう。確かに、プレゼントをくれたのはサンタではなく両親かも知れない。でも、それがサンタクロースがいない証拠になるのだろうか。
 やがてサンタはいない派も知ることになる。サンタとは、両親の子供たちに対する無償の愛や優しさのことではないのかと。だから、サンタは見えなくてもいる。

 クリスマスに合わせて、北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)が「サンタ追跡プログラム」のウェブ・サイトを開設した。いよいよ今夜追跡が始まる。昨年は日本時間で夕方5時頃、北極上空でサンタさんが発見された。

追跡サイトは下記。
http://www.noradsanta.org/jp/default.php



2005/12/24 日本の人口が減少
 厚生労働省が2005年人口動態統計の推計値を公表した。出生数は過去最低の106万7000人で、統計を開始した1899年以来初めて死亡数(107万7000人)を下回った。減少幅は1万人で、推計値段階ではあるが、日本は「人口減少社会」に突入したとみられる。厚労省の国立社会保障・人口問題研究所は日本の人口が2007年から減少すると予測していたが、これが2年早まることになりそうだ。
 合計特殊出生率(一人の女性が一生に産む子どもの平均数に相当)は2004年に過去最低の1.28台を記録したが、05年はさらに下回る見通し。国立社会保障・人口問題研究所が2002年に公表した人口推計(中位)の出生率は2007年に1.306で底を打ち、その後は徐々に回復するとみていたが、実態はそれよりも少ない。
 結婚件数は前年比7000組減の71万3000組、離婚件数も前年比9000組減の26万2000組。離婚件数の減少は2003年以降3年連続。

平成17年人口動態統計の年間推計のサイトは下記
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/suikei05/index.html


2005/12/23 勝利に優るもの
 朝起きて外を見ると南西の空に月が出ていた。月の動きを調べると昨日の午後10時34分に出て今日の11時23分に沈むとあった。昨日と違い風も吹いていないので自転車での通勤が楽であった。23日は、東京タワー(1958(昭和33)年)が正式な営業を開始した日である。
 午前中、NHK BS1のドキュメント番組「勝利に優るもの~延長18回 松山商-三沢」をみた。その日(1969年(昭和44年)8月18日)のテレビ画面がそのまま写っていた場面があったが、これがNHKの底力なのかも知れない。
 勝利に優るものを実感した番組であった。三沢高校の太田投手の延長18回は記憶にあったが、相手が松山商業であったことはすっかり忘れていた。勝者と敗者とに分かれるのは試合の直後だけなのだろう。それがすぎても残るもの、それが勝利に優るものなのだと思う。


2005/12/23 鳥インフルエンザ治療薬タミフルに耐性菌
 人間への感染拡大が懸念されている鳥インフルエンザについて、治療薬タミフル(一般名オセルタミビル)が効かない耐性ウイルスが発見された。
 最初のタミフル耐性ウイルスについての報告は、東大医科学研究所の河岡義裕教授らで、タミフル服用から4日目に死亡したベトナムの14歳少女から発見された(文献1)。
 次いで、イギリス・オックスフォード大学などの研究チームが、H5N1型の鳥インフルエンザに感染したベトナム人患者8人について調べた。8人は感染発覚後にタミフルの投与を受けたが、4人が死亡した。死亡した4人のうち13歳少女と18歳少女の2人から、タミフルに耐性のあるウイルスが検出された(文献2)。
 13歳少女の場合は発症2日目に入院しすぐにタミフル治療を開始したが、6日後に死亡した。投薬効果が最も高いとされる感染初期からタミフルの治療を受けていたにもかかわらず、治療効果があがらなかったことが注目されている。
 一方で、回復した4人のうち3人については、タミフル投与によるウイルス量の減少が確認された。 タミフルは効果的な治療薬であるがそれだけでは完全ではないようだ。

【文献】
1) Le, Q.M., et al.: Avian flu: Isolation of drug-resistant H5N1 virus. Nature 437: 1108-1108. (2005)
2) de Jong, M.D., et al.: Oseltamivir Resistance during Treatment of Influenza A (H5N1) Infection. N. Engl. J. Med. 353:2667-2672. (2005)


2005/12/22 今年一番の北風
 今日は冬至。風が強い。朝も吹いていたけれど、午後の風はとても強く、研究棟裏の自転車置き場の自転車が軒並み倒されている。起こしてもまた倒されるので今日はそのままにしておく。北の方を見ると薄茶色に見える。恐らく、風に吹き飛ばされた砂のためではないかと思う。今年一番の北風である。
 次回のメルマガにはブドウの収穫期と気候との関係を取り上げる予定で、その資料を読んでいる。中心は科学雑誌ネーチャーに報告された論文で、1370年からのブドウの収穫期から推定した気温の推移である。1680年代は今より暑かったようだ。


2005/12/22 ガン促進遺伝子が、ガン転移を抑制
 膵臓ガンや肺ガンなどを引き起こす遺伝子「N-ras」に、ガンを悪性化させたり、転移を抑える働きもあることが発見された。
 N-ras遺伝子は、突然変異が起きたり、「Rb」と呼ばれるガンを抑制する遺伝子がなくなると、さまざまなガンを引き起こすことが知られていた。
 そこで、マウスの体に二つずつあるN-rasとRbの遺伝子を一つ、あるいは二つ欠損させ、体のどの部位にどんなガンができるかを調べた。
 Rbだけを二つとも欠損したマウスは脳下垂体に悪性のガンができたが、Rbに加えてN-rasもすべて欠損すると、ガンは良性腫瘍になった。しかし、同じマウスで、のどの甲状腺にできたガンの場合は、Rbが二つ、N-rasが一つ欠損すると良性腫瘍ができ、さらにN-rasもすべてなくなると、他の臓器に転移を起こす悪性のガンに変化した。
 そのため、N-rasは単純なガン促進遺伝子ではなく、組織によって正反対の働きもすることが分かった。N-rasの機能を制御すればより効果的な、新しいガン治療開発の手がかりとなる可能性があるとしている。


【文献】
Takahashi, C., et al.: Nras loss induces metastatic conversion of Rb1-deficient neuroendocrine thyroid tumor. Nature Genetics (Published online: 20 December 2005) [doi: 10.1038/ng1703]


2005/12/21 少ない肥料でもイネの収量が増加
 葉がほぼ垂直に育つために、太陽のエネルギーが下の葉までまんべんなく及ぶので光合成の効率が良くなるため、肥料を増やさなくても収量が増加するイネの仕組みが解明されたと報告された。
 葉が垂直のため、間隔を狭めて植えるのにも適していることから、田植えの必要のない直播(じかまき)による省力化で、生産者の高齢化対策としても期待できる成果である。
 イネ(日本晴)の突然変異体の中から、葉が直立するイネの遺伝子を解析した結果、葉が直立したイネでは、植物ホルモンの一種であるブラシノステロイドを作る酵素のうち、同じ働きをする二つの酵素の一方が機能しなくなっていることを突き止めた。
 通常の2倍の密度で栽培したところ、普通の日本晴は1ヘクタール当たりの推定収量が5.31tだったのに対し、このイネは6.19tで、植え付け間隔を狭めた栽培にも適していることを実証した。

【文献】
Sakamoto, T., et al.: Erect leaves caused by brassinosteroid deficiency increase biomass production and grain yield in rice. Nature Biotech. (online: 20 December 2005) [doi: 10.1038/nbt1173]


2005/12/20 一人こんにゃく問答
 昨日より寒さがゆるんでいる。青く澄んだ空で風もなく穏やかな日である。
 今日は霧笛記念日とのことである。1879年(明治12年)12月20日、霧深い津軽海峡にある青森県尻屋崎灯台に、日本で初めて霧笛が設置されたのを記念して定められた。航路標識の中で、視界が悪いとき、船舶に位置を知らせるのが霧信号所(灯台)が鳴らす霧笛である。しかし、最近は電波標識の整備に伴い霧笛を鳴らす灯台が少なくなっている。
 霧笛が、船舶の安全を示す道標だとしたら、研究基本計画や研究組織は、研究者の道標だろう。ところがどうも研究管理責任者は、自分ひとりでこんにゃく問答をしているらしい。
 研究員や職員に組織改変について説明があった。研究管理責任者曰く、「果物の輸出など全体からみればたいした問題ではない」そうである。ところが同じ管理者が作った研究基本計画では、「果物輸出のための研究を推進する」そうな。また、研究管理責任者曰く、「消費者のための研究が必要である」そうである。ところが、同じ管理者が作った研究基本計画では、「消費者の望む果物を安くするための省力化技術の開発は行わない」そうな。
 落語で、こんにゃく問答といえば、お互いに話が通じているつもりだったのに、全然違うことを了解していたという話だが、「一人こんにゃく問答とはこれいかに」である。こんにゃく屋の六兵衛と旅の僧とのうわべは噛み合っているが、じつはちぐはぐな問答をしている落語噺は面白おかしいが、知性や信念がとんちんかんでは笑えない。船舶なら座礁し、沈没してしまうだろう。


2005/12/20 高血圧予防のため若くても果物など植物性食品摂取
 果物など植物性食品の摂取は高血圧のリスクを減少させ、肉の摂取はリスクを高めるとアメリカ・ミネソタ大学の研究グループが発表した。
 若い男女(18~30歳)4304人を対象に調査した結果、植物性食品の摂取量に従って5つのグループに分けて解析したところ、摂取量が一番少ないグループに比較して最も多いグループは高血圧のリスクが36%低かった。さらに、植物性食品のサブグループの分析では、全穀粒、果物、ナッツが有意にリスクを下げることが分かった。一方、赤肉と加工肉の間には正の相関が認められた。
 以上の結果から、研究者は、果物など植物性食品を多く摂取し、赤肉と加工肉を摂取を減らせば高血圧の発症を防ぐことができると結論づけている。

【文献】
Steffen, L.M., et al.: Associations of plant food, dairy product, and meat intakes with 15-y incidence of elevated blood pressure in young black and white adults: the Coronary Artery Risk Development in Young Adults (CARDIA) Study Am. J. Clin. Nutr. 82: 1169-1177. (2005)


2005/12/19 厳冬の中で
 寒い日が続いている。飛行機や新幹線が遅れているという。研究室も暖房が止まるととたんに寒くなる。
 最近の10年の気温の変化から、気象庁は、10月末に今年を暖冬と予想していた。ところが、東京では11日夜に初雪が降り、これは平年より22日も早く、昨年より18日早かった。各地でも12月としては記録的な雪が降っている。また、高知県室戸岬では、18日に-2.1℃まで下がり、12月としては1920年の-2.0℃を下回り記録を更新した。島原市などでも12月の最低気温の記録を更新したという。
 この想定外の寒さは今の組織改悪を映しているようだ。研究員や職員をむちを打つような上意下達の研究組織体制が導入されようとしている。でも、朝の来ない夜はないように、どんに厳しい冬でも春はやってくる。どんな春が、いつやってくるか分からないがその日を待とう。必ず研究者が、使命感に燃えて研究に打ち込め、農業の発展を支えることを喜びとするような春がやってくる。


2005/12/19 観測史上2番目の暑さ
 国連の世界気象機関(WMO: World Meteorological Organization)は、2005年は、観測史上2番目に暑い年だったとする報告書「2005年の地球気候の現状に関する声明」を発表した。
 報告書によると、これまでのところ2005年は、陸地や海を含めた地球表面の平均気温が、観測記録の残る1861年以来2番目に高く、比較の基準としている1961~90年の平均(14度)を0.48度上回った。特に北半球は、同平均を0.65度上回る史上最高を記録した。

プレスリリースは下記のサイトで読める。
http://www.wmo.ch/news/news.html
プレスリリースのワード版は下記のサイト。
http://www.wmo.int/web/Press/Press743_E1.doc


2005/12/18 マヤ文明:最古の壁画を発見
 ナショナルジオグラフィック協会(本部・ワシントン)は、約2000年前に描かれたマヤ文明最古の壁画(王権を授けられるトウモロコシの神々)を公表した。
 中米グアテマラ・サンバルトロの密林に残された高さ25メートルのピラミッド神殿かり発掘が進められていた。見つかった壁画は、大きさ縦1メートル、幅9メートルで、現在も鮮やかな赤い色彩が残る。調査に当たったウィリアム・サターノ研究員は「宇宙の木にささげられた七面鳥の血」と解説し、マヤの世界観を示す資料の一つとして注目している。

マヤ最古の壁画が初期の王たちの存在を実証したナショナルジオグラフィックの日本語サイトは下記。
http://nng.nikkeibp.co.jp/nng/topics/n20051213_1.shtml


2005/12/17 WHOとFAOは果物と野菜の摂取促進を推奨
 世界保健機関(WHO)と国連食料農業機関(FAO)は、果物と野菜の摂取を促進する行動計画を共同で実施している。
 WHOの非伝染病予防、健康促進ディレクターのPekka Puska博士は、「果実と野菜の十分な摂取は、多くの病気を予防し、健康を促進するが、世界のかなりの地域で人々は少ししか消費していない。」と述べている。WHOは、果物と野菜の摂取を増やせば、心血管疾患、2型糖尿病、肥満、いくつかのガンを予防できるとしている。

【文献】
Eaton, L.: WHO launches initiative to encourage eating fruit and vegetables. BMJ. 327:1125 (2003) [doi: 10.1136/bmj.327.7424.1125-a]


2005/12/16 卵を抱える雌イカ
 アメリカ・カリフォルニア州のモンタレー湾水族館研究所が、腕(脚)の間に2000から3000個の卵を抱えるテカギイカの雌を撮影することに成功したと発表した。イカ類は海底に卵を産み落とすと考えられており、卵を抱き続ける種類が撮影されることは極めて珍しいという。
 遠隔操作できる潜水探査機を水深1500~2500メートルに沈め、卵を抱いているテカギイカ5匹を撮影、2匹を捕獲した。撮影された雌は体長約14.5センチ。卵の塊を抱き、内部のすき間に口から海水を流し込んでいた。深海では少ない酸素を卵に与えるためと考えられるという。また、卵を抱いた雌は動きが鈍く、研究者は「子育てには貢献しているものの、クジラやアザラシの餌食になりやすいようだ」と推測している。

【文献】
Seibel, B.A., et al.: Post-spawning egg care by a squid. Nature 438: 929 (15 December 2005) [doi:10.1038/438929a]

卵を抱いたテカギイカの写真は下記のサイトで見られる。
http://www.nature.com/nature/journal/v438/
n7070/fig_tab/438929a_F1.html



2005/12/15 夫婦間の不和は健康にも良くない
 夫婦間の不和によるストレスは、傷害回復に関係した血液中のタンパク質(サイトカイン)が元に戻るのが遅くなるとアメリカ・オハイオ州立大の研究チームが発表した。
 研究は、オハイオ州に住む22歳から77歳の42組の夫婦を対象に、真空ポンプを被験者の皮膚に押しつけふくれさせ、その傷害回復タンパク質サイトカインを測定した。1度目は普通に、2度目は互いの意見が合わない問題を議論して測定した。その結果、カップルが口論すると、口論していなかった時より回復が一貫して遅くなることが分かった。不和度が高いカップルは低いカップルに比べて回復度が60%であった。
 夫婦間の不和によるストレスは、傷害回復タンパク質であるサイトカインレベルを下げること、また、サイトカインは、心血管疾患、骨粗しょう症、関節炎など様々な病気と関係していることから、夫婦間の不和は健康に良くないと結論づけている。

【文献】
Janice, K., et al.: Hostile Marital Interactions, Proinflammatory Cytokine Production, and Wound Healing. Arch Gen Psychiatry. 62: 1377-1384. (2005)


2005/12/14 大動脈瘤の原因たんぱく質を究明
 破裂すると大出血して多くの患者が死亡する大動脈瘤の原因となる細胞内のたんぱく質の異常を、山口大学の研究グループが突き止めた。動物実験でこのたんぱく質の働きを抑える薬を与えると大動脈瘤が縮小したという。
 腹、胸部などにできる大動脈瘤は、血管の壁が弱くなり、血圧に押されて風船のように膨らむ病気である。コラーゲンなど血管壁構成物質が分解されやすくなったり、血管壁構成物質を合成する能力が落ちると血管壁が弱くなると考えられている。
 研究グループは、その原因が「JNK」というたんぱく質の働きが異常に高まることにあると考え、大動脈瘤を持ったマウスにJNKの働きを抑える薬を与えたところ、血管壁をつくり直す能力が回復し、大動脈瘤が小さくなった。

【文献】
Yoshimura, K., et al.: Regression of abdominal aortic aneurysm by inhibition of c-Jun N-terminal kinase. Nature Medicine. online 27 Nov. 2005 [doi:10.1038/nm1335]


2005/12/13 上意下達では研究が衰退する
 研究棟の北側の桜の木の葉はすべて落ちてしまった。寒い日が続いている。
 研究の進展は、自由闊達な議論をとおした知識の交流が不可欠である。一方、自由闊達な議論が封じ込められると、緩慢ではあるが、確実に衰退の運命をたどることになる。そのため、研究に対する自分の意思をきちっと持つということが、私は科学研究が栄えていくための絶対の必要条件と思う。
 研究機関へのフラット制の導入で画策されているのは上意下達である。上の者の命令や意志を下位の者に通じさせるための組織の弊害は、自由な議論がなくなることにある。その結果導かれるのは、自らの研究の進展を自らの手で決定しなくなることである。
 こうした組織の研究者は、科学の精神や研究の目的意識を冷笑、ないがしろにするようになる。その結果、農業の現場を嫌うようになり、本来の研究者の居場所から離れ、根なし草のようになる。
 具体的にいうと、こうした組織の研究者は、いつも周りを見て、上司の顔をうかがいながら、ちまちまとした研究で点数を稼ぐようになってしまうだろう。


2005/12/13 カルシウムは、錠剤より食事から摂取する方が効果的
 カルシウムを摂取するなら錠剤から摂取するより食事から摂取した方がよいと報告された。1日当たりのカルシウムの推奨量900mgより低い量しか摂取していない10~12歳の195人の健康な少女を4つのグループに分け調査した(錠剤から1000mg摂取したグループ、1000mgのカルシウムと200IUビタミンDの錠剤を摂取したグループ、低脂肪チーズ(1000mgのカルシウム含有)、偽薬の錠剤グループ)。その結果、チーズを摂取したグループは他のグループより骨への利用率が統計的に有意に高いことが分かった。
 また、同時に、必要以上にカルシウムを摂取しても、より骨が丈夫になるわけではないことも明らかになった。

【文献】
Cheng, S., et al.: Effects of calcium, dairy product, and vitamin D supplementation on bone mass accrual and body composition in 10-12-y-old girls: a 2-y randomized trial. Am. J. Clin. Nutr. 82: 1115-1126. (2005)


2005/12/12 イヌのゲノム解読
 アメリカ・国立ヒトゲノム研究所などは、雌のボクサー犬のゲノム(遺伝情報全体)の高精度の解読が完了したと発表した。
 イヌのゲノム配列、比較解析などは、イヌの進化に関する重要な情報をもたらすとともに、現存の系統が形態的、生理的、行動的形質の表現型に非常に大きな多様性を示すため、非常に興味深い研究対象である。
 Lindblad-Tohらは、イヌゲノムの高品質概要配列と、系統間のいくつかの遺伝的差異を明らかにするとともに、イヌゲノムとヒトやげっ歯類のそれとの比較解析を行い、遺伝子やゲノムの進化についての全体的な展望を明らかにした。
 さらに、今回のイヌのゲノムを構成する塩基24億個の解読によって、がんや心臓病、糖尿病など様々な病気に関連する遺伝子の解明が進むと期待される。また、イヌのゲノム情報とヒトのゲノム情報を組み合わせることで、人間の病気の遺伝的原因の解明にもつながると期待されているという。
 ゲノム解読に選ばれたのは、「ターシャ」という名前の雌のボクサー犬、そのため、Y染色体の解析は行われていない。犬種ごとの違いについては、ビーグルなど9犬種と違いを比べたところ、塩基約24億個の中で違いは塩基約800~900個につき1個で、ヒトの個人差と同程度の違いだった。

【文献】
Lindblad-Toh, K. et al.: Genome sequence, comparative analysis and haplotype structure of the domestic dog. Nature 438: 803-819 (2005) [doi:10.1038/nature04338]

全文は下記のサイトで読める。
http://www.nature.com/nature/journal/v438/
n7069/full/nature04338.html



2005/12/11 アルツハイマー病は糖尿病と似た病気?
 アルツハイマー病の発生機序の解明と治療法の開発について、アメリカ・ブラウン大学のMonteらは、インスリンが膵臓だけではなく脳内でも産生され、アルツハイマー病患者では脳内のインスリン産生能が障害されていると発表した。
 ラットを用いた実験で脳のいくつかの領域でインスリンが産生されているのを発見し、またインスリンの産生低下による脳神経細胞の機能低下を認めた。さらにアルツハイマー病で死亡した患者の脳組織を検討した結果、インスリン産生量の著しい低下と、インスリン受容体の減少を発見した。
 Monteらは、インスリンは脳細胞機能の維持にきわめて重要であり、不足するかインスリン応答性が低下すると、ニューロンの機能が阻害されてニューロン死を引き起こすと述べている。
 そのため、脳内インスリンの代替物質の投与や、インスリン受容体の再活性化によるアルツハイマー病の治療法につながるとしている。

【文献】
Steen, E., et al.: Impaired insulin and insulin-like growth factor expression and signaling mechanisms in Alzheimer's disease --- is this type 3 diabetes? J. Alzheimer's Disease. 7: 63-80. (2005)


2005/12/10 三陸鉄道の干し柿
 雲ひとつないよい天気である。風は少しあるが暖かい。昨日の朝は一面白くなっていたが、今日はそれもなかった。三陸鉄道の三陸駅には干し柿(コロ柿)がつるされているとニュースで伝えていた。ホームは日陰で風通しがいいので干し柿を作るには絶好の場所とのことである。鉄道に愛着を持つ地元の有志が毎年つるし、乗客に自由にもいで食べてもらっているのだという。

三陸駅の干し柿は下記のサイトで見られる。
http://www.sanrikutetudou.com/news/031210/korogaki.html


2005/12/10 授乳によって母親の糖尿病発症リスクが低下
 アメリカで行われた調査から子供を母乳で育てた母親は2型糖尿病の発症リスクが低いことが分かった。今までに、母乳で育てた子供は小児疾患の発症率が低く、調合乳で育てた小児よりもぜい肉が付きにくいことが分かっていたが、母親にもよい影響が出ることも今回の研究から明らかとなった。
 今回の研究は、授乳が母体の糖尿病リスクに及ぼす影響について調べた。看護師の健康調査(Nurses' Health StudyおよびNurses' Health Study II)」の実施期間に出産を経験した女性15万例以上のデータをもとに検討を行った。
 このうち2型糖尿病と診断されたのは6000例以上で、2型糖尿病発症のリスクが授乳期間が1年増えるごとに15%低下した。何故そうなるのかは分からないが、授乳が血糖値の均衡を維持する役割を果たしているのではないかと考えられている。
 ただ、この結果の解釈に対して、授乳期間が長い女性は健康に対する意識が高く、それが結果的に糖尿病の発症リスクの低下につながっているとの見方もある。

【文献】
Stuebe, A.M., et al.: Duration of Lactation and Incidence of Type 2 Diabetes. JAMA. 294: 2601-2610. (2005)


2005/12/09 高学歴者ほどパーキンソン病の発症リスクが高い
 高学歴であるほどパーキンソン病の発症リスクが高く、職業別にみると医師は最もリスクが高いグループに分類されるとする研究結果が公表された。
 アメリカ・ミネソタ州オルムステッド(Olmsted)地区に住むパーキンソン病患者の教育レベルと職業を、一般集団におけるものと比較する研究を実施した。
 ロチェスター疫学プロジェクト(Rochester Epidemiology Project)の医療記録からデータを収集し、1976~1995年にパーキンソン病の発症をみた同地区の居住者を洗い出した。これに基づいて、電話による質問や医療記録の見直しを実施し、学歴および職業を確認した。
 その結果、9年以上教育を受けている人はパーキンソン病の発症リスクが高く、年数が長くなるにつれてリスクは増大した。医師では発症リスクが有意に高いことがわかった。建設作業員や鉱員、油井作業員、製造業作業員、金属工、技師など肉体労働の度合いが高いと思われる職種は、リスクが有意に低かった。

【文献】
Frigerio, R. : Education and occupations preceding Parkinson disease: A population-based case-control study. Neurology 65: 1575-1583. (2005)


2005/12/08 インターネット掲示板は糖尿病の治療に役立つ
 アメリカ・ボストンのジョスリン糖尿病センターの研究からインターネット掲示板は糖尿病の治療に有効であることが分かった。
 インターネット掲示板(ジョスリンインターネットフォーラム)では、糖尿病患者やその家族の糖尿病関連の質問やコメントを掲載するとともに、医師、栄養士、および心理学者を含む専門家のチームのアドバイスを載せている。
 このインターネット掲示板を6年間で33万人以上が利用しいるが、1999年と2004年の利用者を対象に満足度に対するアンケート調査を行った。その結果、75%の人が糖尿病の治療に役立つと回答した。また、71%の人は、この掲示板によって治療への希望を感じたと回答した。
 以上の結果から、研究者は、インターネット掲示板は糖尿病の治療に有効であると結論づけている。

【文献】
Zrebiec, J.F.: Internet Communities: Do They Improve Coping With Diabetes? Diabetes Educator 31: 825-836. (2005) [DOI: 10.1177/0145721705282162]


2005/12/07 研究と自由な言論
 暦の上では大雪。朝は、霜が降りて大地は白くなっている。北海道や東北地方の日本海側は雪が積もっているとニュースでいっていた。研究所は暖房の入っている5時頃までは暖かいが、切れると急に寒くなる。
 優れた研究は自立した研究者から生まれるが、自立した研究者が存分に研究を行うためには研究環境が保証されている必要がある。研究環境には、研究費や施設だけでなく、自由な言論も重要な要素であるが意外と忘れられている。しかし、研究所の権力者が強権によって研究者の自由な言論を押さえつけると、いずれその強権の故にその研究所は衰退することになる。
 秘密裏に研究組織を作り上げ、「さぁ何かを言え」では自由な言論が保証されているとは言い難い。むしろ、権力者による強権が発動されたと見るのが常識的だろう。


2005/12/07 未知の肉食動物、インドネシアで発見
 世界自然保護基金(WWF)は、インドネシア・カリマンタン(ボルネオ)島の熱帯雨林で、ネコほどの大きさの「未知の肉食動物」を発見したと発表した。この未知の肉食動物は、全くの新種か、これまで知られていなかったテンかオオジャコウネコの仲間ではないかとしている。
 この未知の動物は、カヤン・メンタラン国立公園にWWFが設置したカメラが撮影した。体毛の濃い赤茶色で、ふさふさした細長い尾が特徴的。耳は小さく、後足が発達している。
 インドネシア政府は、この動物が発見された地域を含むカリマンタン島中心部の熱帯雨林に、世界最大のアブラヤシ栽培林を作ると発表したが、WWFはこの栽培計画によってカリマンタン島の生態系が損なわれ、この動物の正体も不明なままで終わってしまうと警告し、今回の発表に踏み切ったと説明している。またWWFは、アブラヤシの大規模栽培はカリマンタン島中心部の土壌にも地形にも適していないと警告している。

下記のWWFのサイトで未知の肉食動物の写真を見ることができる。
http://panda.org/news_facts/newsroom/index.cfm?uNewsID=52960


2005/12/06 クレディビリティが失われた1年
 少し早いが研究部の忘年会があった。美味しい中華料理で楽しいひとときであった。
 今年を振り返ってみるとクレディビリティが失われた年であったように思う。テーマ別フラット制の提案のやり方などはその最たるもので信義、信頼の軽視には幻滅している。どのような世界にも破ってはならない仁義があるのではないか。果樹農業の発展のためにと思い研究を続けてきた。そしてその研究組織や環境などは信頼に足るものと考えていたが、実はそうではなくまったくの幻想だったということなのだろう。


2005/12/06 どうなる食育推進基本計画の数値目標
 食育基本法の理念を実践に移すための食育推進基本計画づくりの検討会が行われている。栄養教諭の役割や学校での農業体験の重要性の明記など積極的な意見が上がっているという。来年3月までにまとめる基本計画案に向けて、欠食率の低減や給食での地場産物の使用割合といった、具体的な数値目標をどれだけ盛り込めるかが焦点になる。

第2回食育推進基本計画検討会の資料は下記のサイト
http://www8.cao.go.jp/syokuiku/suisin/2nd/sidai2.html

食育に関連する主な既存の指標は下記のサイト
http://www8.cao.go.jp/syokuiku/suisin/2nd/ronten_bessi2.html


2005/12/05 コウモリがエボラ出血熱を媒介か
 致死率が90%にも達する感染症のエボラ出血熱は、アフリカで食用にもされるコウモリが広めている可能性があると発表された。ガボンなどの国際チームが、症状が全くない3種類のオオコウモリからエボラウイルスの遺伝子や抗体を検出した。
 エボラウイルスの自然宿主や感染ルートは謎だったため、有効な予防策が取れなかったが、コウモリが感染源なら、食用を避けることで人への直接感染を大幅に減らせる可能性がある。
 チームは2001年以降のガボンとコンゴ共和国での流行期間中に、森林で野生のコウモリや鳥類、小動物など1000匹余りを捕獲してウイルス感染の有無を詳しく調べた結果分かった。

【文献】
Eric M. Leroy, E.M., et al.: Fruit bats as reservoirs of Ebola virus. Nature 438: 575-576. (2005) [doi:10.1038/438575a]


2005/12/04 時雨降る
 自転車でいつもの道を走っていたら、3~4頭のがっしりとしたイヌに出会った。珍しいなぁと思っていたら、後から猟銃を抱え、オレンジ色のジャケット着た中年男性が数人現れた。いつも通っている道であるがハンターにあったのは初めてである。こんな近郊で危なくないのだろうか。
 朝は曇っていたが、昼頃から時雨の雨に変わった。寒いので今までより少し厚いコートに着替えた。


2005/12/04 動物療法で心不全患者の心肺機能が改善
 動物療法が心不全を来す入院患者の肺機能を改善し、神経内分泌量を抑えて、急性かつ重症な症状に対する不安を緩和する補助療法として有効であることを、アメリカ・カルフォルニア大学のチームがアメリカ心臓協会の年次集会(2005.11.13-16)で発表した。
 今回、医療センターに入院している心不全患者計76例(18~80歳)を対象に、イヌを連れたボランティアの訪問を受けるグループ(26例)、ボランティアのみの訪問を受けるグループ(25例)、対照群として訪問を受けないグループ(25例)の3つのグループにについて評価した。訪問はいずれも12分間とし、イヌはいすの横に座らせるか、患者の隣に約60cm離れてベッドに横たわらせた。患者はイヌをなでたり話しかけたりした。
 イヌ同伴の訪問を受けたグループは、不安スコアが24%低下したのに対して、ボランティアのみのグループはわずか10%の低下であった。一方、訪問なしの対照群はスコアに何ら変化は認められなかった。
 ストレスホルモンであるエピネフリン値は、イヌ同伴のグループが平均17%低下し改善がみられたのに対して、ボランティアのみのグループが2%の低下、一方、対照群は7%増大した。このほか、肺機能に関連する左心房圧値、肺動脈収縮圧値においても、イヌ同伴のグループには改善が認められた。


2005/12/03 農学研究にフラット制は適さない
 夕方6時をすぎると、外の雰囲気がひんやりとしてくる。雲がなく夜空には星が瞬いている。研究所の建物の北に植えられているカシの木からドングリが落ちている。
 人の生活・命と関係のある農学研究は、医学研究や栄養学研究などと同様に、必ず対応しなくてはならない分野は多岐にわたっており、その点が工学研究と異なっている。工学研究は、ある分野だけに集中することは可能であるが、医学・農学研究は、例えその時代に注目が集まっていなくともやらなくてはいけない分野がある。端的な例を上げれば小児科は人気がないから研究をやめるなどできない。一方、自転車は人気がないから研究をやめるとしても問題は少ない。
 また、この違いは研究対象の違いにもいえる。生物を対象とした研究か、そうでないかである。生物を対象としないならある一定期間研究をやめても、必要があれば新たに研究を立ち上げるのが容易である。しかし、生物を対象にした研究はそうはいかない。果樹なら新しい研究をするためには、材料をつくるのに少なくとも3年以上かかる。そして、ただ樹を植えればよいのではなく、高度な栽培技術がなくては話にならない。
 そのため、研究テーマを絞ったフラット制は、人の生活・命とかかわる農学研究には適さない。


2005/12/03 始祖鳥は鳥類ではなく恐竜?
 長く最古の鳥とされてきた始祖鳥(Archaeopteryx)が、鳥ではなく恐竜だった可能性があることをドイツと米国のチームが発表した。保存状態のよい化石を調べたところ、脚の親指が恐竜と同じ前向きだった。従来は、現代の鳥類と同じように、枝にとまりやすいように後ろ向きになっていたと考えられており、鳥類に分類する最大の根拠とされていた。
 この化石はドイツの約1億5000万年前(ジュラ紀後期)の地層から見つかった10体目の始祖鳥で、羽毛や尾羽の痕跡や骨格の大部分が残っており、従来の化石では不明確だった脚の構造が確認できた。
 脚の親指はドロマエオサウルス類などの羽毛を持つ獣脚類恐竜と同様に前向きに伸びていた。さらに人さし指も獣脚類恐竜同様、上下に大きく動かせる構造と分かった。いずれも鳥類とは異なっている。
 始祖鳥は、最初の化石が見つかった19世紀以来の研究で、現在の鳥類の直系の祖先ではないものの、最も原始的な鳥類と位置付けられてきた。その最大の根拠の一つが脚の構造だったが、今回の研究でその根拠が崩れたことになる。
 始祖鳥が鳥類と認められなくなると、鳥類の起源は、中国で羽毛恐竜や原始的な鳥「孔子鳥」が見つかっている白亜紀前期(約1億3000万年前)まで約2000万年新しくなる可能性も出てきた。

 今回発表された始祖鳥の化石は科学雑誌サイエンスの下記のサイトで見られる。写真右下にあるスケールは5cm。右の写真は紫外線を照射して撮影した写真。
http://www.sciencemag.org/content/vol310/
issue5753/images/large/310_1483_F1.jpeg


【文献】
Mayr, G., et al.: A Well-Preserved Archaeopteryx Specimen with Theropod Features. Science 310: 1483-1486. [DOI: 10.1126/science.1120331]


2005/12/02 読者投稿欄の新設
 朝起きて西側の窓を開けるとイチョウの葉がすべてなくなっていました。今週の初めには葉があったように記憶しているのですが。窓の先の空き地には霜が降りていました。師走も2日目です。
 ご要望がありました読者投稿欄「い・つ・か・の声」を新設しました。皆様のご投稿をお待ちしています。テーマの制限はありません。
 「い・つ・か・の声」とは、「いいたいこと」、「つたえたいこと」、「かたりたいこと」、の最初の文字からとりました。この欄が読者との親睦と交流につながればと考えています。


2005/12/02 世界最大の水族館がオープン
 アメリカ・米ジョージア州アトランタに屋内では世界最大とされる水族館「ジョージア・アクエリアム・イン・アトランタ」がオープンしたとCNNが伝えている(05/11/30)。今後1年間で240万人の来館が見込まれているとのこと。
 事務局長のジェフ・スワナガン氏はオープンに先立つ会見で、「世界一魅力的な水族館にしたい」と抱負を語った。総量3万トンに上る水の中で飼育される生物は12万5000匹。これまで最大とされてきたシカゴ・シェッド水族館の2万匹をはるかにしのぐ規模だ。
 総工費2億ドルで波間から姿を現す船舶をかたどったダイナミックな外観が特徴。館内は5つの展示エリアと、最新型の立体画像シアターに分かれている。水槽には曲面が多用され、見学者は魚の世界に飛び込んで一緒に泳いでいるような感覚を味わうことができるという。

水族館のサイトは下記
http://www.georgiaaquarium.org/


2005/12/01 ロマンチックな愛はちょうど1年?
 イタリアのパヴィア大学の研究チームは、人の恋する感情は神経成長因子(NGF)という分子の働きが影響しているとする研究結果を発表した。
 恋におちた人は血中の神経成長因子(NGF: nerve growth factor)濃度が有意に高まるという。ところが、その状態は長くは続かず、一年以内に元に戻ってしまう。これは、恋愛が最初の興奮期を脱して安定期に入るためではないかと研究者らは考察している。
 最近、恋に落ちた58人(18~31歳)の血液中に含まれている神経と関係する58種類のタンパク質を検査したところ、NGFの血中濃度は、交際相手のいない人のグループや長期間交際をしている人のグループに比べ、統計的に有意に高かったが、他のたんぱく質では有意な差はなかった。また、NGFはロマンチックな愛の強度とも正の相関を示した。しかし、同じ恋人との交際期間が1年を超えると、NGFの血中濃度は他のグループと同程度まで低下した。

【文献】
Emanuele, E., et al.: Raised plasma nerve growth factor levels associated with early-stage romantic love. online 10 Nov. 2005 [doi:10.1016/j.psyneuen.2005.09.002]

2005年11月


2005/11/30 正統と異端
 朝から青空が広がっていた。通勤途中のツツジの葉がえんじ色一色になっている。日が短くなっていて夕方5時にはもう暗い。
 理想的な研究組織とはどのようなものかと考える。正統と異端が同居した組織ではないかと思う。正統とは、愚直に、地道に、たゆまぬ努力で研究を続けることであり、異端とは、ブレークスルーを目指す思い切りのよい研究である。両者がうまくミックスしている研究組織には活力がある。働きたいと思える研究組織とは、それぞれの研究者が、それぞれの能力を生かすことのできる組織であり、かつ、上司の恣意的な抜擢や左遷を防ぐシステムも備えている必要があるだろう。
 こう考えてくると、恣意的な支配を離れて、自立・自尊の立場に立って主体的に研究を行える研究組織は、フラット制ではなく、従来の部室制であることが分かる。フラット制は上意下達の組織であるため異端は排除される。また、上司の恣意的な支配を防ぐシステムを備えていない。さらに、フラット制を支える成果主義は、秘密主義を生み、研究者の働くことの喜びを奪う。


2005/11/30 都道府県別食料自給率
 農林水産省は、各都道府県別にカロリーベース及び生産額ベースの食料自給率について、最新年の数値を試算するとともに、平成10年度以降の推移をとりまとめましたて公表した。
 我が国の食料自給率は、カロリーベースで平成10年度以降16年度まで7年連続で40%と横ばいの水準となり、生産額ベースでも70%前後のほぼ横ばいの水準となっている。平成17年度はカロリーベースで北海道、秋田、山形、青森、岩手で100%を越えているが、東京は1%、大阪2%、神奈川3%と低い。
 地域の食料自給率の公表は、地産地消、食育活動において活用するなど、地域の農業生産や食生活について国民の一人一人が身近な問題として考える契機なることを期待している。

詳しい県別の数値は下記のサイトで読める。
http://www.maff.go.jp/www/press/cont2/20051125press_2b.pdf


2005/11/29 研究者のモチベーションを奪ってどうする
 研究組織をフラット化するという。従って、これまであった○○室長や○○係長という「肩書」がなくなる。今回の制度では、3人に2人の肩書きがなくなる。このことは、単純ではない。「たかが役職」と思っているかも知れないが、それでは済まない。
 これまでマネージメントとして、研究室予算の獲得や人を通して成果を達成する、あるいは、成果を達成できる人を育成する立場から、一転して他人はどうあれ自分自身で成果を出せではすまない。コツコツと研究を続け、年を経るに従ってマネージメントも行いながら職位を一つずつ上がっていくのが日本のシステムである。それを、ある日突然に、今までのシステムは間違いだったはないだろう。
 さらに、こうしたシステムは、日本の風土に根づいているので、その影響は研究組織内にとどまらない。家族も友人も近所の人もその他大勢の人も役職を知っている。ある日突然、○○室長でなくなったら、リストラされたと思われるだろう。社会的地位を失ったと噂されるだろう。子供にどう説明しても分からないだろう。
 研究者にとって最も大切なモチベーションを奪ってどうしようというのだろうか。


2005/11/29 探査機はやぶさ、イトカワから岩石採取
 探査機はやぶさが、小惑星イトカワから岩石採取に成功した。11月26日午前8時40分ごろ、「岩石採取のためのプログラムが正常に終了」と表示した。すると、スタッフやメーカーの担当者ら約50人から「やった」と声が上がり笑顔が広がったとのことである。おめでとう。
 もっともっと報道されてよい日本らしい科学的ニュースだと思う。そしてもっと、開発を担当した研究者の声を私たちに知らせてほしい。

 ただ、今までと少し違うのは宇宙航空研究開発機構(JAXA)がホームページでその成果と興奮を伝えていることである。例えば的川対外協力室長の下記のページからは成功の興奮が伝わってくる。
http://www.isas.jaxa.jp/j/snews/2005/1128.shtml (「はやぶさ」のいちばん長い日)
 探査機はやぶさ運用室からのブログの中の栄養ドリンクが写った写真もいい。できれば人をもっと入れて撮影してほしいが。
http://www.isas.jaxa.jp/home/hayabusa-live/

 そして、小惑星イトカワの素顔に迫る-「はやぶさ」科学的観測の成果-で全容を知ることができる。
http://www.jaxa.jp/news_topics/column/special-4/index_j.html

 科学の進歩は、人を抜きにしては語れない。にもかかわらず、科学的原理だけを示すような「客観的」、「冷静」なニュースが多い。もっと熱いニュースにならないものだろうか。
 探索機はやぶさの着陸前のスタッフの腕組みをしたり歩き回るなど落ち着かない様子や、成功後のピースサインを絵として伝えてほしい。こうした絵は、子供たちに科学のおもしろさを伝える最良の情報である。大人たちが真剣に研究、技術開発を行い、その成果に喜ぶ姿は子供たちに強い印象を残すだろう。


2005/11/28 コラムが沢山更新
 今日は、昨日に続いて小春日和のよい天気であった。アメリカでは、このような天気を「インディアンサマー」、ドイツでは「おばぁちゃんの夏」、ロシアでは「女の夏」、イギリスでは「聖ルカ祭りの夏」というのだそうである。欧米の夏は「快適な陽気」なのでそう呼ぶらしい。
 今日は沢山のコラムが一度に更新された。更新が待たれていた「スロー風土抄」、そして「家庭菜園の果樹」、「今日の川柳」。また、看板の「果物&健康NEWS」である。

追加情報:日本経済新聞夕刊(11/28 8面)に、先日、三越劇場で行われたパネルディスカッションなどの記事が掲載される。


2005/11/27
 青森市は雪ではなかったが、25日の夜は雨が降った。午前の講義には約70人の学生が、午後のセミナーには約100人が参加してくれた。午後のセミナーでは、質問も多く、時間が足りないくらいであった。少しでもリンゴの消費拡大に役立つことを期待している。セミナーの後に、リンゴの新しい品種や新しいリンゴの加工品の試食もあった。また、ラ・プラス青い森は、快適なホテルで朝食も美味しいうえに宿泊代も安い。お勧めできるホテルである。


2005/11/24 次回更新は27日を予定
 今日はこれから東北新幹線で青森市に行く。予報によると今日は雨で、明日は雪、帰る日は雨とのことである。最高気温が8℃前後とのことなので今年はじめてコートを着ていく。
 明日は、9:30-11:00に青森中央短期大学の学生に対して講義。そして、午後1:30-3:00にラ・プラス青い森で保健師、栄養士、給食関係者、幼稚園教諭、一般を対象としたりんごで健康づくりセミナーで講演する。準備はほぼできているが、今日の夜、宿で最終チェックをする予定にしている。
 そのため、本欄の次回更新は日曜日27日になる予定。


2005/11/24 レーザーを使う遺伝子治療法の開発
 レーザーを使う新しいドラッグデリバリーシステムを東京大のグループが開発した。遺伝子を中に閉じこめた微小粒子(高分子でできた粒)を作り、この微粒子を標的細胞に取り込ませたあとで赤色レーザーを当てると、高分子が反応して微粒子に含まれていた遺伝子が標的細胞内へ放出される。
 この方法で、ネズミの目の結膜に遺伝子を送り込み、レーザーを当てたところ、標的細胞の中で遺伝子が働くことを確認した。
 研究者らは、血管に光ファイバーを通せば、体の中でもレーザーを当てられるので、目の病気のほか、体内のがんなどの遺伝子治療にも利用できるとしている。

【文献】
Nishiyama, N., et al.: Light-induced gene transfer from packaged DNA enveloped in a dendrimeric photosensitizer. Nature Material, online 20 Nov. 2005 [doi:10.1038/nmat1524]


2005/11/23 衰退の前兆?
 風もなく静かな祭日である。すっと伸びたすすきの穂と赤や黄色に色づいた木々がひっそりとした晩秋を作り上げている。セイタカワダチソウが枯れ、くすんだ黄土色に変色しているのでほとんど目立たず、すすきの立ち姿が自然と目に入ってくる。朱色から橙色の果実をつける柿も日本の情景である。
 組織や企業が衰退するときには前兆があるそうである。まず最初に、トップが現実よりこうあるはずだという理念を優先するようになり、ミクロな現場の話よりマクロな話を好み、現場の直接情報より整理された間接情報を重視すると危ないとのことである。また、現場より企画部門のほうが上位という雰囲気があり、内部資料作りに割かれる時間が多いと破綻するという。なるほどと納得がいくし、これじゃぁ衰退するだろうと思う。そして何故かフラット制の提案過程を見るとすべて当てはまっているように思えてしまうのだが。


2005/11/23 高脂肪食摂取による動脈閉塞誘発のメカニズムの解明
 高脂肪食を摂取するとなぜ悪玉LDL-コレステロールが増え、動脈閉塞が起きるのかよく分かっていなかったが、ハーバード大学の研究グループが、高脂肪食に含まれている飽和脂肪酸から動脈閉塞の原因となるLDL-コレステロールに変換する分子スイッチを発見した発表した。
 この分子は、肝代謝に関与するPGC-1β(ベータ)で、食物に含まれる飽和脂肪酸が肝臓に達すると、PGC-1βが活性化して生化学反応が開始し肝細胞から動脈を閉塞させるLDL-コレステロールが産生する。
 以上のことから、食事から摂取した飽和脂肪が動脈閉塞を誘発するメカニズムが明らかになったとしている。また、研究者らによると、この発見は自然淘汰の一つの例を示しており、従来ヒトには害でなかったPGC-1βが、寿命が延びたために有害となったのではないかとしている。

【文献】
Lin, J., et al: Hyperlipidemic Effects of Dietary Saturated Fats Mediated through PGC-1β Coactivation of SREBP. Cell 120: 261-273. (2005)


2005/11/22 求心力・魅力があるのかしらん
 リンゴが美味しい。毎日、リンゴ「ふじ」を1個丸ごと食べている。11月22日は長野県リンゴの日だという。長野県の代表的な品種は「ふじ」で、この時期が最盛期であることと11.22が「いいふじ」と読めることから制定されたという。ちなみに青森県は11月5日である。こちらは「いいリンゴの日」と語呂を合せている。
 フラットな組織にするという。フラットな組織にした場合、現場を熟知しているマネージメント層を中抜きするため分権化が進む。従って研究管理者に人を引きつける求心力・魅力が必要となる。組織をフラットにした代表的な企業はソニーであるが、あの井出伸之氏でさえ、「私は、ソニーを作った井深大氏や盛田昭夫氏のようにはいかなかった。求心力の確保が難しかった」と述べている(朝日新聞05/10/16)。ソニーの経営不振の原因は分からないが、組織のフラット化も関係しているのではないか。今回フラット化を提案している研究管理者にその力・魅力があるのかしらん。とんでもないことになりゃぁしないか。


2005/11/22 朝の光で体内時計を調整
 朝の光で全身の体内時計が調整される仕組みを、神戸大大学院のグループがマウスの実験で突き止めた。目で光を受けると、副腎に情報が伝わり、細胞を活性化するステロイドホルモンが分泌されるという。
 人やマウスの体には24時間周期の活動のリズムがあり、ホルモン量や体温などが変化する。このリズムをつくる体内時計が狂うと、睡眠障害や活動意欲の低下などの症状が表れ、ひどくなるとうつになる。通常は朝に光を浴び、体内時計と実際の時間のずれを修正しているが、全身に“朝”という情報がどのように伝わるかは不明だった。
 研究者らは、ステロイドホルモンの一種の副腎皮質ホルモンが24時間周期で増減することに着目し、マウスに30分間光を当てたところ、このホルモンの量が約3倍に増えた。一方、体内時計の本体とされる脳の一部と副腎を結ぶ神経を切ると、光を当てても量は変わらず、光を受けると副腎皮質ホルモンが出て、全身の体内時計が修正されると結論づけた。
【文献】
Ishida A, et al.:Light activates the adrenal gland: Timing of gene expression and glucocorticoid release. Cell Metab. 2: 297-307. (2005)


2005/11/21 意志形成への参加が不可欠
 朝夕がとても寒くなった。天気予報によると例年より寒いそうだ。研究用に栽培しているブルーベリーの葉が真っ赤に色づき華やかである。今日の電話で青森市では雪が降っているとのことであった。24-26日に青森市のラ・プラス青い森で「リンゴの機能性について」講演する予定であるが、寒さに対する準備をしていかなくてはと考えている。
 研究所の組織改変が提案されたが問題点が多い。その一つは、議論を重ねて意志を形成するという長い研究所の歴史を無視し、意志形成過程を秘密裏に行ったことだろう。研究環境をよりよくするための組織再編などでは意志形成への参加が不可欠である。研究者個々人の意志が無視された組織では自分の頭で考えるという作業が放棄される。そうなるとやがて、研究所に対する帰属意識が失われ、研究所は弱体化し、システムは崩壊していくだろう。


2005/11/21 ガンのリスク因子
 2001年、世界ではガンにより700万人が死亡している。このうち、避けることのできる9つの危険因子での死者数は2,430,000人で全体の35%であった。どの国も、喫煙、アルコール、低い果物と野菜がガンによる死亡のリスクであったが、高所得国ではこのほかに、太り過ぎ、肥満がリスク因子であった。

【文献】
Danaei, G., et al.:Causes of cancer in the world: comparative risk assessment of nine behavioural and environmental risk factors. Lancet, 366: 1784-1793. [DOI:10.1016/S0140-6736(05)67725-2] (2005)

2005/11/20 東京国際女子マラソン
 東京国際女子マラソンで高橋尚子が優勝した。優勝インタビューがよかった。「一度は陸上をやめようと思ったが、ここに帰ってきて良かったと思った、楽しい42キロだった」と語った。2年間の苦労が忍ばれた。小出監督が笑顔で右手の握り拳を何度も上げていたのが印象的である。北京オリンピックまでにはまだ3年以上あるので、そこで活躍できるかどうか分からないが今日の優勝はそれとは関係なくすばらしい。感動を与えたという意味ではシドニーオリンピック優勝より上ではないかと思う。
 外は穏やかな天気であった。信号機のある交差点をいつもなら直進するのだが、今日は右に曲がってみた。少し行くと柿の実がたわわに生っていた。柿の実を見ると晩秋を思う。


2005/11/20 老いは鋭敏な精神の障壁ではない
 老いるということは鋭敏な精神の障害ではないが、たぶん若いときの記憶方法と異なっているのではないかとジョーンズ・ホプキンス大学の科学者ら示唆している。
 研究者らは、老いたラットと、若いラットを用いて実験を行った結果、老いたラットは、若いラットと異なった方法でものを覚えていることを発見した。もしこのことが人にも当てはまるのであれば、加齢に従って失われる記憶の喪失を予防することができるかもかもしれないと研究者らは述べている。
 実験では、様々なテストに対して鋭敏に反応する2歳の老いたネズミと、新しいことを学ぶ力の衰えた老いたネズミ、6カ月の若いネズミの脳を比較した。
 記憶など情報伝達に関与するシナプス接合部に研究者らは注目して研究を行った。神経細胞の間には微細な隙間があり、この間を神経伝達物質が移動し、脳へ情報を登録・保存し記憶を形成する。
 新しいことを学ぶ力の弱い老いたラットは、シナプス接合部の連絡・調整する能力が失われていた。一方、鋭敏な老いたラットは若いラットと比較してシナプス接合部は少なかったが、シナプス接合部の連絡・調整能力は維持されていることから、情報の通りやすさを示す長期増強(long-term potentiation)は年齢とは独立していることが分かった。
 以上のことから、鋭敏なラットは、加齢によってシナプスは減少していくが、記憶・学習などと関係する能力は高いことが分かった。

【文献】
Lee, H-K., et al.: NMDA receptor-independent long-term depression correlates with successful aging in rats. Nature Neuroscience, online 13 Nov. 2005; [doi:10.1038/nn1586] (2005)


2005/11/19 取材はきちんと
 少し早い昼食をとり家を出ようとドアを押すが開かなかった。強い風に押されていつもの力ではドアが開かなかった。向かい風だと自転車がなかなか進まない。特に、筑波山から吹く風がまともに当たる両側が田んぼのところはペダルをこぐのがきつい。
 お昼の健康番組でりんごを取り上げてくれた(りんごパワーを発揮させるひと工夫と食べ方:2005年11月15日火曜日放送)。その中で、私たちの研究を2つ紹介してもらったが、りんごでビタミンC が増えるとした説明の一部に誤りがあったので訂正を申し入れたら、ビタミンCに関する部分(ポイント4)すべてが削除された。誤解を受けると困るのでここで間違っている部分について書いておきたい。りんごを食べるとビタミンCが増えたのは間違いない実験データであるが、その理由を、番組のフリップではリンゴペクチンによって増えるとしているがこの部分は確認されていないので削除をお願いした。ところが、このフリップすべて削除されてしまった。このことから実験そのものが誤りであると誤解しないでもらいたい。りんごを食べるとビタミンCが増えるのは、りんごにはビタミンCの吸収を助ける成分が含まれているためであると考えている。
 りんごを番組で紹介してもらえるのは消費拡大に有効なので協力したいが取材はなかった。少しでも私たちに取材してもらえればこうした間違いは起きなかったのではないかと思う。


2005/11/18 北風と太陽
 今日も良く晴れ渡った日である。通勤に自転車を使っているが、おおざっぱな方向で言えば南から北へ向かって走る。昨日と同じで寒い。でも20分ほど走ると日に当たった背中が暖かくなっているのを感じる。「北風と太陽」を思い出す。
 研究には競争はつきものである。だから競争させると考えているとしたら研究を知らない人だろう。研究には競争も大事だが、協調も大事なのである。研究競争だけを強調すると自分の業績を守るために他人には情報を教えない秘密主義が横行するようになると科学の歴史は教えている。しかし、秘密主義ではたいした成果にはならず研究は行き詰まることも歴史的に明らかになっている。そのため、研究者は、学会などで最先端の情報を公開してディスカッションし、研究を深めたり、領域を広げたりしている。それに加えて研究を発展させるために大事なのは、研究に直接関わっている人も、関わってない人も「全員で研究している」という一体感である。
 どうも、最近の研究管理者は、北風ばかりを考えているようである。当たり前のように毎日、日が差しているので「人には太陽が必要」なことを忘れているようだ。


2005/11/18 インスリン欠乏とアルツハイマー病
 アルツハイマー病の発生機序の解明と治療法の開発について、アメリカ・ブラウン大学のMonteらは、インスリンが膵臓だけではなく脳内でも産生され、アルツハイマー病患者では脳内のインスリン産生能が障害されていると発表した。
 ラットを用いた実験で脳のいくつかの領域でインスリンが産生されているのを発見、またインスリンの産生低下による脳神経細胞の機能低下を認めた。さらにアルツハイマー病で死亡した患者の脳組織を検討した結果、インスリン産生量の著しい低下と、インスリン受容体の減少を発見した。
 Monteらは、インスリンは脳細胞機能の維持にきわめて重要であり、不足するかインスリン応答性が低下すると、ニューロンの機能が阻害されてニューロン死を引き起こすと述べている。
 そのため、脳内インスリンの代替物質の投与や、インスリン受容体の再活性化によるアルツハイマー病の治療法につながるとしている。

【文献】
Steen, E., et al.: Impaired insulin and insulin-like growth factor expression and signaling mechanisms in Alzheimer’s disease---is this type 3 diabetes? J. Alzheimer's Disease. 7: 63-80. (2005)


2005/11/17 西の白い月と東の黄色い月
 朝、西の雨戸を開けたら真正面に白い丸い月があった。ちょうどその時、近くの寺でならす鐘がなった。ちょっとした予期しない出来事に心でほくそ笑んだ。雲ひとつない日であったが寒かった。
 今週のメールマガジン「果物&健康NEWS」を書き終えた。特集は、老化を防ぐホルモン「クロトー」の発見である。黒尾誠氏が発見したことと、科学雑誌JBCの最新号で発表された老化予防のメカニズムが、食生活改善による生活習慣病予防のメカニズムと結びついたので取り上げた。
 日本農業新聞を見ていたらミカンの価格が低迷していると出ていた。ミカンを今まで以上に、少しでも多く食べてもらいたいと思う。そのため、メルマガの来週号ではミカンの健康効果について紹介したいと考えている。
 夕方、外に出てみたら東の空に大きな黄色い月が出ていた。天体の普通の動きなのだろうが不思議を感じた。


2005/11/17 不適切な食事で毎年60億ポンドの損失:イギリス
 イギリス政府は、不適切な食事のために医療費を毎年60億ポンド余分に支出していると、食生活に起因している病気と費用との関係を調査した研究から明らかになった。
 世界保健機構が収集したデータを用いて、食習慣と関係する心血管疾患、ガン、糖尿病について調査したところ、これらの疾病の37%は不適切な食事に起因していることが分かった。一方、イギリスにおける2002年の心血管疾患、ガン、糖尿病の医療費は180億ポンドであった。そのため、不適切な食習慣による病気のために支出している医療費をおよそ3分の1とすると年に60億ポンド余分に支出していると見込まれた。このコストは、交通事故のコストの二倍、喫煙のコストの3倍以上にあたる。
 食習慣に関連する病気のコストは喫煙のコストより高いことから、食習慣に対する対策を政府の健康施策の目標とする必要があると研究者らは述べている。

【文献】
Rayner, M., et al.: The burden of food related ill health in the UK. J. Epid. Com. Health, 59:1054-1057. [doi:10.1136/jech.2005.036491] (2005)


2005/11/16 「あきらめない」と「まいっか」
 うす絹のような白い雲はあるが空は青く高い。日の光の中にいると暖かく、穏やかな日だったので少し歩いた。研究で凄い力を発揮するのは「あきらめない」気持ちだろうと思う。もうちょっと詰めたらもっとよくなると、どこまでもしぶとく最善尽くすことだろう。「まいっか」と途中でやめてしまっては研究はそれなりになってしまうと感じている。


2005/11/16 台湾、果実の輸入禁止へ
 台湾政府が来年2月以降、モモシンクイガが発生している日本、中国、北朝鮮、韓国、ロシアから、果実など10品目の輸入を禁止すると公示したと農林水産省が発表した。農林水産省は、日本から輸出実績のあるリンゴや梨、桃など6品目の輸出が継続できるよう、必要な検疫条件などを調整している。
 台湾が輸入禁止をするのはリンゴや梨のほか、桃、ニホンスモモ、セイヨウスモモ、アンズ、ナツメなど。

農林水産省のプレスリリースは下記のサイトで読める。
http://www.maff.go.jp/www/press/cont2/20051114press_3.html


2005/11/15 Stay Hungry,Stay Foolish
 朝、小雨が降っていたのでカッパを着て家を出た。カッパの色は白ぽいグレーだが、この色を選んだのには理由がある。雨の夜、黒っぽい色で自転車に乗るのは危険なためだ。通勤途中で雨はあがった。
 アップルコンピュータのS・ジョブスがスタンフォード大学で行ったスピーチが話題となっている。「Stay Hungry,Stay Foolish」。なかなか含蓄のある言葉である。勉強して、賢くなるだけではだめで、自分が描いた夢に向かってコツコツとやろうという意味なのだろう。そうすれば、人生が楽しくなるし、納得できる。


2005/11/15 レスベラトロールでアルツハイマー病予防
 いくつかの細胞培養系でを用いて実験を行った結果、ブドウなどに含まれているレスベラトロールが、アルツハイマー病を引き起こすと考えられているβ-アミロイドペプチドの分解を促進し、結果として脳内のβ-アミロイドペプチドのレベルを下げることが分かった。

【文献】
Marambaud, P., et al.: Resveratrol promotes clearance of Alzheimer's disease amyloid-beta peptides. J. Biol. Chem. 280: 37377-82. (2005)


2005/11/14 佐藤優氏の文章は一級品
 雲が低いためか、研究所の隣りを走る国道408号線の車の音が聞こえる。夜になると風が出てきた。寒くなった。よながに雑誌「世界」(11月号)に掲載された佐藤優氏の文章を読んだが一級品である。論理的で、読みやすく、理解が容易である。恐らく、その才能に嫉妬した官僚が沢山いただろうと推される。「政策を国民に納得させるために、職業としてワイドショウのコメンテーターが生まれてきた」との指摘は正鵠を得ていると思う。


2005/11/14 休暇をとる女性は結婚に満足しており、精神状態もよい
 アメリカ・ウィスコンシン州で行われた研究によると、1年に2回以上休暇を取った女性は、2年間で一度以下しか休暇をとらなかった女性と比較して、うつ病、精神的緊張感が低いことが分かった。さらに、休暇の頻度が高くなるに従って、結婚への満足が高くなることも見いだされた。
 以上のことから、研究者らは、休暇を取ることは個人の精神状態の改善され、生活の質が向上することから仕事の能率が高くなるだろうとしている。

【文献】
Cbikani, V., et al.: Vacations Improve Mental Health Among Rural Women: The Wisconsin Rural Women’s Health Study view article. Wisconshin Med. J. 104: 20-23. (2005)


2005/11/13 必要なのは数字じゃない
 昨日ほどすっきりしていないが、今日も晴れ。少し雲が多い。ピーー、ピーと鳥が鳴いているが、先月までのように他の鳥と鳴き声が重なることはない。虫の鳴く声も聞こえない。風もないので静かである。
 最近は数字がすべてのように語られているが本当だろうか。例えば、スポーツ選手の年俸。例えば、研究者の論文数、受賞数などなど。
 スポーツ選手は金のために試合に出ているのだろうか。研究者は、金のために夜を徹して実験をしているのだろうか。そうではなく、自分の運命を切り開きたいと考えているのではないだろうか。
 資本の都合で介入するとき、その根拠に数字が使われる。しかしこれは、愚かな行為である。例えば、大金をつぎ込んだチームが無様な負け方をしている一方で、チームワークの良い貧乏チームが日本一になったりする。
 スポーツ選手や研究者は、そのチーム、その研究所の未来の姿、ビジョンを見ている。だから、年俸や論文数で介入しても一生懸命にはならない。むしろそれなりになってしまうだろう。人間は感情の生き物であり、スポーツや研究などは人間がやるものだということを、どこかで忘れてしまっているように感じている。


2005/11/13 禁煙をもたらすニコチンワクチン
 アメリカ・ボルチモアで開かれた米国がん学会(American Association for Cancer Research: AACR)の招待講演で、NicVAX(nicotime vaccine)と呼ばれるニコチンワクチンの安全性および有効性を強く裏づける成績が報告された。
 アメリカ・米ミネソタ大学のHatsukami教授は、NicVAXは臨床試験に移行するのに十分な効果を発揮しており、われわれの研究だけではなく、他の研究でもそのことが確認されていると述べた。
 ニコチンワクチンは、体内の免疫系を刺激して抗体を産生させ、ニコチン分子に接着する。動物での研究では、抗体が接着したニコチンは分子量が大きくなり血液・脳関門を通過することができないため、ニコチンが脳内に送達するまでの時間が延長し、脳内に達する量も低下することが明らかになった。
 喫煙者68例を用量が異なるワクチン投与群およびプラセボ(偽薬)投与群に無作為に割り付けて評価した結果、ワクチン被験者の38%が30日間の禁煙に成功した。ワクチンの用量が高いほど抗体の反応は良好であり、 30日間禁煙率は最高用量投与群が最も高かった。
 副作用として一部の被験者に、関節痛および圧痛、頭痛、疲労感、筋肉痛が報告されたが、そのほとんどが数日で改善をみた。ワクチン投与群とプラセボ投与群との間に、離脱症状発症の差は認められなかった。
 Hatsukami教授は「禁煙を補助するという点では、有力なワクチンであると思われる」との見解を示しているが、ワクチンの有効性がどのくらい継続するか、追加投与の必要性、喫煙習慣が復活する可能性など、まだ、いくつかの課題が残されているという。

【文献】
Hatsukami, D.K., et al.: Nicotine immunization is a novel treatment that targets the drug. Frontiers in Cancer Prevention Research. Oct. 30-Nov. 2, 2005. Baltimore, MD. U.S.A. Abstracts p205-206. (2005)


2005/11/12 コツコツと
 雨が上がり、青空となった。少し冷たいが爽やかな風が吹いている。葉が黄色く変わった研究所の周りに植えられた木々がサァ-サァ-と揺れている。ひと気のない部屋に、コツコツとしかできない自分がいる。目先の数字や派手さにとらわれずコツコツと努力を積み上げていけば、たまにはいいこともあるだろうと考えている。


2005/11/12 古代ワニの化石発見
 肉食恐竜を思わせるずんぐり型の頭と大きな歯を持つ珍しい古代ワニの一種が、ほぼ完全な頭骨と下あごの化石が、アルゼンチンの約1億4000万年前の地層で見つかったと科学雑誌サイエンスが伝えている。はるか昔に多様な形態のワニ類が栄えたことを示す証拠という。
 ダコサウルス・アンジニエンシス(Dakosaurus andiniensis )と呼ばれる絶滅した水生のワニの一種で、これまではわずかな化石しか見つかっていなかった。
 頭骨は長さ約80cm、歯は大きいもので約10cmもあり、全身は4m近くあったと推定される。現在のワニの頭部は、長い口に歯がぎっしりと生え、小魚を捕まえるのに適した構造をしているという。

頭部の化石は下記のサイトで見られる。
http://www.sciencemag.org/sciencexpress/recent.shtml

【文献】
Gasparini, Z. et al.: An Unusual Marine Crocodyliform from the Jurassic-Cretaceous Boundary of Patagonia. Science, online November [doi: 10 2005; 10.1126/science.1120803]


2005/11/11 冬の到来
 朝は霧で明けた。通勤途中にある川の周辺は濃い霧に包まれており、自転車の先がほとんど見えなかった。北海道に続いて東北地方でも初雪があったとの便りがあったが、いよいよ冬の到来である。冬は嫌いではない。関東地方では晴れの日が多いためだからかも知れない。静寂で、月明かりに照らされた冬の夜道も好きな情景である。


2005/11/11  うがいで風邪が4割減
 水でうがいすると、しない場合に比べ風邪になるのを4割近く抑える効果があるとの調査結果を京都大の川村孝教授らが発表した。世界で初の無作為化試験とのこと。水道水に含まれる微量の塩素の殺菌効果や、口をすすぎ病原体を吐き出した可能性が考えられるという。一方、ヨード液を使ったうがい薬には、予防効果は確認できなかった。
 川村教授らは、18-65歳の男女計387人に実験に参加してもらい、(1)1日3回以上水うがいをする、(2)1日3回以上薬を使ってうがいする、(3)うがいしない、の3グループに分けて2003年12月から2004年3月にかけ、1人について2カ月追跡調査。
 その結果、1カ月に100人のうち何人が風邪になったかに換算すると、それぞれ17.0人、23.6人、26.4人だった。統計処理を行った結果、水うがいをした場合の発症確率はうがいをしない場合に比べて40%低下したが、ヨード液うがいでは12%の低下にとどまり、統計学的に有意ではなかった。

下記の京都大学・保健管理センターのサイトで概略が読める。
http://www.kyoto-u.ac.jp/health/006.htm

【文献】
Satomura, K., et al.: Prevention of Upper Respiratory Tract Infections by Gargling: A Randomized Trial. Amer. J. Prevent. Med. 29: 302-307. (2005)


2005/11/10 老化制御タンパク質クロトーは活性酵素を減少させる
 黒尾誠(アメリカ・テキサス大学助教授)らが発見したクロトー(Klotho)は老化抑制ホルモンである。生命の糸を紡ぐギリシャ神話の女神の名前に因んで名付けられたクロトータンパク質をネズミに過剰に発現させると寿命が延びたことは本欄でも紹介した。
 今回、培養細胞とクロトー遺伝子を導入マウスの両方を用いて、クロトーが酸化的障害を防止することが見いだされた。
 DNAや脂肪、タンパク質などが酸化を受けると細胞の機能が劣化し、老化すると考えられている。そのため、酸化を誘導する活性酸素の過剰生産を防ぐことにより老化は抑制できると考えられる。
 クロトータンパク質は、マンガン・スーパーオキシド・ジスムターゼの発現を誘導するFoxOと呼ばれる転写因子を活性化することが今回発見された。マンガン・スーパーオキシド・ジスムターゼは、活性酸素であるスーパーオキシド・ラジカルを、それほど有害ではない過酸化水素(H2O2)に変換する酵素で、フリーラジカルの過剰生産による酸化ストレスの増加を防ぐ作用がある。
 この結果は、クロトーが老化を抑制し、寿命を延ばすとする理論を裏付ける新しい証拠である。

【文献】
Yamamoto, M., et al.: Regulation of Oxidative Stress by the Anti-aging Hormone Klotho. J. Biol. Chem. 280: 38029-38034. (2005) [doi: 10.1074/jbc.M509039200]

▽ クロトーが老化を制御していると考えられる証拠が次々と出てきている。今回の発見で、従来の活性酸素が老化の要因とする説をも説明できる。このまま行けば、ノーベル賞も期待できる。


2005/11/09 ボランティア試験
 今日はボランティア試験の血液採取日で朝からどたばたしていた。つくば市の松代にある「さとうクリニック」の佐藤宏一先生に血液の採取をお願いしているが本当にありがたい。あと2回、血液採取があるが、その結果が果物を食べると健康によいことを示す証拠となることを期待している。
 朝から天気が良かった。夜になって研究棟の屋上に上ってみた。ひんやりとした空気と静かな雲ひとつない夜空が広がっていた。ひときわ輝いている星は火星だろうか。地球に大接近中という。


2005/11/09 マウスのオスの求愛行動
 オスのマウスは、メスに反応してラブソングを歌っているとアメリカ・ワシントン大の研究チームが発表した。人間の耳では聞き取れない高周波の音声を低くして再生したところ、一定のパターンがあることが分かった。
 これまでの研究で、オスのマウスが高周波の音を出すことは広く知られてたが、その詳細は明らかになっていなかった。そこで、この音声を分析したところ、小鳥によく似た「歌声」になっているとの結論に達した。
 研究チームは、メスが放出する化学物質にオスの脳がどう反応するかを研究していた。最初、オスが発する音声をコンピューター上で画像に変換したがよく分からなかった。そこで、この音声をテープに録音し、4オクターブ下げて再生してみたところ、単なる音の羅列ではなく、(1)音節がはっきり分かれている(2)同じパターンが繰り返し現れるなど、歌としての要件を満たしていることが明らかになった。
 この発見は、研究者にとっても予想外の結果で、「驚き、喜んでいる」とのこと。

【文献】
Holy TE, Guo Z (2005) Ultrasonic Songs of Male Mice. PLoS Biol 3(12): e386 [DOI: 10.1371/journal.pbio.0030386]


2005/11/08 反復動作が疲労感、抑うつ症状の引き金に
 同じ動作を長時間繰り返すと神経から放出されるたんぱく質が、疲労感や抑うつ症状を引き起こすことが、アメリカ・テンプル大での研究で明らかになった。
 マウスに前脚の関節を使った反復作業をさせ続けると、約3週間後から、負担のかかっている神経細胞が「サイトカイン」と呼ばれるたんぱく質を大量に放出する。この時点で関節部分に痛みはないとみられるが、マウスは次第に作業の手を抜き始める。血中のサイトカインの一部が脳へ回り、けん怠感などを引き起こしているためと推定している。5-8週間たつと、細胞が作り出すサイトカインの量はピークに達し、マウスは作業の合間に横たわったり、眠ったりするようになる。

 同様の現象は人間の体内でも起こり得るとしている。反復作業を続けているうちに、「どことなく体調が悪い」、「仕事の能率が上がらない」、「憂うつな気分になる」などの症状が現れる可能性があるという。研究チームは「サイトカインが体を守るための合図を発しているととらえるべきで、けん怠感などの症状により、神経の損傷がそれ以上悪化しないよう、休養が必要だと訴えているのだ」と説明している。

【文献】
Al-Shattia, T., et al.: Increase in inflammatory cytokines in median nerves in a rat model of repetitive motion injury. J. Neuroimmunology, 167: 13-22. (2005) [doi: 10.1016/j.jneuroim.2005.06.013]


2005/11/08 リンゴはそのままでも美味しいが料理にも合う
 「若鶏とリンゴのシードル煮込み」、「ホタテ貝とリンゴのキッシュ」の作り方を毎日新聞が載せている(05/11/4)。魚料理を引き立たせるドレッシング「赤いリンゴのビネグレットソース」もチャンスがあれば挑戦したい。
記事は下記のサイトで読める。
http://www.mainichi-msn.co.jp/kurashi/shoku/news/
20051104ddm013100107000c.html



2005/11/07  一緒に食事が大切とする母親の子供は肥満が少ない
 3795人の子供たちを調べた結果、母親が、子供と一緒に食べることが大切であると考えている母親の子供には肥満が少ないとオーストラリアの研究者が発表した。 78%の母親は1日に1回は家族と食事をしていると回答したが、43%の母親は、子供と一緒に食べることが重要であると思っていなかった。食事を一緒に食べることが重要ではないと思っている家族の子供は、肥満になるリスクが27%高いことが分かった。
 一方、何回一緒に食べたかとの間には統計的に有意な相関は認められなかった。そのため、家族が一緒に食事することが重要であると思っている母親の子供に肥満が少ないのは、間食せず、健康的な食習慣が身に付くためではないかとしている。

【文献】
Mamun, A.A., et al.: Positive maternal attitude to the family eating together decreases the risk of adolescent overweight. Obesity Research, 13, 1422-1430. (2005)


2005/11/07 柿が旬で美味しい
 若者に柿を食べてもらおうと、新潟県佐渡市の「おけさ柿」の応援歌ができたと日本農業新聞が伝えている(05/11/04)。女の子2人組の「カキCHU(かきっちゅ)」が歌っている。「カキクケカキクケ(柿食うけ)おけさ柿」とアップテンポの曲だそうである。
 島根県特産の西条柿を使った「あんぽ柿」の加工が最盛期で(05/10/27)、鹿児島県さつま町では温泉の湯を利用した柿の“あおし(脱渋)”が始まったとのこと(05/10/30)。また、毎日新聞(05/11/04)では食卓の一品として「柿とカブのサラダ」を紹介している。柿の美味しい季節である。


2005/11/06 仕事上のストレスは心血管疾患の危険性を高める
 仕事上のストレスが、動脈の炎症度を高め心臓発作などに結びつきやすいことが、ベルギー・ゲント大の研究から明らかになった。
 男性の労働者892人を対象にアンケートによる仕事の心理的ストレスなどを評価するとともに、ストレスを現すバイオマーカーとして、血漿フィブリノゲン、C反応性蛋白質、血清アミロイドA蛋白質の値を比較検討した。
 その結果、仕事上のストレスを感じている男性は、心臓発作など心血管疾患に関与する血液凝固因子の血漿フィブリノゲン値が高値を示すことがわかった。しかし、C反応性蛋白質や血清アミロイドA蛋白質と仕事によるストレスとの間に関連は認められず、また年齢、学歴、職種、肥満指数(BMI)、喫煙の有無などの条件による差は認められなかった。

【文献】Clays. E., et al.: Associations between dimensions of job stress and biomarkers of inflammation and infection. J. Occup. Environ. Med. 47: 878-883. (2005)


2005/11/05 果物、野菜、木の実、種子だけではダメ
 「常識破りの超健康革命」(松田麻美子)では、「果物、野菜、木の実、種子だけ」で十分としている。いやいや、本書の内容からすればこれだけにすべきだと述べている。
 言い換えると、動物性食品を一切口にせず、植物性食品だけにすべきであるとしている。ところがこれは、科学的には大間違いで、危険ですらある。
 こうした動物由来の食品を全く食べない人は、ビタミンB12の欠乏症にかかりやすい。また、カルシウム、鉄、亜鉛の摂取量も低くいだけでなく、タンパク質や多くの微量栄養素に欠けている。
 そのため、大人でも問題であるが、子供の成長には特に危険で、ニュージーランドで痛ましい事件が起きた。肉や魚、乳製品を一切食べないことに徹底した夫婦に男児が誕生したが、植物性食品だけの食事によりビタミンB12が欠乏し、男児は衰弱死した。両親は1度は子供を入院させたがすぐ連れ帰り、医師の指示に背いて死に至らしめたとして遺棄罪に問われている。
 植物性食品だけの食事法と病院を否定する松田麻美子の主張と同じことを実践した結果である。


2005/11/05 女性ホルモンのレベルが高いと魅力的?
 イギリス・アンドリュース大学の研究チームは、女性ホルモンの高い女性はより魅力的に感じられるとイギリス王立協会誌に発表した。研究者らは、59人の女性について18歳と25歳のときに写真をとるとともに女性ホルモン(oestrone-3-glucuronide(E1G), pregnanediol-3-glucuronide(P3G))の量を分析した。30人のボランティア(15人の男性の女性と15女性)より魅力的な方の写真を選択する方法により評価した。その結果、女性ホルモンの量は女らしさや魅力、健康的などの項目と正の相関が認められた。しかし、お化粧をすると女性ホルモンの量と女らしさや魅力などとの相関は認められなくなった。

下記で両者の写真を見ることができる。上の写真が女性ホルモンが多いとき。
http://www.pubs.royalsoc.ac.uk/proceedingsb.shtml

【文献】
Smith., M.J.L., et al.: Facial appearance is a cue to oestrogen levels in women. Proc. R. Soc. Lond. B. Biol. Sci. [DOI: 10.1098/rspb.2005.3296] (2005)


2005/11/04 「朝食に果物を」と「朝食に果物だけ」は大違い
 「常識破りの超健康革命」(松田麻美子)では、『「バランスのとれた食事」をとらないようにすること-「バランスのとれた食事」をとっていると病気になる!』そうである。そのため、「朝食に果物だけ」摂取する必要があるそうだ。どこまで現代医学・科学を否定すれば気が済むのか。
 私たちの「朝食に果物を」の前提は、バランスの良い食生活である。現在、日本人の果物の摂取量が不足している。そのため、バランスの良い食生活になるように不足している果物や牛乳、ご飯などを食べる必要がある。「朝食に果物を」の科学データについては、果物&健康NEWS第77,78回を参照されたい。
 以上のように、「朝食に果物を」と「朝食に果物だけ」は大違いなのである。両者とも、朝に果物を勧めているが思想的には正反対である。松田らは現代医学・科学を否定、私たちは現代医学・科学を肯定している。


2005/11/03 子の寿命は父親の遺伝子次第か?
 寿命の長さと関係すると考えられている染色体の末端部のテロメアの長さは、父親から子に遺伝し、母親からは遺伝しない可能性があるとスウェーデン・ウメオ大の研究チームが発表した。
 人の遺伝情報を担うDNAは、24種類の染色体ごとに折り畳まれ、細胞核に含まれている。この染色体の末端部の「テロメア」の長さは、細胞が分裂を重ねるごとに短くなり、限界まで短くなると細胞が死ぬため、寿命を決める遺伝要因の一つと考えられている。女性が男性に比べて長生きするのは、女性の方がテロメアが短くなりにくいためだと考えられている。
 研究チームは、49家族の計132人について、血液の単球細胞のテロメアの長さを分析した結果、男性の平均テロメア減少率は年間25塩基対、女性は同16塩基対でああることが分かった。
 さらに、父、母、息子、娘の4グループに分け、親子間のテロメア減少率の相関関係を調べると、父と息子や娘との間には統計的に強い関係があったが、母と息子や娘とは関係がなかったとしている。 

【文献】
Nordfjall, K., et al.: Telomere length and heredity: Indications of paternal inheritance. PNAS, (October 28, 2005) [doi. 10.1073/pnas.0501724102]


2005/11/02 医学・科学の進歩を否定する人
 「常識破りの超健康革命」(松田麻美子)では、「病院にはできるだけ行かないようにすること。医者のストライキがあると死亡率が激減する!」とある。まさに、非科学的な書であることを宣言している文章である。医学・科学の進歩が、病気を治し、平均余命を大幅に延ばしたことを否定している。医学・科学の進歩を完全に否定している。非常識の限界をも越えている。


2005/11/01 早期退職者の寿命は短い?
 英医学雑誌に55歳で退職すると、その後10年間に死亡するリスクが65歳で退職した人に比べて有意に高いと報告された。定年前に早期退職し、リラックスした生活を送り、長生きをすると考えられているが、従来通りの刺激のある生活を送ったほうが、寿命は長くなる。1973-2003年に退職した3500人以上を対象に調査したところ、55歳で退職した人では65歳で退職した人よりも死亡率が37%高かった。
 この結果に対して、55歳で退職した人は、退職時に健康上何らかの問題がすでに存在していたためではないかとの指摘がある。一方、退職時に仕事の重要性を過小評価している人が多いとの意見もある。

【文献】
Tsai, S.P, et al.: Age at retirement and long term survival of an industrial population: prospective cohort study. BMJ 331:995 [doi: 10.1136/bmj.38586.448704.E0] (21 Oct 2005)

2005年10月


2005/10/31 褐変しないリンゴの新種
 切っても、すり下ろしても茶色にならない新種のリンゴが青森県りんご試験場で誕生したと毎日新聞が伝えている(05/10/30)。カットフルーツで売りやすく、「むくのが面倒」「1個は多い」と、敬遠していた人にも食べてもらえると期待されている。
 このリンゴは「青り27号」で甘くて香りの良い。リンゴは果肉が空気に触れると、果肉中のポリフェノール類が酸化酵素のポリフェノールオキシターゼ(PPO)によって変色するが、「青り27号」は(PPO)の働きが弱い。


2005/10/30 牛乳に含まれているカゼインは毒ではない
 「常識破りの超健康革命」(松田麻美子)では「牛乳に含まれているカゼインは強力な化学発ガン物質である!」と主張している。冗談ではない。科学的な根拠などまったくない。カゼインは、タンパク質の一種に過ぎず、蛋白質が問題であれば、すべての食品(動物性食品のみならず植物性食品も)が強力な発ガン作用があることになる。もちろん果物にもタンパク質は入っている。
 この本によれば、カゼインは子ウシにとっては自然が与えてくれた完全な健康食品であるが、人にとっては有害だそうである。その理由のいい加減さに驚く。いわく、「地球上で種族の違う動物のミルクを飲んでいるのは人間だけである」、「この地球上に生息する動物たちで生涯「乳離れ」していないのは人間だけである」。内容に虚偽を含みながら、外見上はもっともらしくいみせ、相手を欺く手法の典型である。


2005/10/30 ツタンカーメン王が飲んだワインは「赤」
 黄金のマスクで知られる古代エジプトのツタンカーメン王が飲んでいたワインの色は「赤」だったと、スペイン・バルセロナ大学のGuasch-Janeらの研究グループが突き止めた。大英博物館とカイロのエジプト博物館が保管するつぼに付着していた残留物を調査した結果、白ワインには含まれないアントシアニンの一種であるマルビン由来のシリンガ酸(syringic acid)を検出した。
 ツタンカーメンは、約3300年前の古代エジプト第18王朝の王で、発掘された墓からはこれまでに、ワインが入っていたと見られるつぼが見つかっていた。つぼには銘柄名のほか、収穫年や場所、醸造者について書かれていたが、中に入っていたワインの色は分かっていなかった。

【文献】
Guasch-Jane MR, et al.: Liquid chromatography with mass spectrometry in tandem mode applied for the identification of wine markers in residues from ancient Egyptian vessels. Anal. Chem. 76:1672-1677. (2004)


2005/10/29 「常識破りの超健康革命」は非科学的書2
 この本の著者松田麻美子らのグループは、そのホームページで「正統医学を拒否」すると述べている。従って、どんなに非科学的主張をしても良いのかも知れないがあまりにもひどいのではないか。
 この本が果物摂取を推奨しているからいいんだと考えている人もいるようだが誤っている。現在、果物の消費量は増えておらず、苦しい時期であるが、消費拡大のためには手段を選ばず、何でもありの世界ではないだろう。
 今は苦しくても正統医学に基づく果物と健康に関する情報を伝えていく必要があると考えている。科学的根拠に基づいて1人、1人説得していくのは困難で、回り道のように感じる知れないが、最後には大きな果実を得ることができると思っている。誤った手段で一時的な利益が得られたとしても、その後の損失は極めて大きいだろう。


2005/10/29 ウォーキングとスポーツは日本人の心臓病、脳卒中のリスクを減らす
 筑波大学の野田らの研究から、ウォーキングやスポーツ活動は心疾患の死亡率を減らすことが分かった。40~79歳の日本人男性3万1023人と女性4万2242人について、ワオーキングやスポーツ活動をしている人と虚血性脳卒中と冠動脈性心臓病との関係を調べたところ、1日に1時間以上ウォーキングをしているか1週間に5時間以上スポーツ活動をしている人は、ウォーキング1日に30分以下か1週間に1~2時間スポーツ活動をしている人に比べて心血管疾患の死亡率が低いことが分かった。虚血性脳卒中の死亡率ではウォーキングで29%、スポーツ活動で20%リスクを下げ、冠状動脈性心臓病の死亡率ではウォーキングで16%、スポーツ活動で49%リスクを下げた。

【文献】
Noda, H., et al. (2005) Walking and Sports Participation and Mortality From Coronary Heart Disease and Stroke. J. Am. Coll. Cardiol. 46: 1761-1767.[doi: 10.1016/j.jacc.2005.07.038]


2005/10/28 松田麻美子著「常識破りの超健康革命」は非科学的書
 松田麻美子著「常識破りの超健康革命」(グスコー出版)には、現代の科学常識では考えられないことが記述してあります。果物だけ食べていれば良いとする論理は、一般人に誤解を与え、非常識を超えるどころか、危険ですらあります。この本は問題だらけで、科学的な記述はすべて誤っています(一部ではありません)。

 例えばこうです。
 「バランスのとれた食事」をとらないようにすること-「バランスのとれた食事」をとっていると病気になる!
 牛乳に含まれているカゼインは強力な化学発ガン物質である!
 病院にはできるだけ行かないようにすること。医者がストライキがあると死亡率が激減する!
 朝食はしっかりとらず、果物だけを食べるようにすること
    ――「朝食信仰」を信じるな。朝食はとらないほうがよい

 これらは、科学的に根拠のない主張です。朝食に、著者らが主張する「果物だけ」と、私たちの「朝食に果物を」とは似て非なるものです。


2005/10/28 初めての三越劇場
 昨日、はじめて三越劇場へ行ってきました。エレベーターで6階に上がり、劇場入り口から楽屋に入りました。劇場の楽屋という場所も初めての経験です。6畳ほどで畳が敷かれ、鏡が3面あり、その上には電球が2つずつつけられていました。三越劇場の中は、装飾がヨーロッパ的でクラシックな感じでした。
 セミナーには多くの方にきていただき、1階も2階もほぼ満席のようでした。パネルディスカッションは、司会の樋口さんのおかげで個人的には楽しいひとときを過ごせたと思っています。おいでいただいた方も楽しめたでしょうか。


2005/10/26 明日は講演会
 明日、日本橋三越本店6階で「果物からはじまる健康生活」(日経健康セミナー21)が開催されます。パネラーとして第2部に出ます。天気はどうでしょうか。


2005/10/25 TBSで「リンゴパワーの新常識」
 明日、「はなまるマーケット」(TBS朝8:30~)で「リンゴパワーの新常識」が放映されます。リンゴの健康機能性やチーズとリンゴの関係などについて今泉清保アナウンサーが果樹研究所に取材にこられました。時間のある方は見てください。


2005/10/25 減量したあと体重を維持するには
 バンクーバーで行われた肥満に対する年次大会で、定期的に体重を記録することが減量に成功した人の体重を維持するのに有効であるとブラウン大学のチームが発表した。
 減量できた人のうち1/3が1年目に、2/3が2年目に元に戻ってしまう。そこで、Wingらは、2年以内に10%の減量に成功した人を、カウンセラーが面接指導するグループ、インターネットのチャットを介して指導するグループ、月ごとに減量に関するニュースレターを配布するグループに分け、体重の増減を調べた。研究を開始する前、どのグループも40%が毎日体重を記録していた。
 18ヶ月後に再調査した結果、毎日体重を記録していたのは、面接指導したグループで72%、インターネットグループで65%と増加していたが、ニュースレターのグループでは30%に減少していた。また、面接指導したグループでは18ヶ月後に2.5ポンドの増加、インターネットグループでは6ポンドの増加、ニュースレターグループでは10ポンドの増加が認められた。一方、毎日体重を記録していた人のうち68%は減量した体重を維持していた。
 以上の結果より、面接などで本人が定期的に体重を計測することを奨励するだけで、減量した体重を維持できるとしている。

【文献】
Wing, R., et al.; Can We STOP Regain after Successful Weight Loss: 18-Month Results of


2005/10/24 トップページのアクセス数2万件
 大塚栄寿氏の第2回「ブータンの『幸福度』」をUpしました。4000メートル以上の高地で撮影された写真には迫力があります。前橋のちーちゃんの瀑布の写真も必見です。
 ホームページのトップアクセス数が2万件を超えました。現在、Googleによるページランクは4/10で、alexaによるトラフィックランクは714,694です。ご愛読感謝いたします。今後ともアクセスお願いします。


2005/10/24 アジアでは高血圧が脳卒中と心臓病の原因
 オーストラリアとニュージーランドと比べて、アジアでは高血圧の人が多く脳卒中と冠状動脈性心臓病のリスクを高めている。従って、食塩の消費を抑えことが重要である。一方、オーストラリアとニュージーランドでは中性脂肪との関係が強いことが分かった。

【文献】
Asia Pacific Cohort Studies Collaboration&NA; A comparison of the associations between risk factors and cardiovascular disease in Asia and Australasia. Eur. J. Cardiovasc. Prev. Rehabil., 12: 484-491. (2005)


2005/10/23 講演会無事終了
 朝、羽田空港の第2ビルからANAで秋田に行きました。羽田では雨が降っており、飛行中も天候が悪く少し揺れました。そのため、お茶のサービスも途中で打ちきりとなりました。講演会は、熱心な参加者(約200名)のおかげで無事終了することができました。帰りはJALで帰ってきたのですが、機内の設定温度が高すぎ、上着を脱いでも、冷気を吹きかけるスイッチを高くしても、まだ暑く疲れました。


2005/10/21 秋田県栄養士会で講演
 明日(10月22日:1:00-2:30)、秋田市にある協働大町ビルで秋田栄養士会会員の平成17年度「生涯学習研修会」の一環として講演「果物の機能性と食生活への導入」に行ってきます。朝早く飛行機でこちらを発ち、その日のうちに帰ってくる予定です。天気が崩れそうなので飛行機が揺れなければよいのですが。


2005/10/21 離婚は環境に悪い
 ネーチャー・バイオニュース(03/1/23)に離婚は環境に悪いとの報告が掲載されている。サイトは下記。
http://www.natureasia.com/japan/sciencenews/bionews/

 離婚すると世帯数が増加するが、世帯数が増えることは人口増よりも環境に与える影響が深刻と述べている。居住者が1人から3人までの住居が多くなると、エネルギー、土地、建築資材、水の使用が急激に増える。たとえば、2人の世帯も6人の世帯も、使う冷蔵庫はふつう1つだからだ。そのため、世帯数が増えると環境が悪化すると生態学者の研究結果から分かった。

参考文献
Liu, J., Dally, G. C., Ehrlich, P. R., & Luck, G. W. Effects of household dynamics on resource consumption and biodiversity. Nature. Published online. d.o.i.: 10.1038 /nature01359.


2005/10/20
 ずっと長雨が続いましたが今日は久しぶりによい天気でした。朝夕めっきり冷え込み自転車通勤に上着が必要となってきました。10月はじめの長雨の前には半袖でいたのが不思議に思われるほどです。夜には、たくさんの虫の鳴き声が聞かれます。


2005/10/20 受精卵を壊さずにES細胞を作成
 1個の受精卵から、正常な赤ちゃんと、どんな細胞にも成長できる万能性を持ったES細胞(胚性幹細胞)の両方を得ることに、マウスの実験で初めて成功したとイギリス科学雑誌ネイチャーに報告された。
 ES細胞を作成する場合、受精卵を丸ごと犠牲にする必要があった。そのため、倫理的な批判があったが、今回の方法が人でも再現できれば、受精卵を壊すことなくES細胞を作成できる。また、将来のけがや病気の治療に備え、本人専用のES細胞を保存しておくことも可能となる技術でもある。
 マウスの受精卵が八つの細胞に分裂した段階で、うち一つの細胞を取り出し、別のES細胞と一緒に数日間培養すると、細胞は未熟な性質を保ったまま分裂を続け、筋肉や神経、内臓など多様な細胞に成長しうるES細胞になった。
 一方、1細胞を取り出した後の受精卵を代理母役のマウスの子宮に入れたところ、妊娠して正常な赤ちゃんマウスが誕生した。

【文献】
Chung, Y., et al.: Embryonic and extraembryonic stem cell lines derived from single mouse blastomeres. Nature (online 16 October 2005) [doi: 10.1038/nature04277]


2005/10/19 リンゴとチーズのサンドイッチが美味しい
 意外な組み合わせであるが、リンゴとチーズのサンドイッチが美味しい。リンゴをスライスし、その間にチーズを挟み込むだけの簡単なレシピだ。最初、リンゴが口の中に広がり、少し遅れてチーズの味を感じる。後味もとても良い。
 挟み込むチーズによってすこしずつ味が違う点もも楽しめる。クリームチーズ、プロセスチーズ、カマンベールチーズの評判がよい。塩味の少し効いたカマンベールチーズサンド、癖のないクリームチーズサンド、その中間のプロセスチーズサンド。チーズが苦手な人でもリンゴサンドなら食べられると思う。
 チーズが好きな人ならゴーダチーズ、チェダーチーズもまた違った楽しみを与えてくれる。ゴーダーチーズサンドはお菓子のような感じ、チェダーチーズはイギリス風と言った感じである。


2005/10/19 WHO報告書:生活習慣の改善で死亡者数が大幅減
 WHOの報告書によれば、がんや脳卒中、心臓疾患などの慢性疾患による死亡を年間2%低下させることができれば、2015年までに世界中で3,6000万人以上の生命が救われる計算になることが明らかにされた。
 報告書では、慢性疾患による死亡率を年間2%低下させることを国際的な目標にすべきであると提案している。この数値は、慢性疾患の予防対策をすでに実施しているオーストラリア、カナダ、イギリス、アメリカの成功例に基づいて算出された。
 2005年の死亡者数は世界中で約5,8000万人となり、このうち慢性疾患による死亡が3,500万人を占め、2015年までには、死亡者がそれぞれ6,400万人および4,100万人に達すると推測している。
 慢性疾患による死亡者数を年間2%低下させることができれば、2005~2015年間の死亡者数が約3,600万人少なくなる計算になる。回避される死亡のうち、2,800万例が中・低所得国における死亡者数と推定されている。
 報告書では、慢性疾患による死亡率を大幅に低下させるための知識はすでに得られていると指摘。健康的な食事、定期的な運動および禁煙の実践により、心臓疾患、脳卒中および2型糖尿病が80%, がんが40%それぞれ発症予防できるとしている。

WHOのプレスリリース 「Stop the global epidemic of chronic disease」は下記のサイト
http://www.who.int/mediacentre/news/
releases/2005/pr47/en/index.html

WHO報告書は下記のサイト
http://www.who.int/chp/chronic_disease_report/
overview_en.pdf



2005/10/18 リンゴについての取材
 今日はテレビ局の取材があり、リンゴの健康機能性について私たちの研究を紹介した。来週の水曜日(10/26)にTBSはなまるマーケットで放送予定とのこと。


2005/10/18 マウスに育たないクローン胚
 動物に育つことができないクローン胚をつくる技術が開発された。クローン胚は再生医療への応用が期待される一方で、子宮に移植すればクローン人間の誕生にもつながることから、研究を進めることに慎重な意見もある。
 研究グループはマウスの細胞を取り出し、子宮への着床にかかわる遺伝子Cdx2が働かないようにして、卵子に移した。できた胚は仮親の子宮に戻しても着床しなかった。 一方、この胚からES細胞を作ることができ、普通のES細胞と同様の能力を持っていた。従って、この方法を用いれば、クローン人間が生まれる可能性はなくなる。

【文献】
Meissner, A. and Jaenisch, R.: Generation of nuclear transfer-derived pluripotent ES cells from cloned Cdx2-deficient blastocysts. Nature, (online 16 October 2005) [doi: 10.1038/nature04257]


2005/10/17 リンゴ中生種の価格、早生種と競合し低調
 今シーズンのリンゴは、生育が進んだ前年に比べて1週間ほど遅れているがほぼ順調な仕上がりとなっている。しかし、「ジョナゴールド」などの中生種リンゴの販売が苦戦していると日本農業新聞が伝えている(05/10/14)。中生種のリンゴの東京市場の入荷量は前年より少ないが、価格は下回っている。その理由として、早生種のリンゴが市場にまだあるため競合していることがその一因であると分析している。
 この結果は、それぞれの品種が市場で重なると価格の低迷につながることを示している。現在、リンゴの日持性を高めるポストハーベスト農薬の登録が申請されているが、その経済的効果に疑問を投げかける結果である。
 我が国の消費者は、「安全では安心できない」と考えている。そうした中で、今まで、リンゴはポストハーベスト農薬を一切使っていないとする原理を崩してまで導入する必要があるのかと疑問に思っていたが、今秋のリンゴの価格の動向を見るとその思いが募る。


2005/10/17 謎の微生物ハテナ:砂浜で発見
 べん毛虫の一種の海洋微生物で、細胞分裂すると、一方は緑色にもう一方は無色の性質の異なる細胞になる。同じ生物なのに、半数は藻を食べて動物のように暮らし、残り半数は植物のように光合成で生きる海洋微生物を、筑波大の研究グループが発見した。このような生物の発見報告はなく、研究グループは「謎の」という意味で「ハテナ」と呼んでいる。海洋微生物から植物への進化を解き明かす可能性がありる。
 この微生物は長径約30μmで、単細胞のべん毛虫の一種。和歌山県の砂浜で偶然、見つかった。この微生物は体内に藻を持ちもともとは緑色だが、細胞分裂して二つに分かれると、一方は藻を受け継ぎ緑色になるが、もう一方は受け継がず無色の細胞になるという特異な性質を持つことが分かった。
 無色の細胞は口のような器官が発達して藻を与えると食べることも確認した。研究グループは、これらのことから微生物の半数は親から受け継いだ藻で光合成しエネルギーを生み出す「植物型」、半数は捕食した藻をエネルギー源として生きていく「動物型」であると結論付けた。
 海洋微生物が植物に進化する過程では、べん毛虫のような微生物が藻を取り込み、藻の葉緑体だけが発達し、藻のその他の器官は退化し、葉緑体のみが残ったと考えられている。この発見は、海中の単細胞生物が植物へ進化していくステップの一端を示している可能性がある。

【文献】
Okamoto, N.& Inouye, I. (2005) A Secondary Symbiosis in Progress? Science, 310: 287 [DOI: 10.1126/science.1116125]

ハテナの写真は下記のサイトでみることができる。
http://www.sciencemag.org/content/vol310/
issue5746/images/large/310_287_F1.jpeg

写真Bの右が植物型、左が動物型


2005/10/16 イチョウの果肉の匂い
 通勤途中の1軒の家の庭にイチョウの木がある。そのイチョウの木の半分は道路に張り出ていて今、実が道路に落下している。車にはねられてつぶれ果肉が出ていてそこが黄色くなっている。そのため、その付近にお世辞にもいい匂いとは言い難いとても強い匂いが漂っている。どちらかというと糞臭のような匂いである。 秋の味覚の一つであるギンナンは茶碗蒸などに入っているとうれしいのだが、この匂いはちょっと慣れないなぁ。


2005/10/16 柿酢で血圧を下げる
 渋柿を発酵させて造る柿酢に、血圧を下げる効果があることが分かったと和歌山県が、県立医科大学、JAと協力して行っ調査結果を発表した。
 柿産地の伊都・那賀地方の生産者やJA職員ら30~70代の住民94人を2群に分けて、それぞれ3月と6月から1日1回20mlの柿酢を8週間飲み続けてもらった。
 柿酢を飲んだ前後での定期検査で、血圧が比較的高い(最高血圧130mmHg以上か最低血圧85mmHg以上)グループの47人に限って調べたところ、平均で最高血圧が5mmHg下がるなど有意な結果が出た。
 柿酢にはカリウムやポリフェノールが多く含まれ、特に塩分を排出するカリウムは米酢の3~10倍あり、高血圧予防に効果があると考えられている。今後は血液検査の結果を分析し、抗酸化能力についても調べていくとのこと。

和歌山県の発表内容は下記のサイトで読める。
http://www.pref.wakayama.lg.jp/news/shiryo.php?sid=3951


2005/10/15 スミソニアン博物館でスペース・シップ・ワン展示
 世界ではじめて民間で有人宇宙飛行に成功した飛行船「スペース・シップ・ワン」がアメリカ国立スミソニアン航空宇宙博物館で展示されることになった。同船は「宇宙飛行の商業化」を踏み出した歴史的な機体として、大西洋無着陸横断飛行に初めて成功した「スピリット・オブ・セントルイス」と、世界で初めて音速の壁を破った「ベルX─1」の間に置かれることになった。

スミソニアン博物館のサイトは下記。
http://www.nasm.si.edu/events/pressroom/
releaseDetail.cfm?releaseID=138



2005/10/14 子供は朝食の摂取が必要:フロリダ大の研究から
 フロリダ大学のRampersaudらは、過去に発表された47編の栄養関係の研究論文を再検討して、朝食の摂取・非摂取の影響について報告した。この報告によれば、朝食を摂取している子どもは、とらない子どもと比べて、「頭の働きがいい」「学校の出席率が高い」「学校の成績が良い」傾向にあることがわかった。更に、朝食を摂ると、朝食抜きの子どもと比べると、太り過ぎの子どもが少ないこともわかった。
 以上の結果から、著者らは、朝食を必ず摂取するとともに、果物、全粒穀類、乳製品などの食物繊維が豊富で栄養の高い食品をとることを推奨している。

【文献】
Rampersaud, G.C., et al., (2005) Breakfast Habits, Nutritional Status, Body Weight, and Academic Performance in Children and Adolescents. J. Amer. Dietetic Association. 105: 743-760. [doi:10.1016/j.jada.2005.02.007]


2005/10/13 セイタカワダチソウ
 久しぶりに朝から良い天気である。空が真上から地平に向けて青から水色にグラデーションされていて秋を感じさせる。明るい日差しの中、自転車で走るとセイタカワダチソウが目に入る。セイタカワダチソウが手入れのされていない宅地用の土地や工事現場の盛り土、耕作を放棄した荒れ地などに群をなして、黄色い花を咲かせている。もとはススキなどが繁殖していた場所に入れ替わって生えている。しかし、通勤途中にある林の中には見られないので日の光が必要なのかも知れない。最近は、ススキが盛り返しているとのことだが、この周辺ではまだ数カ所ススキの群生が見られるだけである。


2005/10/13 カルシウムで女性の大腸ガン予防
 アメリカ・ミネソタ大学ガンセンターが、約45,000人の女性を8.5年間追跡調査した結果、毎日の食事からカルシウムを摂取している女性は、大腸ガンになるリスクが小さくなることがわかった。1日当たり800mgを摂取していた女性は、400mg以下の人に比べ、大腸ガンに罹った率が25%低かった。

【文献】
Flood, A., et al., (2005) Calcium from Diet and Supplements is Associated With Reduced Risk of Colorectal Cancer in a Prospective Cohort of Women. Cancer Epid. Bio. Prev. 14: 126-132.


2005/10/12 コレステロールを下げるには
 コレステロール値が高いと、心臓血管系の病気になり易くなるが、果物、野菜、豆類など植物性の食物を多く含んだ食事を摂取するとコレステロール値が下がるとアメリカ内科学雑誌(Annals of Internal Medicine )に報告された。
 果物、野菜、豆類などを多量に消費した人(59人)は、少ししか食べなかった人(61人)よりLDL-コレステロールの値が大きく改善された。

【文献】
Gardner, C.D., et al., (2005) The Effect of a Plant-Based Diet on Plasma Lipids in Hypercholesterolemic Adults. Ann. Int. Med. 142:725-733.


2005/10/11 研究の二元論的評価
 本年度のノーベル生理・医学賞の研究の歴史をたどると、最初はかなり批判を受けたようだ。このことは研究の評価はそう簡単にはできないことが示されているように思う。ところが、現在の研究の評価は、短期的・短絡的なワイドショー的良し悪しの二元論で論ずる傾向があまりにも強すぎると思う。特に、研究論文偏重にその傾向が顕著である。それでいいのだろうか。我が国の研究の将来を考えるとマイナスとなるのではないかと痛切に感ずる。


2005/10/11 気をつけないと太る
 今太っていなくても将来太る可能性があることがフラミンガム心臓病研究(Framingham Heart Study)から明かとなった。データによると、現在30歳の人のうち女性では74%、男性では92%が太る。また肥満となるリスクは、女性で39%、男性で48%であった。
 研究は1971~2001年までアメリカ人4117人を調査した。太り過ぎと肥満はそれぞれBMIが25と30以上と定義された。短期間(4年)の調査では、太り過ぎの割合が女性で5~7%、男性で7~9%増加した。一方、長期間(30年)の調査では、50%以上が太りすぎで、25%が肥満となった。極度の肥満(BMIが35以上)は10%以上であった。
 太り過ぎは、高血圧など生活習慣病の原因となるので注意が必要である。ただし、このデータはアメリカ人の結果であり、日本人ではこれほどではないのではないか。

【文献】
Ramachandran, S., et al., (2005) Estimated Risks for Developing Obesity in the Framingham Heart Study. Ann. Int. Med. 143: 473-480.


2005/10/10 今日は雨
  朝から雨が降り続いていた。強い雨ではないが、そのままでいると全身がしっとりと濡れてくる。カッパを着て約30分自転車に乗ると職場に着く。途中、工事中の高速道路の端を通る道を行くと川がある。今日は3羽の水鳥が泳いでいた。一瞬見えただけなのでよく分からなかったが鴨だろうか。半袖から長袖に替えた。いつもと同じようでもすこしずつ季節が変わっていく。


2005/10/09 ガンマ線バーストの瞬間の撮影
 宇宙で起こる謎の大爆発「ガンマ線バースト」を日米欧の研究グループが観測し、地球から20億光年ほど離れた「つる座」の、古い星が集まっている銀河周辺で起きたことを突き止めた。爆発が瞬間的なガンマ線バーストは観測が難しく、発生場所が特定できたのは初めてとのことである。
 ガンマ線バーストは、宇宙のかなたで突然、高エネルギーのガンマ線が爆発的に放射される現象。日・米・仏が共同開発した天文探査衛星「HETE2」が7月9日、わずか0.07秒間ほどで終わった瞬間的な爆発をとらえ、発生の方角を特定した。
 インターネットで速報されたHETE2の情報を基に、日本のすばる望遠鏡、米国のチャンドラX線観測衛星やハッブル宇宙望遠鏡などが、X線や可視光の「残光」を探した。
 瞬間的なガンマ線バーストは、星の進化の最終形態の一つである中性子星同士か中性子星とブラックホールが衝突、合体して起こるとの学説が有力視されているが、この理論を裏付ける結果であるとしている。

γ-光線バーストの図は下記のサイトで読める。
http://www.nature.com/nature/journal/v437/
n7060/fig_tab/437822a_F1.html


【文献】
1) N. Gehrels, N., (2005) A short -ray burst apparently associated with an elliptical galaxy at redshift z = 0.225. Nature 437, 851-854. [doi: 10.1038/nature04142]
2) Villasenor, J. S., (2005) Discovery of the short -ray burst GRB 050709. Nature 437, 855-858. [doi: 10.1038/nature04213]
3) Hjorth, J., (2005) The optical afterglow of the short -ray burst GRB 050709. Nature 437, 859-861. [doi: 10.1038/nature04174]


2005/10/09 土浦の花火大会
 くだもの・科学・健康ジャーナルで今一番人気のあるコラム「家庭菜園の果樹」を更新しました。今回は花火大会―土浦編です。
 土浦の花火大会は霞ヶ浦に注ぐ桜川の土手で開かれます。ずいぶん昔、土手の桟敷席をとってもらい家族で見に行ったことがあります。ところが、花火が始まるとまもなく凄い夕立がやってきてとても花火を見ている状況ではなくなりました。全身を打つ雨と大音響の雷、その上、車まで遠かった。
 子供が小さかったのでとても歩いてはいけなかったので背負って、雨の中を帰りました。雨音が大きく、帰り道は人影もなかったので背中の子供と大きな声で歌いながら歩きました。何を歌ったか記憶が定かではないのですが、たぶん「さんぽ」(となりのトトロ)を連続して歌っていたように思います。ずぶ濡れになり、やっとの事で家に帰ってきてほっとしたとき、子供が「今日は楽しかったね。」といいました。その言葉が強く印象に残っています。そのことを子供はもう忘れているだろうけれど。


2005/10/08 地元食材を使った充実給食
  佐賀県唐津市浜玉学校給食センターの栄養士、福山隆志さんたちは、地元の旬の食材を、ふだんから60%から80%も使っていると毎日新聞が伝えている(「ゆらちもうれ」第26回 05/10/6)。佐賀県の平均が40%というから、平均をはるかに上回っている。果物は地元浜玉の農家のものだそうである。
 浜玉中学のような、地元産を優先して、旬で新鮮でおいしい食材を、6割から8割、ときには100%近くそろえて取り組みを日常的に行っているところは、なかなかなく、地域によっては、地元の生産物は、形が揃わないからできないとか、手間がかかるから無理とか、はなから敬遠しているところもある。

毎日新聞のサイトは下記。
http://www.mainichi-msn.co.jp/kurashi/travel/
green/news/20051006org00m100063000c.html



2005/10/08 回り道をしてみた
 今日は土曜日なので、家を少し遅くでた。いつもならまっすぐ行く道を曲がると狭い道で、両脇は元は田んぼだったらしく土が湿っている。その細い道は右に曲がっていて、そしてすぐに左に曲がっていた。雨は降っていないがまた降りそうな曇り空であるが、3日連休の最初の日は少し心に余裕がある。
 大塚栄寿氏(ジャーナリスト)の新連載「スロー風土抄」を今日、公開した。第1回は「プラハで『上を向いて歩こう』」だ。プラハの雰囲気が伝わってくる。今後の展開がとても楽しみだ。こうしたことも何となくうれしくさせる。


2005/10/07 中晩柑「すずっこ」(品種名:天草)に注目
 宮崎県のJA尾鈴は、中晩柑「すずっこ」(品種名:天草)のブランド化に力を入れている。露地ミカンよりひと回り大きく、濃いオレンジ色が特徴で皮もむきやすい。12月から翌年1月に出荷でき、贈答用として引き合いが強いと日本農業新聞が伝えている(05.9.29)。
 12~1月の贈答期は露地ミカン、ポンカン、デコポンなど競合品目が多いが、「すずっこ」の評価は高い。贈答期に出荷される商材として、人気が年々高まっている。食べると甘くて果汁が多いため、若者向きの果実である。


2005/10/07 新連載「スロー風土抄」に乞う、ご期待!
 大塚栄寿氏(ジャーナリスト)による新連載「スロー風土抄」が始まります。スローに内外の風土を楽しもうをモットーに執筆していただけることになりました。第1回は「プラハで『上を向いて歩こう』」です。乞う、ご期待!


2005/10/06 ノーベル化学賞発表される
 10月5日11時45分、2005年のノーベル化学賞が発表された。受賞者はフランスのショーバン名誉研究部長(Yves Chauvin、74歳)、アメリカのカリフォルニア工科大学のグラッブス教授(Robert H. Grubbs、63歳)、マサチューセッツ工科大学のシュロック教授(Richard R. Schrock、60歳)。
 メタセシス反応とは、二種類のオレフィンの間で二重結合同士の結合の組換えが起こる触媒反応のことである。ダンスでパートナーを替えて新ペアができるように、新しい有機物ができる。

受賞理由は下記。
"for the development of the metathesis method in organic synthesis"
「有機合成におけるメタセシス反応の開発」

ノーベル化学賞の発表サイトは下記。
http://nobelprize.org/chemistry/laureates/2005/index.html
ノーベル化学賞の選考過程は下記のサイトで読める。
http://nobelprize.org/chemistry/nomination/index.html


2005/10/06 ヒラメならいいの?
 「どうも人事が身びいきという状況のようで、ヒラメやカレイばかりが異常発生しそうだ。」と文句をいったらある人からこういわれた。
 「カレイじゃ困るけどヒラメならいいじゃないの。」
 な、なぁるほど。出自が立派ならそれだけで恐れ入る。見目麗しい人はそれだけで価値があるって‥‥。冗談がうまいんだから。

▽ ヒラメとカレイはよく似ているが、海の底で他のものに成りすまし隠れるやり方(擬態)が両者では異なる。ヒラメは周りの色に合わせ変化するが、カレイは色を変化させるのではなく砂の中の潜る。そのため、カレイの目は飛び出ている。
 周りの色に合わせるヒラメの方がやっぱり出世するのかぁ。なにしろ高級魚だもの。


2005/10/05 リスク管理検討会参加者募集/農水省
 食品の安全対策の政策決定段階で関係者の意見を反映するため、農水省は「リスク管理検討会」を設けることを決めた。検討会では、対策が必要なテーマの優先度や、食品安全委員会への評価依頼の方向性を決めることと、行政の政策決定の過程を透明化するのが狙い。
 これまでは方針を固めた政策について事後に関係者の意見(リスクコミュニケーション)を聞いてきたが、リスク管理検討会では、対策づくりの出発点となるテーマを選び、まず最初に関係者から意見を聞くとしている。
 検討会では、個人として意見を出す人も募集している。応募は、満20歳以上で平日の会合に出席できることが条件で応募締め切りは10月12日。

 農林水産省「リスク管理検討会における案件に応じて参加するメンバーの募集」のサイトは下記。
http://www.maff.go.jp/www/press/cont2/20050928press_4.html


2005/10/05 ノーベル物理学賞発表される
 スウェーデンの王立科学アカデミーは、2005年のノーベル物理学賞を、米ハーバード大のロイ・グラウバー教授(80)、米国立標準技術研究所のジョン・ホール上級研究員(71)、独マックスプランク研究所のテオドール・ヘンシュ教授(63)の3人に授与すると発表した。

 光は波と粒子の二つの性質をもつことがアインシュタインによって提唱されていたが、グラウバー教授は、光の性質を研究、電灯などの普通の光とレーザー光との違いを説明し、光粒子のふるまいの基礎理論を確立し、「量子光学」と呼ばれる分野を開拓した。この成果は、その後のレーザーや通信技術の発展につながった。

受賞理由は下記
"for his contribution to the quantum theory of optical coherence"

 ホール、ヘンシュの両氏は特殊なレーザー光を作りだし、レーザー光の周波数を誤差1000兆分の1で測定する精密な技術を確立した。これにより、極めて正確な時計を作ることが可能になり、GPS(全地球測位システム)などに活用されている。
受賞理由は下記
"for their contributions to the development of laser-based precision spectroscopy, including the optical frequency comb technique"

ノーベル物理学賞の発表サイトは下記。
http://nobelprize.org/physics/laureates/2005/index.html


2005/10/05 田中耕一さんのストックホルムでの言葉
 今年のノーベル生理・医学賞のエピソードを知って、3年前、田中耕一さんがストックホルムで現地の新聞社のインタビューに答えた言葉を思い出しました。

 Koichi Tanaka said it is important to stick to one thing with a belief until it is done, even though you may criticized by others. He said he succeeded by not caving in to others' criticism.(何かを言うのをためらっては駄目です。たとえ多くの人からそれは違うと言われても)(2002.12.8)

 ノーベル賞を受賞する人の言葉は、表現方法が異なっていても根っこにあるのは同じように思う。


2005/10/04 ノーベル生理・医学賞発表される
 スウェーデンのカロリンスカ研究所は2005年のノーベル生理・医学賞をオーストラリアのバリー・マーシャル教授(54)とロビン・ウォーレン名誉教授(68)に授与すると発表した。両氏は1982年、細菌の一種のヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)を発見し、ピロリ菌の感染が胃潰瘍や十二指腸潰瘍の原因になることを突き止めた。
 消化器の潰瘍は、ストレスや生活習慣が原因だと考えられていた。病理医だったウォーレン氏は1070年代末、胃の一部の組織を切り取る検査を受けた患者の半数で、胃の下部にらせん状の細菌が集まり、その周辺で胃粘膜が炎症を起こしていることを発見した。
 マーシャル氏は1982年、この細菌の分離と培養に成功し、ヘリコバクター・ピロリと名づけた。胃や十二指腸に潰瘍を持つ患者のほとんどが持っていることから、ピロリ菌が潰瘍の原因だと提唱した。ピロリ菌の除去で潰瘍が治ることも示した。
 強い酸性の胃液が出る胃の中に細菌がすめるはずはないとされ、ピロリ菌の存在を否定する専門家も多かった。このため、マーシャル氏は自らピロリ菌を飲み、急性胃炎になることと抗生物質で菌を殺すと胃炎が治ることを示し、自説を証明した。

受賞理由
"for their discovery of the bacterium Helicobacter pylori and its role in gastritis and peptic ulcer disease"
ノーベル生理・医学賞の発表サイトは下記。
http://nobelprize.org/medicine/laureates/2005/index.html

▽ 「強い酸性の胃液が出る胃の中に細菌がすめるはずはない」とする多数派の中で孤軍奮闘する姿がエピソードからもよく分かります。こうした研究経過も論文・成果主義が誤っていることを示しています。


2005/10/04 アンデルセン「裸の王様」のラストパラグラフ
 王さまだってみんなの言うことが正しいと思ったからです。でも、「いまさら行進パレードをやめるわけにはいかない。」と思ったので、そのまま、今まで以上にもったいぶって歩きました。めしつかいはしかたなく、ありもしないすそを持ちつづけて王さまのあとを歩いていきましたとさ。

▽ この王様はこの後反省して立派な王様になったでしょうか。それとも、仕立て屋の首を切り、さらにこの世にない服を探し求めたのでしょうか。秦の始皇帝は不老長寿の薬を探し求め、最後には不老長寿と称される毒薬で死んだと歴史書は伝えています。間違いに気づいた後どうするのか。そのことも人格と関係しています。


2005/10/03 収入低いと不健康感が増大
 群馬大学医学部のグループは、中高年で自分が不健康と感じている人の割合は、高収入層より低収入層で高く、中でも都市部の男性では2倍以上の差があると発表した。一方、農村部では収入による差はなかった。そのため、都市部では年収が低い人の労働条件は悪く精神的なストレスも多いためではないかと分析している。
 2000年に群馬県内の40~70代の男女計9,650人を調査し、健康状態が「まあまあ」「悪い」と答えた「不健康感ありの人」(46%)と、収入や生活習慣との関係を解析した。

【文献】
Wang, N., et al. (2005) Perceived Health as Related to Income, Socio-economic Status, Lifestyle, and Social Support Factors in a Middle-aged Japanese. J, Epidemiology 15: 155-162.

▽ 群馬大のグループは以前に、不健康感が強い人の死亡率が5~6倍高いことを報告している。国民の健康増進を図る施策として、安定した収入が得られる職業を確保することが大切であることが分かる。

2005/10/03 ハバネラとお別れ
 盲導犬候補犬ハバネラは今日、訓練所に旅立った。いつものように朝二人で散歩した。ハバネラはいつもと同じ道を進んでいった。いつもと違うのは散歩の途中で何枚かの写真を撮ったことだ。ウンチを処理し、犬小屋へ入れた。「元気でね。バイバイ」と声に出して言った。ハバネラはいつものように大きな目で私を見つめていた。


2005/10/01-02 仙台で園芸学会秋季大会
 園芸学会で「リンゴに含まれているケルセチン含量の品種間差異」について研究発表を行ってきますので、2日間更新はお休みです。

2005年9月


2005/09/30 毛髪の金属元素濃度でガン診断
 毛髪中のカルシウムなど金属元素の濃度が、乳ガンや肝臓ガンの患者で異常な値になっていることが、兵庫県立先端科学技術支援センターなどの研究で明らかになったと朝日新聞が伝えている(05/9/29)。
 大型放射光施設「スプリング8」で、毛髪に含まれる金属元素の濃度と、病気との間に関係があるかどうかを調べた。
 毛髪は1カ月で平均1cm伸びるため、12cmほどあれば、1年分の変化を分析できる。乳ガン患者17人では、ガン発見より8~12カ月前からカルシウムの濃度が、通常の5~10倍も高い値を示し、その後はゆっくり正常値に近づいていた。カルシウムの代謝が乱れることが原因らしいとのこと。 また、肝臓ガン患者11人ではカリウム濃度が、健康な人に比べ10分の1以下だった。健康な人で見つからない、食物からのゲルマニウムも検出された。
 この手法で異常が見つかった人が詳しい検査を受けるようにすれば、毛髪をさまざまな病気を見つける手がかりにできる可能性があるとしている。


2005/09/30 コスモスにあう
 朝早く、盲導犬候補犬ハバネラと草むらを散歩していると、突然にピンクのコスモスに出会った。今までも通った散歩道なのに今日まで気づかなかった。ちょっとびっくりし、柄にもなく綺麗だなと思った。
 日常の忙しさに紛れて忘れていた季節をコスモスは思いださせてくれた。ハバネラとももうすぐ分かれなければならない。


2005/09/29 世界で最初の発見:直流と交流を変換有機化合物
 直流電流を交流に変換するインバーターのような働きを持つ有機化合物を早稲田大などの研究チームが発見したと科学雑誌ネーチャーに発表した。単体でインバーター機能を持つ物質が見つかったのは世界最初で、次世代の電子部品として期待されている有機エレクトロニクス素子に応用できる可能性がある。
 BEDT-TTFと呼ばれる研究用の試薬に、セシウムやコバルトが結合した有機化合物サイリスタである。マイナス269℃に冷却した結晶に電流を流して特性を調べたところ、わずかな電流の変化で1000倍も電気抵抗が変わることが分かった。

【文献】
Sawano, F., et al. (2005) An organic thyristor. Nature 437: 522-524 (doi: 10.1038/nature04087)


2009/09/29 裸の王様では困る
 研究管理者が裸の王様となって、内部過剰管理により研究員を疲弊させ、研究員の目をひたむきに実験・研究に打ち込むことより内向きな優劣の競い合いへ、仲間どうし互いに励まし合って学徳を磨くことより上司のご機嫌とりへと向けさせています。
 裸の王様で困るのは、研究員だけではありません。農家が困ります。消費者が困ります。


2005/09/28 C反応性たんぱく質(CRP)が動脈硬化と関連
 C反応性たんぱく質(CRP)が動脈硬化と強く関連していることを、筑波大範江林らが突き止め、アメリカ病理学会誌に報告した。心筋梗塞の危険因子である可能性が強く、新たな動脈硬化予防薬の開発につながる成果である。
 CRPは肝臓で作られ、細菌に感染すると分泌される免疫たんぱく質。炎症の指標として用いられる。そこで、動脈硬化を起こすよう遺伝子を組み換えたウサギと正常なウサギを使った実験で、動脈硬化のウサギでは血液中のCRPが最大で正常の約28倍まで増加することを確かめた。一方、ヒトの心筋梗塞の患者の場合、動脈硬化の病変部分にCRPが特異的に多く沈着していることも突き止めた。
 以上の結果からCRPが動脈硬化の発症にかかわり、心筋梗塞の危険因子のひとつである可能性が強いと結論づけた。

プレスリリースは下記のサイトで読める。
http://www.md.tsukuba.ac.jp/public/rvpatho/
vascpatho/Press%20Release.htm

この論文に対するJan Torzewski氏の論評は下記のサイトで読める(日本語訳)。
http://www.md.tsukuba.ac.jp/public/rvpatho/
vascpatho/AJP-comment-JP.pdf



2005/09/26-27 熊野古道を歩く
 見渡す限り人のいない、丸くなった細石の七里御浜海岸を歩いてみた。太平洋からの波は時に大きく迫ってくる。その時、海岸の石に当たり不気味な音を立てる。遠く、この道を歩いた人へ思いをはせる。
 国道42号線から石の階段を上るとお地蔵さんが立つ松本峠に着く。登り口から500mだが急勾配である。竹林に囲まれた峠は静かだった。


2005/09/25 秋の果物
 味覚の秋、たくさんの果物が出回ってきています。ブドウでは「巨峰」や「ネオマスカット」、リンゴでは「つがる」や「さんさ」、ナシでは「豊水」、カキは「次郎柿」、ミカンも露地物が出回りまじめています。ほくほくしたクリも楽しみです。
 明日から2日間、会議で三重県の熊野市に行ってきます。そのため、更新はお休みです。メールマガジン「果物&健康NEWS」第74回「関節炎とカキ、ミカン」は明日発行の予定です。


2005/09/25 世界で6人に1人が太り過ぎ
 25日の心臓病予防デーに向けて世界保健機関(WHO)は、世界中で10億人以上が太り過ぎの状態とする推計を発表した。世界の人口は約63億人(2003年)で、約6人に1人が太っている計算になるという。
 推計によると、31歳以上の75%以上が太り過ぎとされる国は、女性では米国やメキシコ、エジプト、トルコ、南アフリカなど、男性ではドイツやアルゼンチン、英国、ニュージーランドなどである。
 これまで太り過ぎは高所得の国で問題となっていたが、現在は低・中所得の国で急増している。脂肪や糖分が多い高カロリーの食生活が世界的に広まったことや、労働形態の変化、交通の発達で運動不足になっていることが急増の原因と推定している。
 現在のペースで太り過ぎの人が増えれば、2015年には15億人に達し、その結果、心臓病や脳卒中が増えると警告している。

WHOのプレスリリースは下記のサイトで読める。
http://www.who.int/mediacentre/news/
releases/2005/pr44/en/index.html



2005/09/25 後藤田正晴氏の「遺言」
 毎日新聞の近聞遠見(岩見隆夫)に故後藤田氏の言葉が記載されている。
 「『官から民へ』について、ぜひ言いたいのは、一体官が担当しなければならない境界線はどこまでだ、利潤を美徳とする民が引き受ける限度はどこだと。そこの分界線を明示しないまま、『官から民へ』は乱暴だよ」。
 「民主主義は手続きがいちばん大事なんですよ。」
 サイトは下記
 http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/news/
20050924k0000m070127000c.html



2005/09/24 コンビニで青果物取り扱い実験
 コンビニエンスストアが相次いで、生鮮食品取り扱いの実験がはじまったとのこと。ミニストップ、ローソン、セブン―イレブンなどで主婦層の取り込みに青果物が有効と販売が試みられている。トマト、ダイコン、ネギ、キュウリ、ほうれん草、キャベツなどに加え、キウイフルーツ、バナナなど果物もそろえている。


2005/09/24 いやな状況になっていないか
 上司にゴマをすって、自ら権力者になろうとする人が居るとしたら‥‥
 そういうのを見ると、一人になっても、戦うぞ!という気持ちになる。


2005/09/23 平均寿命と健康寿命
 「健康寿命」とは、世界保健機関によると「健やかに過ごせる人生の長さ」のことで、平均寿命から寝たきりになってしまった年数を引き算した数値である。日本人の平均寿命とともに健康寿命も世界一である。2002 年の世界保健機関の報告では、日本人の平均寿命は 81.4 歳(男性 77.9、女性 84.7)で、健康寿命は平均 73.6 年(男性 71.4、女性 75.8)。 残念なことに、この平均寿命と健康寿命との間には約8年の開きがる。


2005/09/21-22 TXショーケースで発表
 秋葉原コンベンションホールで開催された「TXテクノロジー・ショーケース ツクバ・イン・アキバ2005」で「リンゴによる健康維持・増進効果の解明」(P-22)について発表してきました。たくさんの方に興味を持ってもらいました。


2005/09/21 日本の出生率、女性の社会進出に比例せず
 女性の社会進出と出生率との関係を調査した結果、国際的に女性の社会進出が進んだ国ほど出生率が高い傾向があるのに対し、日本は女性の社会進出が同レベルの国と比べて出生率が低い状態にあることが明かとなった(男女共同参画会議)。
 1970年頃は労働力率が高い国ほど出生率が低かったが、1985年頃を境に関係が逆転し、2000年には労働力率が高い国ほど出生率も高くなった。2000年のデータでは、労働力率が84.9%と最も高いアイスランドは出生率も2.08と最高値となったほか、米国やデンマークなども同様の傾向を示した。
 出生率が高い国は、男性の短時間就業者の割合が高い、保育サービスの利用割合が高い、家事・育児時間に占める男性の割合が高いなどの傾向があった。そのため、日本の出生率が低いのは仕事と生活の両立支援や子育ての環境整備の遅れが背景にあるとしている。

男女共同参画会議の調査は下記のサイトで読める。
http://www.gender.go.jp/danjo-kaigi/syosika/houkoku/index-kokusai.html


2005/09/21 「研究のリスクをとる」とは
 「研究のリスクをとる」とは、まだ海のものとも山のものともわからない未知の領域を研究するとき、うまくいかない危険性が高いことを認識すること。リスクをとるためには、目先の利益を追うのではなく、理想を捨てず、腹を決めやり抜く決意が必要である。


2005/09/20 任天堂が次世代ゲームコントローラを発表
 幕張メッセの日本コンベンションセンターで行われた東京ゲームショウ2005(9/16-18)で任天堂が新しい据え置き型ゲーム機「レボリューション(REVOLUTION)」(仮)と専用コントローラーを岩田聡社長が発表した(任天堂は展示会には出展していない)。
 次世代専用コントローラーはリモコン型で片手で操作する。ダイレクトポインティングセンサーを内蔵し、テレビ画面上での位置情報や、画面までの距離、ひねりなどの動きを検出できる。有線による拡張機能も備えており、従来型のアナログスティックを搭載したアダプタも接続できる。
 新しい据え置き型ゲーム機のコンセプトは、初心者でも熟練者でも同じスタートラインで始められ、間口が広く奥が深いゲームが楽しめることと、新しい操作系のスタンダードを構築するため、まったく新しいコントローラーを開発すること。
 テレビのリモコンのように、いつでも居間の机の上においてもらえ、誰でも触ってもらえるデザインを考えた結果、片手で操作できるリモコン型としたとのこと。そのため、このリモコンは、ゲームの中で、釣り竿のようにも、包丁のようにも、剣のようにも、懐中電灯のようにも、ハエ叩きのようにも、ドラムのばちのようにもなる。
 このレボリューションの発売は2006年が予定されている。

任天堂の下記のサイトでレボリューションのコントローラを見ることができる。
http://www.nintendo.co.jp/n10/tgs2005/index.html

任天堂の岩田聡社長の新ゲーム機の発表講演は下記のサイトで見ることができる。ブロードバンド(ADSL、光回線等)かナローバンド(アナログ回線、ISDN等)をクリック。全部を視聴すると約48分。新しいゲームコントローラの説明は25分過ぎから。
http://www.irwebcasting.com/050916/02/index.html

▽ 私は今までゲーム機を購入したことも操作したこともありませんが、もし、私がゲームのプログラマーだったらプログラムを作ってみたい。もし、私にゲームで遊ぶ時間があったら、遊んでみたいと思わせるゲーム機です。岩田社長の意図通りの行動をしてしまいそうです。新しいコントローラは、ゲーム市場を牽引し、他のゲーム機を圧倒、席巻するだろうと感じました。


2005/09/20 講演を上手に行うために
 「東京ゲームショウ2005」で行われた任天堂の岩田聡社長の基調講演「ゲーム人口の拡大に向けて ~ゲーム産業に今、何が必要か~」(2005.9.16)は、プレゼンテーションのお手本です。プレゼンテーションをうまくやりたいと考えておられる方は、ぜひご覧いただきたいと思います。

http://www.irwebcasting.com/050916/02/index.html(前記記事と同じサイト)

 講演の基本は、相手に言葉で考えを伝えることですから、スライドはサブで講演を補強するものです。従って、客席にお尻を向けることになるポインターを使うのはなるべく避ける方が良いと思います。そのため、スライドは、ポインターを使わなくても誰にでも分かるように作ることが大切です。今回の講演で岩田社長は、一度もポインター使っていません。その点に注目してください。また、スライドの文字は大きくし、色を多用しない方が分かりやすいのです。
 講演では、何を伝えたいかをはっきり示す必要があります。研究者の発表で、実験を行った順にだらだらと話す人がいますが、好ましくありません。講演では、伝えたいこと(結論)が相手に分かるように筋道(ストーリー)を立てて説明することが大切です。


2005/09/19 2018年、月に基地
 2018年に4人の宇宙飛行士を月に送る計画を米航空宇宙局(NASA)が固め、週明けにも詳細を発表すると「スペースドットコム(space.com)」が報じた。計画通り実現すれば1972年の「アポロ17号」以来である。
 将来、火星などの有人探査を行う拠点として月を活用する狙いとのこと。最初は飛行士らが月に1週間滞在する。

スペースドットコムのニュースは下記のサイトで読める。
http://www.space.com/news/050914_nasa_cev_update.html


2005/09/19 遠まきにしている味方の存在がおおきい
 今日の言葉は、糸井重里氏の「遠まきにしている味方の存在がおおきい」です。任天堂社長岩田聡氏との対談で語られました。糸井氏も言っていますが、若いときにはなかなか分からないものですが、チャレンジ成功の鍵かも知れません。

 対談は下記のサイトで読めます。
 http://www.1101.com/president/iwata06.html


2005/09/18 秋の味覚便り
 柿「刀根早生」の出荷がが本格化している。今年の食味は良好で秋商材都市的対されている。玉の肥大は平年並みで、糖度が高く、食味は良好とのこと。
 リンゴは早生の「つがる」が市場に出ているが、中生種と晩生種の出荷が10月以降に本格化する。出荷量は各産地とも前年を上回る見込みとのこと。
 温州ミカンは、前年比20%増と予想されている。販売方針は、ブランド品の銘柄確立、腐敗防止対策の徹底などに取り組むとのこと。


2005/09/18 研究はプラス思考で
 独創的な研究を行うには精神面がとても大事です。特に、プラス思考でなくては良い結果は出ないと思います。独創的な研究は、実験を始める前は、うまくいくかどうか分からないのですから、マイナス思考では、すぐに挫折してしまいます。


2005/09/17 運動会日和
 今日は、「初秋の風のさわやかに渡る季節」の言葉がぴったりする良く晴れた日です。近く小学校でも運動会をしていました。通勤途中の田んぼでも稲刈りがはじまっています。つくつく法師が「もーいーよー、もーいーよー」と鳴いています。


2005/09/17 ロビンソン・クルーソーの住居跡発見
 冒険小説「ロビンソン・クルーソー漂流記」のモデルとなった船乗りを調査していた探検家の高橋大輔さん(38)らが、チリの島で「船乗りが実際に暮らした約300年前の住居跡を発見した」と発表した。
 住居跡が見つかったのはチリ・サンティアゴ沖約756kmの太平洋に浮かぶ旧ファン・フェルナンデス島(現ロビンソン・クルーソー島)。記録によると、スコットランド人航海士、アレクサンダー・セルカーク(1676~1721年)は、当時無人だった同島で1704年から4年4カ月間、1人で暮らした後、海賊に助けられ本国へ戻った。人々は「奇跡の生還」と熱狂。これを英国の作家ダニエル・デフォーが1719年に小説化した。
 高橋さんらは今年1~2月に島を調査。島中心部の石垣の下からたき火や柱を立てた跡や金属片などを見つけた。金属片を鑑定したところ、18世紀の航海士が使っていたコンパスの針先と判明。同島に本格的に人が住み始めるのは19世紀になってからのため、セルカークの遺品と判断した。

住居跡の発見の経過は、「ナショナル・ジオグラフィック」のサイトで読めます。
http://nng.nikkeibp.co.jp/nng/topics/n20050914_1.shtml

▽ 発見された住居は、海岸近くではなく丘の上にあり、穴を掘って作られていたようです。何の準備もなく無人島に置き去りにされてからこの家ができるまでが、最初の生き残りの試練ではなかったろうか。島で一応の生活ができるようになってからが次の試練で、「いつまでこの生活が続くのか?」、「帰国することはできるのか?」との問いとの戦いの日々を思ってします。


2005/09/16 Klothoホルモンにより寿命延長
 テキサス大の黒尾誠らは、Klothoと呼ばれる遺伝子から産生されるホルモンが、マウスの老化を抑制し、寿命を延ばすと米科学誌サイエンス(Science)に発表した。
 すでに、黒尾らは、老化による機能低下を促すマウスのKlotho遺伝子の変異型を同定していたが、今回の研究では、過剰活性型のKlotho遺伝子を組み込んだトランスジェニック(遺伝子操作)マウスを作成し、その結果を調べたところ、通常のKlotho遺伝子をもつマウスよりも寿命が20%延長したという。
 Klothoホルモンは、インスリン様成長因子1の代謝経路を遮断する作用があり、この経路を遮断することにより寿命が延長すると考えられている。

【文献】
Kurosu, H. et al. (2005) Suppression of Aging in Mice by the Hormone Klotho. Science, [DOI: 10.1126/science.1112766]


2005/09/15 ネアンデルタール人と現生人類は欧州で共存
 約3万年前に死滅したとされるネアンデルタール人と、初期の現生人類は一時期、同じ場所で共存していたと科学雑誌ネーチャーに発表された。
 英ケンブリッジ大のGravinaらは、仏中部シャテルペロンにある洞くつから出土した石器などを分析した結果、初期の現生人類のものとされるオーリニャック文化の石器の層の上下それぞれネアンデルタール人の道具類の層があったことが分かった。さらに、周辺から出土した人骨の年代を放射性炭素で測定したところ、約3万8000年前に、両者がこの場所で共存していたとの裏付けが得られた。

【文献】
Brad Gravina, B., et al.: Radiocarbon dating of interstratified Neanderthal and early modern human occupations at the Chatelperronian type-site. Nature, 31 Aug. 2005 [doi: 10.1038/nature04006]

▽   ネアンデルタール人は当初、人類の祖先とみられていたが、その後の研究で、現生人類とは別系統の人類だったと判明した。考古学、人類学の研究者らの間ではこれまでに「ネアンデルタール人が死滅した後で現生人類が現れた」「時期は重なっていたが場所が離れていたため、接触はなかった」などの説もだされている。今回の発見は時期も場所も同じところで共存していたことになる。


2005/09/14 「年だもの最後だわねとまたハワイ」
 全国有料老人ホーム協会は、敬老の日に向けて募集した第5回「シルバー川柳」の入選作品20句を発表した。応募数は約1万2千句。ほかの入選作は「忘れえぬ人はいるけど名を忘れ」、「化粧品リフォーム詐欺と妻は言う」など。

全20句は下記のサイトで読める。
http://www.yurokyo.or.jp/topics/200509012.html


2005/09/13 長寿日本一は福岡の皆川ヨ子さん
 今月末までに100歳以上になるお年寄りは25606人で、昨年より2568人増えて35年連続で過去最高を更新したと厚生労働省が発表した。このうち女性は約85%を占め、初めて2万人を突破した。
 人口10万人あたりの100歳以上の高齢者は、全国平均で20.05人で、昨年より2.0人増えた。都道府県別では、沖縄で51.43人と33年連続の1位で、高知、島根と続いている。
 長寿日本一は、福岡県赤池町の皆川ヨ子(よね)さんで1893(明治26)年1月4日生まれの112歳。男性は、鹿児島市の徳田二次郎さんで110歳。

百歳高齢者についてのプレスリリースは下記のサイトで読める。
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2005/09/h0912-2.html


2005/09/12 食育講演会「果物と健康、地域ぐるみの食育について」
 栃木県那須南農業共済組合大会議室で、食育講演会「果物と健康、地域ぐるみの食育について」があります(2時15分~4時/演者:田中敬一、本誌編集長)。主催は栃木県南那須農業振興事務所です。関心のある方はぜひおいでください。


2005/09/11 世界自殺予防デー
 9月10日は、世界保健機関(WHO)が定めた「世界自殺予防デー」です。世界的では、毎年およそ100万人が自殺しています。日本でも毎年3万人の人が自殺しています。そのため、WHOでは自殺を公衆衛生問題として認識し、自殺の予防のために政府、個人、専門家、およびボランティアが連携して対策に取り組むことを求める声明をだしています。


2005/09/11 「400字以上」は苦痛
 インターネットユーザーを対象した調査によれば、PC などで文章を読むとき苦痛を感じる文字数は「400字以上」がもっとも多かった。携帯電話を利用している10代~50代の全国インターネットユーザー300人で、男女構成比は男性42.7%、女性57.3%。 年齢層分布は、10代4.7%、20代24.3%、30代44.0%、40代20.3%、50代6.7%。
 PC などのモニターで長い文章を読むとき、どの程度から苦痛を感じるかの質問に対して、「400字以上」で33.7%、「800字以上」(18.0%)、「1,000字以上」(8.3%)、「100字以上」(7.7%)という結果になった。「特に苦痛は感じない」は12.7%で、「わからない」は19.7%だった。

上記調査結果の概要は下記のサイトで読める。
http://japan.internet.com/research/20050826/1.html


2005/09/10 染色なしで細胞を観察可能な新顕微鏡
 細胞内のたんぱく質やDNAなどの分子の動きや構造を、生きたままの自然な姿でカラー画像化できる顕微鏡ができたと大阪大のベンチャー企業「ナノフォトン」(本社・大阪市北区)が発表した。
 今までは、化学物質による染色を行った後に顕微鏡で観察していたが、今回開発されたレーザーラマン顕微鏡では「染色」することなく生体反応を観察できるという。
 開発された新顕微鏡は、観察対象にレーザーを当て、はね返ってきた光を検出する。この光には、分子の種類や構造の違いに応じて色が変化した微弱な光もわずかに混じっており、これをとらえて画像化する技術を確立した。ネズミの心筋細胞を観察すると、細胞内の小さな器官がさまざまな色に光って区別できた。 一台3300万円で市販している。

レーザーラマン顕微鏡RAMAN-11については下記のサイトで読める。
http://www.nanophoton.jp/


2005/09/09 夜遅く食べると太る仕組み
 生体リズムを刻む体内時計を調節しているたんぱく質が、細胞内への脂肪の蓄積と密接に関係していることを日大薬学部の榛葉繁紀らの研究で分かった。生体リズムを調節しているたんぱく質は「BMAL1」と呼ばれ、DNAに結合し、体内時計が正常に働くよう調節する働きがあると考えられていた。
 そこで遺伝子操作で、BMAL1を持たないマウスの細胞を作り、脂肪の蓄積の様子を調べた。この細胞にインスリンなどを加えて、栄養過剰の状態にしても、細胞内の脂肪は増えなかった。
 一方、皮膚などに存在する脂肪を蓄えない細胞には本来、BMAL1はほとんどない。こちらの細胞を遺伝子操作し、BMAL1を大量に作らせる実験をすると、細胞内には脂肪が蓄積された。
 他の実験から、BMAL1は、脂肪酸やコレステロールの合成を促進していることも分かっていたことから、BMAL1が脂肪の蓄積に必要だと結論づけた。

【文献】
Shimba S, et. al.: Brain and muscle Arnt-like protein-1 (BMAL1), a component of the molecular clock, regulates adipogenesis. Proc Natl Acad Sci USA. 102(34):12071-12076. (2005)

▽ たんぱく質BML1は昼間は体内でほとんど作られず、深夜になると増える。体内のBMAL1量は、一日のうち午後10時から午前2時ごろが最高で、最も少ない午後3時ごろの約20倍に達する。そのためBML1が多い時に食事をすると、脂肪酸やコレステロールの合成が促進され、脂肪が蓄積すると考えられる。そのため、夜遅くの食事をとると太る。


2005/09/08 2006年元旦は1秒長い
 日本の標準時の維持・通報を実施している情報通信研究機構(NICT)は、2006年(平成18年)元日に、7年ぶりの「うるう秒」調整が行われると発表した。これにより、2006年元旦は平常より1日の長さが1秒だけ長いこととなる。
 時刻を決めるために、現在では、原子の振動を利用した原子時計をもとに決められてる。しかし、天文時に基づく時刻は、地球の自転速度の遅れなどが影響し、原子時計に基づく時刻との間でずれが生じる。そこで、原子時計に基づく時刻を、天文時と0.9秒以上ずれないように調整を行った時刻を世界の標準時(協定世界時、UTC)として使うこととなっている。

情報通信研究機構によるプレス発表は下記のサイトで読める。
http://www2.nict.go.jp/pub/whatsnew/press/
h17/050907/050907.html



2005/09/07 厳戒体制、青森・リンゴ農家
 台風14号の接近に備え、リンゴ生産量日本一の青森県ではリンゴ農家が少しでも被害を食い止めようと、収穫を早め、防風ネットを張るなどの対策を行ったと共同通信が伝えている。今冬の豪雪で樹木に大被害を受けた直後だけに「大雪の次は台風か」との声も聞こえた。
 青森地方気象台によると、台風14号の進路は1991年にリンゴに壊滅的な被害をもたらした台風19号と極めて似ているという。


2005/09/06 食育に「関心」7割
 「食育に関する特別世論調査」が内閣府から公表された。それによると、「食育」について、関心が「ある」「どちらかと言えばある」と答えた人が約7割を占めた。一方、食育の周知度を調べたところ、この調査まで「言葉も意味も知らない」という人は47.4%で、「言葉も意味も知っていた」と答えた人は26.0%にとどまり、「言葉は知っていたが、意味は知らなかった」は26.6%だった。
 食育に関心を示した人で、その理由を複数回答で選んでもらったところ、「食生活の乱れが問題になっているから」が69%で最も多く、「生活習慣病の増加が問題になっているから」(67%)が続いた。
 調査は全国の成人3000人を対象に面接方式で実施。回収率は54%だった。

「食育に関する特別世論調査」の概要は下記のサイトで読める。
http://www8.cao.go.jp/survey/tokubetu/h17/h17-syokuiku.pdf


2005/09/05 国産農産物使う企業6割
 農林漁業金融公庫は、2005年上半期の食品産業動向調査結果をまとめた結果、原料に使う国内産農畜水産物の割合は63%で、2004年下半期に比べて1.1ポイント増えたと日本農業新聞が伝えている(05/8/25)。
 国内産を使う企業は全業種で増えた。特に小売業は3.2ポイント、飲食店は6.6ポイントと高い伸びを示したが、製造業者は0.3ポイントの微増であった。
 製造業のうち、約半数が、国内産原材料は外国産に比べ「10~30%割高」としている。


2005/09/04 ニューオリンズからの穀物輸出ストップ
 超大型ハリケーン「カトリーナ」が、アメリカ産穀物の最大の輸出港のニューオーリンズ市を直撃した影響で日本向け飼料用トウモロコシや大豆の輸出がストップしていると日本農業新聞が伝えている(05/9/3)。日本国内には十分な蓄えがあるため、飼料供給には大きな影響はないとの見方が強いが、復旧が長期化した場合を心配する声も出ているとのこと。
 ニューオリンズ市はミシシッピ川の下流にあり、穀物の集積地で、日本向け穀物の大半を扱う。今回のハリケーンで、電力が止まるなどで輸出施設の機能が停止、船が貨物を積めなくなっている。今のところ輸出再開のめどは立っていない。
 JA全農によると、日本の配合飼料に使われる約1200万トンのトウモロコシのうち、ニューオーリンズの港からの船積みされる割合は6割強に上るという。全農は「国による備蓄や、飼料会社に在庫があるため、当面の間、影響はない」とみている。


2005/09/03 オゾン層の減少にストップ
 皮膚がんなどの原因になる紫外線から生物を守る成層圏のオゾン層の減少に、96年ごろから歯止めがかかったことを示す分析結果を、米海洋大気局(NOAA)とウィスコンシン大、シカゴ大などのチームがまとめ、地球物理学誌に発表した。
 チームは、オゾン層を監視する二つの人工衛星(TOMS、SBUV) と地上での1978-2002年の観測データについて、複数の統計分析手法を当てはめてオゾン層の減少に変化があるかどうかを分析した結果、南北半球とも40度以上の中~高緯度地域で1996年ごろを境に減少に歯止めがかかり、安定化する傾向があることが分かった。
 すでに、上部成層圏(高度35-45km)に限定して同様の傾向が発見されていたが、今回は成層圏全体を対象にした結果で、安定化の傾向は、緯度が比較的高い地域でより強く出ていた。

【文献】
Reinsel, G. C., A. J. Miller, E. C. Weatherhead, L. E. Flynn, R. M. Nagatani, G. C. Tiao, and D. J. Wuebbles (2005), Trend analysis of total ozone data for turnaround and dynamical contributions, J. Geophys. Res., 110, D16306, doi:10.1029/2004JD004662.

▽  科学者らは、変化が出て以降の分析期間が約6年と短いため、決定的な証拠とまでは言い切れないとしているがオゾン層を破壊するフロン類の規制など、国際社会の努力が奏功した結果とみられると評価している。
 フロン規制などでオゾン層の破壊を阻止できたのなら人類の輝かしい勝利といえるのではないか。地球温暖化も二酸化炭素などの排出量の規制で防げるのではないかと期待できる。


2005/09/02 秋は柿、ナシの季節
 秋の果実といえば柿。「柿食えば鐘が鳴るなり法隆寺」(正岡子規)というぐらいで、奈良が有名。早生品種の出荷は9月半ばから、主力の富有柿は11月上旬から12月上旬。ナシは早生品種の幸水がすでに出回り、主力の豊水の出荷も始まったと毎日新聞が伝えている(05/8/31)。


2005/09/01 アメリカ:貧富の差が拡大
 アメリカ国勢調査局(the Bureau of the Census)が8月30日発表した2004年の所得調査によると、貧困層は3700万人に達し4年連続で増加した。総人口に占める割合も0.2ポイント上昇して12.7%になった。アメリカの景気は堅調に拡大し続けている一方で貧富の格差が拡大している。一方、2004年の世帯の平均年収は44,389ドルで、前年とほぼ同じだった。

U.S. Census Bureau Newsのプレスリリースは下記。
http://www.census.gov/Press-Release/www/
releases/archives/income_wealth/005647.html