2006年2月


2006/02/13 ニューギニアで鳥やカエルなど新種の発見
 ニューギニア島西部で、新種のミツスイという小型の鳥やカエル20種、4種のチョウ、5種類のヤシなど新種の植物など貴重な生物がすむ「未知の生物の楽園」をインドネシアやアメリカなどの国際チームが発見したと発表した。
 環境保護団体コンサベーション・インターナショナル(Conservation International)のチームは、現地は人がほとんど足を踏み入れたことがないインドネシア・パプア州(ニューギニア島西部)のフォジャ山脈を調査した。その地は、森林が百万ヘクタール以上も広がる秘境で、ゴクラクチョウの仲間やキノボリカンガルーの一種など希少種の生息も確認された。
 ニューギニア島で1939年以来の新種の鳥の発見となったミツスイは、目の周りが鮮やかなオレンジ色をしている。また、絶滅の恐れが極めて高く、これまでパプアニューギニアのたった1つの山でしか知られていなかった大型哺乳類のキノボリカンガルーの仲間も見つかった。

コンサベーション・インターナショナル日本によるプレスリリースは下記のサイトで読める。新種のミツスイの写真が見られる。
http://www.conservation.or.jp/Newsroom/
Press_Release/2006_02/FojaMtn.htm

関連サイト「Mysterious Bird of Paradise: Lost and Found」は下記。
http://www.conservation.org/xp/frontlines/species/02070601.xml
ミツスイの仲間写真は下記サイト。
http://www.planktonik.com/museum/ja/birds/f_honeyeaters.html
キノボリカンガルーの写真は下記サイト
http://www.petpet.ne.jp/excite/mame/detail.asp?id=192&page=14


2006/02/12 カンキツグリーニング病の北上は地球温暖化の影響か
 今週号のアエラ(06.2.13)に養老孟司・池田清彦・吉岡忍の地球温暖化について「どっちなんだ」の対談が載っていた。内容は、地球は氷河期が来るのか温暖化で暑くなるのかを談論風発的に語り合った内容である。
 地球温暖化について検討する場合、「異常気象」と「現在の気象」、「未来の地球」について一緒くたに議論してはいけないだろう。例えば、異常気象と地球温暖化を簡単に結びつけている人が多いが、そうとは言い切れない。時間軸の短いすべての異常気象を二酸化炭素の上昇で説明できる分けではない。時間軸を千年単位にとれば、気温上昇が二酸化炭素の上昇の影響である可能性が極めて高いが不確定要素もある。また、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)による二酸化炭素が増え続ければ地球が温暖化するとしたシュミレーションの予測は科学的に信頼できるが、まだ予測される気温上昇の変動幅が大きい。さらに、時間軸を長くとれば地球は氷河期に向かっているとしてよいのではないだろうか。
 話は変わるが、カンキツ類を枯死させて壊滅的な被害を与える重要病害であるカンキツグリーニング病が沖縄から鹿児島へと北上を続けている。これを地球温暖化と結びつけている研究管理者がいるが恐らく誤りだろう。地球規模で起きる地球温暖化の時間軸とカンキツグリーニング病の北上の時間軸が違いすぎる。地球温暖化が起きる時間軸に比べてカンキツグリーニング病の北上スピードは速すぎる。1年に1つづつ島を北上しているのは、地球温暖化のためではなく、媒介昆虫の生態などが関係しているとするのが科学的な普通の解釈である。
 何度も言うようだが、カンキツグリーニング病を地球温暖化のテーマとして行うのには無理がある。


2006/02/11 人種により肺ガン発症率に差
 喫煙による肺ガンの発症率は人種的にも大きな差のあることが、アメリカ・南カルホルニア大学の研究によって明らかになった。
 1993~2001年に黒人、白人、ラテン系アメリカ人、日系アメリカ人およびハワイ先住民の男女合計18万3813人を対象に疫学調査を行った。その結果、1日10-20本の喫煙者で比較すると、黒人、ハワイ先住民の肺ガンの発症リスクは白人と比べて30-40%高かった。ラテン系および日系アメリカ人は、白人に比べ20%、黒人に比べ60%低く、最も肺ガンにかかりにくかった。

【文献】
Haiman, C., et al.: Ethnic and Racial Differences in the Smoking-Related Risk of Lung Cancer. New Eng. J. Med. 354: 333-342. (2006)


2006/02/07 食事から抗酸化成分を多く摂取すると加齢性黄斑変性症リスクが減少
 食事からビタミンEなど抗酸化成分を多く摂取すると、加齢性黄斑変性症(AMD)が避けられるとオランダのチームが科学雑誌JAMAに発表した。
 オランダのロッテルダムに住む55才以上の4170人を対象に1990年から1993年の間、と2004年の食事摂取状況と加齢性黄斑変性症との関係を調べた結果、食事から平均以上にβ-カロテン、ビタミンC、ビタミンE、亜鉛を摂取している人は平均以下の人に比べ加齢性黄斑変性症のリスクが35%低い。

【文献】
van Leeuwen, R., et al.: Dietary Intake of Antioxidants and Risk of Age-Related Macular Degeneration. JAMA. 294: 3101-3107. (2005)


2006/02/06 怒りはけがを誘発
 怒りは怪我のリスクを上げる。特に、男性で。救急治療室で治療を受けた2,000人以上の患者を対象に怒りとけがとの関係を調べた結果、怒りはけがのリスクを高めるが分かった。
 転落してけが、車の事故、および他の事故について3つの病院で治療を受けた男女を対象に、けがをした24時間以内に怒っていたかそうでないかについて調べた。
 その結果、けがの前に患者の怒りが前日より高いとけがになるリスクが高かった。特に、強い怒りと敵意を持つ男性では、けがのリスクが7倍に高まった。女性では、極端な怒りと敵意だけが、けがのリスクを高めたが男性ほどではなかった。
 従って、けがのリスクを防ぐにはセルフ・コントロールが大切である。多くの人が、車のハンドルを握って腹をたてている場合の事故のリスクを知っている。怒りは健康に良くない。

【文献】
Vinson, D.C. and Arelli, V.: State Anger and the Risk of Injury: A Case-Control and Case-Crossover Study. Ann. Fam. Med. 4: 63-68. (2006)


2006/02/05 「省力低コスト栽培技術の開発」が今後も必要
 中期計画案に第1期で「省力低コスト栽培技術の開発」を行ってきたと新たに記載された。また、第2期中期計画では「高収益園芸に関する技術体系の確立」が掲げられている。
 果樹農業の現状は厳しい。果物の価格の低迷が長く続いている。従って、低価格でも果樹農家に利益がでる省力低コスト栽培技術の開発は今後も必要である。この技術が開発されれば果樹農家に高収益をもたらすことになり、果樹の担い手も増えると予想できる。なぜ、第2期の主要な研究テーマとしないのか不思議である。


2006/02/05 ヒトとサルの大きな違い
 ヒトの染色体の第8染色体の中に、チンパンジーと比べて遺伝的な相違が大きい領域があることが科学雑誌「ネイチャー」に発表された。
 ヒトとチンパンジーでは遺伝子全体で1.2%の違いがあるが、その割合は染色体ごとに異なる。そこで、研究チームは第8染色体について検討したところ、染色体の端に近い部分で、チンパンジーと大きく相違する領域を見いだした。この領域では平均で2.1%の違いがあり、部分的には3.2%も違うことが分かった。
 この領域には脳の大きさに関連する遺伝子や、免疫に関連する遺伝子が含まれていると考えられ、ヒトに進化したのはこの領域の大きな変化が関与したのではないかと示唆している。

【文献】
Chad Nusbaum, C., et al.: DNA sequence and analysis of human chromosome 8. Nature 439: 331-335. (2006) [doi: 10.1038/nature04406]


2006/02/04 「大豆に効果なし」は誤訳?
 大豆タンパク質とイソフラボンが考えられていたほどには心臓病に効果がないと先月の本欄で紹介したが、同じ論文の中で大豆には食物繊維やビタミンなどを多く含むため心臓病予防のために有効との記載もある。
 一方、朝日新聞は同じ論文を1月28日付けで伝えているが、そのタイトルは『心臓病予防「大豆に効果なし」 』である。しかし、このタイトルは言い過ぎのように思う。論文では大豆タンパク質とイソフラボンにしか言及していないので、大豆を主語にするなら「大豆は考えられていたほどには効果はない」ではないか。このタイトルにすると、最初とかなりニュアンスが異なる。誤訳ではないかと思う。

朝日新聞のサイトに掲載されている記事は下記。
http://www.asahi.com/health/news/TKY200601280186.html


2006/02/03 総合ビタミン剤の感染症予防効果は不明
 イギリスの65歳以上の高齢者910人をランダムにグループ分けして、総合ビタミン剤を1年間投与したが、風邪や肺炎などの感染症による医療機関の受診率や病気の日数は減らなかったことがイギリス医学雑誌(BMJ)に報告された。
 高齢者は免役が低下しているため、ウィルス感染による風邪や、細菌感染による肺炎や膀胱炎などにかかりやすい。その理由として、ビタミンやミネラルの栄養不足が関わる可能性が考えられていた。そこで、総合ビタミン剤のサプリメントを投与して高齢者の感染症を予防できるか調べた。サプリメントは1日1錠投与した。総合ビタミン剤にはビタミンA、C、E、リボフラビン、ナイアシン、葉酸、鉄、銅、亜鉛など)が含まれていた。
 その結果、風邪・肺炎・膀胱炎・皮膚炎などの感染症で医療機関を受診した回数には、摂取群と非摂取群に統計的な差が認められなかった。また、感染症にかかっていた日数、及び、処方された抗菌剤の数や、入院率にも、統計的な差は認められなかった。

【文献】
Avenell. A., et al.: Effect of multivitamin and multimineral supplements on morbidity from infections in older people (MAVIS trial): pragmatic, randomized, double blind, placebo controlled trial. BMJ. 331: 324-329. (2005)


2006/02/02 大豆イソフラボンのサプリメントの評価
 骨粗鬆症やガンなどの予防効果があるとされている大豆イソフラボンについて、食品安全委員会の専門調査会が過剰摂取についての注意を促す報告書をまとめた。
 ホルモンのバランスを崩す恐れがあるとして、通常の食生活に加え特定保健用食品などサプリメントとしてで1日に追加的にとる安全な上限量を30mgとした。特に、妊婦や乳幼児に対しては「追加摂取は推奨できない」としている。
 また、通常の大豆製品の摂取では健康被害が出ていないことも確認し、安全な摂取量の上限を1日70~75mgとした。
 さらに通常の食生活をしている女性を対象に、イソフラボンの錠剤などを飲んでもらい内分泌系への影響をみた調査から、男女ともに1日30mgを追加で取れる上限値とした。
 ただし、妊婦や胎児、乳幼児などに対しては、「追加摂取する場合の安全性は科学的に判断できない」とし、通常の食事以外からの摂取は勧めないとしている。

 食品安全委員会の専門調査会がまとめた大豆イソフラボンを含む特定保健用食品の安全性評価の基本的な考え方(第32 回会合修正案) は下記のサイトで読める。
http://www.fsc.go.jp/senmon/sinkaihatu/
s-dai32/sinkaihatu32-siryou1.pdf



2006/02/01 今日から生活習慣病予防週間
 今日、2月1日から7日までの一週間は生活習慣病予防週間で、今回の標語は「内臓脂肪 減らして防ぐ 生活習慣病」である。1959年(昭和34年)から実施されているもので当時は成人病予防週間という名称が使われていた。1997年(平成9年)から「成人病」を「生活習慣病」と呼称を変更したのに伴い、週間名も変更された。