2005年3月


2005/03/31 果樹農業振興基本方針の公表
 新しい果樹農業振興基本方針が公表された。内容は下記の通り。
 我が国の果樹農業は、限られた国土の中で中山間傾斜地を中心に立地し、付加価値の高い農業を展開しているが、高齢化の進展や耕作放棄地の増加等生産基盤の脆弱化が進んでいる。
 果実は、国民に豊かで潤いのある食生活をもたらすとともに、健康の維持に欠くことのできないビタミン、ミネラル、食物繊維等各種の栄養成分や機能性成分の重要な供給源であるが、国民の健康志向が高まる中で、これらに対する認識が高まっている。
しかしながら、近年の果実及び果実製品の需要については、概ね横ばいで推移しており、特に若年層を中心とした食の簡便化志向の強まりを背景とする果実離れ等により、需要が伸び悩んでいる状況にある。
 今後の果樹農業については、このような状況の下、豊かな食生活、健康の維持増進を図る上で欠くことのできない果実の重要性を踏まえ、担い手が中心となって多様な消費者ニーズに的確に対応した生産・販売活動が行えるよう、次の事項を基本として、果樹産地の構造改革等を進めることとする。
 以下は、下記のサイトで。
http://www.maff.go.jp/www/press/cont2/20050330press_8b.pdf


2005/03/30 イギリスの研究チームが大地震を予測
 スマトラ沖で28日(日本時間29日)起きた地震について、イギリスアルスター大の研究チームが英科学誌ネイチャーで「昨年12月の大地震の影響で、隣接地域でマグニチュード(M)7~7.5の大地震発生の危険が迫っている」と発表していたが、今回の震源域と重なっていた。
JOHN MCCLOSKEY, SULEYMAN S. NALBANT & SANDY STEACY , Indonesian earthquake: Earthquake risk from co-seismic stress. Nature 434: 291; doi:10.1038/434291a

上記論文についてのon line解説は下記。
Michael Hopkin, Quake threat rises after tsunami slip. Nature doi:10.1038/news050314-10

 科学雑誌ネイチャーで上記論文と今回の地震との関係について解説。
Helen Pearson, Second giant quake rocks Indonesia. Nature doi:10.1038/news050328-1.


2005/03/29 糖尿病リスク判定にウエストサイズが有効
 アメリカ成人男性のウエストサイズが糖尿病の危険度の有効な指標になるとジョンズホプキンス大の27270人、13年間の疫学調査でわかった。肥満度の指標としてよく使われるBMI値よりも、優れた目安になるとしている(Youfa Wang, Eric B Rimm, Meir J Stampfer, Walter C Willett, and Frank B Hu, Comparison of abdominal adiposity and overall obesity in predicting risk of type 2 diabetes among men Am J Clin Nutr 2005 81: 555-563.)。

 アメリカ人男性のウエストサイズを身長や体重にかかわらず5段階に分け、生活習慣に伴う肥満と強く関連する2型糖尿病の発症頻度を比較したところ、最も小さい74~86センチのグループに比べ、より大きいサイズのグループは糖尿病の人が2倍以上に達し、特に100センチ超のグループは、最小グループの約12倍になった。
 身長と体重から肥満度を数値化するBMIでは、同様のグループ分けをしてもここまで明確な差は出ないという。ウエストによる糖尿病の危険度予測がうまくいくのは、腰回りの脂肪が、2型糖尿病の発症に強く関係しているためと考えられている。


2005/03/28 農林水産省パンフレット:日本人の食料について考える
 農林水産省が、食料自給率について、その考え方や今後の取組についてわかりやすく紹介するため、新たな基本計画策定に伴い作成した資料が下記から手に入ります。これらの資料は、教育目的等の非商用の利用であれば、各種講演会等において配布したり、授業等においてご自由に利用できるとのこと。
http://www.kanbou.maff.go.jp/www/jikyu/files/jikyu_kojo.pdf


2005/03/27 7000万年前の恐竜化石から血管採取
 約7000万年前の肉食恐竜の骨の化石から、血管や細胞などとみられる伸縮性のある組織を採取することに、米ノースカロライナ州立大などのチームが初めて成功した。3/25日付の米科学誌サイエンスに掲載された (Schweitzer, MH., et al., Soft-Tissue Vessels and Cellular Preservation in Tyrannosaurus rex. Science. 307: 1952-1955. DOI: 10.1126/science. 1108397)。
 採取した組織からたんぱく質を分離できれば、恐竜の生態についての解明が進むことが期待される。恐竜の化石は18歳前後のティラノサウルスのもので、米モンタナ州の砂岩層から最近発掘された。発掘の際、分解したという。伸縮性のある組織は大腿骨部分から採取された。


2005/03/26 新たな食料・農業・農村基本計画
 2015年度までの向こう10年を見通した、新しい食料・農業・農村基本計画が閣議決定された。担い手に施策を集中し、他産業並みの所得を得られる農家を育てる農業構造改革や、品目横断的な経営安定対策(日本型直接支払い)の創設などが柱である。食料自給率45% の達成の年次を現行計画より5年先に延ばした。自給率引き上げるために、生産面ではコスト削減や需要に応じた生産を進め、消費面では「食育」を全国的に広める。そうした取り組みをいつやるかを明確にした工程表を作り、毎年、取り組み状況をチェックすることにしている。
新たな食料・農業・農村基本計画は農林水産省の下記のサイトで見られる。
http://www.maff.go.jp/keikaku/20050325/top.htm


2005/03/25 陽はまた昇り、陽は沈む
 陽はまた昇り、陽は沈む。
 尊敬する先輩が去り、待ち焦がれる人来たらず。
 これから先にどんな生活が待っているのだろうか。
 そんなことを思ってみてもあまり意味がない。
 未来を予見することはできないのだから。
 今の仕事、今の愉しみ、今の家族に集中していこう。
 陽はまた昇り、陽は沈む・・・のだから。


2005/03/24 肥満を防止するタンパク質AGFの発見
 尾池雄一(慶応大)らは、肥満を防止に効果を示すたんぱく質AGFを発見したと米科学誌ネイチャー・メディシン(Oike, Y., et al., (2005) Angiopoietin-related growth factor antagonizes obesity and insulin resistance. Nature Medicine. doi:10.1038/nm1214.)に発表した。糖尿病を防ぐ作用もあり、将来のやせ薬や、血糖値を下げる薬の開発につながる可能性が示唆されている。
 血管が新たに伸びるのを促す因子として見いだされたタンパク質AGF(Angiopoietin-related growth factor)を作れないようにしたマウスに普通にえさを与えると、生後半年で通常マウスの約2倍の体重になり、内臓脂肪も著しく増え、血糖値の調節もうまくできなくなり、糖尿病のような状態に陥った。
 逆にAGFを多くつくれるマウスは、体重は通常の4分の3程度の「やせ」になり、解剖すると内臓脂肪が少なかった。さらに、高カロリー食を与えても肥満や糖尿病にならなかった。


2005/03/23 リンゴを食べると乳ガン発生を抑制する可能性示唆
 米コーネル大学の研究グループは、毎日リンゴを食べると乳ガンの発生リスクが低下する可能性があることをマウス実験で確認したと発表した。リンゴに含まれる抗酸化成分が、細胞を破壊するフリーラジカルを除去したためとしている。腫瘍発生抑制率は、ヒトに換算したリンゴの量にすると1個で17%低下、3個で39%低下、6個で44%低下した。
Liu, R. H., et. al., Apples Prevent Mammary Tumors in Rats. J. Agric. Food Chem., 53: 2341-2343 (2005)


2005/03/22 健康情報に対する国民生活動向調査結果
 国民生活センターが大都市に居住する主婦を対象に、生活面での行動や意識を調べ、その現状と動向を発表している。政令指定都市と東京23区に住む、20~60代の既婚女性約1900人(回収率63%)を対象にアンケート調査を行った。その結果、「気になる健康情報」(複数回答)では、「生活習慣病」が49%、「肥満」が39%、「骨粗しょう症」が37%、「コレステロール」が36%だった。年代別に見ると、30~50代は「生活習慣病」、20代は「体形の維持」、60代では「コレステロール」が最も多かった。
 詳細は下記のサイトに記載されている。
http://www.kokusen.go.jp/cgi-bin/byteserver.pl/pdf/n-20050304_2.pdf


2005/03/21 富山県魚津市加積りんご
 加積りんご栽植100年、組合結成70年の記念式典に出席してきました。加積りんごは古くから組織化され、また、新しい栽培技術を積極的に取り入れ、消費者から高い評価を受けています。その一端を知ることが出来て大変勉強になりました。さらに大きく発展することを祈念して富山を後にしました。
加積リンゴの概略は下記に記載されています。
http://www.toyama.info.maff.go.jp/center/tokusan/page09.htm


2005/03/19 講演会「りんごの健康パワー」
【会員限定】
 魚津市加積りんごの植栽百周年記念式典
  演題:りんごの健康パワー
  (独)農研機構果樹研究所生理機能部品質化学研究室
  「果物&健康NEWS」編集長 田中敬一
  日時:平成17年3月19日(土)14:00~15:00
  場所:富山県魚津市(東京第一ホテル魚津)


2005/03/19 コラム:夢のある研究とは
 夢のある研究とは何だろう。夢とは将来実現したい願いであり、理想でもあります。果樹研究について言えば、果樹農家や消費者に喜んでもらえる研究だろうと思います。安くて美味しくて健康に役立つ上に、果樹農家も儲かる、そんな研究には夢があります。でも、夢は、かなうまで時間がかかりハードルがたくさんあります。だからこそ、夢なのですが。
 今、10年後に達成を目指した新しい研究目標が策定中です。その中に夢のある研究が目標に入ってほしいと思っています。しかし、現状は、なかなかそのようにはなりそうにありません。なぜなら、夢には高いハードルがあるため、100%研究目標が達成されるとは限らないからです。100%の成果を求める、いわゆる「成果・能力主義」が、そのチャレンジを立ち止まらせています。
 例えば、果物を食べると健康の維持増進に役立つことを証明する研究には夢がありますが、そこには高い壁があります。私たちの夢を実現するためには、この壁を乗り越える必要があります。私は、この壁を乗り越えられると信じていますが、10年以内にこの目標を達成できるのかと聞かれて100%大丈夫とは言えません。
 安くて美味しい果物を作る研究も、安く作るために作業を簡単にすることと、美味しくするために手間暇かけることの二律背反の壁を乗り越える必要があります。
 でも、チャレンジしなくては壁は乗り越えられません。本当は、こうしたチャレンジ精神を支えるのが仕事のはずの管理者たちは、失敗をおそれ目標に上げないようにしています。果物健康効果解明の研究はリスクが大きすぎる。安くて美味しい果物を作る省力化研究もリスクが大きすぎる。そのため、「成果・能力主義」者たちは、100%達成できる目標を求めています。研究担当者に責任が行かないようにするため?責任をとりたくないから?かっては、夢のある研究を支える人たちたちがいたように思う。


2005/03/18 ガン発症リスクに対する遺伝子と生活習慣解明研究が始まる
 特定のガンになりやすい遺伝子の型を持っている人は、日常生活でどんな点に気を付ければよいか。血液中のDNAから読み取った遺伝情報と生活習慣などのデータを組み合わせ、ガン発症のリスクを解明する大規模疫学調査を名古屋大学などが4月から始めると朝日新聞が伝えている(3/7)。
 5年かけて住民健診や人間ドックを受けた35~69歳の10万人を登録、食事や運動などに関する質問に答えてもらい血液も採取する。血液中の白血球からDNAを取り出すほか、コレステロールや肝機能などの検査値も記録する。
 遺伝情報に微妙な個人差を与えているDNA上の微細な差(一塩基多型)を数百カ所調べて、協力者をタイプ分けし、20年間の変化を追う。ガンが早期発見された人からは、発病に先立って検査値に変化あるかなど、診断に役立つ研究も行うという。最終的には、 この研究で体質に合わせて生活習慣を変えるガン予防につなげたいとしている。
  大きな課題の一つは、協力者のプライバシーの保護だ。採取した血液から遺伝子を調べる際にはバーコードで匿名化するなどデータ管理を徹底、判明した遺伝子の型については、すぐには重要度が確定しないことから協力者本人にも知らせない方針とのことである。


2005/03/17 国連総会でクローン人間の禁止宣言
 国連総会は3月8日に人間のクローンを禁止する宣言を加盟191カ国のうち、賛成84、反対34、棄権37の賛成多数で採択した。医療目的のヒトクローン胚(はい)から胚性幹細胞(ES細胞)作成も、認めない。

禁止宣言に賛成した国:
 クローン胚作成に反対するアメリカ・ブッシュ政権、ローマ・カトリック教会の勢力が強いイタリアや中南米各国。 中絶に反対する諸国は、いかなるヒトクローン胚の研究も、人間の命を奪う行為だとしている。

禁止宣言に反対した国:
 英国、ベルギー、シンガポール、中国、日本。医療目的のヒトクローン胚は認めるべきだとの立場。反対した国は、宣言に法的な拘束力はなく、今後の医療研究に影響はないとしている。
 宣言で禁止されたヒトクローン胚を用いた研究は、アルツハイマー病やがん、脊髄損傷などの治療に役立つとされ、ヒトクローン胚も含めた全面的に禁止する宣言の採択に反対。

▽ 争点はヒトクローン胚研究を禁止するかどうか。クローン人間に対しては禁止で一致している。


2005/03/16 日本の科学の強さは「凡人」の努力
 毎日新聞(3/16付け)「近事片々」から...50年前、糸川英夫博士は「1人の天才より100人の凡人」を持論にさまざまな分野から技術者を集め、「和の精神」で統率し、独創的な国産ロケットの打ち上げに成功した。ペンシルロケットだ。 ‥‥ が、日本のお家芸・工学で天才を支え生み出す「凡人」が目に見えて減りつつあるという。

▽ 工学以外の研究現場でも成果・能力主義の名の下に、「凡人」が切り捨てられまくっている。能力のない者は去れ、と言うけれど、じゃぁ、成果・能力主義を標榜する管理者に「凡人」以上の能力があるのかいな。「凡人」の日々の努力が日本の科学研究の強さじゃぁないのか。  糸川さんの言葉を噛み締めている。


2005/03/14 アメリカ人の平均寿命が過去最高(77.6歳)
 アメリカ疾病対策予防センター(CDC: Centers for Disease Control and Prevention)が、2003年のアメリカ人の平均寿命は、77.6歳と過去最高を記録したと発表した(CNN 05/2/28)。女性は80.3歳、男性は74.8歳で、25年連続で女性が上回った。 また、2002年の平均寿命は77.3歳だった。
 心臓病やがん、脳こうそくの3大死因による死亡率が減少したことが大きいとしている。この3大死因の死亡率は2.2-4.6%低下した。また、エイズウイルス、薬物・アルコール乱用、銃器が絡む死亡率も落ち込み、平均寿命が伸びる要因となった。逆に、死亡率が上昇したのは、アルツハイマーやパーキンソンなど、高齢者に関連する疾患であった。
http://www.cnn.com/2005/HEALTH/conditions/02/28/
life.expectancy.reut/



2005/03/13 コラム:冬来たりなば春遠からじ?
 日中はだいぶ暖かになってきました。ようやく寒さも遠のき、春の訪れを感じさせます。今年は雪も多く厳しい冬でしたが、間違いなく春がやってきています。 If winter comes, can spring be far behind? イギリスの詩人シェリーの「西風に寄せる歌」の一節だそうです。
 現実社会はどうでしょうか?つらい厳しいところを耐え抜けば、幸せや繁栄も間近だと言えるでしょうか。なかなかそう思えない日々が続いています。
 星新一のショートショートに、ある星の住人にたくさんの商品を買ってもらい喜んでいると、その住民は、これから冬眠するので、支払いは春になってからでよいかとその商人に願いでました。商人はもうけの額を計算しながら喜んで承諾した。ところが、その星では次の春が来るのは1000年後。
 果物研究号は暗闇の中を飛行中です。やがて春が訪れると信じ、春が来る日を楽しみにしていました。ところが、自然界には春がそこまで来ているのに、さらに暗黒星雲の中心に突入しそうです。春なんて来ないかも知れない。来ても1000年後ではなぁ。


2005/03/12 牛乳だけではカルシウム不足に
 牛乳ばかりたくさん飲んでも、骨のじょうぶな子供には育たないという研究論文がアメリカ医学誌ペディアトリックスに発表されたとCNNが伝えている(05/03/09)。乳製品以外にもカルシウムの多く含まれる食事をバランスよくとり、適度に運動することが重要だという。

 ワシントンにある「責任ある医療を求める医師会(PCRM)」は、カルシウム摂取と骨の強度の関係を調べた37の研究内容をまとめた結果、27の研究が、牛乳を飲む量を増やしても骨の強化にはつながらないと結論していることが分かったという。そのため、 牛乳1カップと同量のカルシウム摂取源としてほかに、カルシウム強化オレンジジュース1カップ、ゆでたケールまたはカブラ菜1カップ、豆腐2/3カップ、ブロッコリー1カップと2/3、などを例として挙げ、牛乳だけでなく多種多様な食品からカルシウムを摂取するよう提唱している。

▽この報告も栄養バランスの良い食事が健康を増進することを支持する論文だと思う。最近の疫学研究の論文では、骨粗しょう症に有効な食品の1つとして果物の摂取の重要性を指摘している。



2005/03/11 日本型フードガイドの準備
 農水省と厚労省は、健康に配慮した食生活に役立てるフードガイド(仮称)の具体的な検討に入ったと日本農業新聞が伝えている(05/3/8)。イラストで主食や主菜、副菜など料理別に望ましい栄養素の摂取量を示すことを目標に5月までにまとめる。

 フードガイドは、2000年に作成された「食生活指針」を広く国民に浸透させることが狙いで、1回に食べる料理で主材料に含まれる望ましい栄養素の摂取量を例示する。ご飯など主食類で炭水化物を摂取し、主菜類(肉、魚、卵料理)でたんぱく質を摂取する。副菜類(野菜、海藻料理)のほか、果物と牛乳、乳製品を「積極的に取りたいもの」に、糖分や油脂類を「取り過ぎに注意したいもの」に位置付けた。


2005/03/10 コラム:食と農のを結ぶ健康地域づくり
 「食育」、「地産地消」、「健康日本21」運動の現状をふまえ、今後どのように運動を展開するかを考えると、「地産地消」、「食育」、「健康日本21」の運動を担う担当者が別々に行うのではなく連携し、一体化して行う必要があると考えられます。その連携を支えるキーワードが「健康地域づくり」ではないかと思う。

 私たちは何を食べて生きてきたのか。食べ物はどこからやってきたのか。この食物の種をまいたのは誰か。台風や長雨をどれほど心配したのか。地域で生産された果物などを食べるとどうして健康に役立つのか。元気で健康な村づくりをするためには食生活をどうしたらよいか。

 子供たちがこうした問いを考え、味とともに家族に伝える。「食育」は、食と農を一体のものとしてとらえることから始まると思う。さらに、家族の健康を思う気持ちを結びつけ、地域から食を変える地産地消活動や健康21の運動を通じて健康地域づくりへと発展させることが重要です。そのためには、それぞれの運動を担う農家、行政、医師、教師、保健士・栄養士、研究者の連携が必要です。それぞれが相互に理解しあい地域の健康づくりに取り組めば大きな成果が得られると期待されます。

 また、都市に住む消費者の健康に対する関心は高いものがあります。沖縄の食材への関心は、健康・長寿と切り離しては考えられません。従って、果物を中心とした健康づくりに成功した地域には、おのずと消費者の関心が集まるのではないでしょうか。スローフードに代表される様に都市の消費者側からは確実に農村への共生・交流を求める期待感が出てきています。こうした期待を都市と果物産地の交流や地域活性化に結びつけ、果物の消費拡大につなげていくことが大切であると思います。


2005/03/09 コラム:健康日本21の意義と問題点
 健康日本21は、一人ひとりの健康を実現するための、新しい考え方による国民健康づくり運動です。 この運動指針は、厚生省(現厚生労働省)が提言としてまとめたもので、自らの健康観に基づく一人ひとりの取り組みを支援し、健康を実現することを理念としています。この理念に基づいて、疾病による死亡、罹患、生活習慣上の危険因子など、健康に関わる具体的な目標を設定し、十分な情報提供を行い、自己選択に基づいた生活習慣の改善および健康づくりに必要な環境整備を進めています。健康21は、一人ひとりが稔り豊かで満足できる人生を全し、併せて持続可能な社会の実現を図る運動として2000年に始まりました。

 しかし、健康21の中間評価では、健康状態や食生活など70項目の目標値に対して20項目で悪化していました。野菜の摂取量では292gから285g(目標350g以上)に減少、日常生活の歩数で、は男性が8202歩から7676歩(目標9200歩以上)に、女性も7282歩から7084歩(同8300歩以上)に減っていました。

 肥満の割合では、20~60歳代の男性で15%以下の目標に対して、97年の24%から02年には29%と悪化、女性では40~60歳代で20%以下の目標に、25%から26%と悪化していました。20歳代女性では、やせすぎの人が23%から27%に増え、目標の15%以下から遠のいていました。さらに、肥満や糖尿病の患者数が増え、運動量が減っています。そのため、今後の運動の重点化について検討が始まっています。


2005/03/08 コラム:地産地消運動の意義と問題点
 地産地消運動とは、「地域で生産されたものを、地域で消費すること」、言い換えれば、「地域で消費されるものを、地域で生産すること」です。
 最近は、「食」の安全について消費者の関心が非常に高くなっており、新鮮で安全な、安心できる農産物が求められています。地産地消運動は、地域でとれた新鮮で安全・安心できる農産物を通じて、作る人、流通する人、加工する人、販売する人、消費する人などが連携し、お互いの顔が見える関係を築いていく取り組みです。また、生産者の顔がみえる農産物を食べたり、いっしょに収穫したりするなど農林産物を通じて交流することにより、地域や農業に対する理解が深まり地域が豊かになることを目標としています。

 「地産地消」は、消費者の食に対する安全・安心志向の高まりを背景に、消費者と生産者の相互理解を深める取組みとして期待されていますが、農林水産業以外での認知度は必ずしも高くありません。家計調査によれば、果物産地と産地の県庁所在地における果物の消費量をみると、生産量の多い県の人が必ずしもその果物を他の県の人より食べているわけではないなど、生産と消費が必ずしも一致していません。従って、生産者と消費者がお互いの考えをもとに「食」と「農」の距離を縮める必要があります。


2005/03/07 コラム:食育運動の意義と問題点
 子どもたちが豊かな人間性をはぐくみ、生きる力を身に付けていくためには、何よりも「食」が重要です。食育基本法では、食育を生きる上での基本とし、知育、徳育及び体育の基礎となるべきものと位置付けています。そのため、様々な経験を通じて「食」に関する知識と「食」を選択する力を習得し、健全な食生活を実践することができる人間を育てることを目標としています。

 一方、社会経済情勢がめまぐるしく変化し、日々忙しい生活を送る中で、人々は、毎日の「食」の大切さを忘れがちです。国民の食生活においては、栄養の偏り、不規則な食事、肥満や生活習慣病の増加、過度の痩身志向などの問題に加え、「食」に関する情報が社会に氾濫する中で、人々は、食生活の改善の面からも、「食」の安全の確保の面からも、自ら「食」のあり方を学ぶことが求められてます。

 また、都市と農村の共生・交流を進め、「食」に関する消費者と生産者との信頼関係を構築して、地域社会の活性化、豊かな食文化の継承及び発展、環境と調和のとれた食料の生産及び消費の推進並びに食料自給率の向上に寄与する運動として展開されています。

 しかしながら、食育運動の現状は、一部先駆的な教師による取り組みがあるものの、児童・生徒を指導する教師自身の知識や体験が不足していることや、農業関係者からの期待が早急で大きすぎるなどの問題点も指摘されています。例えば「学校側に対してどこも同じようにアプローチしてくるのでその対応に追われて辟易している」という教育関係者の声もあることから、どう伝えるかが課題となっています。


2005/03/06 コラム:産地移動より産地形成が重要
 産地移動より産地形成が重要と思う。温暖化防止対策が失敗した場合、産地が移動します。とはいえ、地球が温暖化し産地が移動するのは30年後、50年後と予想されます。こうした予測はありますが、現在の農業施策の中で、産地移動は重要な研究課題なのだろうか。

 一方、我が国の農産物自給率は40%であり、自給率向上が最重要課題とされています。コメの自給率はほぼ100%ですが、他の農産物は輸入に頼っています。そのため、コメの消費拡大とともに、農地の効率的な利用が求められています。性別・世代別の消費動向やライフスタイルの変化を把握し、こうした動向にあわせて、消費が伸びている農産物の生産を増やす必要があます。そして、そのための農地を転換・確保するとともに、儲かる産地を形成することだと思います。そうすれば、おのずと、新しい担い手を育成・確保できるのではないでしょうか。

 産地の移動は気象条件だけでおきるわけではありません。コメからムギへの転換、ミカンから「デコポン」、「清見」などその他のカンキツへの転換に見られるように経済的要因などでもおきます。

 以上のような理由から、温暖化による産地の移動より、自給率向上のための新しい産地形成の研究が重要だと思います。また、農業施策の重点事項に上げられている「食育」や「地産地消」に対する研究面からのサポートも必要です。最近の農業研究の目標が、農家・農業・消費者の求めと乖離しているのではないかと心配しています。


2005/03/05 コラム:地球温暖化防止対策と地球温暖化対策、異常気象対策の違い
 京都議定書の発効によって国際的な義務となった温室効果ガスの90年比6%削減のための政府の目標達成計画の骨格が固まった。今後、石油や石炭などエネルギー関連の二酸化炭素(CO2)などの排出量が増えると想定し、工場など産業部門の削減幅を大幅に強化する。

 2003年度の日本の温室効果ガス排出量は90年に比べ8%増加しているので、2010年の排出量は6%増と想定されるため、目標達成には12%の削減が必要としている。このため、エネルギー起源のCO2を4.9%、代替フロンで1.3%、メタンなどで0.3%削減し、森林により3.9%CO2吸収し、国際間の取引による京都メカニズムによる1.6%と合わせて12%を達成する。

 部門別の内訳は、製造業など産業部門が90年比8.6%減で、大幅な削減目標が課せられた。家庭などの民生部門は大綱では2%減だったが、排出量が大幅に増えているため、その伸びを抑えることに力点を置き、10.8%増(家庭6%増、オフィスビルなど業務15%増)とし、また、運輸部門は15.1%増と増加を容認した。

 農業に関係した温暖化防止対策では、森林によるCO2の吸収が上げられている。しかし、農業関係者の一部に、CO2を削減する温暖化防止対策を、地球が温暖した後の温暖化対策や異常気象と混同している向きがあるように思う。また、温暖化後の対策を行うのは温暖化防止対策が破綻した後に行う施策で、異常気象(台風や冷夏、暖冬など)に対する対策は、温暖化防止対策とは異なっている。

参考:97年12月に京都で開催された気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3、京都会議)で先進国及び市場経済移行国の温室効果ガス排出の削減目的を定めた京都議定書の骨子は下記のサイトで見ることが出来る。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kankyo/kiko/cop3/k_koshi.html


2005/03/04 最も小さな恒星
 欧州南天天文台(ESO)は、これまでで最も小さな恒星OGLE-TR-122 を見つけたと発表した。質量は太陽の10分の1を下回っており、自ら光らない木星とほぼ同じ程度の大きさしかないという。
 この星は、りゅうこつ座の方向にあって、太陽と似た星の周りを7.3日の周期で回っている。精密に観測した結果、質量は木星の96倍あるものの、大きさは16%ほど上回っているだけだと分かった。 星の中心部で起きている核反応は非常に弱く、明るく輝くことはできない。「褐色矮星(わいせい)」と呼ばれる珍しい星の一種。
 ESOのレポートは下記のサイトで。
 http://www.eso.org/outreach/press-rel/pr-2005/pr-05-05.html
 OGLE-TR-122 と太陽、木星との比較写真は下記のサイトで。
 http://www.eso.org/outreach/press-rel/pr-2005/images/phot-06c-05-preview.jpg


2005/03/03 禁煙の時期
 米国とカナダの研究チームは、喫煙の習慣を止めれば、たとえ肺疾患を発症した後でも数年間寿命が延びると報告し、禁煙に遅すぎるということはほとんどないことを明らかにした。調査では、10カ所の病院の協力の下に、35-60歳で、肺疾患を持ちながらそれを病気と自覚していなかった人5887人を対象に実施した。その結果、禁煙プログラムを利用して禁煙に成功した中年のヘビースモーカーの死亡率は、通常のほぼ半分に低下していることが分かった。
 下記のサイトで論文全部が見られる。
 http://www.annals.org/cgi/content/full/142/4/233


2005/03/02 日本医師会の健康被害対策
 食品による健康被害を早く察知し被害拡大を防ぐため、日本医師会は、医師が診療を通じて得た被害情報を収集する「食品安全に関する情報システム」をつくる方針を固めた。昨年、スギヒラタケを食べ急性脳症を起こす人が相次いだり、健康食品が絡む健康被害報告が増えていたりすることに対応する。行政のように原因が確定的になってから対応したのでは、手遅れになる恐れがあるとし、医師が『怪しい』と感じた段階で情報を把握できる仕組みを作るとしている。
 計画では、患者が不調を訴えて受診した際、食品が原因の可能性もあると医師が判断した症例は、原因がはっきりとしなくても医師会に報告する。似たような症例が多く集まれば、問題がある可能性が高いとして警告を出すことも検討する。
 この方針については日本医師会の下記のサイトで読める。
 http://www.med.or.jp/nichinews/n161105g.html

▽ 健康に係わる情報には不正確な場合が多い。マスコミの影響かも知れないが、普通なら顧みられることのない論文を引き出してきて、あたかも病気が予防できると思わせている商品もある。


2005/03/01 クリント・イーストウッドの受賞の言葉
 ロサンゼルスのコダック・シアターで28日、第77回アカデミー賞の授賞式が行われ、作品賞、監督賞、主演女優賞、助演男優賞に「ミリオンダラー・ベイビー」が選ばれた。「許されざる者」に続く作品賞と監督賞のダブル受賞を果たしたクリント・イーストウッド(74)は、最高齢の監督賞受賞者となった。客席にいる96歳の母親を紹介して、「(健康な)遺伝子をくれた母に感謝したい。私は本当に幸せ者だ。まだこうして仕事ができる、本当にラッキーなことだ」と感謝した。また、名誉オスカーを受賞したシドニー・ルメット監督(80)に触れ、「彼に比べれば僕はまだ子供だ。まだまだやらなきゃならないことはたくさんある」と意欲を示した。

▽  最近は忙しくて映画を見る機会がないが、映画に関係したニュースには関心がある。特に今回は、74歳のクリント・イーストウッドが選ばれたことはうれしい。また、そのコメントも良いのではないか。70歳現役を見習いたい。
 話は変わるが、日本人はスピーチが外国人に比べて下手だという。確かに、アカデミー賞などの受賞の言葉はウイットに富んでいて楽しい。アカデミー賞の受賞演説は、すぐにCNNなどに掲載されて全世界に配信される。きっと授賞式に臨む前に考えているに違いない。ところが、日本ではこうした受賞の言葉はほとんど報道されない。つまらないから報道されないのか、報道されないからつまらないのか分からないが、このことと関係があるだろう。思うに、日本のマスコミは、人を伝えることを不得意としているのではないか。