2004年11月


2004/11/29
 オリーブオイルの成分に心臓病を予防する一定の効果があることを米食品医薬品局(FDA)が認め、商品ラベルで効能をうたうことを許可している。 (The Food and Drug Administration (FDA) today announced the availability of a qualified health claim for monounsaturated fat from olive oil and reduced risk of coronary heart disease (CHD).: 2004/11/1)
 総カロリーが増えない範囲内で動物性脂肪などの代わりにオリーブ油を食べれば、心臓病のリスクが減らせるとしている。オリーブオイルに豊富に含まれる一価不飽和脂肪酸(オレイン酸)が良い働きをする。
 http://www.fda.gov/bbs/topics/news/2004/NEW01129.html


2004/11/28
 世界最高級のワイン「ロマネコンティ」が作られる赤ワイン用品種「ピノノワール」は、1370年から2003年までの収穫時期の記録が教区と市の記録文書に残っている。そこで、この資料を用いて生物気候学の観点から、産地であるフランス北東部ブルゴーニュ地方の春夏の気温変動を調べた結果を科学雑誌ネイチャー(Nature. 432: 289-290; doi:10.1038/432289a)に発表した。異常な猛暑の影響で、同国内だけで1万5000人近くの死者が出た昨年の春夏の気温は、分析できた1370年以降で最も高かったという。そのほか、1960-1989年は平均より5.86℃高く、1523年は4.10℃高いことがわかった。


2004/11/27
  血液型で性格決めつける番組に対して視聴者から抗議相次いでいると毎日新聞が伝えている(04/11/27)。NHKと民放が設立した第三者機関、放送倫理・番組向上機構(BPO)の青少年委員会は番組内容などを検討し、「科学的根拠があるかのような体裁で問題がある」などと判断、近く民放各社に対し、番組制作にあたり慎重な対応を、と要望する。
 科学的根拠のないものを科学的に根拠があるように見せる番組を批判することは大変難しい。なぜなら、もともと科学的な根拠がないから、統計の取り方とか実験方法とか基本的な点から問題点を明らかにしなくてはならないため、科学的な論理を視聴者に思うように伝えられない。しかし、岡山大の長谷川芳典教授の下記のサイトは、この難しい問題を科学的に批判している。
http://www.geocities.jp/hasep_diary/bloodtype/


2004/11/26
 食生活などがかかわる2型糖尿病で、肥満男性に比べてなりにくいとされるやせた男性でも、飲酒量が増えるにつれて発症の危険性は高まることが、厚生労働省研究班の大規模疫学調査で分かった。その理由として、やせた人には、血糖値を抑えるインスリンの分泌能力が弱い人が多いこと、また、長期の飲酒も分泌能力を下げることから、両者が複合しておきるとしている。そのため、ほかの病気への影響も考慮し、日本酒に換算し1日1合を超える飲酒習慣には注意が必要としている。
 下記のサイトに結果が示されている。
 http://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/20/inshu_dm.html


2004/11/25
 今冬(平成16年度)のインフルエンザ予防の標語は「栄養、睡眠、予防接種で三位一体」と決まった。インフルエンザワクチンについては、昨シーズン使用量の1.4倍となる2,061万本(1mL換算)の供給が予定されており、そのうち100万本のワクチンを不足時の融通用として確保することとしているので不足はおきないと予測されている。
 インフルエンザ総合対策のサイトは下記
 http://www.mhlw.go.jp/houdou/0111/h1112-1.html
 インフルエンザのQ&Aのサイトは下記。大変参考になる情報がたくさん掲載されている。
 http://www.mhlw.go.jp/houdou/0111/h1112-1c.html


2004/11/24
 平成17年度から平成21年度の5年間使用する「日本人の食事摂取基準(2005年版)」が厚生労働省から発表された(下記サイト)。今までは「第○次改定 日本人の栄養所要量-食事摂取基準-」としていたが名称も変更された。
 http://www.mhlw.go.jp/houdou/2004/11/h1122-2.html
 生活習慣病予防に重点をおき、以下の栄養素について新たな指標「目標量」を設定した。
 ・ 増やすべき栄養素
  食物繊維、n-3系脂肪酸、カルシウム、カリウム
 ・ 減らすべき栄養素
  コレステロール、ナトリウム(食塩)
 ・ 脂質については、脂肪エネルギー比率のみならず、その質も考慮する必要があり、飽和脂肪酸、n-3系脂肪酸、n-6系脂肪酸、コレステロールについても策定した。

 食事摂取基準とは、健康な個人または集団を対象として、国民の健康の維持・増進、エネルギー・栄養素欠乏症の予防、生活習慣病の予防、過剰摂取による健康障害の予防を目的とし、エネルギー及び各栄養素の摂取量の基準を示すものである。


2004/11/24
 くだもの・科学・健康ジャーナルにも色々なサイトが出来てきたので検索ソフトを導入した。フリーソフトも検討したが、検索結果が思わしくなかったので、広告が表示されてしまうがgoogleの検索システムを導入した。これで、探しているサイトに到達できればよいのだが。またもし、フリーソフトでgoogle並みに検索できるものがあったらメールをいただければ大変うれしい。


2004/11/23
 厚生労働省の薬事・食品衛生審議会表示部会は、「アレルギー物質を含む食品に関する表示について」検討報告書(食品の表示に関する共同会議報告書No.4:発表サイトは下記)を公表している。
 この調査の結果をみると、特定原材料5品目(小麦、そば、卵、乳、落花生)で全アレルギー発症数の約70%(全3840件中2702件)、全ショック発症数の約75%(318/424)を占めている。また、発症数の視点から表示を義務づけた鶏卵、牛乳・乳製品及び小麦については、それぞれ全アレルギー発症数の約39%(1486/3840)、約16%(616/3840)、約8%(311/3840)であり、症状の重篤性の観点から表示を義務づけたそば、落花生は、それぞれ全ショック発症数の約7%(28/424)、約4%(18/424)である。
 今回の結果をふまえ、厚生労働省は、卵、乳、小麦、ソバ、落花生の特定原材料5品目(食品衛生法表示義務)の維持と、サバ、大豆など表示を推奨する19品目に、新たにバナナを加えた。

 食品の表示に関する共同会議報告書No.4は下記のサイトで見られる。
 http://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/07/s0723-12.html


2004/11/22
 睡眠時間が短い人ほど太る傾向が強いとアメリカ・コロンビア大学とセント・ルーク-ルーズベルト病院のチームがまとめ米肥満学会で発表したと内外のメディアが伝えている。
 1万8000人(32~59歳)のデータを分析した健康栄養調査(NHANES: The federal government's National Health and Nutrition Examination Survey)によると、睡眠が7~9時間の人に比べ、4時間以下しか眠らない人は73%も肥満のリスクが高かった。睡眠5時間程度の人でも50%、6時間程度では23%、それぞれ太りやすかった。 起きている時間が長ければ食べ物を口にする機会も多く、こうした体内状態が食べ物の摂取を促進するらしい。起きている時間が長いと消費カロリーも多いものの、摂取が消費を上回っていることが、今回の大規模な調査から明かとなった。
 NBCのサイトは下記
 http://www.msnbc.msn.com/id/6504280


2004/11/22
 「旬のやさしいくだもので健康づくり」(11/2)をテーマ行われた講演会でご一緒した平野美由紀さんがご自身のコラム「My Favorite Foods-第27回なんてつたつてフルーツ」(gooダイエット:主婦の友社)でこのホームページを紹介して頂いた。ありがとうございました。
 平野さんのコラムは下記
 http://diet.goo.ne.jp/nonmember/rensai/favorite/index.html


2004/11/21
 長野県立須坂病院、長野女子短期大学と長野県農村工学研究所の研究グループは、リンゴを毎日1個以上食べると血液がさらさらになることを明らかにしたと日本農業新聞(04/11/16付)が伝えている。女子短大生22人を対象に、1日1個食べるグループと2個相当のジュースを飲むグループに分け、1週間摂取してもらって摂取前と後、摂取後1週間の血流速度を調べた。その結果、リンゴを食べたグループの血流速度は12%ほど速くなっていた。また、食べるのをやめて1週間後には元の速さに戻っていた。りんごジュースの場合も同じ傾向だったが、改善効果はリンゴを食べたグループを上回ったとしている。


2004/11/21
 厚生労働省の検討会は、高齢者などの痴呆症の呼び名を今後は「認知症」とする方向で一致した。痴呆症の持つマイナスイメージを払しょくするためで、十二月末の検討会で最終的に決めるとしている。
 「痴呆」に替わる用語に関する検討会『第2回資料』は下記のサイトで見られる。
 http://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/09/s0901-3f.html
 「痴呆」に替わる用語の検討についての検討経過は下記のサイト
 http://www.mhlw.go.jp/topics/2004/10/tp1001-5.html


2004/11/19
 毎日1個のリンゴが、アルツハイマー病など痴呆(ちほう)の予防に役立つ可能性があると読売新聞が報じた(04/11/18付け)。アメリカ化学会の専門誌の来月1日号に掲載されるという。詳細が分かり次第本サイトや「果物&健康NEWS」に掲載する。
 米コーネル大などの米韓共同チームによると、リンゴには高い抗酸化作用を持つ物質ケルセチンが多く含まれている。抗酸化物質には、アルツハイマー病の進行や脳細胞の老化などから、細胞を守る効果があるとされ、抗酸化力の高いケルセチンが特に注目されている。そこで、マウスの脳細胞を過酸化水素にさらした状態でケルセチンの効果を調べた結果、抗酸化作用が高いとされるビタミンCよりも明確に高い効果が確認された。 そのため、研究チームは、実験結果をもとにした目安として、「リンゴを1日あたり少なくとも1個食べれば体内の一定量が確保できる」としている。


2004/11/18
 長持ちする人工関節の開発について東京大のチームが英科学雑誌ネイチャーマテリアル(Nature Materials 3: 829-836 (2004))に報告した。人工関節は、骨折や骨粗鬆(そしょう)症、関節炎などで機能を失った関節の代わりに埋め込まれる。従来の人工関節はポリエチレン製が多く、長く使ううちに摩耗して微粉が生じるため、これを除こうとする生体因子によって、人工関節を固定している周囲の骨が壊れてしまう。
 今回報告された長寿命の人工関節は、新開発した生体になじみやすい有機化合物(2-methacryloyloxyethyl phosphorylcholine (MPC))をポリエチレンの表面に化学的に結合させた生体適合ポリマーで作られており、摩耗による微粉末の発生を防ぐことが出来る。ネズミの実験では、周囲の骨が壊れる現象も全く見られなかったとしている。


2004/11/17
 文部科学省科学技術・学術審議会専門委員会に出席してきた。会議も煮詰まり、今年度中に5訂成分表の改訂版と脂肪酸成分表が公表になる予定である。


2004/11/16
 肌や髪の毛を黒くするメラニン色素が、皮膚や髪の毛を作る細胞に運ばれる仕組みを理化学研究所のチームが解明し、イギリス科学雑誌Nature Cell Biology (doi:10.1038/ncb1197 (2004))に発表した。メラニン色素は、メラノサイトと呼ばれる細胞で合成され、細胞内の小胞(メラノソーム)に貯蔵される。この小胞が細胞内の深部から細胞膜近くまで運ばれ、さらに皮膚や髪の毛を作る別の細胞に受け渡されて、肌や髪の毛が黒くなると考えられている。 そのため、このメラニン色素の輸送を制御できれば、美白や白髪予防ができると期待される。
 研究チームは、メラニンの入った小胞にある特定たんぱく質にエフェクター分子Slacが結合すると、小胞が細胞の深部から細胞膜近くへ運ばれること、また、細胞膜付近では別のエフェクター分子Slp2-aが小胞を細胞膜につなぎとめ、隣接する皮膚や髪の毛に受け渡す仕組みを解明した。このことから、このメラニンの輸送を阻害することで美白を保つことが出来ると期待されている。


2004/11/15
 愛媛県今治市立鳥生小学校での食育モデル授業「自分の食と健康を考える」を一般公開したと日本農業新聞が伝えている(04/11/15)。今治市は、農林水産省農政局などと「食教育研究会」を組織し、小学生を対象にした食育プログラムを作った。カリキュラムのポイントは、調理の技を身に付け、自分の食事を変えることだそうである。この運動が、大きく育ってほしい。
 農林水産省中国四国農政局愛媛農政事務所の食育に対する取り組みを下記のサイトで見られる。講師の派遣も行っているとのことである。
 http://www.chushi.maff.go.jp/nousei/ehime/kyouiku/kyouiku2.htm
 農林水産省中国四国農政局消費・安全部消費生活課が設置している食育活動を手助けする食育相談アドバイザーのサイトは下記。
 http://www.chushi.maff.go.jp/syokuiku/adviser/syokuadob.htm


2004/11/14-15
 「続5分間ミステリー」(ケン・ウェバー著:片岡しのぶ他訳)を読み終えた。なかなかおもしろかった。ベストセラーになるのも分かる。全部で34編のショートストーリーで、それぞれに設問と解答が付いている。なかなか正解には達しないが、それはそれでおもしろい。著者はカナダ・トロント大学の教授で雑学知識が詰まっている。また、今までの推理小説にはない数学や歴史の問題も含まれている。この本を読んで、いつか、私もこのようなミステリーを書いてみたいと思った。


2004/11/13
 青森の中高生がリンゴサミットを開催し、リンゴの魅力を語り合ったと日本農業新聞が伝えている(04/11/13)。「高校生の視点でリンゴ情報を発信しよう」と、青森県平賀町の県立柏木農業高校で開かれたサミットに、農高や中学校合わせて17校が参加した。藤崎園芸高はリンゴの専門知識を生かしリンゴ大使として首都圏で行った販売実習を、平賀東中学は修学旅行先の東京で、自分たちが作ったポスターを商店街に張り出したしたことを報告した。また、意見発表では栽培経験や販売実習の成果をリンゴのPRに生かしたいなどがでたという。

2004/11/13
 スパムメールが大量に送られてくるので、メール送信をCGIプログラムで行うように変更した。少しは改善されるのだろうか。あるいは、もう遅いのか。


2004/11/12
 アメリカの科学誌「ポピュラーサイエンス(Popular Science)」は、2004年の新製品大賞を発表した。この賞は、革新的な新製品を表彰するイベントで、今年で17回目。12部門で計100製品を選び、各部門ごとにグランプリが選定されている。アメリカ・エンルクス社の35年以上使える家庭用LED電球、日本のシャープのノートパソコン、パイオニアのDVDプレーヤー「DVJ-X1」や、東芝の0.85インチ超小型ハードディスクドライブ、ニンテンドーDSなどが入選した。
  2004年の結果は下記のサイトで
 http://www.popsci.com/popsci/bown/2004/grand


2004/11/11
 2005年日本国際博覧会(愛知万博)に参加するフィリピンの政府館は、特産のココナツをシンボルとした展示にすると共同通信が伝えている。テーマは「ウスボン(芽生え)-生命の種」。パビリオンの床材などにココナツを活用するほか、エッセンスオイルの体験スペースも設ける。立食のファストフード店もあり、ココナツのパイなどが提供されるとのこと。調べたわけではないが、万博などで果物がシンボルになるのは珍しいのではないか。


2004/11/11
 毎日農業記録賞最優秀賞は郡山市の鈴木光一さんに決まった。受賞作は、福島県郡山市のブランド商品を目指した新種の枝豆「グリーンスウィート」を仲間と生産した体験記。「初年度の03年は10アール当たり50万円の粗収入。コメの約3倍です」とのこと。農家は後継者難と言われる。「収益性が低く、他で働いた方が楽できると思われている。しかし消費者が欲しい物を種苗選びの時から考え、生産から流通まで総合的に見れば、国民の食意識が高まる中で農業ほど有望な産業はない」とみている。農家と消費者の距離を近付ける努力は、個人では限界もある。「農家、消費者、農協、行政が別々に物を見ている。横断的にコーディネートする人や機関が必要では」と提言している。

 日本の農産物は高いと言われているが、農家の収入は決して多くない。むしろ少ない方であろう。もし、収入が多ければ後継者離れがおきることはないだろう。収入が多ければ、農作業が大変でも後継者は帰ってくる。例えば、テレビの製作に係わる労働はとてもきついが若者は集まってきている。そのため、農家の収益を上げる方法が研究者に求められている。しかし、現在のところ、残念ながらそのような研究目標は見えてきていない。そうした中、鈴木さんのような人たちが農業の未来を切り開いている。


2004/11/10
 磁石に強く引きつけられる性質(磁性)を持つ新しい液体を合成することに、東京大の浜口宏夫教授らが成功したと共同通信が9日伝えている。磁石の粉末を油に交ぜた従来の磁性流体などに比べ常温でも安定しており、分離しにくいなどの特徴がある。磁性を持つ塩化鉄酸などを使ってイオン液体を合成したところ、液体自体にも磁性が確認された。通常の液体では分子がバラバラになっているのに対し、イオン液体の場合は、部分的に分子が整列した状態になっているとみられ、この部分が磁性の発揮に関連しているらしい。

磁性を持つ液体化合物の薬への応用の可能性
 病気になって病院に行くと、薬があたえられる。しかし、体内に注入された薬は、血管を通して全身をめぐり、病気を引き起こしている患部にだけ薬が作用するわけではない。体中に回った薬は、患部以外の部分にも影響をあたえ、副作用をおこすことがある。そのため、副作用を防ぐには、薬が必要な患部だけに作用するようにすればよい。こうした考えで研究されている薬が、「標的指向性ドラッグ・デリバリー・システム(DDS)」または、「ミサイルドラッグDDS」と呼ばれる新しい投薬法である。こうした「ミサイルドラッグDDS」は、21世紀の夢の製剤として期待され、世界中の研究機関が研究・開発に取り組んでいる。
 浜口教授らの開発した磁性の物質に薬を包み込んで、磁石で、患部の細胞だけに薬を与えれば、薬の量を減らせるばかりでなく、副作用も抑えられる。つまり、必要な時に、必要な場所へ、必要な量だけ薬を運ぶことができると考えられる。今後の研究の進展が楽しみな研究成果である。

簡単に言うと
 薬を閉じこめた磁気を帯びた液体をミサイルとして、身体の外から磁石でミサイルを患部へ誘導して薬を投薬(投下)する。


2004/11/09
 大阪府立食とみどりの総合技術センターは園芸療法向きのブドウ栽培モデルを考案した日本農業新聞が伝えている。体に障害があったり歩くことが困難な高齢者など、車いすでの作業を想定し、ブドウのつるを横にはわせ、垣根は上下50センチの範囲で動くため、正面を向いて作業できるので身体への負担も少ないという。


2004/11/09
 健康日本21は今までのところあまりうまくいっていないようだ。特に食生活の面での改善が遅れているように見える。今後、この運動は、厚生労働省だけで進めるのではなく、文部省、農林水産省との連携を図る必要があるのではないか。


2004/11/08
 2010年までの国の健康づくり10カ年運動「健康日本21」(2000年スタート)で掲げた健康状態や食生活など70項目の目標の達成度を調べたところ、調査中の項目もあるが20項目で悪化した(中間評価)。
 現状と目標値を比較したところ、1日に食べる野菜は292グラムから285グラム(同350グラム以上)に減少、日常生活の歩数は男性が8202歩から7676歩(目標9200歩以上)に、女性も7282歩から7084歩(同8300歩以上)に減った。
 肥満の割合では、20~60歳代の男性で15%以下にする目標を立てたが、97年の栄養調査の24%から02年には29%と悪化。女性は40~60歳代で20%以下を目標にしたが、25%から26%と悪化した。20歳代女性では、やせすぎの人が23%から27%に増え、目標の15%以下から遠のいた。
 さらに、肥満や糖尿病の患者数が増え、運動量が減っていることから厚生労働省は悪化した項目について重点的に取り組むとしている。

「健康日本21 」における目標値に対する暫定直近実績値は下記のサイトに掲載されている。
http://ml-www.kenkounippon21.gr.jp/kenkounippon21
/ugoki/houkoku/pdf/0410mokuhyou_zanteiti.pdf


 
2004/11/07 pm6:30
 工場に搬入され、傷ついた原料用の国産リンゴからカビ毒である「パツリン」が検出されたことが7日、東京都健康安全研究センターの調査で分かった(共同通信など)。
 国内では、市販の外国産リンゴ果汁からパツリンが検出された例があるが、国産リンゴの果実から見つかったのは初めてである。パツリンが検出されたのは、ジュースに加工する前のリンゴの傷んだり腐ったりした部分からで、実際に果汁原料に利用され、リンゴジュースなどに製品化される可能性は低い。また、過去に行われたリンゴ果汁におけるパツリンの汚染実態調査の結果、国産市販リンゴジュース製品42件、濃縮果汁8件からはパツリンは検出されなかった(下記農林水産省プレスリリース参照)。
 さらに、リンゴジュースに含まれているパツリンの法律による規制についてはすでに平成16年6月1日から施行されており、国内産のリンゴジュースの検査は、都道府県の検査機関によって行なわれており、安全性が確保されている。

政府におけるリンゴ果汁に対するパツリン対策
 平成14年12月25日付け農林水産省生産局プレスリリース:「薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会食品規格・毒性合同部会におけるりんご果汁に係るかび毒(パツリン)に関する検討結果を踏まえた農林水産省の対応について」は下記のサイトで見られる。
http://www.maff.go.jp/www/press/cont/20021225press_3.html

 リンゴ加工品に係るパツリンに関する規格基準の設定については、平成15年6月27日付け、厚生労働省薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会議事録は下記のサイトで見られる。
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2003/06/txt/s0627-3.txt

農林水産消費技術センターによるパツリンについての解説等(2004.5.27)
http://www.hiroba-cfqlcs-go.jp/magazine/backnumbers/No46.htm

神戸市環境保健研究所によるパツリンの解説
http://www.city.kobe.jp/cityoffice/18/menu03/h/
kanken/shokuhin/mamechishiki/paturin/patulin7.htm


用語解説
 パツリン
 パツリンとは、青かびの一種であるPenicillium属、Aspergillus属等のかびが作り出すかび毒であり、リンゴ果汁を汚染することが知られている。パツリンは熱安定性が高く、酸性条件でも安定であり、ジュースへの加工行程を経ても残存する。これらのかびは収穫、包装、輸送時等に受けた損傷部から侵入するとされている。
 コーデックス委員会(FAO/WHO合同食品規格委員会)では、50ppbの最大基準値が採択されている。 また、欧州諸国を中心にりんご果汁等を対象に規制値も、そのほとんどが50ppbである。
 わが国では、平成16年6月1日に、食品衛生法に基づく清涼飲料水の成分規格としてリンゴジュース及び原料用リンゴ果汁について、パツリンの規格(50ppb)が施行されている。
 パツリンについては、長期毒性として、体重増加抑制等の症状が認められている。また、急性毒性として、消化管の充血、出血、潰瘍等の症状が認められている。 なお、国際がん研究機関(IARC)では、パツリンをグループ3と評価し、人に対する発がん性については、分類できないものとしている。

パツリン
分子式:C7H6O4 分子量:154.0266 融点:110~112℃
λmax:276nm(ε:14,600)/エタノール
安定性:熱安定、酸性下で安定、アルカリで不安定


2004/11/05-06
 2世紀半ばごろの古代ローマ人の化粧クリームと思われるものが見つかったと科学雑誌Natureに発表された(Evershed, RP et al., Nature 432:35-36 (2004))。クリームは、現代の化粧品にも劣らない質の高さだという。古代ローマ寺院の発掘作業中に研究者らが発見した。缶の中には、羊か牛のものと思われる動物性の脂肪とでんぷん、酸化スズを混ぜ合わせたクリームが入っていた。このクリームは、ローマ人の女性のファンデーションのようなものだったのではないかと推察されている。ローマ時代には、色白がはやっていたのだろうか。

科学的推理の過程(原著論文を読んで)
 掘り出されたのはスズの缶で大きさは手のひらにはいるくらい(直径60mm深さ52mm)である。クリームの内容を調べるため、有機化合物の分析を行った結果、炭素が50%、水素が8%で窒素や硫黄は見いだされなかった。そのため窒素を含むアミノ酸で構成されるタンパク質の可能性はなくなった。そこで、クリームをクロロホルムとメタノールに溶かしたところ良く溶け、40%は脂肪酸であった。さらに詳しく調べると、動物由来の脂肪酸にしか見いだされていないC18:0の脂肪酸が高濃度に存在していた。そこで、このクリームは動物由来の脂肪であると考えられた。さらに詳しく調べるとその脂肪酸組成が羊か牛の脂肪酸組成に非常に近いことが分かった。
 香気成分についてヘッドスペースガスクロマト質量分析計で分析したが、香り成分は見いだされなかったので、香水は含まれていないと判断された。
 脂肪酸以外の成分について分析したところデンプンであることが分かった。さらに、ミネラルについてX線解析を行ったところ酸化スズが見つかった。
 以上の結果から、皮膚に塗るクリームではないかと推察された。また、このクリームには、現代の美容でも使われているデンプンが入っていることから美容技術の高さを示していると考えられる。
 当時のローマ人は美白のため酢酸鉛を使っていたことは知られていたが、今回のクリームの発見は初めてのことである。また、酢酸鉛は毒性があるが、酸化スズには毒性がないこともこのクリームの製造者の技術の高さを示している。


2004/11/04
 訃報:世界的に知られた生化学者で前神戸大学長の西塚泰美(にしづかやすとみ)博士、72歳が4日、くも膜下出血のため死去したと毎日新聞が報じた。
 西塚博士は、人間をはじめとする生物で、細胞の内部に情報を伝える役割を担う酵素「カルシウム依存性たんぱく質リン酸化酵素」(プロテインキナーゼC)を、77年に牛の脳から発見した。西塚博士の論文は、81~90年の10年間で世界の全科学領域で引用件数が第1位となり、ノーベル医学生理学賞の有力候補に目されていた。我が国におけるカルシウムの研究は世界でも最高水準にあり、西塚博士はその第一人者であった。
 私もリンゴやナシなど果実におけるカルシウムの役割についての研究を行う際、西塚博士の論文や考え方を大いに参考にさせて頂いた。そして、このカルシウムの研究から従来の貯蔵期間より5倍鮮度を保持できる冷温高湿貯蔵を開発することが出来た。
 毎年、ノーベル賞の発表時にはかなり期待していたので残念である。博士のご冥福を祈る。


2004/11/04

 今日は私にとって特別な日となった。日本経済新聞文化欄(2004/11/4 32面)に載った「ひと皮むけたクリ研究」、日本グリの渋皮がなぜ剥けないのかについての記事の中でホームページを紹介して頂いたのでアクセス数が急増し、1日だけで456件となった。今まで10-20件/日だったのでとてもうれしい。でもこの数字が続くことはないでしょう。今までと同様、地道にホームページを更新していきたいと思っている。朝日新聞夕刊にも私たちの果物と健康に関する成果が紹介された。これも大変うれしいニュースである。


2004/11/03
 明日、日本経済新聞文化欄に日本グリの渋皮がなぜ剥けないのかについての記事が載る予定です。ぜひ読んで下さい。私の一番愛着のある、そして、苦しさも、楽しさも味わった研究の紹介です。


2004/11/02
 「健康」(主婦の友社)12月号に「リンゴを食べると中性脂肪が下がる」(72-73頁)が掲載された。


2004/11/02
 「旬のやさしいくだもので健康づくり」をテーマに埼玉県さいたま市にある大宮ソニックシティで講演会などが開催された(詳細は下記)。良い天気に恵まれ講演会には150名ほど集まり、熱心に聞いて頂いた。イベント終了後、講師の平野さんや主催者と懇親し、果物をもっと食べてもらいたいと楽しく盛り上がった。

一部 10:00-13:00
 「旬のやさい・くだもの料理教室」
  講師:料理研究家 小川聖子

二部 講演会 14:00-16:00
  1)果物の健康パワー
   (独)農研機構果樹研究所品質化学研究室長
   「果物&健康NEWS」編集長 田中敬一

  2)野菜・果物はカラダのミカタ
    管理栄養士・健康運動指導士 平野美由紀

 日時:2004年11月2日14:00~16:00
 場所:大宮ソニックシティ
 参集範囲:
 一部:一般消費者 20名 (参加費無料)
     テプコソニック30F
 二部:一般消費者200名 (参加費無料)
     市民ホール4F

 主催:関東地域野菜・果物健康食生活推進協議会、関東農政局

 共催:中央果実基金、青果物健康推進委員会、東京電力埼玉支店、埼玉県食生活改善推進委員団体連絡協議会、社団法人埼玉県栄養士会、埼玉県地域婦人会連合会、JA埼玉県生活指導員連絡協議会、JA埼玉県女性組織協議会、埼玉県消費者団体連絡会、埼玉県生活協同組合連合会、生活協同組合さいたまコープ、生活クラブ生活協同組合、生活協同組合ドゥコープ、埼玉新聞

 参加申し込み及び問い合わせ先
  「関東地域野菜・果物健康食生活推進協議会事務局」
  関東農政局園芸特産課
  電話:048-600-0600(内3336,3338)


2004/11/01
 明日発売の「安心」(マキノ出版)12月号に私たちのリンゴと健康に係わる研究成果(158-160頁)が載ります。長野県産「ふじ」の販売も本格的になってきました。

2004/11/01
 10月の天気について気象庁が発表した(下記サイト参照)。それによると、台風や秋雨前線の影響で、10月の降水量は東京や大阪など32地点で観測史上最多を更新した。また、東京や静岡など7地点は、月降水量が年間を通じても最多だったとのことである。
http://www.data.kishou.go.jp/stat/tenko0410.pdf