2006年12月


2006/12/30 隕石から地球外の有機物発見
 カナダ北西部の氷原に落ちた隕石の中から、約46億年前の太陽系誕生当時に形成されたと考えられる有機物が発見されたと、米航空宇宙局(NASA)ジョンソン宇宙センターの研究チームが発表した。地球上の現在の有機物とは同位体の組成に大きな違いがあり、太陽や惑星が生まれつつあった原始太陽系の一番外側の区域で形成された有機物である可能性が極めて高いと述べている。
 発見された有機物には、中性子が1個多い窒素15(15N)の含有量が地球の有機物に存在する比率より1.2~2倍多く含まれていた。また、中性子が1個多い重水素の含有率は地球の有機物に存在する比率と比較して2.5~9倍も多く含まれていた。
 こうした有機物の特徴は、-260°前後の極寒の環境下で出来たことを示していると考えられることから、地球で最初の生命が誕生した際に材料になった有機物は、隕石などで地球外からもたらされたとする説を裏付けるデータである。

【文献】
Nakamura-Messenger, K. et al.: Organic Globules in the Tagish Lake Meteorite: Remnants of the Protosolar Disk. Science 314:1439-1442. (2006) [DOI: 10.1126/science.1132175]


2006/12/29 新サーバーへ移転
 レンタルサーバーが更新されたため、すべてのコンテンツを新しいサーバーに移転しましたた。そのため、不具合が生じる可能性があり、ご迷惑をおかけすることがあります。分かり次第修正していきますのでよろしくお願いいたします。


2006/12/24-25 サンタ移動中
 12月25日午前6時20分エジプトのピラミッド付近を通過中です。。
 12月25日午前0時20分中国万里の長城付近を通過しました。
 12月24日午後10時45分予定通り富士山のそばを通過しています。新幹線も新しい型になっています。
 12月24日午後7時16分ニュージーランド上空でサンタの姿が発見されました。

2006/12/24 本日サンタは東京上空を23時頃に通過予定?
 クリスマスに合わせて、北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)によるサンタ追跡が始まる。昨年は18:17頃に北極上空でサンタさんが発見された。東京では23:00頃にサンタさんは東京上空を新幹線より100倍速いスピードで移動していると報告された。今年はどうだろうか?

サンタさん発見情報は下記のサイトで。
http://www.noradsanta.org/jp/tracking.php


2006/12/23 リンゴ赤色を制御する遺伝子の発見
 オーストラリア・CSIRO Plant Industryの研究者らは、リンゴの赤色を制御する遺伝子を発見したと発表した。リンゴの皮の赤色はアントシアニンに起因する。また、アントシアニンは酸化防止剤として健康に寄与する。
 そこで、光で活性化する遺伝子に焦点を合わせ研究を行った結果、R2R3 MYBがアントシアニンの生合成の転写制御因子であることが分かった。転写制御因子とは、最終的にタンパク質として発現する過程における、最初でかつ最大の影響を及ぼす制御因子のことである。
 この遺伝子の発見により色が良くて健康に役立つリンゴの育成が進むと期待されている。

【文献】
Takos, A. M. et al.: Light-Induced Expression of a MYB Gene Regulates Anthocyanin Biosynthesis in Red Apples. Plant Physiol. 142: 1216-1232. (2006) [doi: 10.1104/pp.106.088104]


2006/12/22 水溶性ビタミン葉酸の吸収メカニズム
 アメリカ・アルバート・アインシュタイン医科大学の研究者らは水溶性ビタミンである葉酸の吸収に係わるタンパク質(PCFT/HCP1)を発見したと発表した。
 水溶性ビタミンは、小腸の脂溶性の細胞膜を簡単には通過できない。そのため、水溶性ビタミンを吸収する特別なメカニズムがあると考えられていた。
 研究者らは、葉酸分子を小腸の細胞内へ輸送するPCFT/HCP1と名付けた膜タンパク質を特定した。また、PCFT/HCP1の遺伝子変異が遺伝性葉酸吸収不全症の原因となることを示した。
 このタンパク質を持たない幼児は、葉酸の吸収が出来ないために遺伝性葉酸吸収不全症となることから、遺伝子診断による疾病防止に役立つと期待されている。

【文献】
Qiu, A. et al.: Identification of an Intestinal Folate Transporter and the Molecular Basis for Hereditary Folate Malabsorption. Cell 127: 917-928. (2006)


2006/12/21 仕事で燃え尽きると、2型糖尿病リスクが上がる
 イスラエル・テルアビブ大学の677人中年男性を対象とした調査によると、仕事で燃え尽きた人は2型糖尿病が発症しやすい傾向にあることが分かった。
 仕事で感情的疲労、肉体的疲労、認識的な疲れなどで燃え尽き症候群になった人は2型糖尿病のリスクが1.84倍に高まることが分かった。

【文献】
Melamed, S. et al.: Burnout and Risk of Type 2 Diabetes: A Prospective Study of Apparently Healthy Employed Persons. Psychosom. Med. 68: 863-869. (2006)


2006/12/20 BMIとウエストサイズで糖尿病を予測
 BMIとウエストサイズは、前-糖尿病状態でインシュリン抵抗性の人の心臓病や代謝性異常のリスクを予測出来ることをカリフォルニア・スタンフォード大学の研究グループが明らかにした。
 ボランティア261人を対象に、BMI、ウエストサイズ、コレステロール、中性脂肪、インシュリンなどを測定した結果、BMIかウエストサイズを測定することで糖尿病患者の心臓病リスクを予測できると結論づけた。

【文献】
Helke, M.F. et al.: Comparison of Body Mass Index Versus Waist Circumference With the Metabolic Changes That Increase the Risk of Cardiovascular Disease in Insulin-Resistant Individuals. Amer. J. Cardiol. 98: 1053-1056. (2006)


2006/12/15 赤ワインに含まれるポリフェノールは心臓病のリスクを下げる
 赤ワインの適度な消費は冠状動脈性心臓病のリスクが低いが、特に、赤ワインに含まれているポリフェノールの一種であるプロシアニジンにその活性が強いことが分かったと、イギリスの研究グループが発表した。
 また、フランスの南西地方やイタリアのサルデーニャ島のワインにはこのプロアントシアニジンが多く含まれており、75歳以上の男性の比率が多く長生きする傾向にあった。

【文献】
Corder, R. et al.: Oenology: Red wine procyanidins and vascular health. Nature 444, 566. (2006) [doi: 10.1038/444566a]


2006/12/12 講演「ナシの機能性と健康」
 大分県なし生産振興大会(12月12日:大分県由布市狭間町中央公民館「未来館」(主催:大分県なし研究会)で「ナシの機能性と健康」について講演を行った。大会は、ナシ生産農家など約200名が参加しで盛り上がった。


2006/12/11 火星で新しい水の流れた跡の発見
 アメリカの火星探査機「マーズ・グローバル・サーベイヤー(Mars Global Surveyor )」が撮影した画像を分析したところ、火星のクレーター内に新しくできた水の流れたあとのような地形が発見された。火星には太古に海があったことが確実視されているが、この発見から現在も地表に水が流れ出ていることが示唆される。
 研究チームは1999年と2006年に撮影した火星表面の画像を比較したところ、7年前にはなかった新しいクレーター20個と、液体が流れてできた峡谷のような地形2カ所を見つけた。峡谷はいずれも南半球のクレーター内壁にあり、長さ数百メートルで、地下の氷が溶けて、水が地表に流出した跡と推測している。

【文献】
Malin, M. C. et al.: Present-Day Impact Cratering Rate and Contemporary Gully Activity on Mars. Science 314: 1573-1577. (2006) [DOI: 10.1126/science.1135156]


2006/12/10 世界では1%の人が富の40%を所有している
 国連の世界開発経済研究所が「世界の個人の富の状況(The World Distribution of Household Wealth)」調査から、世界では1%の人が富の40%を所有し、2%では約半分の富を所有していた。一方で、世界の約半数を占める貧しい人々は「富」の1%しか所有していないことが分かった。世界を10人の集団にたとえると、1人が99%の富を独占し、残りの1%を9人で分けている状態となっていることになると述べている。
 各国政府や国際機構の2000年の統計をもとに、不動産や預貯金、株式などの個人の資産から借金などの負債を差し引いたものを「富」と定義した。また、国有資産となっていることが多い原油などの資源や大企業の資産は除外された。

上記の報告は下記のサイトで読める。
http://www.wider.unu.edu/research/2006-2007/
2006-2007-1/wider-wdhw-launch-5-12-2006/
wider-wdhw-press-release-5-12-2006.htm



2006/12/09 アメリカガン学会によるガン治療後のガイドライン
 アメリカガン学会(ACS)は、科学的な証拠に基づいたガンの治療と回復期の栄養、身体的活動について専門家による評価を行い新ガイドラインを発表した。
 ガンと診断されたあとの最も良い治療は、最適栄養の摂取と運動である。治療後の最適栄養は、アメリカガン学会のガン予防のための栄養摂取基準と原則的には同じである。
 果物摂取は、ガンの進行に影響するビタミン、ミネラル、ファイトケミカル、食物繊維など多数の成分を含んでいるだけでなく、低カロリーで満腹感を促進する食品であることから健康的な体重維持に有効と考えられるとし、積極的な摂取を推奨している。

【文献】
Doyle, C. et al.: Nutrition and Physical Activity During and After Cancer Treatment: An American Cancer Society Guide for Informed Choices. CA Cancer J. Clin. 56: 323-353. (2006)


2006/12/08 赤味の肉は大腸ガン発症のリスクを高める
 赤身の肉および加工された肉を食べる人は大腸ガン発症のリスクが高いと、スエーデン・カロリンスカ研究所のグループが発表した。
 赤身の肉に関する15の研究と加工された肉に関する14の研究を調べた結果、赤身の肉を食べる人は、結腸・直腸ガン発症のリスクが28%、加工された肉を食べる人は20%上昇することが分かった。また、男性で1日当たり120グラムの赤身肉を食べる人は28%リスクが高かった。また、加工された肉を1日当たり30グラムを食べる人は9%リスクが増加した。

【文献】
Larsson, S. C. and Wolk, A.: Meat consumption and risk of colorectal cancer: A meta-analysis of prospective studies. Inter. J. Cancer. 119: 2657 - 2664. (2006)


2006/12/02 高炭水化物・低GI食で心疾患のリスクと体重の減少
 高炭水化物で低グリセミック・インデックス(GI)の食事は、心疾患発症のリスクを下げ、体重も減少すると、オーストラリア・シドニー大学の研究グループが発表した。
 炭水化物を55%以上摂取する高炭水化物食と、タンパク質を25%以上摂取する高タンパク質食について、炭水化物のGI値が高い時と低い時の4つの食事について、肥満または過体重のヒト129人(18~40歳)を対象に12週間調査を行った。
 その結果、高炭水化物・低GI食と高タンパク質・高GI食で体重の減少が大きかった。また、BMI値が5%以上減少した人の割合は両者とも50%以上であった。
 一方、心疾患発症と関係するLDL-コレステロールでは、高炭水化物・低GI食で統計的に有意に減少していた。しかし、高タンパク質・高GI食では高くなった。
 以上の結果から、研究者らは、高炭水化物・低GI食は、心疾患発症を予防できるだけでなく、体重も減らせることから、体重減少に有効な高タンパク質ダイエット(アトキンス・ダイエット)の必要性はない考えている。

【文献】
McMillan-Price, J. et al.: Comparison of 4 Diets of Varying Glycemic Load on Weight Loss and Cardiovascular Risk Reduction in Overweight and Obese Young Adults: A Randomized Controlled Trial. Arch. Intern. Med. 166: 1466-1475. (2006)


2006/12/01 血液中のビタミンEレベルの高い人は死亡リスクが低い
 50-60才代の喫煙男性29.092人を調査したフィンランド・ヘルシンキで行われた研究によれば、血液中のビタミンEレベルの高い人はガンや心臓病などの死亡リスクが低いことが分かった。
 血液中のビタミンEレベルの高い人は、低い人に比べて死亡率が18%低くかった。また、ガンでは21%、心臓病では19%、その他の疾病では30%低かった。また、最適な血液中のビタミンEのレベルは13-14mg/lと考えられた。
 ビタミンEのサプリメントの摂取では死亡率改善効果が認められていないが、研究者らは、食事からビタミンEを摂取することは有益であると結論づけている。

【文献】
Wright, M. E. et al.: Higher baseline serum concentrations of vitamin E are associated with lower total and cause-specific mortality in the Alpha-Tocopherol, Beta-Carotene Cancer Prevention Study. Amer. J. Clin. Nutr. 84: 1200-1207. (2006)

2006年11月


2006/11/30 札幌にて記者懇談会
 札幌にて「毎日くだもの200グラム運動」の記者懇談会に出席し、『本当はすごいくだものの科学』―くだものでできる「ダイエット」と「ガン予防」「糖尿病予防」-について説明した。札幌ではもう雪が降っていた。


2006/11/29 心筋梗塞に血中コレステロール値は関係、卵は無関係
 約9万人(男性43,319人、女性47,416人)を対象に心筋梗塞との関係を調べたところ、血液中の総コレステロール値が高いほど、心筋梗塞リスクが高くなっていた。総コレステロール値が180mg/dL未満の人に比べると240mg/dL以上の人の心筋梗塞のリスクは2倍であった。また、卵を「ほとんど毎日食べる」グループが、卵を食べる回数が少ないグループより心筋梗塞のリスクが高いわけではなかった。
 以上の結果より、心筋梗塞予防には、総コレステロールを低く保つことが重要であり、卵以外の動物性脂肪などで総コレステロール値の上昇が起きると考えられる。

【文献】
Nakamura, Y. et al.: Egg consumption, serum total cholesterol concentrations and coronary heart disease incidence: Japan Public Health Center-based prospective study. Br. J. Nutr. 96: 921-928. (2006)


2006/11/28 大腸ガンのリスクは男性の方が高い
 大腸ガンの原因となるポリープは、女性よりも男性に多くみられることをポーランドの研究グループが発表した。
 大腸内視鏡を用いた大腸ガン検診プログラムに参加した40~66歳の被験者50,148人のデータを調べた。そのうち40~49歳の被験者は大腸ガンの家族歴がある人で、他の被験者は平均的リスクの人である。調査の結果、50~66歳では5.9%、40~49歳では3.4%に進行した大腸の病変またはポリープがみられた。また、男性では女性よりも73%多く、統計的に有意であった。

【文献】
Regula, J. et al.: Colonoscopy in Colorectal-Cancer Screening for Detection of Advanced Neoplasia. New Engl. J. Med. 355: 1863-1872. (2006)


2006/11/27 健康長寿の危険因子
 ハワイに住む日系人の中年男性5,820人を40年間追跡調査したところ、冠動脈疾患、脳卒中、ガン、慢性閉塞性呼吸器疾患、パーキンソン病、糖尿病や認知機能障害、0.5マイル歩行不能な身体障害などの危険因子が6つ以上ある人の85才の生存の確率は9%であったのに対して、1つもないグループでは55%であった。
 以上の結果から、中年期の危険因子を出来るだけ多く回避すれば、健康で長生きできると研究者らは述べている。

【文献】
Willcox, B. J. et al.: Midlife risk factors and healthy survival in men. J. Am. Med. Assoc. 296: 2343-2350. (2006)


2006/11/26 あすのそら色
 TBSテレビ「あすのそら色」(午後6:25~6:30)でリンゴの健康機能性について話しました。短い時間でしたがリンゴの不思議なはたらきを解説しました。


2006/11/22 睡眠が不足すると体重が増加
 アメリカで女性看護師68,183人を16年間追跡調査したところ、睡眠時間が5時間以下のグループでは、7時間のグループと比べて体重が1.14kg多いことが分かった。また、6時間のグループでは0.71kg多かった。8時間と9時間以上のグループでは、7時間のグループと同程度であった。
 16年間に15kg以上体重が増加した人の割合は、7時間のグループと比べて、5時間以下のグループでは1.28倍、6時間のグループでは1.11倍であった。8時間と9時間以上のグループでは、7時間のグループと差がなかった。
 以上の結果から睡眠不足は体重の増加や肥満に関連すると研究者らは述べている。

【文献】
Patel, S. R. et al.: Association between reduced sleep and weight gain in women. Am. J. Epid. 164: 947-954. (2006)


2006/11/21 丸ごとの果物は子供の体重を減らす
 アメリカ・ペンシルベニア大学の研究から、丸ごとの果物の摂取が多い子供の体重は、そうでない子供と比較して減少していることが分かった。
 また、今までに行われた研究では、果汁の摂取量と子供の体重増加とはリンクしていなかったが、今回の研究では、太り過ぎの傾向のある未就学児の場合、果汁の摂取は体重を増やす傾向が認められた。
 ただし、この結果は果汁の摂取を止めると言うことではなく、適切な量を摂取する必要があることを意味すると研究者らは述べている。

【文献】
Faith, M. S. et al.: Fruit Juice Intake Predicts Increased Adiposity Gain in Children From Low-Income Families: Weight Status-by-Environment Interaction. Pediatrics 118: 2066-2075. (2006) [doi:10.1542/peds.2006-1117]


2006/11/20 糖尿病予防のための生活指導は、終了後も効果
 フィンランドの研究によると、食事や運動に関するカウンセリングによって、2型糖尿病リスクの高い人の生活習慣を改善し、発症率を減らすことができることが明らかになった。
 血糖値の高い糖尿病の予備軍に、生活習慣改善の個別指導を4年間行ったところ、終了から3年後も効果が続き、糖尿病の発生のリスクが36%下がった。
 こうした結果から研究グループは、糖尿病予備軍に対する個別指導は、指導が終わってからも生活習慣の改善効果が持続し、糖尿病の発生率の低下につながると結論している。

【文献】
Lindstrom, J. et al.: Sustained reduction in the incidence of type 2 diabetes by lifestyle intervention: follow-up of the Finnish Diabetes Prevention Study. Lancet 368: 1673-1679. (2006) [DOI: 10.1016/S0140-6736(06)69701-8]


2006/11/19 世界で年間316万人の人が高血糖で死亡
 高血糖は糖尿病、心疾患、脳卒中とリンクしており、世界で年間316万人が死亡していることが、アメリカ・ハーバード大学の研究から分かった。
 世界各地の52カ国の血糖値のデータから最適値を超える血糖が心疾患および脳卒中による死亡に及ぼす影響を調べた。その結果、2001年に高血糖に起因する糖尿病により死亡したのは95万9,000人、同じく高血糖による心疾患および脳卒中による死亡はそれぞれ149万人、70万9,000人であった。これは、心疾患による死亡の21%、脳卒中による死亡の13%が高血糖に起因する。
 高血糖による死亡数316万人は、糖尿病による死亡数を大幅に上回り、喫煙(480万人)、高コレステロール(390万人)、過体重・肥満(240万人)による死亡数に匹敵する。
 そのため、研究者らは高血糖を危険因子(リスクファクター)として捉え、高血圧や高コレステロールと同じように、高血糖リスクを一般に知らせる必要性があるとしている。

【文献】
Danaei, G. et al.: Global and regional mortality from ischaemic heart disease and stroke attributable to higher-than-optimum blood glucose concentration: comparative risk assessment. Lancet 368: 1651-1659. (2006) [DOI:10.1016/S0140-6736(06)69700-6]


2006/11/18 明日を元気に くだもの教室 開催

 荏原文化センター(東京都品川区中延1-9-15)
 2006年11月18日(土曜日) 参加無料
 午前 くだもの料理教室 フードプロデューサー 土井善晴氏
     (親子料理教室は定員にが少ないので申し込みはお早めに)
 午後 シンポジウム「知っトク、納得、おいしいくだものの不思議」
 パネラー:和洋女子大副学長 坂本元子氏 農研機構果樹研究所 田中敬一
       東京青果(株) 柿下秋男氏    フードプロデューサー 土井善晴氏
   問合せ先:03-6418-6511 (財)中央果実生産出荷安定基金協会
   http://www.kudamono200.or.jp/event/18kudamono-day.pdf



2006/11/17 メルマガ128号の配信は21日(月)に
 ほぼ週刊メールマガジン「果物&健康NEWS」第128号の配信は配信システムが不安定なため21日月曜日になります。特集「果物摂取とぜん息予防」とクルミの記事です。しばらくお待ち下さい。


2006/11/16 女子学生は体重に対する意識は男子学生と大きく異なる
 女子学生は男子学生よりやせる必要があると考えダイエットしているとアメリカ・ネブラスカ大学の研究チームが報告している。
 研究者らは286人の大学生を調査したところ、男子学生の45.2%は、太りすぎか、肥満体であったが、女子学生は13.9%と少なかった。しかし、痩せる必要があると考えている男子学生は28.6%であったのに対し、女子学生は57.4%と、必要以上に多くが痩せたいと回答していた。
 また、一度もダイエットしたことのない男子学生は79.1%であったが、女子学生は65.6%であった。男子学生も体脂肪に関心を持っているが女子学生ははるかに敏感であった。
 大学生は脂肪、ナトリウムの摂取量が多く果実、野菜の摂取量が少ないなど、その食習慣は悪化の傾向がある。そのため、栄養改善の指導を行う必要があるが、男子学生と女子学生のダイエットに対する意識の違いを考慮した指導を行う必要があると研究者らは述べている。

【文献】
Davy, S. R. et al.: Sex Differences in Dieting Trends, Eating Habits, and Nutrition Beliefs of a Group of Midwestern College Students. J. Am. Diet. Assoc. 106: 1673-1677. (2006)


2006/11/15 睡眠不足の子供は肥満になりやすい
 イギリス・ブリストル大学の研究から睡眠不足の子供は、肥満になりやすいことが明らかにされた。
 睡眠不足は正常な代謝が阻害され、ホルモンが変化し食事の摂取量が増加する。また、睡眠不足による疲労が運動不足を引き起こす可能性がある。
 摂食の抑制とエネルギー代謝の活性化に強く働きかける飽食因子(抗肥満ホルモン)ホルモンのレプチンが、毎晩8時間就寝する人より5時間の人で約15%低く、逆に、空腹のシグナルとして胃から分泌されるホルモンのグレリンが8時間睡眠の人より5時間の人で約15%多い。
 以上のことから、睡眠と肥満との関係は、食事や運動と同じくらい重要であるとしている。

【文献】
Taheri, S.: The link between short sleep duration and obesity: we should recommend more sleep to prevent obesity. Arch. Dis. Child. 91: 881-884. (2006) [doi: 10.1136/adc.2005.093013]


2006/11/14 サプリメントは心臓病予防に役立たない
 抗酸化成分やビタミンなどのサプリメントを摂取しても心疾患や脳卒中の原因となるを予防できないとアメリカ・ジョーンズホプキンス大学の研究者らが発表した。
 今までに試みられた16の臨床試験の結果を分析した結果、サプリメント(葉酸塩、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンE、ビタミンC、β-カロテン、セレニウム)を摂取してもアテローム性動脈硬化の進行を防ぐ効果がないことが分かった。

 この結果は、サプリメントに心疾患などの予防効果がないことを示しているが、食事からのビタミンなど栄養素の摂取を重要性を否定しているわけではないことに注意が必要である。

【文献】
Bleys, J. et al.: Vitamin-mineral supplementation and the progression of atherosclerosis: a meta-analysis of randomized controlled trials. Am. J. Clin. Nutr. 84: 880-887 (2006)


2006/11/13 アメリカ人は減量のためのサプリメントの”誇大宣伝”を信じている
 アメリカの成人は、減量のためのサプリメントを誤解していることがコネティカット大学の電話による調査から明らかになった。
 調査に応じた1,444人のうち60%以上は減量のためのサプリメントは、FDAによって調査され安全で(65%)で、有効である(63%)と立証されていると誤ってい信じていた。また、アメリカ食品医薬品局(FDA)は減量のためのサプリメントを全く承認していないが、54%以上の人がFDAにより減量のためのサプリメントが承認されていると信じていることがわかった。

下記のサイトで調査の詳細が読める(英文)。
http://www.csra.uconn.edu/pdf/National_Dietary_Survey.pdf


2006/11/12 減量後の体重を維持すには行動計画が必要
 減量した後にその体重を維持するには、リバウンドに備えて行動計画(自己規制プログラム)を立てることが重要であるとアメリカ・ブラウン大学の研究チームが発表した。
 体重を減らすときには、洋服が似合うようになり、体重計の数字は下がり、周りの人が声をかけるなどがあるが、体重維持期に入るとこうしたことが少なくなり、リバウンドしやくなる。
 そこで、米ブラウン大学の研究者らは、過去2年間で以前の体重より最低10%以上を減量した男女314人(平均で19.3kg(20%)減量)を対象にリバウンドに備えるための研究を行った。
 被験者は3群に割り付けられ、「対照群」は、食事や運動習慣について書かれたニュースレターを年4回受けとった。「対面式対応群」は、定期的な体重測定に加えて専門家による助言やカウンセリングを直接受けた。「インターネット対応群」は定期的な体重測定に加えて専門家による助言やカウンセリングをインターネットで受けた。研究期間の18カ月後、約2.3kg以上体重が増加したのは、対照群で72%、インターネット群で55%、対面対応群では46%だった。
 研究者らは、対面式対応群の成功には、毎日の体重測定だけではなく、体重報告の義務や、行動計画の必要性が関与していると述べている。

【文献】
Rena R. Wing, R. R. et al.: A Self-Regulation Program for Maintenance of Weight Loss. New Engl. J. Med. 355: 1563-1571. (2006)


2006/11/11 スウェーデンのカロリンスカ研究所の砂糖について報告
 スウェーデンのカロリンスカ研究所の研究グループが、ソフトドリンクなど砂糖をたくさん含む飲み物や食べ物を多く取る人は、そうでない人よりすい臓ガンを発症する危険性が最大約90%高いとする調査結果を報告した。
 この発表の中ですい臓ガンのリスクを高める要因の1つとして「クリームの付いたフルーツ」とある。この料理は、スウェーデンでよく食べられている砂糖を使うスープのようなもののようであるが、まだどんな料理か分かりません。
 ただ、この論文は、「Consumption of sugar and sugar-sweetened foods and the risk of pancreatic cancer in a prospective study. (Am. J. Clin. Nutr. 84:1171. 2006)」で、果物がすい臓ガンと関係していると述べているわけではなく、添加した砂糖についてのデータである。
 また、研究者らが添加した砂糖がすい臓ガンのリスクを高める理由として「血糖値を調整するインスリンを分泌する膵臓のがんと、砂糖の取りすぎによる高血糖とに関連があるのかもしれない」としている。
 果物は単糖類を含むが食物繊維も含まれているので、食べても血糖値を上げず、インシュリンの分泌も上げないことは科学的に明らかになっている。
 一方、カリフォルニア大学の研究グループは果物の摂取はすい臓ガンのリスクを下げると報告している(Vegetable and Fruit Intake and Pancreatic Cancer in a Population-Based Case-Control Study in the San Francisco Bay Area. Cancer Epid. Biomark. Prev. 14:2093. 2005)。従って、果物がすい臓ガンのリスクを高めることはない。


2006/11/10 講演会「イチジクの機能性と健康」
 千葉県君津合同庁舎で千葉県内のイチジク生産者を対象に「イチジクの機能性と健康」について講演します。多くの方が参加してくださるようです。
 千葉県ではイチジクが約20ヘクタール栽培されていて地元市場や直売などで販売しており、わずかですが増加傾向にあるそうです。講演が生産者の皆さんに役立つと良いのですが。


2006/11/09 今週号のメルマガ「果物&健康NEWS」
 今週号(Vol.127)のメルマガの話題はギンナンです。予告してあった「ぜん息とビタミンC」は来週掲載します。明日の講演会の準備と重なったので少々焦っています。締め切りに間に合えばよいのですが。


2006/11/08 低GIの食事は、女性の体重増を避けられる
 食物繊維を多く摂取している女性では年齢に伴う体重の増加を避けることが出来るとデンマークの研究者らが発表した。果物や野菜など食物繊維を多く含む食品のグリセミックインデックス値(GI値)は低く、キャンディや白パンなどの食品のGI値は高い。
 男性185人と女性191年を対象に6年間行われた研究では、GI値の低い食事をしていた女性の体重はGI値の高い食事をしていた女性に比べて体脂肪、体重などが低いことが分かった。特に座業的な仕事が多い女性で顕著な違いが認められた。しかし、男性ではこうした傾向は認められなかった。

【文献】
Hare-Bruun, H. et al.: Glycemic index and glycemic load in relation to changes in body weight, body fat distribution, and body composition in adult Danes. Am. J. Clin. Nutr. 84: 871-879. (2006)


2006/11/07 海洋生態系調査の衝撃:2048年には魚が食べられなくなる
 世界の海で現在のような乱獲や汚染が続けば、人間が食べる魚介類は、2048年までに消滅すると国際研究チームが科学研究雑誌に報告された。
 全世界の海洋調査、国連食糧農業機関(FAO)の集めた魚類に関する時系列データ(1950年~2003年)、各大陸の沿岸部に関する地層や考古学研究の結果などを基に、世界の海洋生態系について考察した。
 その結果、乱獲と汚染が原因で、海洋生物の多様性が著しく失われていることが分かり、このままでは、人間が口にする魚介類が2048年までに消滅すると予測している。
 一方、保護対策が取られている世界48カ所の海域では、生物の多様性が保たれ、その結果として、海洋生物資源の生産性が高くなっている。そのため研究者らは、まだ海洋生態系の回復は可能であると考えている。

【文献】
Worm, B. et al.: Impacts of Biodiversity Loss on Ocean Ecosystem Services. Science 314: 787-790. (2006)


2006/11/06 健康情報を探索する人は、情報源をチェックしない
 アメリカのインターネットユーザーの7%(1千万人)がウェブ上で健康について検索しているが、このうち、情報源と日付をチックしているのは4分の1に過ぎない。また、チックしている人のうち15%の人は、定期的に健康情報のソースと日付をチェックしているが、10%の人は時々である。
 その理由として、健康ウェブサイトで情報ソースや日付を提示しているところが2%しかないためと、検索が一般的なサーチエンジンであるGoogleやYahooを使っているためとしている。
 最近、医学の話題だけに焦点を当てたサーチエンジンが利用可能になったので、今後、消費者の行動が変わる可能性があると研究担当者は述べている。

上記調査は下記のサイトで読める。
http://www.pewinternet.org/PPF/r/190/report_display.asp


2006/11/05 メタボリックシンドロームでも血圧が正常なら動脈硬化のリスクは同じ
 メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)は、生活習慣病の危険を高め、心臓病や脳卒中を招く動脈硬化につながるとされている。しかし、血圧が正常であれば、メタボリックシンドロームであっても、アロテーム性動脈硬化症(心臓病や脳卒中の主因)のリスクは同じと東京大病院の石坂信和らの研究チームが報告している。
 1994年-2003年に人間ドックを受診した人のうち血圧がやや高めだが正常範囲である(140Hg未満/90Hg未満)の5661人を対象に、メタボリックシンドロームの有無とアロテーム性動脈硬化症のリスクとの関係を調べた。
 その結果、男女とも、同じ血圧でも降圧剤に頼っていない人の動脈硬化のリスクは、メタボリックシンドロームがあってもなくても、変わらなかった。
 以上の結果から、研究者らはメタボリックシンドロームとアロテーム性動脈硬化症とは関係ないのではないかと示唆している。

【文献】
Ishizaka, N. et al.: Metabolic Syndrome May Not Associate With Carotid Plaque in Subjects With Optimal, Normal, or High-Normal Blood Pressure. Hypertension 48: 411 - 417. (2006) [doi: 10.1161/01.HYP.0000233466.24345.2e]


2006/11/04 シーバックソーン・ベリーから健康成分を高回収
 グミ科のシーバックソーン・ベリーはチベットや中国、ロシアでジュースとして飲まれている。この果汁にはコレステロールを低くする成分などが含まれているが現在の製造工程では回収率が悪いことが知られていた。そこで、インドの研究グループは高圧プレスにる製造方法を開発し、パルプオイル、ジュースを効率よく回収できた。
 パルプオイルにはカロテノイドが4096-4403mg/kg、トコフェロールが1409-1599mg/kgが含まれていた。また、ジュースにはポリフェノールが2392-2821mg/kg、フラボノイドが340-401mg/kg、ビタミンCが1683-1840mg/kg含まれていた。

【文献】
Arimboor, R. et al.: Integrated processing of fresh Indian sea buckthorn (Hippophae rhamnoides) berries and chemical evaluation of products. J. Sci. Food Agr. 86: 2345-2353. (2006) [doi: 10.1002/jsfa.2620]


2006/11/03 レスベラトロール摂取で高カロリー食による寿命短縮防止
 脂肪分が多い高カロリー食を摂取したマウスの寿命は標準食を摂取したマウスに比べて寿命が短くなる。ところがブドウなどに含まれるポリフェノール一種である「レスベラトロール」を、高カロリー食を一緒にマウスに与えると寿命短縮を防ぐ効果があったと、アメリカ・ハーバード大などの研究チームが発表した。
 体重の増加を減らす効果はあまり大きくはなかったが、血糖値やインシュリンの分泌の改善が認められ統計的に有意の寿命の伸びが認められた。マウスに与えられたレスベラトロールの量はキログラム当たり22.4mgなので、ヒト(60kg)に換算すると1.344gとなることから投与量としては多いわけではない。また、今回の論文ではデータが示されていないが5.2mg/kgでも効果があったと記載されているので、この場合をヒトに換算すると312mgとなる。
 以上の結果は、哺乳動物の肥満関連の疾病に対してレスベラトロールのような低分子が効果的であることを示している。
 この研究は、肥満に関連した疾病予防に対する新しいアプローチであることから今後の展開が待たれる。しかし、コレステロールや中性脂肪に変化がないなど解明すべき点も残されているので、人への応用も期待されるがまだ先だろう。

【文献】
Baur, J. A. et al.: Resveratrol improves health and survival of mice on a high-calorie diet. Nature Online Nov. 1, (2006) [doi: 10.1038/nature05354]


2006/11/2 積極的な感情は低血圧につながる
 メキシコ系アメリカ人2564人(65歳以上)を対象に積極的な感情と血圧との関係を調べた結果、積極的な感情をもつ人の血圧は、そうでない人と比べて統計的に有意に低いことが分かった。

【文献】
Ostir, G. V. et al.: Hypertension in Older Adults and the Role of Positive Emotions. Psych. Med. 68: 727-733. (2006)


2006/11/01 ω-3脂肪酸とアルツハイマー病との関係
 ω-3脂肪酸のサプリメントを摂ることで、軽いアルツハイマー病患者の認識力低下を遅くするかもしれない。しかし、より進行した症状に対する効果についてはあまり期待できない。
 スウェーデンの研究グループは、ω-3脂肪酸サプリメントと偽薬を使ってアルツハイマー病との関係を比較した。6カ月間、1.7gのドコサヘキサエン酸(DHA)と0.6グラムのエイコサペンタエン酸(EPA)を摂取した89人の患者(女51人、男38人)が1.7グと偽薬を摂取した85人の患者(女39人、男46人)を比較した。そのあとの6カ月間、両グループともω-3脂肪酸を摂取した。
 2つのグループ間には、認知機能低下の速度の違いは全くなかった。しかしながら、偽薬を取った人々と比べて、非常に軽い認識的な損傷の32人の患者では、認識力の低下が遅くなった。

【文献】
Freund-Levi, Y. et al.: ω-3 Fatty Acid Treatment in 174 Patients With Mild to Moderate Alzheimer Disease: OmegAD Study. Arch. Neurol. 63: 1402-1408. (2006)

2006年10月


2006/10/31 地中海ダイエットはアルツハイマー病のリスクを下げる
 アメリカ・ニューヨークで行われた研究によると果物、野菜、オリーブオイルと少量の肉を食べる地中海ダイエットは、アルツハイマー病のリスクが統計的に有意に減少することが分かった。

【文献】
Scarmeas, N. et al.: Mediterranean Diet, Alzheimer Disease, and Vascular Mediation. Arch. Neurol. online Oct. 9, 2006 [doi: 10.1001/archneur.63.12.noc60109]


2006/10/30 「発掘!あるある大事典2」と「ためしてガッテン」の視聴率
 10月16日~22日の教育・教養・実用部門の視聴率(関東地区)の世帯視聴率が発表された。それによると 「発掘!あるある大事典2 あなたのダイエットフルーツはどっち?」も「ためしてガッテン -甘さ6倍!栗・感動の新調理術-」もなかなかよい世帯視聴率であったようだ。

順位 タイトル             放送日  放送局  世帯視聴率
1  真相報道バンキシャ!        10月22日 日本テレビ 14.8%
1  発掘!あるある大事典2      10月22日 フジテレビ 14.8%
3  水トク!・激闘大家族東京下町五つ子ちゃん成長記’
  06秋・嵐と涙の13年すべて見せます 10月18日 TBS     13.9%
4  開運!なんでも鑑定団        10月17日 テレビ東京 13.8%
5  ためしてガッテン         10月18日 NHK総合  13.6%
6  サンデーモーニング         10月22日 TBS     13.5%
7  スタ・メン             10月22日 フジテレビ 13.3%
8  クローズアップ現代         10月17日 NHK総合   12.9%
9  THE・サンデー           10月22日 日本テレビ 11.9%
10  さわやか自然百景         10月22日 NHK総合   11.6%



2006/10/29 クルミはオリーブ油より心臓健康のために良い
 オリーブ油は炎症版のによいことが知られていたが、24人を対象にクルミの効果について調べた結果、クルミを食べたヒトの動脈は、コレステロールが適正値になり。オリーブ油を摂取したヒトに比べて、脂肪過多の食事の後でも柔軟で弾力的なままであったという結果が報告された。

Cirtes, B. et al.: Acute Effects of High-Fat Meals Enriched With Walnuts or Olive Oil on Postprandial Endothelial Function. J. Am. Coll. Cardiol. 48: 1666-1671. (2006) [doi: 10.1016/j.jacc.2006.06.057]


2006/10/28 明日を元気に くだもの教室
 クレオ大阪南(大阪市平野区喜連西6-2-23)
 2006年10月28日(土曜日)
 午前 くだもの料理教室 フードプロデューサー 土井善晴氏
 午後 シンポジウム「知っトク、納得、おいしいくだものの不思議」
 パネラー:和洋女子大副学長 坂本元子氏 農研機構果樹研究所 田中敬一 
       大果大阪青果株 藤原裕司氏  フードプロデューサー 土井善晴氏
   問合せ先:03-3586-1381 (財)中央果実生産出荷安定基金協会



2006/10/27 魚の摂取は健康に良く、リスクは小さい
 アメリカ・ハーバード大学のMozaffarianらは、過去の論文を精査し、脂肪の多い魚なら、週1~2回摂取するだけでも死亡率が17%低下し、冠動脈疾患による死亡率は36%低下すると報告した。心疾患予防には、サケを週1回、6オンス(約170g)食べるだけでも十分であると述べている。
 ただし、オオサワラ、サメ、メカジキ、アマダイなど水銀含有率の高い魚は、妊婦は避けるようにとしている。

【文献】
Mozaffarian, D. et al.: Fish Intake, Contaminants, and Human Health - Evaluating the Risks and the Benefits. JAMA. 296: 1885-1899. (2006)


2006/10/26 シリカに由来する肺疾患の進行抑制
 シリカ由来の肺疾患は、長期の間、シリカを吸入することによって、引き起こされる。鉱山、 鋳造場、ガラス製造プラント、爆破作業現場などでシリカダストが発生しており、吸引すると活性酸素の生成される。アメリカでは、100万人以上の労働者がシリカダストにさらされていると考えられている。
 ヘム鉄を分解する反応の補酵素であるヘムオキシゲナーゼ(heme oxygenase)の発現はストレスなどの刺激で誘導されることが知られていたが、横浜市立大学の研究チームが、この酵素がシリカ由来の肺疾患と関係していると発表した。ヘムオキシゲナーゼ1(heme oxygenase-1)はシリカ由来の肺疾患で増加し、活性酸素の分解して病気の進行を遅らせる働きがあることが分かった。
 この研究はシリカ由来の肺疾患とヘムオキシゲナーゼ1との関係を最初に示した研究である。

【文献】
Sato, T. et al.: Heme Oxygenase-1, a Potential Biomarker of Chronic Silicosis, Attenuates Silica-induced Lung Injury. Am. J. Resp. Critic. Care Med. 174: 906-914. (2006)


2006/10/25 赤いリンゴでもダイエット効果は十分
 「あるある大事典Ⅱ」放映後、赤いリンゴはダイエット効果はないの?との質問が寄せられている。赤いリンゴでもダイエット効果は十分にある。なぜなら、リンゴのダイエット効果は、カロリー密度(体積が大きくてカロリーが少ない)が低いことと食物繊維が多いことが主因のためである。そのため、青いリンゴでも赤いリンゴでもダイエット効果は十分に期待できる。
 食前に食べると効果的なのは、リンゴを食べると満腹感が得られるため、主食の摂取量が意識せず自然と少なくなるためである。


2006/10/25 ハリー・ポッターのマント、それともスタートレック遮蔽装置
 不可視な遮蔽、言い換えると物質の透明化が原理から一歩踏みだした。ハリー・ポッターの透明マントやスタートレックの不可視な遮蔽装置(cloaking device)のメカニズム仮説は、すでにイギリスの研究者が発表していた。その原理とは、光波(あるいは電磁放射)を物体の周囲に導き、あたかもその物体によって散乱していないように進ませることである。

 アメリカ・デューク大などの研究グループが、特殊な微細構造の金属素材で物体を囲うことにより、物体に当てた電磁波を反射させずに裏側へ迂回(うかい)させる実験に成功した。
 この研究は、電磁放射線から物体を隠す原理を立証する初の遮蔽装置で、磁放射線が排除、回避され、あたかも存在していないような空間を作り出した。しかしまだ、不完全で二次元レベルの実験に過ぎないが、それでも後方散乱(反射)および前方散乱(影)双方を減少させることができる(ビデオ参照)。

デューク大学のプレスリルースプレスリリースは下記のサイトで読める。
http://dukenews.duke.edu/2006/10/cloakdemo.html

ビデオ:研究チームによる説明と装置、透明化の実験経過などを下記のサイトで見ることが出来る(ビデオを見るためにはReal Playerが必要)。
http://realmedia.oit.duke.edu/ramgen/news/invisibility.rm
リアル・プレーヤー(Real Player)がない場合は下記のYoutubeでも見ることが出来る(ただし、画質が悪い)。
http://www.youtube.com/watch?v=Ja_fuZyHDuk

【原著】
Schurig, D. et al.: Metamaterial Electromagnetic Cloak at Microwave Frequencies. Science. Online Oct. 19, (2006) [doi: 10.1126/science.1133628] (Science Express Reports)


2006/10/24 果物と野菜の摂取は女性の胆石リスクを減らす
 果物と野菜を食べている女性は、胆石形成のリスクが低いことが、77,090人の女性看護師を対象としたアメリカ・ハーバード大学の研究から明らかになった。果物と野菜の摂取量の多い人は摂取量の低い人に比べて胆石手術の必要性が21%低かった。最も多く摂取しているグループの果物と野菜の摂取量は1日あたらい7サービング以上で、最も低いグループは3サービング以下であった。

【文献】
Tsai, C-J., et al.: Fruit and Vegetable Consumption and Risk of Cholecystectomy in Women. Am. J. Med. 119: 760-767. (2006) [doi:10.1016/j.amjmed.2006.02.040]


2006/10/23 睡眠時間が短い人に肥満が多い
 睡眠時間の長短が体重に影響することがアメリカ・アイオワ州で行われたの疫学研究(1999年-2004年)から明らかになった。990人を調査した結果、睡眠時間とBMI値は逆相関が認められた。睡眠時間が6時間以下の人のBMI値は30.24だったのに対して9時間以上睡眠を取った人のBMI値は28.25であった。
 以上の結果から研究者らは、睡眠時間中に起きる穏やかな変化が体重のコントロールと関係している述べている。

【文献】
Kohatsu, N. D. et al.: Sleep Duration and Body Mass Index in a Rural Population. Arch. Intern. Med. 166: 1701-1705. (2006)


2006/10/22 フジテレビ・関西テレビ「発掘!あるある大事典Ⅱ」
 あなたのダイエットフルーツはどっち?
 10月22日(日)PM10:20-11:20(日本シリーズの試合が延びたため繰り下げ)
 リンゴとミカン、見直してみたらダイエット効果がすごい。食べ方に秘密が。WHOの果物と中性脂肪に ついての報告も紹介(当サイトも番組の取材に協力しました)。
 トピックス:果物摂取でダイエット、肥満予防

本サイトのフルーツ・ダイエットに対するサプリメントついての見解
 ダイエットにはリンゴなど果物が有効であると考えていますが、サプリメントではその効果はありません。その科学的根拠は上記トピックスをご覧下さい。


2006/10/22 チャールズ・ダーウィンの資料電子化・公開
 進化論で知られるイギリス科学者チャールズ・ダーウィン(Charles Darwin )の文献や資料などを電子化し、ネットで公開された。「ビーグル号航海記」や「種の起源」を読むことができる。
 2009年は、ダーウィンの生誕200年と、進化論のきっかけとなった「種の起源」の出版150周年にあたる。そこで、この年までに2年をかけ、ほぼすべての資料を電子化して公開する予定とのことである。

ダーウィンの文献・資料を公開しているサイトは下記である。
http://www.darwin-online.org.uk/


2006/10/21 食バランス重視でリンゴの健康効果は伝わるか
 健康志向の中で機能性成分(サプリメント)がブームである。そのため、「疾病に対してこの機能性成分は有効である。従って、この機能性成分が含まれている食品は健康によい」とするサプリメントを重視する考え方がある。
 しかし、リンゴでは、食バランスを重視した研究を行っている。「リンゴを食べると食バランスが改善されるため健康によい。」とする立場である。
 こうした研究方向に疑問を呈する人がいる。いわく「アッピール性が弱い」、「宣伝のしようがない」などなど。そうだろうか。
 果樹研究所が行った果物の健康効果についてのアンケート結果は下記のようになっている。

問 健康のためを意識して食べている食品はありますか
  (複数回答可:2005年4月調査)
-------------------------
       全体   男性   女性
1.リンゴ  50.5%   45.8%  52.8%
2.バナナ  48.7%   43.4%  51.3%
3.ミカン  37.8%   38.6%  37.4%

-------------------------
http://www.kudamononet.com/Kudamono&Kenko/
back_number/K&K_No58.html


 また、日本バナナ輸入組合の調査では下記のようになっている。

問 健康・美容に良いと思う果物は?
 (第2回バナナ・果物消費動向調査2006年6月)
-----------------------
1.リンゴ       43.7%
2.バナナ       43.4%
3.キウイフルーツ   37.3%
4.ミカン       37.0%*

-----------------------
*グラフからの読み取り値
http://www.banana.co.jp/chousa2/

 両調査ともリンゴが果物の中で1位である。こうした調査から機能性成分(サプリメント)のアッピール度は高いが、食バランスを重視する人たちも大勢いることを示しているように思う。
 果物の健康機能を伝える場合、食バランスを重視するのか、サプリメントを重視するのかを考えておく必要があるのではないかと思う。食バランス重視でリンゴの健康効果は十分に伝わっている。


2006/10/21 世界的な減塩キャンペーン始まる
 48カ国194人の医療専門家により世界的な減塩キャンペーンが開始された(World Action on Salt and Health (WASH) )。高血圧は脳卒中の62%、心臓病の49%の原因となっている(文献1)。世界では、脳卒中と心臓病で1270万人が死亡しており、他の疾病よりも死亡率が高い(文献2)。また、摂取する食塩を6gまで減少させると脳卒中で24%、心臓病で18%死亡率を下げることが出来ると示唆されている(文献3)。そのため、高血圧予防の観点からWHOでは1日当たりの食塩摂取量を5g以下にすることを目標としている。

World Action on Salt and Health (WASH) のホームページは下記にある。
http://www.worldactiononsalt.com/index.htm

イギリス政府のFood Standards Agencyによる「Salt - eat no more than 6 g a day」キャンペーンは下記のサイトで読める。
http://www.salt.gov.uk/index.shtml

【文献】
1) World Health Organisation: World Health Report 2002: Reducing Risks, Promoting Healthy Life. World Health Organisation (2002) www.who.int/whr/2002
2) World Health Organisation: The Atlas of Heart Disease and Stroke. Sep. 27, (2006)
http://www.who.int/cardiovascular_diseases/
en/cvd_atlas_01_types.pdf.

3) He, F. J. & MacGregor, G. A.: How far should salt intake be reduced? Hypertension. 42: 1093-1099. (2003)


2006/10/20 フラボノイドの一種「フィセチン」に記憶力向上効果
 野菜や果物に広く含まれるフラボノイドの一種「フィセチン(fisetin)」を摂取すると、記憶力が向上することを、武蔵野大と米ソーク研究所の共同チームが発表した。
 ラットから記憶をつかさどる海馬を取り出して生きた状態に保ち、フィセチンの水溶液を細胞にかけると、長期増強を担う分子が活性化した。そこで、マウスを使って実験を行った。2個の物体を健康なマウスに記憶させ、24時間後、2個のうち1個を別のものに替えて再び見せる。前日、物体を見せる前にフィセチンの水溶液を飲ませたマウスは、替えた物体にだけ興味を示した。しかし、この水溶液を飲まなかったマウスは、どちらの物体にも均一に興味を示し、前日に見たことを忘れていた。
 このことから、著者らは、フィセチンが脳の海馬に達し、記憶力向上物質として働いたと考えられると結論づけている。

【文献】
Pamela Maher, P. et al.: Flavonoid fisetin promotes ERK-dependent long-term potentiation and enhances memory. Proc. Natl. Acad. Sci. USA. online Oct. 18, (2006) [doi: 10.1073/pnas.0607822103]


2006/10/19 NHK「ためしてガッテン」
 -甘さ6倍!栗・感動の新調理術- 10月18日(水)PM8:00-8:43
 http://www3.nhk.or.jp/gatten/archive/2006q4/20061018.html
 栗のビタミンCはグレープフルーツ並み、食物繊維はさつまいも以上という健康食材! 縄文時代には主食として栽培されてきた。ところが、「殻をむくのが面倒」、「思ったほど甘くない」と、中国産の甘栗にすっかり押され気味。調べてみると、ほんの少しの工夫で甘さがメロン並みにアップし、殻も渋皮も指で簡単にむけちゃう方法を発見!(当サイトも番組の取材に協力しました)

   ニホングリの渋皮はどうして剥けないか
   続・ニホンナシの渋皮はどうしてはげないか


2006/10/18 睡眠不足は肥満、高血圧、心不全などと関連
 アメリカ国立補完・代替医療センター(NCCAM)の研究チームは成人3万1,044人を対象とした健康調査データから不眠症や睡眠障害と肥満、高血圧、心不全、不安障害、うつ病との関連性が認められたと発表した。これまで不眠症は単独の疾患とみなされていたが、不眠症患者で他の疾患を有していなかったのはわすか4%であった。
 睡眠の質と心身の健康との間に強い関連性を認めるエビデンス(証拠)が増えているがこの報告もその1つである。

【文献】
Nahin, R. L. et al.: Insomnia, Trouble Sleeping, and Complementary and Alternative Medicine: Analysis of the 2002 National Health Interview Survey Data. Arch. Intern. Med. 166: 1775-1782. (2006)


2006/10/17 果物・野菜の摂取は摂取カロリーや体重を減らす
 今までの研究によるとエネルギー密度(Kcal/g)の低い食品(果物や野菜)は、摂取カロリーを下げると示唆しているが、体重との関係は明かではなかった。そこで、アメリカに住む7,356人を対象に摂取カロリーや体重と摂取している食品との関係を調査した。
 その結果、低エネルギー密度の食品を摂取している人は、高エネルギー密度の食品(脂肪)を摂取している人より、摂取カロリーが1日当たり男性で425kcal、女性で275kcal低いことが分かった。ところが、低エネルギー密度の食品を摂取している人の1日当たりの食品の摂取重量は、男性で400g、女性で300g多かった。また、標準体重の人は肥満の人に比べて低エネルギー密度の食品(果物と野菜)を多く摂取していた。
 以上のことから、研究者らは果物と野菜の摂取は体重のコントロールに重要な働きをしていると述べている。

【文献】
Ledikwe, J. H. et al.: Dietary energy density is associated with energy intake and weight status in US adults. Am. J. Clin. Nutr. 83: 1362-1368. (2006)


2006/10/16 最小ゲノムを持つ共生細菌の発見
 生物が生きるために最低限必要なゲノムはいったいどのくらいなのか?
 理研中央研究所などの研究グループは、半翅目昆虫「キジラミ」に共生する細菌「カルソネラ」のゲノムがたった16万塩基対であることを発見した。これは、これまで知られている生物界のゲノムのなかで最小である。
 カルソネラは、キジラミの特殊な細胞(菌細胞)の細胞質内で生きており、この細胞の外では生存していけない。そのため、現在のカルソネラは2億年前に菌細胞内に侵入し、キジラミの親から子へと垂直感染することだけで生き続け、受け継がれてきたと考えられている。
 発見したゲノムは、単に遺伝子の数が少ないだけではなく、遺伝子の長さが短く、さらに遺伝子同士がオーバーラップしているという、これまでに知られていなかった極限まで切り詰められた特殊な構造をしていた。ゲノムからは生命活動を維持するのに必須と思われる遺伝子の多くが失われているが、失った分を昆虫の遺伝子や代謝産物に依存していると考えられる。
 今回の発見によって、かつては共生細胞だったと考えられているミトコンドリアや葉緑体はどのように細胞小器官になったのかについての疑問の回答にもなると期待されている。

【文献】
Nakabachi, A. et al.: The 160-Kilobase Genome of the Bacterial Endosymbiont Carsonella. Science 314: 267. (2006) [doi: 10.1126/science.1134196]


2006/10/15 南アメリカ・コロンビアで新種の鳥を発見
 南アメリカ・コロンビアの密林地帯で、頭のてっぺんがオレンジ色、目の回りは黒色で、のど元から腹部にかけて黄色というカラフルな新種の鳥が見つかった。ヤブシトド(Brush-Finch)の仲間で、手のひらににすっぽり収まる大きさの鳥で、コロンビア北東部のサンタンデル州の密林地帯で見つかった。名前は、かつてこの地域で暮らしていた先住民族の名をとり、ヤリギエスヤブシトド(Yariguies Brush-finch)と名付けられた。

【文献】
Donegan, T. M. & Huertas, B.: A new brush-finch in the Atlapetes latinuchus complex from the Yariguies Mountains and adjacent Eastern Andes of Colombia. Bulletin of the British Ornithologists' Club 126: 94-116. (2006)
http://www.proaves.org/IMG/pdf/Donegan_Huertas_
Atlapetes_latinuchus_yariguierum.pdf



2006/10/13 国際稲研究所が研究目標を転換:貧困の解消を目指す
 国際稲研究所(IRRI:本部フィリピン)は、かんがい地帯での稲作改善を目標としてきた方針を見直し、かんがい設備にない地域での稲作改善を重点目標とする「希望を呼び込み、豊かな暮らしを」と題した戦略計画(2007~2015年)を発表した。こうした地域は貧困が深刻なため、干ばつや水害、塩害に耐える品種の育成により生産安定を図り、貧困の解消を目指す。

国際稲研究所の新しい研究戦略は下記のサイトで読める。
http://www.irri.org/BringingHope/ImprovingLives.pdf?id=138


2006/10/12 民間団体TIが30カ国の「わいろ指数」を公表
 行政や企業などの腐敗について調査・提言している民間団体「トランスペアレンシー・インターナショナル(TI)」(本部ベルリン)が今年の「わいろ指数」を発表した。
 125カ国のビジネスマン11,000人以上の回答をもとに、主要輸出国30カ国の「わいろ指数」を求めた。
 1位はスイスで、以下スウェーデン、オーストラリアの順。イギリスは6位、アメリカは9位、日本は11位、フランスは15位、イタリアは20位だった。
 TIは、国際的大企業によるわいろの利用は国際法違反であるにもかかわらず、なおも一般的だと指摘してる。汚職やわいろは、貧困国が貧困状態から抜け出せない一因となっているとしている。

Rank Country    Average     Percentage
  territory   score     of globa
          (0-10)     exports (2005)
1 Switzerland    7.81      1.2
2 Sweden       7.62       1.3
3 Australia     7.59       1.0
4 Austria      7.50      0.5
5 Canada       7.46      3.5
6 UK         7.39      3.6
7 Gemany       7.34      9.5
8 Netherlands    7.28      3.4
9 Belgium      7.22      3.3
 US         7.22      8.9
11 Japan       7.10      5.8
12 Singapore     6.78      2.2
13 Spain       6.63      1.9
14 UAE        6.62      1.1
15 France      6.50      4.3
16 Portugal     6.47      0.3
17 Mexico      6.45      2.1
18 Hong Kong     6.01      2.8
  Israel      6.01      0.4
20 Italy       5.94      3.6
21 South Korea    5.83      2.8
22 Saudi Arabia   5.75      1.8
23 Brazil      5.65      1.2
24 South Africa   5.61      0.5
25 Malaysia     5.59      1.4
26 Taiwan      5.41      1.9
27 Turkey      5.23      0.7
28 Russia      5.16      2.4
29 China       4.94      5.5
30 India       4.62      0.9


TIが発表したリストは下記のサイトで読める。
http://www.transparency.org/news_room/in_focus/bpi_2006


2006/10/11 フルーツジュースの飲用と体重とは関連しない
 アメリカ・疾病管理予防センター(CDC)が就学前の子供を調査した結果、100%フルーツジュースを飲むことと過体重との関連性は見られなかったと発表した。
 就学前の子供〈2-5歳)1572人を対象に1999?2002 年の間調査を行った結果、子供たちは100%ジュースを1日当たり4.70 oz 飲用していた。そこで、100%フルーツジュースと小児用BMI判定基準を用いた体重との関係を調べたところ、統計的な関連性は見られなかった。

【文献】
O'Connor, T. M. et al.: Beverage Intake Among Preschool Children and Its Effect on Weight Status. Pediatrics 118: e1010-e1018. (2006) [doi: 10.1542/peds.2005-2348]


2006/10/10 果物摂取は男性の口腔ガン発症のリスクを下げる
 アメリカ・ハーバード大学の研究チームが行った調査によれば、果物(ビタミンCを多く含む果実、カンキツ果実、カンキツジュースなど)の摂取量が多い男性は、口腔ガン発生のリスクが統計的に有意に低いことが分かった。
 男性42,311人を対象に1986年から2002年の間、4年ごとに調査を行った結果、果物を多く摂取している人は、摂取量が少ない人に比べて30-40%口腔ガン発症のリスクが少なかった。

【文献】
Maserejian, N. N. et al.: Prospective Study of Fruits and Vegetables and Risk of Oral Premalignant Lesions in Men. Amer. J. Epidem. 164: 556-566. (2006) [doi: 10.1093/aje/kwj233]


2006/10/09 果物と野菜の摂取は中性脂肪を減らす
 インドで行われた研究によると、果物(107.3g/日)と野菜(緑色の葉菜34.4/日、根・塊茎93.7/日、他の野菜193.6/日)の摂取は血清中の中性脂肪と負の相関があった(p<0.05)。一方、 ミルクの摂取は、血清中の中性脂肪(p<0.01)、LDL-C(p<0.05)、血糖レベル(p<0.1)と正の相関があった。また、飽和脂肪酸の摂取は、血清中のLDL-C(p<0.05)、中性脂肪(p<0.05)と正の相関があった。

【文献】
Bains, K. et al.: Food and nutrient intake in relation to cardiovascular disease among rural males of Punjab, India. Asia Pac. J. Clin. Nutr. 13(Suppl): S95. (2004)


2006/10/08 糖尿病は肥満より死亡リスクが高い
 アメリカで行われた15,408人(44-66歳)を対象とした調査から、太っているか否かにかかわらず糖尿病患者は、非糖尿病患者と比較して死亡リスクが3倍高いことが分かった。一方、糖尿病に罹患していない肥満の人の死亡リスクは非肥満者と変わらなかった。
 この結果は、糖尿病の死亡リスクが高いことと、肥満、糖尿病、疾病の関係は複雑であることを示している。そのため、研究者らは、肥満と疾病との関係についてさらなる研究が必要と述べている。

 この研究で注目されるところは、糖尿病でない肥満の人の死亡リスクが、非肥満者と変わらないとしている点で、従来の予測と一致しない。生活習慣病に係わる血圧、コレステロールなどの危険因子が正常であれば、単純な肥満は死亡リスクにつながらないことを示しているのかも知れない。

【文献】
Slynkova, K. et al.: The role of body mass index and diabetes in the development of acute organ failure and subsequent mortality in an observational cohort. Critical Care 10: R137 (2006) [doi: 10.1186/cc5051]

上記論文は下記のサイトに公開されており全文を読める。
http://ccforum.com/content/10/5/R137


2006/10/07 女性のための骨粗しょう性骨折リスク判定の予測式
 オーストラリア・メルボルン大学の研究チームは、女性の骨粗鬆症性の骨折を予測する式を開発したと発表した。開発された予測式は骨密度だけでなく、様々な危険因子を考慮して作られており、この予測式を用いて2年以内に起こる骨折リスクを75%予測できた。
 予測式を用いてヒップ、背骨、上腕、前腕に障害のある231人の年配の女性と、障害のない448人の年配女性に対して調査を行った結果、2年以内の骨折を75%予測できた。
 以上のことから、この予測式は、骨粗しょう症の女性の治療に役立つと、研究者ら述べている。

【文献】
Henry, M. J. et al.: Fracture Risk (FRISK) Score: Geelong Osteoporosis Study. Radiology 241: 190-196. (2006) [doi: 10.1148/radiol.2411051290]


2006/10/06 メルマガ第122号に特集記事がなかった理由
 今日配信したメールマガジン「果物&健康NEWS」第122号に予定していた特集「カキ酢の作り方」の掲載を見送りました。

 記事は完全にできあがっており、果樹花き課に転送しました。しかし、もう一度再読したとき、カキ酢の製造途中のアルコール発酵が酒税法に触れるのではないかと気づきました。そこで、インターネットで調べたのですがよく分からなかったので、国税庁に問い合わせたところ、やはり酒税法に触れるとの回答でしたので掲載をあきらめました。

 製造過程で出来たアルコールを酒として飲まなくても、アルコール分が1%を越える場合は製造許可が必要と分かりました。そのため、食酢製造業者は、もろみ製造の許諾を受ける必要があるとのことでした。

 以上のことから、家庭でカキから食酢を作ると密造ということになります。メルマガの読者からカキ酢の作り方を取り上げてほしいとのメールをいただいたのですが、残念ながら期待に応えられませんでした。


2006/10/05 簡単に渋皮むけるクリ品種「ぽろたん」の育成
 渋皮がぽろっとむける新品種「ぽろたん」が農研機構果樹研究所で育成された。甘栗のように渋皮がむきやすいニホングリの新品種の育成は画期的な成果である。クリの実を加熱したあと、渋皮がポロンと簡単にむけることから、「ぽろたん」と名付けられた。
 ただし、これからな苗木として販売され、実がなるまでに時間がかかるので、くりご飯や菓子の具など秋の味覚を手軽に楽しめるヨウになるまでは、早くて7,8年後となる。

渋皮が簡単にむける画期的なニホングリ新品種「ぽろたん」のプレスリリースは下記にある。
http://www.fruit.affrc.go.jp/announcements/kisya/
h18-10-04/porotan.pdf



2006/10/04 ノーベル物理学賞:ビックバン理論の証明に
 今年度のノーベル物理学賞は、アメリカ航空宇宙局(NASA)ゴダード宇宙飛行センターのジョン・マザー博士(John C. Mather: 60)とカリフォルニア大のジョージ・スムート教授(George F. Smoot: 61)が受賞した。
 受賞理由は「宇宙背景放射の不均一性の発見("for their discovery of the blackbody form and anisotropy of the cosmic microwave background radiation")」である。1989年に打ち上げられた観測衛星COBE(コービー)で、宇宙全体から届くマイクロ波(宇宙背景放射)を観測し、宇宙が爆発的に膨張して生まれたとするビッグバン理論を観測で裏付けたことと、放射が全天から均一に来るのではなく、10万分の1レベルの温度の違い(ゆらぎ)があることを発見した。

ノーベル財団のサイトは下記にある。
http://nobelprize.org/nobel_prizes/physics/laureates/2006/


2006/10/03 「RNA干渉」の発見にノーベル医学生理学賞
 スウェーデンのカロリンスカ研究所は、2006年のノーベル医学生理学賞をアンドルー・ファイアー(Andrew Z. Fire)・スタンフォード大医学部教授(47)と、クレイグ・メロー(Craig C. Mello)・マサチューセッツ大教授(45)の2氏に授与すると発表した。
 生物の遺伝情報を伝える役のRNA(リボ核酸)が対になった「二重鎖RNA」で、遺伝子の発現が阻害される「RNA干渉」という現象を線虫で発見し、1998年に発表した。この現象は人間にも共通しており、二重鎖RNAを人工的に作ることで新薬開発などに道を開いたことが評価された。

 当初、この研究は特殊な現象と考えられ、生体内では働かないと思われ、マユツバな研究とされた。ところが、最近では、網膜の加齢黄斑変性症やC型肝炎、エイズ、ガン、ホルモン異常などの治療薬の研究へと発展している。
 今回のノーベル賞受賞対象の研究も当初の評価は低かった。このことは、研究を1年単位で評価することが誤りであることを示している。

ノーベル財団のプレスリリースは下記のサイトで読める。
http://nobelprize.org/nobel_prizes/medicine/laureates/2006/


2006/10/02 糖尿病患者はガン罹患リスクが高い
 糖尿病患者はガンの罹患リスクが高いと考えられてきたが、その証拠はほとんどなかった。そこで、日本人97,771人(男性46,548人、女性51,223人:40-59歳)を対象に調査を行った結果、男性の糖尿病患者では、非糖尿病の人に比べてガン罹患リスクが27%高かった。特に、肝臓ガン、すい臓ガン、腎臓ガンの発症が多く見られた。
 女性の糖尿病患者は、男性ほど高くなかったが、非糖尿病の人に比べてリスクが21%高く、胃ガン、腎臓ガン、卵巣ガンが多かった。
 糖尿病患者にガンの発生が多い理由として、ガン細胞の成長を促進するインシュリンが多いためにガンの発症が多くなった可能性と、糖尿病患者に肥満が多いためガンの発症が多くなった可能性が考えられるとし、今後の検討が必要としている。

【文献】
Inoue, M., et al.: Diabetes Mellitus and the Risk of Cancer - Results From a Large-Scale Population-Based Cohort Study in Japan. Arch. Intern. Med. 166: 1871-1877. (2006)


2006/10/01 火星探査車オポチュニティーはまだ元気に活躍
 火星の地表を調査しているアメリカ航空宇宙局(NASA)の無人探査車オポチュニティー(Opportunity)が、9月27日から28日にかけてビクトリア・クレーターの端に到着した。火星に着陸(2004年1月)してから火星時間で952日(約31ヶ月)かけて移動した。このクレーターは幅800m、深さ70mで、砂丘で覆われているが一部、岩石が露出しており、ででこぼこしている壁が見える。

ビクトリア・クレーターの写真は下記のサイトで見られる。
http://photojournal.jpl.nasa.gov/catalog/PIA08783

 「地質学者の夢が実現するかも知れない。壁にある地層を調べられるなら、火星の環境に関する新しい発見があるのではないか」と、コーネル大学のSteve Squyres 博士は述べている。

 同時期に着陸したスピリット(Spirit)は、火星の砂とほこりに苦戦しているようである。2006年4月4日の様子が下記のサイトで読める。
http://www.nasa.gov/mission_pages/mer/mer-20060404.html

 探査機の寿命3カ月と考えられていたが、2年半以上も探査を続けている。当初、太陽電池パネルに砂ぼこりが積もって動かなくなると見られていたが、強風で砂ぼこりが払われるなどして寿命が延びているらしいとのことである。

2006年9月


2006/09/30 ぜん息のリスクは肥満の女性で高い
 カナダで行われた86,144人の調査から、肥満の女性は、肥満の男性よりぜん息になるリスクが高いことが分かった。また、肥満の女性は、標準体重の女性よりぜん息のリスクが85%高く、肥満の男性は、標準体重の男性より21%高かった。BMIが1ユニット増加するとリスクが女性では6%増加し、男性では3%増加した。
 以上のことから、ぜん息は肥満と関係するが、女性と男性とでは異なっていることが明らかとなった。

【文献】
Chen, Y. et al.: The Association Between Obesity and Asthma Is Stronger in Nonallergic Than Allergic Adults. Chest 130: 890-895. (2006)


2006/09/29 サラダの栄養価
 17,500人以上の男(8,282人)女(9,406人)の食事データを分析したところ、生野菜のサラダの摂取量は、血中の葉酸、ビタミンC、ビタミンE、リコピン、α-カロテン、β-カロテンの濃度と相関していることがアメリカ・カリフォルニア大学とルイジアナ州立大学の共同研究から明らかとなった。

【文献】
Su, L. J. and Arab, L.: Salad and Raw Vegetable Consumption and Nutritional Status in the Adult US Population: Results from the Third National Health and Nutrition Examination Survey. J. Amer. Diet. Assoc. 106: 1394-1404. (2006)


2006/09/29 バランス派とサプリメント派のそれぞれの目標
 健康の維持・増進のためにバランス派は、どの食品をどのくらい食べたらか良いかを科学的に明らかにして、それぞれの食品の摂取目標値を決めることである。「食事バランスガイド」や「毎日くだもの200グラム」に代表される。
 一方、サプリメント派は、機能性成分を濃縮し、加工食品などに添加して成分を強化し、特定保健用食品としての認可が目標である。果物など食素材そのものは特定保健用食品の対象外である。
 従って、この両者は食品に対する考え方も異なる。バランス派は、果物など食素材を重視するのに対し、サプリメント派は、成分を高含有する加工食品を重視することにある。


2006/09/28 糖尿病予防には減量が最適
 糖尿病予防のため肥満の人(1079人、平均BMI=33.9)を対象に3.2年間調査を行った結果、減量が糖尿病の発症リスクを減らすのに最も効果的だあることが分かった。1キログラム体重を減らすと糖尿病の発症リスクが16%減る。また、体重を減らすには脂肪の摂取を減らし、運動が効果的であるとしている。

【文献】
Hamman, R. F. et al.: Effect of Weight Loss With Lifestyle Intervention on Risk of Diabetes. Diabetes Care 29: 2102-2107. (2006) [DOI: 10.2337/dc06-0560]


2006/09/27 バランス派、それともサプリメント派?
 大豆に含まれているイソフラボンは骨粗しょう症を予防できると注目されていた。しかし、イソフラボンを含む豆乳などの売れ行きが鈍っているという。
 イソフラボンは女性ホルモンのような働きをする成分である。しかし、イソフラボンのサプリメントを女性が大量に摂取した場合、子宮内膜が厚くなるなどの研究報告から、厚生労働省食品安全委員会は、「妊婦、授乳中の女性、乳幼児、小児は、大豆イソフラボンを凝縮した錠剤やカプセル、粉末などを摂取しないこと」とした。
 イソフラボンを含む豆乳の生産量が減少に転じたのはこうした厚生労働省の通知が影響したと考えられる。フジッコ(神戸市)による首都圏と近畿圏の男女500人を対象に大豆イソフラボンの意識調査によれば、安全性論議が気になった人の約6割が「豆乳の購入を控えた」と答え、かつ、約4割が「普通の大豆食品の取り過ぎにも注意した方がよい」と答え、大豆食品そのものが危険と誤解している人が少なからずいる傾向がうかがわれる。

 サプリメントの場合、安全性論議は避けられない。一方、消費者は、「安全・安心」に敏感で議論されただけで、安全・安心に疑いを持つ現状がイソフラボンの例からも明かである。
 特定成分は特定の場所で働くが、健康の維持・増進の主役ではない。なぜなら、バランスよく栄養素を摂取していなければ特定成分だけを大量に摂取しても生体内では働かず意味がないからである。

 食品安全委員会などでは、バランス重視派が増えているようである。バランス重視派は、「最終的には消費者の判断だからサプリメントを飲むな、とは言えないが、臆病になるぐらいに慎重であってほしい」との医師の意見に代表される。


2006/09/26 ビタミンD不足は高齢者の転倒リスクを高める
 男女1231人(65歳以上)を調査したオランダの研究から、血液中のビタミンDが不足している高齢者は、十分にビタミンDを摂取している高齢者に比べて、転倒する回数が多いことが分かった。また、ビタミンD不足の人は、1年間に2回転倒するリスクが78%高くなる。
 ビタミンDは骨の健康維持に重要な役割を果たすが、筋肉質量や強度にとっても重要であり、筋肉を損なうと転倒リスクが高まるためと考えられている。

【文献】
Snijder, M. .B. et al.: Vitamin D Status in Relation to One-Year Risk of Recurrent Falling in Older Men and Women J. Clin. Endocrinol. Metabol. 91: 2980-2985. (2006) [doi: 10.1210/jc.2006-0510]


2006/09/25 将来5人に1人は肥満児:アメリカ
 アメリカ医学研究所(IInstitute of Medicine: OM)が、アメリカの児童の17%が肥満であるが、今後10年で子どもの5人に1人が肥満児になる可能性があるとが報告したとCNNが伝えている(06/09/16)。
 IOMによると、プログラムは肥満傾向にある児童を対象として、保護者や学校、地域社会、食品産業、政府が連携して取り組んできた。アメリカ疾病対策センター(Centers for Disease Control and Prevention: CDC)の実施した「Verb」プログラムでは、外遊びが減り始める9-13歳の児童の運動を30%も増やすことが出来た。しかし、予算削減に伴い、今年打ち切りに追い込まれた。
 IOMの報告書は、最善策を見極めるためにはさらなる調査が必要だと述べ、子供の肥満が増えている現状を改革するのに必要な国の指導力が不足していると指摘している。
 アメリカ疾病対策センターの元長官で、IOMの委員会のエモリー大学のジェフリー・コプラン博士は、「急性感染症への対応とは性質が異なるが、こうした疾病と同様に子供の肥満対策を重視するべきで、予算削減は問題だ」とコメントしている。また、カリフォルニア大学の研究者トニ・ヤンシー氏は、健康的な食習慣と運動が必要だという認識を定着させるため、社会全体の変化が必要と述べた。

上記CNNの記事は下記のサイトで読める。
http://www.cnn.com/2006/HEALTH/09/13/
child.obesity.ap/index.html



2006/09/24 リンゴは今も人工的なワックス処理しているのでしょう?
 青森で栄養師さんに対してリンゴの健康効果について講演したとき、会場から「リンゴは今も人工的なワックス処理しているのでしょう?」と質問された。もちろんこの質問者は、リンゴの表面の白い粉やべとべとが「果粉」といわれるものでリンゴ自身が作り出すろう物質(脂肪に似た物質)であることはご存じです。
 質問者は、かってリンゴの日持性を向上させるために人工的なワックス処理(ポストハーベスト農薬)が行われていたことを覚えておられてこの質問となったわけです。
 この質問には驚きました。使われたのはもう20年以上も前の話です。日持性のよい品種が作出されたことと、消費者の志向に合わせて現在では全く使われていません。でも「安全・安心」に係わることなので覚えておられたのです。
 リンゴの生産量が日本一の青森に住む食の専門家である栄養師さんのこの質問は大変重いと思いました。「安心・安全」に関する感情を軽く考えてはいけないと思い知らされました。

 一方、新しく開発されたポストハーベスト農薬には、日持性向上効果があるため美味しいリンゴが長く食べられる。それは、消費者のメリットだから受け入れられるとの説があります。本当でしょうか。
 昨年、天候不順で「つがる」の収穫が遅れ、次の品種の出荷と重なり供給量が増加した結果、リンゴの価格が暴落してしました。そして下がったまま、その後も回復することはありませんでした。このことは、「つがる」の販売日数が延びてもそれを吸収するだけの消費が市場にはないことを示しています。

 「消費量を伸ばせばよいではないか」とすぐに反論されます。しかし、消費を伸ばすための「毎日くだもの200グラム」運動は、「安心・安全」と深いつながりがあり、ポストハーベスト農薬の使用とは両立しにくいのです。
 青森の栄養師さんの「リンゴは今も人工的なワックス処理しているのでしょう?」の質問の重い意味がここにあります。我が国の果物は諸外国に比べて安全・安心であるとの認識が覆ると、せっかくの「毎日くだもの200グラム」運動も前に進まなくなるのではないでしょうか。

 そのため、ポストハーベスト農薬はいらないと考えています。

 ポストハーベスト農薬によるリンゴの日持性向上の研究は大変興味深い領域です。しかし、研究のおもしろさと消費者の志向とは一致するとは限らないのです。


2006/09/24 イギリスの給食改革:毎日、給食に果物・野菜を2品目
 子供たちの肥満を防ぐためにイギリスでは、9月から学校給食にジャンクフード(チョコレート、ポテトチップス、炭酸飲料、質の悪い肉など)の利用が禁止され、果物と野菜を毎食ごとに2品以上とし、揚げ物は週2回までとする給食改革がスタートしたとBBCが伝えている(06/09/19)。
 イギリスでは2-15歳までの約30%が太り過ぎとされ、子どもの肥満が大きな問題になっている。そこで、政府は学校給食の改善のために2.8億ポンドの支出を約束し、テレビの人気シェフであるオリバー(Oliver)さんを使ったキャンペーンが行われている。
 イギリス教育技能省のアラン・ジョンション(Alan Johnson)長官は、今回の改革で示した新しい規格により、学校が提供する食べ物は健康的であることを保障すると語った。また、生徒たちは、学校給食から健康的なバランスのよい食事について学び、正しい選択が出来るようになると述べている。

BBCの上記記事のサイトは下記
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/education/4995268.stm


2006/09/23 マラソンランナーは渇きを感じたら給水が必要
 マラソンランナーが走っているときどのくらい給水する必要があるかについては色々な考え方がある。例えば、アメリカンカレッジ・スポーツ医学(American College of Sports Medicine: ACSM)のガイドラインでは、1時間当たり600-1200mlの給水を推奨している。
 一方、国際マラソンドクター協会(International Marathon Medical Directors Association: IMMDA)の専門家は、状況に応じ柔軟な対応が必要であり、最も普遍的な基準は「渇き」であると報告した(文献)。

【文献】
Hew-Butler, T. et al.: Updated Fluid Recommendation: Position Statement From the International Marathon Medical Directors Association (IMMDA). Clin. J. Sport Med. 16: 283-292. (2006)


2006/09/22 アルツハイマー病になっても新しい記憶が出来る:マウスで
 アルツハイマー病が発症したトランスジェニック・マウスに酵素(ubiquitin C-terminal hydrolase L1 (Uch-L1))を注射したところ、マウス新しい記憶を作る能力が回復したとアメリカ・コロンビア大学の研究チームが報告した。今後、治療法への進歩が期待される。

【文献】
Gong, B. et al: Ubiquitin Hydrolase Uch-L1 Rescues β-Amyloid-Induced Decreases in Synaptic Function and Contextual Memory. Cell 126: 775-788. (2006)


2006/09/21 食事からのビタミンEの摂取量が低いとぜん息になりやすい
 イギリスで2,000人の妊婦とその子供を5年間追跡調査したところ、妊娠中に食事からのビタミンEの摂取量が最低であった群の母親の子供は、最高であった群の子供の5倍もぜん息になるリスクが高いことが分かった。妊娠16週目までが特に重要な期間であると研究者らは述べている。
 この研究結果から研究者らは、ビタミンEだけを摂取するべきではなく、バランスの良い健康的な食事から毎日のビタミンEの推奨量を摂取することが重要であると述べている。

 果物摂取とぜん息との関係について近々、果物&健康NEWSで取り上げる予定。

【文献】
Devereux, G. et al.: Low maternal vitamin E intake during pregnancy is associated with asthma in 5-year-old children. Am. J. Respir. Crit. Care Med. 174: 499-507. (2006) [doi: 10.1164/rccm.200512-1946OC]


2006/09/20 リンゴが肺機能を良好に保つ
 イギリスで行われた45~49歳の男性2,500人以上の食事と肺機能の調査から、良好な肺機能はビタミンC、E、ベータカロテン、カンキツ、リンゴ、果物ジュースの高摂取と関係があるらしいことが分かった。しかしながら、統計的に有意差が見られたのはリンゴだけであった。
 1週間当たり5個以上のリンゴを食べている人は肺機能が良好で、そうでない人に比べて肺容量が138ml大きかった。

【文献】
Butlanda, B.K. et al.: Diet, lung function, and lung function decline in a cohort of 2512 middle aged men. Thorax 55: 102-108. (2000)


2006/09/19 果物を無料で学校に提供:意外な調査結果
 アメリカ・ミシシッピー州で、リンゴ、オレンジなど新鮮果物を学校の子供たちに無料で提供した結果、果物の摂取量が増えたことが分かった。
 2004-2005年にグレード5(小学5年)、グレード8(中学2年)、グレード10(高校1年)の学生851人に果物と野菜を無料で提供した。その結果、グレード8とグレード10の学生で果物の摂取量が増加し、果物の無料提供が効果的であると考えられた。しかし、グレード5では消費は増えたようには見えなかった。グレード5で摂取量が増えなかった理由として、幼い子供は、果物や野菜などカロリーに低い食品より、カロリーの高いバターなどの食品を好む傾向にあるためではないかと考えられている。一方、野菜ではどの学年でも消費が増えたとは認められなかった。

 この調査結果は意外であった。小学生の方が学校の先生の言いつけを守るのではないかと思っていたが、むしろ、中高生に果物を配布する方が消費拡大につながることが分かった。思春期になると食生活がかわることと関係しているのかも知れない。この調査結果から考えると、ダイエットと結びつけて中高生に果物を配ることは有効ではないか。

【文献】
Schneider, D.J. et al.: Evaluation of a Fruit and Vegetable Distribution Program - Mississippi, 2004-05 School Year. Morbidity and Mortality Weekly Report 55: 957-961. (2006)


2006/09/19 果物の消費拡大にポストハーベスト農薬はいらない
 安全と安心への関心が高まっている。安全は科学的な証明が可能であるが、安心は消費者の心の問題であるので簡単には変えることは出来ない。また、消費者に科学的な知識のないことを指摘しても始まらない。
 国産果物の消費拡大には、安心感の醸成が不可欠である。現在、果物の国内流通と日本以外の諸外国の流通で最も異なる点はポストハーベスト農薬についての扱いの違いである。諸外国では果物を収穫した後に農薬を処理し流通過程での果物の損失を防いでいるが、我が国ではほとんどこうしたポストハーベスト農薬の処理を必要としない。このことが、国産果物の安心感を形成している。
 日本だけポストハーベスト農薬を使用する必要がない理由は、単純化していえば収穫が丁寧だからである。1つ1つ丁寧に収穫し、選果をしっかりしているのでポストハーベスト農薬を使う必要がない。
 国際化に合わせて、この安心感を古くさいイメージとして払拭する必要があるとの考え方があるが得策とは思えない。むしろこのイメージを大切にして果物の消費を拡大する必要があるのではないか。


2006/09/18 やせ過ぎモデル規制の動き、広がる
 スペインでやせ過ぎのモデルがファッションショーへの出演を禁止されたが、イギリスでも同様の動きが出ている。
 ロンドン・ファッションウィークが18日から始まるが、食事障害防止団体や閣僚がやせ過ぎのモデルへの懸念を相次いで表明した。スペインと同様に、身長と体重の比率BMIが18にを満たないやせ過ぎのモデルをショーに出さないよう求めている。
 ガーディアン紙やデーリーメール紙によると、ジョウェル(Tessa Jowell)文化相は、もっと現実的な体型の健康な女性になるよう呼び掛けている。同相は「若い女性の行動や感情を形づくる上で、ファッションが果たす力を一瞬たりとも過小評価してはならない」と語っている。また、食事障害協会のスポークスマンは、規制は増大している拒食症や病的飢餓のレベルを減らすのに有益であると語った。
 しかし、ファッションショーの主催者はこうした要請を拒否している。その理由として、ファッションに対して創造的な自由がデザイナーに与えられる必要があるとしている。また、モデルを決めるのはデザイナーで、こうした要請に冷淡というわけではないと述べている。

ガーディアン紙の上記記事は下記のサイトで読める。
http://observer.guardian.co.uk/uk_news/story/0,,1874322,00.html
デーリーメール紙の上記記事は下記のサイトで読める。
http://www.dailymail.co.uk/pages/live/articles/news/news.html?
in_article_id=405431&in_page_id=1770


 毎日新聞(06/9/18)が、「少女らに誤ったメッセージを送る」としてスペイン・マドリードのファッションショーでモデル5人がやせ過ぎ禁止で失格となったと伝えている。
 事前の身体測定では、モデル68人中5人が規定値に達せず出場禁止となった。身体測定はBMIが18以上とする拒食症防止のための地域規定に基づいて実施された。イタリア・ミラノのファッションショーも規定導入の動きがあるという。


2006/09/17 ネアンデルタール人と現生人は長く共存
 約3万年前までに地上から姿を消したと考えられていたネアンデルタール人が2万8000~2万4000年前まで生存していたことを示す証拠がイベリア半島で発見された(文献1)。
 このことは、現生人(現代型ホモ・サピエンス)の進出で滅んだとする従来の考え方を覆し、現生人との共存が数千年にわたって続いていたことを示す結果である。
 国際研究チームは、イベリア半島南部ジブラルタル沿岸の洞窟(どうくつ)から、ネアンデルタール人の文化を示す石器類103個と火の使用跡を発見、地層中の放射性炭素などの分析で年代を特定した。

 この科学的発見は、色々な想像を喚起する。ネアンデルタール人と現生人の交流はあったのか。コミュニケーションは可能だったのか。ネアンデルタール人は環境不適合などで自滅したのか、それとも、現生人に滅ばされたのか。食料を取り合ったのか。などなど。共存していた時代のそれぞれの文化程度の差も知りたいと思う。
 南カリフォルニア大学のPlagnolらの研究では、ヨーロッパ人はネアンデルタール人の遺伝子を受け継いでいるのでないかと示唆している(文献2)。科学的に大変面白い状況になっている。

【文献】
1) Finlayson, C. et al.: Late survival of Neanderthals at the southernmost extreme of Europe. Nature Online Sep. 13 (2006) [doi: 10.1038/nature05195]
2) Plagnol, V. etal.: Possible Ancestral Structure in Human Populations. PLoS Genetics 2: e105. (2006) [DOI: 110.1371/journal.pgen.0020105]


2006/09/16 ヤングアダルトに対する果物・野菜摂取への動機づけ
 アメリカ・南ダコタ州立大学の研究グループは、栄養学を学んでいない大学生(18-24歳)に対し、果物と野菜の摂取の動機づけを行った。
 参加した大学生に対し、4回のニュースレター、1回のインタビュー、E-mailによる個別のフォローアップを4ヶ月間行った。対象グループの果物と野菜の摂取の増加量は1日当たり0.4サービングであったが、動機づけが行われたグループの果物と野菜の摂取の増加量は1日当たり1サービングと統計的に有意に摂取量が増加した。
 以上のことから、コンピュータなどを使った上記の方法は、ヤングアダルトに対する果物と野菜の摂取量を増やすのに効果的であると著者らは述べている。

【文献】
Richards, A. et al.: Motivating 18- to 24-Year-Olds to Increase Their Fruit and Vegetable Consumption. J. Am. Diet. Assoc. 106: 1405-1411. (2006)


2006/09/15 高カロリー、低食物繊維食が子供の肥満の原因
 高カロリー、低食物繊維食はホルモンのインバランス(不均衡)を招き、子供の過食につながると、アメリカ・カリフォルニア大学のRobert H. Lustig教授が述べている。
 アメリカでは、子供の最も一般的な疾患は肥満であり、以前は成人にのみ見られた2型糖尿病などの疾患が、現在では子供の間で広がりを見せている。
 現在の食品環境は、カロリーの摂取量が多く、食物繊維の消費量が低下しており、そのため、 脂肪組織へのエネルギーの蓄積や レプチンによる情報伝達などによりインシュリンの分泌に影響を及ぼし結果として肥満になるとしている。

【文献】
Lustig, R. H.: Childhood obesity: behavioral aberration or biochemical drive? Reinterpreting the First Law of Thermodynamics. Nature Clinic. Prac. Endoc. Metabol. 2: 447-458. (2006) [doi: 10.1038/ncpendmet0220]


2006/09/14 アメリカ31州で成人肥満率が増加
 アメリカでは成人肥満率が31の州で増加し、およそ3分の2の人々が糖尿病、脳卒中、がんといった致命的疾患で亡くなっているとTrust for America's Health (TFAH)2006年版に掲載された。アメリカ・連邦政府や州政府が過体重を抑制する努力をしているにもかかわらず、成人肥満率は1980年の15%から、2004年には32%と増加した。

下記のサイトで報告の要約が読める。
http://healthyamericans.org/reports/obesity2006/


2006/09/13 果樹研究所と京都府立医科大のウンシュウミカンの研究がBBCに掲載
 BBC(2006.9.11)は、果樹研究所で行われたカロテノイドを含むウンシュウミカンは肝疾患、動脈硬化、インシュリン抵抗性のリスクを下げる研究と、京都府立医科大学で行われたウンシュウミカンジュースを飲み続けると慢性ウイルス性肝炎の患者の肝臓ガン発症のリスクを減らす研究を、イギリスの二人の研究者のコメントともに報道した。

 果樹研究所の研究では、三ケ日町に住む1,073人を調査した結果、ウンシュウミカンを多く摂取している人は、重篤な疾患と関係する化学マーカーの値が低いことを見いだした。
 イギリス・ハート財団(BHF)のCathy Rossは、「この研究は、イギリス・ハート財団が推奨している果物と野菜を1日あたり少なくとも5単位食べることを支持する結果である」と述べている。そして、「異なった色の果物と野菜には、異なったビタミンとミネラルを含んでいるので、食事の中に様々な果物や野菜を取り入れるのがよい」とコメントした。

 京都府立医科大学の研究チームは、30人の患者に対して慢性ウイルス性肝炎の患者にカロチノイド含んだウンシュウミカンジュースを毎日、1年間の飲用してもらったところ1年後に、肝臓ガンに罹患した人はいなかった。一方、ジュースを飲まなかった45人の患者のグループで8.9%の発症があった。今後この研究をさらに5年間を続けるのを計画している。
 イギリス・チャリティー・ガン研究所のEd Yongは、この研究の意義を認める一方、サンプルサイズを大きくする必要があると述べるとともに、喫煙やアルコールの過度の飲用による肝硬変が肝臓ガン発症により影響するように見えるので、何か特定の果実で特に強い利益があるかどうかは不明瞭であるとコメントした。

BBCの上記ニューストは下記のサイトで読める。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/health/5333898.stm


2006/09/12 果物にアニメキャラクター:売り上げアップ
 アメリカのスーパーマーケットで果物や野菜にアニメキャラクター(「ミッキーマウス」や「くまのプーさん」)が貼られている。子どもの肥満などに対する懸念を背景に、健康的なイメージ作りを図る娯楽業界と、市場拡大を目指す生産者らの思惑が一致し、キャンペーンが行われている。
 青果流通業者のイマジネーション・ファームズ(本社・インディアナ州)は娯楽・メディア大手ウォルト・ディズニーからライセンスを取得し、今年5月以来、全米15カ所の生産大手から届く野菜や果物を、「ディズニー・ガーデン」というブランド名で卸している。すでに店頭に並んでいるのは、人気キャラクターのデイジーダックやグーフィーのシールが付いたモモ、ミッキーマウスの箱に入ったブドウなど。くまのプーさんの印を付けたリンゴも発売予定。
 ディズニー・ガーデンの商品を青果売り場全体に広げ、子どもたちをファストフードから呼び戻し、果物の消費を伸ばしたいと同社は考えている。今のところ狙い通り、キャラクター付きのモモやスモモ、ネクタリンは、キャラクターのなかった昨年を上回る売れ行きを示しているという。
 過去にも「ポパイのホウレンソウ」といった例があるが、ライセンス契約のコストなどが壁になり、普及しなかった。ディズニーはイマジネーション・ファームとの契約内容を公表していないが、青果業界誌を編集する専門家は、娯楽業界の目的は家庭向けのイメージアップで、ライセンス料でもうけるつもりはないとみられ、料金は低く設定している可能性が高いとみている。

上記CNNの記事は下記のサイトで読める。
http://www.cnn.com/2006/HEALTH/conditions/09/05/
cartoon.fruit.ap/index.html



2006/09/11 食物繊維を摂取するために
 アメリカ・家庭医協会は、コレステロールを下げ、心臓病、糖尿病のリスクを減らす効果がある食物繊維の摂取を勧めている。健康の維持のための食物繊維を摂取するために、1)毎日、少なくとも4.5カップの果実と野菜を摂取する(食物繊維が豊富なのは、リンゴ、オレンジ、ベリー、セイヨウナシ、ブロッコリー、ニンジンなど)。2)精米されていない玄米や全粒小麦粉のパンを摂取する。3)朝食にふすまのシリアルを摂取する(ただし、食物繊維の量をラベルでチェックする)。4)小麦のふすまを他の食物に混ぜて摂取する。5)頻繁に料理した豆を摂取する。

アメリカ・家庭医協会のサイトは下記
http://familydoctor.org/099.xml


2006/09/10 長時間勤務は血圧を上げる
 アメリカ・カルフォルニアで55,000以上の家庭を対象とした調査によると、週40時間以上働いている人は、週11~19時間働いている人より血圧が14%高く、また、週41~50時間働いている人は血圧が17%高いことが分かった。職業別では、事務職と非熟練労働者は専門職より高血圧が高かった。事務職は専門職より23%高く、非熟練労働者は専門職より50%高いことが分かった。

【文献】
Yang, H. et al.: Work Hours and Self-Reported Hypertension Among Working People in California. Hypertension Online Aug. 28. (2006) [doi: 10.1161/01.HYP.0000238327.41911.52]


2006/09/09 食事摂取基準に関するガイド版の発行
 アメリカとカナダの専門家チームが「食事摂取基準:栄養所要量に関するエッセンシャルガイド(Dietary Reference Intakes:The Essential Guide to Nutrient Requirements」(2006年版)を発行した。推奨食事許容量、適量摂取レベル、生活習慣病予防のための許容限界摂取量、栄養表示の指導原理、食事摂取のための計画とその方法、食物繊維の新しい定義、摂取量確立のためのリスクアセスメントなど。

本の概要は下記のサイトにある(注文も出来る)。
http://newton.nap.edu/catalog/11537.html


2006/09/08 世界一高い木見つかる
 先月、アメリカ・カリフォルニア州北部にあるレッドウッド国立公園内で、世界一高い木が、Chris AtkinsとMichael Taylorにより 発見された。高さは378.1フィート(115.2m)で、ギリシャ神話の神の名を取って「ヒュペリオン(Hyperion)」と命名された。
 ギネスブックに記載されている最長の木は「ストラトスフィア・ジャイアンツ(Stratosphere Giant)」(112.5m)である。また、自由の女神像は93mである。

参照サイト
1)http://www.sfgate.com/cgi-bin/article.cgi?f=/c/a/
2006/09/07/MNGQRL0TDV1.DTL&hw=redwood&sn=001&sc=1000


2)http://www.nativetreesociety.org/bigtree/new_worlds_tallest.htm


2006/09/07 BMIやウエスト周り:高齢男性で健康リスクと関係
 BMIやウエスト周りなどの簡単な測定で、適切に健康リスクを判断することができかについて議論されているが、少なくともイギリスの高齢の男性では効果的であることが断面研究から分かった。60~79歳のイギリス人男性4242人を調査したところ、BMIやウエスト周りの寸法は、体脂肪量指数と密接に関係していた。

【文献】
Ramsay, S. E. et al.: The Relations of Body Composition and Adiposity Measures to Ill Health and Physical Disability in Elderly Men. Am. J. Epidemiol. 164: 459-469. (2006) [doi: 10.1093/aje/kwj217]


2006/09/06 抗酸化物質が網膜退化を抑制
 ビタミンE、ビタミンCなど抗酸化物質をマウスに投与したところ網膜退化の進行が抑制されたと、アメリカ・ジョンホプキンス大学の研究チームが発表した。
 網膜退化は失明の原因でアメリカには10万人の患者がいるとされている。果物や野菜には、こうした抗酸化物質が多く含まれているが、人に対する治療効果については今後の課題である。

【文献】
Komeima, K. et al.: Antioxidants reduce cone cell death in a model of retinitis pigmentosa. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 103: 11300-11305. (2006) [doi: 10.1073/pnas.0604056103]


2006/09/05 ビタミンB6はパーキンソン病のリスクを下げる
 ビタミンB6を多く含む食品を摂取するとパーキンソン病リスクが減少するとオランダの調査から分かった。
 5,289人の男女を対象に調べた結果、ビタミンB6の摂取が最も多い群では、もっとも少ない群に比較してパーキンソン病の発症リスクが半分であった。

 ビタミンB6は神経系の機能の代謝に必須で、牛のもも肉やナッツ、バナナなどに含まれている。また、カロリー単位で比較すると果物に含まれているビタミンB6は、牛乳などよりも多い。

【文献】
de Lau, L. M. L. et al.: Dietary folate, vitamin B12, and vitamin B6 and the risk of Parkinson disease. Neurology 67: 315-318. (2006)


2006/09/04 果物・野菜など低カロリーで体積の大きい食品は健康に有益
 アメリカで、成人7500人を調査した結果、果物や野菜など低カロリーで体積の大きい食品を摂取する人は、食べる量は多くても総摂取カロリーは低く栄養素のバランスも良いことが分かった。
 果物や野菜などを多く摂取している人は、肉やスナックなどを摂取している人に比べて摂取カロリーが1日当たり100kcal低いだけでなく、カルシウム、鉄、カリウム、ビタミンA、C、B6、葉酸の摂取量は逆に多かった。

 その理由は、高カロリーで体積の小さい肉やスナックなどに比べて、果物や野菜などはカロリーが低く、体積が大きいので、満腹感が得られるためである。

【文献】
Ledikwe, J. H. et al.: Low-Energy-Density Diets Are Associated with High Diet Quality in Adults in the United States. J. Am. Diet. Assoc. 106: 1172-1180. (2006)


2006/09/03 「やせ」は太り過ぎより心臓病の死亡リスクが高い
 80,845人の患者のデータから、心疾患や急性動脈症候群のリスクが高いのは「やや肥満(BMIが25-29.9)」や「肥満(BMIが30-39.9)」の人ではあるけれども、積極的な治療を受けて予後がよく、死亡率は「標準体重(BMIが18.5-24.9)」の人より低いことがアメリカ・カルホルニア大学の研究から分かった。
 一方、「やせ(BMIが18.5以下)」の人は極端な肥満症の人と同様に心疾患による死亡率が高いことが示された。

 若い人のみならず多くの人が「やせ」を目指しているが、その健康上の問題点も伝えていく必要があるように思う。

【文献】
Diercks, D.B. et al.: The obesity paradox in non-ST-segment elevation acute coronary syndromes: Results from the Can Rapid risk stratification of Unstable angina patients Suppress ADverse outcomes with Early implementation of the American College of Cardiology/American Heart Association Guidelines Quality Improvement Initiative. Am. Heart J. 152: 140-148. (2006)


2006/09/02 腎臓結石予防にはレモネードよりオレンジジュース
 毎日1杯のオレンジジュースで腎臓結石を予防でき、レモネードなど他のカンキツよりも優れているとアメリカ・ユタ州のSouthwestern Medical Centerの研究者が発表した。
 研究では、13人の被験者に対し、クエン酸塩、オレンジジュース、レモネードを飲用してもらい各段階の尿と血液を調べた結果、オレンジジュースが尿中へのクエン酸塩の排出レベルを上げ、尿酸血症の生成を抑える、レモネードよりも優れていることが分かった。

【文献】
Odvina, C. V.: Comparative Value of Orange Juice versus Lemonade in Reducing Stone-Forming Risk. Clin. J. Am. Soc. Nephrol. Online Aug. 30 (2006) [doi: 10.2215/CJN.00800306]


2006/09/01-2 健康な十代女子でもビタミンD不足
 イギリスで行われた研究によると、健康な十代女子でも、ビタミンDの血中レベルが不足気味であることが分かった。14人の白人と37人の非白人の少女(平均15.3歳)を対象に血液中のビタミンDとの関係について調査を行った結果、73%はビタミンD不足、17%は非常に不足していることが分かった。また、白人に比べ非白人でビタミンDの血中レベルが低いことも分かった。研究者らは、その原因として日光への暴露が少ないことが原因と分析している。

 この論文は骨の形成に必要なビタミンDが、多くの若い女性で不足していることを示している。同時に、カルシウムを十分に摂取していても、ビタミンDの不足が原因で骨の形成に問題があることも示している。

【文献】
Das, D. et al.: Hypovitaminosis D among healthy adolescent girls attending an inner city school. Arch. Dis. Child. 91: 569-572. (2006)[doi: 10.1136/adc.2005.077974]

2006年8月


2006/07/31 グリセミック・インデックスで食後血糖値を予測
 グリセミック・インデックスで食事を計算するとその食事が血糖値に与える影響の良い予測手段であるとカナダ・トロント大学の研究チームが発表した。食後の血糖値は、脂肪やタンパク質含有量との相関は認められなかったが、炭水化物含有量とグリセミック・インデックス値とは相関関係が認められた。このことから研究者らは糖尿病の食事管理などにグリセミック・インデックスが有用であるとしている。

【文献】
Wolever, T.M.S. et al.: Food glycemic index, as given in Glycemic Index tables, is a significant determinant of glycemic responses elicited by composite breakfast meals. Am. J. Clinical Nutrition 83: 1306-1312. (2006)


2006/07/30 紫外線の影響調査:WHO報告
 太陽からの紫外線が原因の悪性腫瘍などで、年間6万人が死亡していると世界保健機関(WHO)が公表した。WHOは、太陽の光は人間が生きていく上で必要なものだが、紫外線を浴びすぎると健康を損なうとして、注意を呼び掛けている。
 WHOによると、皮膚がんの中でも悪性の悪性黒色腫で、年間4万8000人が死亡。残る1万2000人が、別の種類の皮膚がんで亡くなっているとしている。
 WHOは、くる病や骨軟化症を防ぐビタミンDの生成に紫外線は必要だとした上で、皮膚がんの原因は90%が太陽から降り注ぐ紫外線だと指摘している。
 紫外線は目に見えず、感じることもできないが、曇天でも降り注いでおり、直接浴びなくとも、雪や地面、海面で反射したものを浴びる可能性があるとして、十分な注意が必要である。
 そのため、直射日光を避けたり、日焼け止めを利用して、過剰な紫外線を浴びないよう呼び掛けている。

WHOのプレスリリースは下記のサイトにある。
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs305/en/index.html


2006/07/29 世界の幸福度マップ、日本は90位
 国民が生活に満足しているかどうかを基準に、世界各国をランク付けした「幸福度マップ」を、イギリス・レスター大学の社会心理学者エイドリアン・ホワイト(Adrian White)氏が世界で初めて作成し、公表した。トップはデンマークで、次いでスイス、オーストリアである(表)。

 イラクなどの紛争国を除いた世界178カ国のうち、幸福度が高かったのは、上位3カ国に続きアイスランド、バハマ、フィンランドで。下位はアフリカのコンゴ民主共和国、ジンバブエで、最も幸福度の低い国はブルンジだった。日本は90位という結果だった。

 本調査は、国連や世界保健機関(WHO)、英シンクタンク新経済財団(NEF)などによる調査100件以上のデータを用いて各国の幸福度や、それに影響する要因を解析した。

 著者はは結果について、「小規模な国では国民に共同体としての意識が強く、国の美観を保ちやすいことが、生活への満足感につながっているのではないか」と説明する一方で「一般に共同体意識が強いとされる中国(82位)、日本(90位)、インド(125位)のランクが低かったのは意外だ」と述べている。

 研究では、幸福度が平均寿命などの「健康条件」、国内総生産などの「経済条件」、「教育程度」と統計的に有意に関係していることが明らかとなった。

 日本が意外と低いのに驚くが、平均寿命、1人当たりのGDP、教育スコアが高いのでその他の要因が低いために順位を落としていると考えられる。


 上記報告は9月に心理学雑誌に報告されるが、下記の著者のサイトでその概要を読むことができる。
http://www.le.ac.uk/pc/aw57/world/sample.html
地図をダブルクリックするとその国の順位などが分かる。

表 幸福度ランキング

国       SWLランク SWLインデックス 平均余命 1人あたりのGDP 教育スコア
デンマーク     1   273.33    77.2     34.6
スイス       2   273.33    80.5    32.3     99.9
オーストリア    3   260     79     32.7      99.1
アイスランド    4   260     80.7    35.6     108.8
バハマ       5   256.67    69.7    20.2
フィンランド    6   256.67    78.5    30.9     124.5

カナダ      10   253.33    80     34      102.6
米国       23   246.67    77.4    41.8     94.6
ドイツ      35   240     78.7    30.4     99
イギリス     41   236.67    78.4    30.3     157.2
イタリア     50   230     80.1    29.2     92.8
フランス     62   220     79.5    29.9     108.7
香港       63   220     81.6    32.9
中国       82   210     71.6     6.8     62.8
日本       90   206.67    82     31.5     102.1
韓国       102   193.33    77     20.4     97.4
インド      125   180     63.3     3.3     49.9

コンゴ民主共和国 176  110      43.1     0.7     18.4
ジンバブエ    177  110      36.9     2.3     45.3
ブルンジ     178  100      43.6     0.7

注:データの根拠)
SWLランク:SWL (satisfaction with life) rating calculated from data published by New Economics Foundation (2006).
SWLインデックス:SWL (satisfaction with life) index calculated from data published by New Economics Foundation (2006).
平均余命:Life Expectancy from UN Human Development Report (2003)
1人あたりのGDP:GDP per capita from figure published by the CIA (2006), figure in US$.
教育スコア:Access to secondary education rating from UNESCO (2002)


2006/07/28 平成17年簡易生命表が公表
 平成17(2005)年生まれの日本人の平均寿命は、男性が78.53歳、女性が85.49歳で、男女とも前年比で6年ぶりのマイナスとなったことが厚生労働省の簡易生命表で明らかになった。マイナスになったのは昨年のインフルエンザの流行による死者数の増加が原因である。
 国際比較では、女性は21年連続で長寿世界一、次いで、香港、スペインの順である。男性は前年の2位から4位に下がった。男性の1-3位は香港、アイスランド、スイスの順である。
 平成17(2005)年生まれの人が将来、死亡する原因となる可能性があるのは男女ともがんがトップで、心臓病、脳卒中を加えた3大死因による将来の死亡確率は男性が56.3%、女性が54.2%である。3大死因を克服したと仮定した場合、平均寿命は男性が8.49歳延びて87.02歳に、女性が7.68歳延びて93.17歳になるとしている。

平成17年簡易生命表は下記のサイトで読める。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life05/index.html


2006/07/27 乳製品が高血圧を予防
 乳製品の摂取が血圧降下に役立つことがアメリカ・ハーバード大学の研究により明らかとなった。
 アメリカのFamily Heart Study試験に参加した4,797人を対象に、チーズ、ヨーグルト、牛乳などの乳製品の摂取量(1日3食分以上~1/2食以下)によって4グループに分け、血圧との関係を調べた。
 その結果、乳製品の摂取が最も多い群は、最も少ない群に比べ、収縮期血圧が平均2.6mmHg低かった。しかし、飽和脂肪摂取量でみると、血圧に対する効果は飽和脂肪摂取量の少ないグループのみで認められた。このグループでは、乳製品摂取の最も多い群は最も少ない群に比べ収縮期血圧が3.5mmHg低く、また高血圧になるリスクは54%低かったという。
 以上の結果より飽和脂肪の摂取に気をつければ乳製品の摂取は高血圧予防に有効であることから、飽和脂肪の多い無調整のものよりも、低脂肪のものがよいとしている。

【文献】
Luc Djousse, L. et al.: Influence of Saturated Fat and Linolenic Acid on the Association Between Intake of Dairy Products and Blood Pressure. Hypertension 48: 335-341. (2006) [doi:10.1161/01.HYP.0000229668.73501.e8]


2006/07/26 史上最高の熱安定性を持つタンパク質
 超好熱菌Pyrococcus horikoshii由来のCutA1(銅イオンと関わるタンパク質)の中性付近での熱変性温度は148.5℃であると理化学研究所などの研究グループが発表した。このタンパク質の熱安定性は、今まで知られていた最も熱安定性の高いタンパク質よりも30℃近くも高い。CutA1タンパク質が約150℃という史上最高の熱安定性を示す理由はタンパク質分子表面のイオン結合にあることが明らかになった。
 タンパク質は、熱やpHの変化など、わずかな環境変化で変性するが、温泉の源泉付近など、水の沸騰点近くで生育する微生物が生産するタンパク質は、熱安定性が高いことが知られている。超好熱菌から見つけられたCutA1タンパク質は、イオン結合の数が他タンパク質よりも非常に多く、イオン結合のネットワークを形成している。このイオン結合のネットワークが分子表面で層を形成していてタンパク質分子の断熱材として働くために、150℃近くまで安定して構造を保つことができるとしている。

【文献】
Tanaka, T. et al.: Hyper-thermostability of CutA1 protein, with a denaturation temperature of nearly 150℃, FEBS letters 580: 4224-4230. (2006)


2006/07/24 食事バランスガイド実施で果物不足が明らかに
 健康の維持・増進を目的に、食事バランスガイドでは、毎日の食事を5つ(主食、副菜、主菜、牛乳・乳製品、果物)に区分し、区分ごとに摂取適量範囲を示している。
 農林水産省が呼びかけた食事バランスガイド調査に応募した4435人の7日間の食事内容を調査した。
 その結果、7日間全て食事バランスガイドに沿った食事をとれていた人の割合は全体の0.1%しかなく、反対に1日も守れなかった人の割合は全体の8割以上を占めていた。
 適量範囲だったのは主菜と女性の主食のみで、その他の区分では食事量が不足していた。特に果物は男性、女性いずれも適量が2つ(SV)であるのに対し実際に食べている量は約1つ(SV)前後でしかなく、不足が目立った。
 参加した人の感想には「朝から野菜を食べないと足りないので前の晩に用意する習慣ができた」(30代男性)という前向きな意見の一方、「考えながら食するのは疲れた」(30代男性)との本音もあった。

農林水産省「食事バランスガイド実践週間」実施結果の概要は下記にある。
http://www.maff.go.jp/www/press/2006/20060721press_7b.pdf


2006/07/23 空腹時血糖値の組み合わせた高血糖測定法
 糖尿病や心筋梗塞などの血管障害につながる恐れが高い食後高血糖を1回の血液検査で簡単に見つける方法について毎日新聞が伝えている(07/7/18)。従来の手法では半分程度しか捕捉できなかった糖尿病の初期兆候を80%超の感度で検出できる。
 食後、急速に血糖値が高くなりその状態が持続する食後高血糖は、糖尿病の初期の兆候とされる。通常の健康診断で調べる空腹時血糖値では見極めが難しい。
 そこで、糖の一種で血液中のブドウ糖の状態と関連する1,5-アンヒドログルシトール(1,5-AG)と空腹時血糖値とを組み合わせた測定法を開発し、糖尿病の診断に使うブドウ糖負荷試験と比較したところ、85%前後の高い感度で把握できていることが分かった。
 空腹時血糖値のみを基準にした場合は50%程度しか検出されないので食後高血糖の診断法として有用であるとしている。

【文献】
金沢裕一.1,5-アンヒドログルシトール(1,5-AG)による食後高血糖のスクリーニング―空腹時血糖値の組み合わせ法―.糖尿病 49: 319 (2006)


2006/07/22 日本近海に2種類のマンボウが生息
 広島大学の研究から日本近海にマンゴウが2種類いる可能性があることが分かったと毎日新聞が伝えている(06/7/14)。
 ミトコンドリアDNAの解析から2種類のうち1種類は豪州近海に生息するマンボウに似ていることから、断定はできないが、約7500キロ離れたオーストラリアと日本を回遊している可能性があるとしている。
 国内で捕獲された標本など約70体のマンボウのミトコンドリアDNAを解析し、太平洋側に生息する全長約3mの大型(A群)のマンボウと、太平洋・日本海の両側に生息の約1.3mの小型(B群)の2群の存在が分かった。

【文献】
吉田有貴子ら.日本周辺海域に出現するマンボウMola molaのミトコンドリアDNAを用いた個体群解析.DNA多型.13: 171-174. (2005)

相良恒太郎ら.日本周辺海域に出現するマンボウMola molaにみとめられた2つの集団.魚類学雑誌 52: 35-39. (2005)


2006/07/21 心筋梗塞に関与する遺伝子
 心筋梗塞の発症に関与する1塩基遺伝子多型性(SNP)について検討した結果、リスクに関与する遺伝子の型を見つけたと理化学研究所などの研究グループが発表した。
 心筋梗塞患者3459人と健常人3955人遺伝子の違いを調べた結果、PSMA6という遺伝子を構成する1個の塩基(SNP)違いが心筋梗塞に関係することが分かった。
 心筋梗塞になりやすいGG型の割合は健常人は8.9%であったが、患者では12.4%と多いことから、このGG型を持つ人は、持たない人に比べて心筋梗塞のリスクが1.45倍高くなる。また、この遺伝子の働きを抑制したところ、心筋梗塞の引き金となる心臓血管の炎症作用が抑制された。

【文献】
Ozaki, K. et al.: A functional SNP in PSMA6 confers risk of myocardial infarction in the Japanese population. Nat. genet. Online 16 July (2006) [doi: 10.1038/ng1846]


2006/07/20 食料援助国第1位はアメリカ、次いでヨーロッパ、中国
 世界食糧計画(WFP: World Food Programme)は、世界の食糧支援に関する調査報告(the annual Food Aid Monitor 2005) を発表した。
 世界食料援助は820万トンと10%増加した。アメリカは世界最大の食料援助国で400万トンを提供した。次いで、ヨーロッパ連合で150万トンの援助を行った。第3位は中国で57万7千トンの援助を行ったがそのほとんどは北朝鮮向けである。
 食糧支援の半分以上460万トンは、サハラ以南のアフリカ諸国に送られている。中でもエチオピアは110万トンと世界第1位の食糧支援を受けた。
 北朝鮮は約108万トンと世界第2位の食糧支援を受けた。内訳は、中国が約53万トン、韓国が約39万トン、日本は4万8千トン、アメリカは、2万7千トンだった。
 また、昨年は、パキスタン地震とスーダンに特別援助が行われた。主な食糧は、小麦と小麦粉で、次いでトウモロコシ、米である。
 WFPの事務局長Morrisは、「ODA予算が歴史的に最大規模となっているにもかかわらず、まだ何百人もの人が最低限の食料を得ていない現状を理解できない。食糧支援を第1の方針とする必要があるのではないか」と述べている。

WFPのプレスリリースは下記のサイトで読める。
http://www.wfp.org/english/?ModuleID=137&Key=2166


2006/07/20 血液中のビタミンEと前立腺ガン
 血液中のビタミンE(α-トコフェロールとγ-トコフェロール)が高いと前立腺癌のリスクが低いことがフィンランドの50-69歳の男性29,133人の調査から分かった。血液中のα-トコフェロール値が高い人は低い人に比べて51%、γ-トコフェロールでは43%リスクが低くなる。

【文献】
Stephanie, J. et al.: Serum -Tocopherol and -Tocopherol in Relation to Prostate Cancer Risk in a Prospective Study. J. Natl. Cancer Inst. 97: 396-399. (2005)


2006/07/19 肥満と飲料の関係調査
 働く男女800人を対象に、飲み物の摂取意識について花王がアンケート調査を行った。それによると1日に摂る飲み物の量は平均1.48リットルと成人に必要な量とほぼ同じであった。よく口にする飲み物はコーヒーや清涼飲料水が35%、アルコール飲料が17%と、高カロリーのものが多かった。
 体型評価(BMI)値が25以上ある「肥満者」をみると、よく口にする飲み物は、缶コーヒー46%、アルコール飲料40%、 炭酸飲料30%などで、平日の1日に飲み物から摂るエネルギーは平均279kcalであった。一方、「標準」「やせ型」では208kcalと低かった。

花王のプレスリリースは下記にある。
http://www.kao.co.jp/corp/news/2006/2/n20060530-01re.html


2006/07/15 世界初:ES細胞からマウス誕生
 万能細胞とも呼ばれる胚(はい)性幹細胞(ES細胞)からつくった精子を卵子と受精させ、マウスの子を誕生させることにドイツ・ゲッティンゲン大の研究チームが成功した。
 ES細胞から精子や卵子ができたとの報告はこれまでにもあったが、子どもに育つ能力を証明したのは世界で初めてである。理論的には人間でも実現可能なことを示した。だが、生まれたマウスには早死になどの異常がみられた。
 研究チームは、マウスのES細胞の中から特定のたんぱく質をマーカーとして精子のもとになる細胞を単離し、試験管内で精子へと成熟させた。それを微細なガラス棒で卵子に注入受精し、雌マウスへの移植で計7匹のマウスが生まれ、うち6匹はおとなに成長した。
 しかし、6匹とも体が大き過ぎたり小さ過ぎたりしたほか、通常は数年とされる寿命より短い5カ月以内に死んだことから、研究チームは技術的には未完成としている。

【文献】
Nayernia, K. et al.: In Vitro-Differentiated Embryonic Stem Cells Give Rise to Male Gametes that Can Generate Offspring Mice. Dev Cell. 11: 125-132. (2006)


2006/07/14 肉食恐竜ティラノサウルスの生命表
 最大級の肉食恐竜ティラノサウルスは、寿命の半分ほどのいわば「中年期」から、命を落とす個体が急増していたとアメリカ・フロリダ州立大などの研究チームが発表した。
 カナダ・アルバータ州で発掘された22個体のティラノサウルスの骨の成長線を調べた結果、2~28歳とさまざまな成長段階の個体が含まれていることが分かった。
 年齢ごとの生存率を推定した結果、生まれて間もない時期に60%は死ぬが、2歳(体長約2m)まで生き延びるとその後13歳まで生存率はあまり減らない。ところが、繁殖可能になるとみられる14歳から生存率が急激に落ち、28歳程度まで生きて、体長約10mに達するのは全体の2%しかいないことが分かった。
 2メートルの体長は他の捕食者から身を守るのに十分な大きさだが、繁殖期には雌の取り合いなどの争いが増え、傷を受けるなどが原因で死亡個体が増えた研究者らは推測している。

【文献】
Gregory M. Erickson, G. M. et al.: Tyrannosaur Life Tables: An Example of Nonavian Dinosaur Population Biology. Science 313: 213 - 217. (2006) [DOI: 10.1126/science.1125721]


2006/07/13 エネルギーの消費の多い高齢者は長生き
 70歳~82歳の男女302人を対象に6年間に渡って追跡調査した結果、日々の活動でよりエネルギー消費の多かった人は、そうでない人よりも死亡率が低いことが分かった。
 消費エネルギーが1日当たり287kcal増加すると死亡リスクが32%低かった。また、消費エネルギーが1日当たり770kcal以上の人は、521kcal以下の人より死亡リスクが69%低いことも分かった。521kcal/日以下の人の死亡率は24.7%であったのに対し、770kcal/日以上の人死亡率は12.1%であった。
 以上の結果より、著者らは、運動も含めどんな活動でもエネルギーの消費量を増やせば高齢者は長生きできると結論づけている。

【文献】
Manini, T. M. et al.: Daily Activity Energy Expenditure and Mortality Among Older Adults. JAMA. 296: 171-179. (2006)


2006/07/12 第55回全国ナシ研究大会で講演
 今日は栃木県那須塩原で行われる第55回全国ナシ大会で「ナシの機能性と健康」の講演の予定である。


2006/07/11 OECD-FAO:世界農業見通し2006
 経済協力開発機構(OECD)と国連食糧農業機関(FAO)は、2015年までの世界農業見通しOECD-FAO Agricultural Outlook2006-2015を発表した。OECDは世界の農産物需要の伸びが主要15品目のうち14品目で世界人口の年平均増加率見通しである1.1%以上に達すると述べている。特に最貧国で輸入への依存が高まり、食糧の調達が国際商品相場の変動による影響を受けやすくなると予測している。
 将来の農畜産物の貿易ではブラジル、インド、中国の重要性が増すとした。また、中国の輸出動向が世界の食糧需給のカギを握ると指摘している。
 エネルギー関連では、化石燃料の代替えとしてバイオ燃料の需要が増すと予測している。

OECD-FAOのプレスリリース下記のサイトで読める。
http://www.fao.org/newsroom/en/news/2006/1000349/index.html


2006/07/10 仕事のストレスとメタボリックシンドロームは関連
 仕事にストレスがある人は、メタボリックシンドローム(肥満、高血圧、高コレステロール値など心血管系の危険因子が重なった病態)を発症しやすいとイギリス・ロンドン大学の研究グループが発表した。
 35~55歳の英国公務員10,308人を14年間追跡した結果、仕事のストレスが増加するにつれ、メタボリックシンドロームの発症率が徐々に上昇することが分かった。特に、長期にわたりストレスがある男性では、ストレスがないと答えた人よりメタボリックシンドロームの発症率が2倍であった。

 過去の研究では、職場で公平に扱われていると感じている公務員は心臓病リスクが低く、職場で権限がない人はリスクが高いという報告がある。労働者の仕事に対するコントロール力と参加意識を高めるよう職場を設計し直したところ、病欠で休む日が少なくなった。

【文献】
Chandola, T. et al.: Chronic stress at work and the metabolic syndrome: prospective study. BMJ, 332: 521-525. (2006)


2006/07/08 長野県栄養士会で講演
 長野県松本市で「果物と生活習慣病予防」について長野県栄養士会主催の研修会で講演した。


2006/07/08 夜の血圧は心不全と関係している
 スウェーデンに住む951人の男性を対象に1990年~1995年まで追跡調査を行った結果、夜に高血圧気味である人は、うっ血性心不全を発症するリスクがそうでない人に比べて約2~3倍高く、潜在的に危険であるとスウェーデンの研究チームが発表した。

【文献】
Erik Ingelsson, E. et al.: Diurnal Blood Pressure Pattern and Risk of Congestive Heart Failure. JAMA. 295: 2859-2866. (2006)


2006/07/07 40代は孤独を感じている
 孤独感は、心臓病やうつ病などの疾患や、家庭内暴力など他の問題のリスクを上昇させると考えられているが、成人の3分の1以上は孤独を感じており、特に40歳代でその傾向が強いと、イギリスとオーストラリアの研究グループが発表した。
 オーストラリアに住む18歳以上の成人1,289人を対象に30分の電話インタビューを実施した結果、成人の35%が孤独感をもっており、そのレベルは20代で上昇し始め、40~49歳でピークに達することが明らかになった。一方、50歳以上ではレベルが最も低かった。退職した人より失職中の人で孤独感が強く、世帯収入が低い人ほど強く感じていた。また、今回の調査結果は、退職で社会的接触が減少し、年齢とともに孤独感が増すというこれまでの見解とは異なっていた。

【文献】
Lauder, W. et al.: Social capital, age and religiosity in people who are lonely. J. Clinical Nursing
15: 334-340 (2006) [doi: 10.1111/j.1365-2702.2006.01192.x]


2006/07/06 オーストラリア・タスマニア産リンゴの輸入解禁
 農水省は7月5日付けでオーストラリア・タスマニア産リンゴの全品種について輸入を解禁すると発表した。輸入するためには、害虫のコドリンガを完全に殺すためのくん蒸処理を行ったリンゴに限られる。また「ジョナゴールド」は、輸入解禁されている「ふじ」と同様の消毒基準を適用し輸入を認める。
 オーストラリアはコドリンガの発生国のため、日本は同国からのリンゴ輸入を禁止してきた。しかし、現地確認試験の結果、試験の有効性が認められたことから輸入を解禁した。リンゴで全品種の輸入解禁を認めたのは米国に次いで2カ国目である。

農林水産省プレスリリースは下記のサイトにある。
http://www.maff.go.jp/www/press/2006/20060705press_4.html


2006/07/05 サクランボ果汁で運動による筋肉の回復が早い
 サクランボ果汁を飲むと運動後の筋力の回復が早いことがアメリカ・バーモント大学の研究から明かとなった。
 14人の男性に対してサクランボ果汁を含む混合飲料を飲む群と、サクランボ果汁を含まない飲料を飲む群に分け、12オンスの飲料を1日2本、3日間飲用し、4日目に片腕の筋肉を20回収縮緊張させる運動を行ったのち、その後4日間、同じ飲料を飲んだ。
 その結果、サクランボ果汁には運動で誘発された筋肉損害を緩和する効力があることが分かった。特に、筋力は、サクランボ果汁を含まない飲料群で22%の低下したが、サクランボ果汁入り飲料群では4%であった。

【文献】
Connolly, D. et al.: The efficacy of a tart cherry juice blend in preventing the symptoms of muscle damage. Br. J. Sports Med. Online 21 June 2006 [doi: 10.1136/bjsm.2005.025429]


2006/07/04 日本が高齢化、少子化ともに世界一
 日本の人口に占める65歳以上の高齢者の割合は21.0%と世界最高になり、15歳未満は13.6%と世界最低で、高齢化・少子化ともに世界で最も進行した国になったことが、平成17(2005)年国勢調査抽出速報集計から分かった。5年前の平成12(2000)年の調査では、いずれもイタリアに次いで2番目だったが今回逆転した。
 昨年の人口は1億2776万人で、5年前より83万人増えた。年齢別では、15歳未満が1740万人、15~64歳は8337万人と、ともに前回より減ったが、65歳以上は481.5万人増の2682万人だった。
 日本の高齢者の割合を各国と比べると、1980年に9.1%と先進7カ国で最低だったが、平均寿命の伸びと出生率の低下で急伸した。2000年は17.3%で、人口10万人以上の192カ国・地域中最高だったイタリア(18.2%)に迫り、今回イタリアの20.0%を抜いた。
 一方、15歳未満は、前回最低だったイタリアが14.0%で下から4番目になり、日本が最低になった。出生率が改善傾向にあるフランスは18.2%、出生率が2を上回る米国は20.8%となっている。

平成17(2005)年国勢調査抽出速報集計の少子・高齢化のデータは下記のサイトで読める。
http://www.stat.go.jp/data/kokusei/2005/sokuhou/01.htm


2006/07/03 ノルウェーが種子バンク「ノアの箱舟」
 ノルウェー政府は北極圏の島に設けた貯蔵庫に、世界各地の農作物300万種類の種子を集め、絶滅の危機に備えて保管する計画であるとBBCなどが伝えている。種子バンクは、自然災害や戦争、病害、気候変動などによってその土地の農作物が絶滅し、多様性が失われる事態を防ぐためノルウェーが建設する。
 建設地は北極点から約1000kmのノルウェー領スバルバル諸島で、永久凍土の中にコンクリート製の貯蔵庫を作り種子を保管する。庫内の気温は温度維持システムで低温に保たれるが、万一システムが故障しても、気温が0℃を超えることはなく、種子は数百年または数千年先まで保管できるという。
 植物の絶滅に備える種子バンクは、世界各地にすでに約1400カ所設けられているが、その大半は自国の植物のみを対象としている。災害や戦争、財源不足などによって貯蔵施設を維持できない可能性があることから、20年以上前から世界規模のバンク設立が検討されていたものの、種子の遺伝子の所有権などをめぐる問題が解決せず、実現が遅れていた。
 スバルバル諸島の構想では、種子を提供する国が所有権を保持し、銀行の貸金庫を使うような形でノルウェー所有のバンク施設を利用する。種子の受け入れは、07年9月に開始される予定である。

ノルウェー農業食料省のプレスリリースは下記のサイトで読める。
http://odin.dep.no/lmd/english/news/
news/049051-070027/dok-bn.html



2006/07/02 アリは体内の「歩数計」で距離を把握
 アリは、歩数を数えることで、移動距離を正確に把握している可能性の高いことをドイツのウルム大などの研究チームが発表した。
 研究チームは、距離測定は歩数で行うとの仮説を立て、アフリカのサハラ砂漠に生息するアリの脚の長さを変えて実験した。
 巣穴から10m離れた場所でエサを与えたアリを、1)ブタの毛を竹馬のように履かせて脚を長くする、2)一部を切断して脚を短くする、3)何もしない、の3群に分け、巣穴に戻れるか調べた。ところ、足を長くしたアリは10mを越え、足の短いアリは10mより短い位置で巣を探す行動をした。
 次に、巣穴からエサの位置まで歩かせて、戻る距離を測ったところ、3つの群ともに正確に10mの位置の巣穴に戻った。
 以上の結果から、研究者らはアリは巣までの距離を把握するのに体内の「歩数計」を利用していると結論づけた。

【文献】
Wittlinger, M. et al.: The Ant Odometer: Stepping on Stilts and Stumps. Science 312: 1965-1967. (2006)

 この研究の特徴的な点は、アリの足の長さを長くするテクニック、巣穴を探す行動などアリの生態の理解、統計的な手法である。理科自由研究の延長のような研究であるが興味深い。


2006/07/01 雷雨の中での携帯電話は危険
 雷雨の中で携帯電話を使うのは危険であるとイギリスの医師たちが医学雑誌で警告している。携帯電話の金属が雷を誘導し、そのためショックを受けて死亡する可能性があると述べている。15歳の少女はロンドンの公園で電話中、落雷に打たれて心臓停止になった。この場合は、その後の蘇生により回復したが、注意が必要としている。

【文献】
Esprit, S. et al.: Injury from lightning strike while using mobile phone. BMJ. 332: 1513 (2006) [doi: 10.1136/bmj.332.7556.1513-b]

2006年7月

2006/07/31 グリセミック・インデックスで食後血糖値を予測  グリセミック・インデックスで食事を計算するとその食事が血糖値に与える影響の良い予測手段であるとカナダ・トロント大学の研究チームが発表した。食後の血糖値は、脂肪やタンパク質含有量との相関は認められなかったが、炭水化物含有量とグリセミック・インデックス値とは相関関係が認められた。このことから研究者らは糖尿病の食事管理などにグリセミック・インデックスが有用であるとしている。 【文献】 Wolever, T.M.S. et al.: Food glycemic index, as given in Glycemic Index tables, is a significant determinant of glycemic responses elicited by composite breakfast meals. Am. J. Clinical Nutrition 83: 1306-1312. (2006) 2006/07/30 紫外線の影響調査:WHO報告  太陽からの紫外線が原因の悪性腫瘍などで、年間6万人が死亡していると世界保健機関(WHO)が公表した。WHOは、太陽の光は人間が生きていく上で必要なものだが、紫外線を浴びすぎると健康を損なうとして、注意を呼び掛けている。  WHOによると、皮膚がんの中でも悪性の悪性黒色腫で、年間4万8000人が死亡。残る1万2000人が、別の種類の皮膚がんで亡くなっているとしている。  WHOは、くる病や骨軟化症を防ぐビタミンDの生成に紫外線は必要だとした上で、皮膚がんの原因は90%が太陽から降り注ぐ紫外線だと指摘している。  紫外線は目に見えず、感じることもできないが、曇天でも降り注いでおり、直接浴びなくとも、雪や地面、海面で反射したものを浴びる可能性があるとして、十分な注意が必要である。  そのため、直射日光を避けたり、日焼け止めを利用して、過剰な紫外線を浴びないよう呼び掛けている。 WHOのプレスリリースは下記のサイトにある。 http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs305/en/index.html 2006/07/29 世界の幸福度マップ、日本は90位  国民が生活に満足しているかどうかを基準に、世界各国をランク付けした「幸福度マップ」を、イギリス・レスター大学の社会心理学者エイドリアン・ホワイト(Adrian White)氏が世界で初めて作成し、公表した。トップはデンマークで、次いでスイス、オーストリアである(表)。  イラクなどの紛争国を除いた世界178カ国のうち、幸福度が高かったのは、上位3カ国に続きアイスランド、バハマ、フィンランドで。下位はアフリカのコンゴ民主共和国、ジンバブエで、最も幸福度の低い国はブルンジだった。日本は90位という結果だった。  本調査は、国連や世界保健機関(WHO)、英シンクタンク新経済財団(NEF)などによる調査100件以上のデータを用いて各国の幸福度や、それに影響する要因を解析した。  著者は結果について、「小規模な国では国民に共同体としての意識が強く、国の美観を保ちやすいことが、生活への満足感につながっているのではないか」と説明する一方で「一般に共同体意識が強いとされる中国(82位)、日本(90位)、インド(125位)のランクが低かったのは意外だ」と述べている。  研究では、幸福度が平均寿命などの「健康条件」、国内総生産などの「経済条件」、「教育程度」と統計的に有意に関係していることが明らかとなった。  日本が意外と低いのに驚くが、平均寿命、1人当たりのGDP、教育スコアが高いのでその他の要因が低いために順位を落としていると考えられる。  上記報告は9月に心理学雑誌に報告されるが、下記の著者のサイトでその概要を読むことができる。 http://www.le.ac.uk/pc/aw57/world/sample.html 地図をダブルクリックするとその国の順位などが分かる。 表 幸福度ランキング 国       SWLランク SWLインデックス 平均余命 1人あたりのGDP 教育スコア デンマーク     1   273.33    77.2     34.6 スイス       2   273.33    80.5    32.3     99.9 オーストリア    3   260     79     32.7      99.1 アイスランド    4   260     80.7    35.6      08.8 バハマ       5   256.67    69.7    20.2 フィンランド    6   256.67    78.5    30.9     124.5 カナダ      10   253.33    80     34      102.6 米国       23   246.67    77.4    41.8     94.6 ドイツ      35   240     78.7    30.4     99 イギリス     41   236.67    78.4    30.3     157.2 イタリア     50   230     80.1    29.2     92.8 フランス     62   220     79.5    29.9     108.7 香港       63   220     81.6    32.9 中国       82   210     71.6     6.8     62.8 日本       90   206.67    82     31.5     102.1 韓国       102   193.33    77     20.4     97.4 インド      125   180     63.3     3.3     49.9 コンゴ民主共和国 176  110      43.1     0.7     18.4 ジンバブエ    177  110      36.9     2.3     45.3 ブルンジ     178  100      43.6     0.7 注:データの根拠) SWLランク:SWL (satisfaction with life) rating calculated from data published by New Economics Foundation (2006). SWLインデックス:SWL (satisfaction with life) index calculated from data published by New Economics Foundation (2006). 平均余命:Life Expectancy from UN Human Development Report (2003) 1人あたりのGDP:GDP per capita from figure published by the CIA (2006), figure in US$. 教育スコア:Access to secondary education rating from UNESCO (2002) 2006/07/28 平成17年簡易生命表が公表  平成17(2005)年生まれの日本人の平均寿命は、男性が78.53歳、女性が85.49歳で、男女とも前年比で6年ぶりのマイナスとなったことが厚生労働省の簡易生命表で明らかになった。マイナスになったのは昨年のインフルエンザの流行による死者数の増加が原因である。  国際比較では、女性は21年連続で長寿世界一、次いで、香港、スペインの順である。男性は前年の2位から4位に下がった。男性の1-3位は香港、アイスランド、スイスの順である。  平成17(2005)年生まれの人が将来、死亡する原因となる可能性があるのは男女ともがんがトップで、心臓病、脳卒中を加えた3大死因による将来の死亡確率は男性が56.3%、女性が54.2%である。3大死因を克服したと仮定した場合、平均寿命は男性が8.49歳延びて87.02歳に、女性が7.68歳延びて93.17歳になるとしている。 平成17年簡易生命表は下記のサイトで読める。 http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life05/index.html 2006/07/27 乳製品が高血圧を予防  乳製品の摂取が血圧降下に役立つことがアメリカ・ハーバード大学の研究により明らかとなった。  アメリカのFamily Heart Study試験に参加した4,797人を対象に、チーズ、ヨーグルト、牛乳などの乳製品の摂取量(1日3食分以上~1/2食以下)によって4グループに分け、血圧との関係を調べた。  その結果、乳製品の摂取が最も多い群は、最も少ない群に比べ、収縮期血圧が平均2.6mmHg低かった。しかし、飽和脂肪摂取量でみると、血圧に対する効果は飽和脂肪摂取量の少ないグループのみで認められた。このグループでは、乳製品摂取の最も多い群は最も少ない群に比べ収縮期血圧が3.5mmHg低く、また高血圧になるリスクは54%低かったという。  以上の結果より飽和脂肪の摂取に気をつければ乳製品の摂取は高血圧予防に有効であることから、飽和脂肪の多い無調整のものよりも、低脂肪のものがよいとしている。 【文献】 Luc Djousse, L. et al.: Influence of Saturated Fat and Linolenic Acid on the Association Between Intake of Dairy Products and Blood Pressure. Hypertension 48: 335-341. (2006) [doi: 0.1161/01.HYP.0000229668.73501.e8] 2006/07/26 史上最高の熱安定性を持つタンパク質  超好熱菌Pyrococcus horikoshii由来のCutA1(銅イオンと関わるタンパク質)の中性付近での熱変性温度は148.5℃であると理化学研究所などの研究グループが発表した。このタンパク質の熱安定性は、今まで知られていた最も熱安定性の高いタンパク質よりも30℃近くも高い。CutA1タンパク質が約150℃という史上最高の熱安定性を示す理由はタンパク質分子表面のイオン結合にあることが明らかになった。  タンパク質は、熱やpHの変化など、わずかな環境変化で変性するが、温泉の源泉付近など、水の沸騰点近くで生育する微生物が生産するタンパク質は、熱安定性が高いことが知られている。超好熱菌から見つけられたCutA1タンパク質は、イオン結合の数が他タンパク質よりも非常に多く、イオン結合のネットワークを形成している。このイオン結合のネットワークが分子表面で層を形成していてタンパク質分子の断熱材として働くために、150℃近くまで安定して構造を保つことができるとしている。 【文献】 Tanaka, T. et al.: Hyper-thermostability of CutA1 protein, with a denaturation temperature of nearly 150℃, FEBS letters 580: 4224-4230. (2006) 2006/07/24 食事バランスガイド実施で果物不足が明らかに  健康の維持・増進を目的に、食事バランスガイドでは、毎日の食事を5つ(主食、副菜、主菜、牛乳・乳製品、果物)に区分し、区分ごとに摂取適量範囲を示している。  農林水産省が呼びかけた食事バランスガイド調査に応募した4435人の7日間の食事内容を調査した。  その結果、7日間全て食事バランスガイドに沿った食事をとれていた人の割合は全体の0.1%しかなく、反対に1日も守れなかった人の割合は全体の8割以上を占めていた。  適量範囲だったのは主菜と女性の主食のみで、その他の区分では食事量が不足していた。特に果物は男性、女性いずれも適量が2つ(SV)であるのに対し実際に食べている量は約1つ(SV)前後でしかなく、不足が目立った。  参加した人の感想には「朝から野菜を食べないと足りないので前の晩に用意する習慣ができた」(30代男性)という前向きな意見の一方、「考えながら食するのは疲れた」(30代男性)との本音もあった。 農林水産省「食事バランスガイド実践週間」実施結果の概要は下記にある。 http://www.maff.go.jp/www/press/2006/20060721press_7b.pdf 2006/07/23 空腹時血糖値の組み合わせた高血糖測定法  糖尿病や心筋梗塞などの血管障害につながる恐れが高い食後高血糖を1回の血液検査で簡単に見つける方法について毎日新聞が伝えている(07/7/18)。従来の手法では半分程度しか捕捉できなかった糖尿病の初期兆候を80%超の感度で検出できる。  食後、急速に血糖値が高くなりその状態が持続する食後高血糖は、糖尿病の初期の兆候とされる。通常の健康診断で調べる空腹時血糖値では見極めが難しい。  そこで、糖の一種で血液中のブドウ糖の状態と関連する1,5-アンヒドログルシトール(1,5-AG)と空腹時血糖値とを組み合わせた測定法を開発し、糖尿病の診断に使うブドウ糖負荷試験と比較したところ、85%前後の高い感度で把握できていることが分かった。  空腹時血糖値のみを基準にした場合は50%程度しか検出されないので食後高血糖の診断法として有用であるとしている。 【文献】 金沢裕一.1,5-アンヒドログルシトール(1,5-AG)による食後高血糖のスクリーニング―空腹時血糖値の組み合わせ法―.糖尿病 49: 319 (2006) 2006/07/22 日本近海に2種類のマンボウが生息  広島大学の研究から日本近海にマンゴウが2種類いる可能性があることが分かったと毎日新聞が伝えている(06/7/14)。  ミトコンドリアDNAの解析から2種類のうち1種類は豪州近海に生息するマンボウに似ていることから、断定はできないが、約7500キロ離れたオーストラリアと日本を回遊している可能性があるとしている。  国内で捕獲された標本など約70体のマンボウのミトコンドリアDNAを解析し、太平洋側に生息する全長約3mの大型(A群)のマンボウと、太平洋・日本海の両側に生息の約1.3mの小型(B群)の2群の存在が分かった。 【文献】 吉田有貴子ら.日本周辺海域に出現するマンボウMola molaのミトコンドリアDNAを用いた個体群解析.DNA多型.13: 171-174. (2005) 相良恒太郎ら.日本周辺海域に出現するマンボウMola molaにみとめられた2つの集団.魚類学雑誌 52: 35-39. (2005) 2006/07/21 心筋梗塞に関与する遺伝子  心筋梗塞の発症に関与する1塩基遺伝子多型性(SNP)について検討した結果、リスクに関与する遺伝子の型を見つけたと理化学研究所などの研究グループが発表した。  心筋梗塞患者3459人と健常人3955人遺伝子の違いを調べた結果、PSMA6という遺伝子を構成する1個の塩基(SNP)違いが心筋梗塞に関係することが分かった。  心筋梗塞になりやすいGG型の割合は健常人は8.9%であったが、患者では12.4%と多いことから、このGG型を持つ人は、持たない人に比べて心筋梗塞のリスクが1.45倍高くなる。また、この遺伝子の働きを抑制したところ、心筋梗塞の引き金となる心臓血管の炎症作用が抑制された。 【文献】 Ozaki, K. et al.: A functional SNP in PSMA6 confers risk of myocardial infarction in the Japanese population. Nat. genet. Online 16 July (2006) [doi: 10.1038/ng1846] 2006/07/20 食料援助国第1位はアメリカ、次いでヨーロッパ、中国  世界食糧計画(WFP: World Food Programme)は、世界の食糧支援に関する調査報告(the annual Food Aid Monitor 2005) を発表した。  世界食料援助は820万トンと10%増加した。アメリカは世界最大の食料援助国で400万トンを提供した。次いで、ヨーロッパ連合で150万トンの援助を行った。第3位は中国で57万7千トンの援助を行ったがそのほとんどは北朝鮮向けである。  食糧支援の半分以上460万トンは、サハラ以南のアフリカ諸国に送られている。中でもエチオピアは110万トンと世界第1位の食糧支援を受けた。  北朝鮮は約108万トンと世界第2位の食糧支援を受けた。内訳は、中国が約53万トン、韓国が約39万トン、日本は4万8千トン、アメリカは、2万7千トンだった。  また、昨年は、パキスタン地震とスーダンに特別援助が行われた。主な食糧は、小麦と小麦粉で、次いでトウモロコシ、米である。  WFPの事務局長Morrisは、「ODA予算が歴史的に最大規模となっているにもかかわらず、まだ何百人もの人が最低限の食料を得ていない現状を理解できない。食糧支援を第1の方針とする必要があるのではないか」と述べている。 WFPのプレスリリースは下記のサイトで読める。 http://www.wfp.org/english/?ModuleID=137&Key=2166 2006/07/20 血液中のビタミンEと前立腺ガン  血液中のビタミンE(α-トコフェロールとγ-トコフェロール)が高いと前立腺癌のリスクが低いことがフィンランドの50-69歳の男性29,133人の調査から分かった。血液中のα-トコフェロール値が高い人は低い人に比べて51%、γ-トコフェロールでは43%リスクが低くなる。 【文献】 Stephanie, J. et al.: Serum -Tocopherol and -Tocopherol in Relation to Prostate Cancer Risk in a Prospective Study. J. Natl. Cancer Inst. 97: 396-399. (2005) 2006/07/19 肥満と飲料の関係調査  働く男女800人を対象に、飲み物の摂取意識について花王がアンケート調査を行った。それによると1日に摂る飲み物の量は平均1.48リットルと成人に必要な量とほぼ同じであった。よく口にする飲み物はコーヒーや清涼飲料水が35%、アルコール飲料が17%と、高カロリーのものが多かった。  体型評価(BMI)値が25以上ある「肥満者」をみると、よく口にする飲み物は、缶コーヒー46%、アルコール飲料40%、 炭酸飲料30%などで、平日の1日に飲み物から摂るエネルギーは平均279kcalであった。一方、「標準」「やせ型」では208kcalと低かった。 花王のプレスリリースは下記にある。 http://www.kao.co.jp/corp/news/2006/2/n20060530-01re.html 2006/07/15 世界初:ES細胞からマウス誕生  万能細胞とも呼ばれる胚(はい)性幹細胞(ES細胞)からつくった精子を卵子と受精させ、マウスの子を誕生させることにドイツ・ゲッティンゲン大の研究チームが成功した。  ES細胞から精子や卵子ができたとの報告はこれまでにもあったが、子どもに育つ能力を証明したのは世界で初めてである。理論的には人間でも実現可能なことを示した。だが、生まれたマウスには早死になどの異常がみられた。  研究チームは、マウスのES細胞の中から特定のたんぱく質をマーカーとして精子のもとになる細胞を単離し、試験管内で精子へと成熟させた。それを微細なガラス棒で卵子に注入受精し、雌マウスへの移植で計7匹のマウスが生まれ、うち6匹はおとなに成長した。  しかし、6匹とも体が大き過ぎたり小さ過ぎたりしたほか、通常は数年とされる寿命より短い5カ月以内に死んだことから、研究チームは技術的には未完成としている。 【文献】 Nayernia, K. et al.: In Vitro-Differentiated Embryonic Stem Cells Give Rise to Male Gametes that Can Generate Offspring Mice. Dev Cell. 11: 125-132. (2006) 2006/07/14 肉食恐竜ティラノサウルスの生命表  最大級の肉食恐竜ティラノサウルスは、寿命の半分ほどのいわば「中年期」から、命を落とす個体が急増していたとアメリカ・フロリダ州立大などの研究チームが発表した。  カナダ・アルバータ州で発掘された22個体のティラノサウルスの骨の成長線を調べた結果、2~28歳とさまざまな成長段階の個体が含まれていることが分かった。  年齢ごとの生存率を推定した結果、生まれて間もない時期に60%は死ぬが、2歳(体長約2m)まで生き延びるとその後13歳まで生存率はあまり減らない。ところが、繁殖可能になるとみられる14歳から生存率が急激に落ち、28歳程度まで生きて、体長約10mに達するのは全体の2%しかいないことが分かった。  2メートルの体長は他の捕食者から身を守るのに十分な大きさだが、繁殖期には雌の取り合いなどの争いが増え、傷を受けるなどが原因で死亡個体が増えた研究者らは推測している。 【文献】 Gregory M. Erickson, G. M. et al.: Tyrannosaur Life Tables: An Example of Nonavian Dinosaur Population Biology. Science 313: 213 - 217. (2006) [DOI: 10.1126/science.1125721] 2006/07/13 エネルギーの消費の多い高齢者は長生き  70歳~82歳の男女302人を対象に6年間に渡って追跡調査した結果、日々の活動でよりエネルギー消費の多かった人は、そうでない人よりも死亡率が低いことが分かった。  消費エネルギーが1日当たり287kcal増加すると死亡リスクが32%低かった。また、消費エネルギーが1日当たり770kcal以上の人は、521kcal以下の人より死亡リスクが69%低いことも分かった。521kcal/日以下の人の死亡率は24.7%であったのに対し、770kcal/日以上の人死亡率は12.1%であった。  以上の結果より、著者らは、運動も含めどんな活動でもエネルギーの消費量を増やせば高齢者は長生きできると結論づけている。 【文献】 Manini, T. M. et al.: Daily Activity Energy Expenditure and Mortality Among Older Adults. JAMA. 296: 171-179. (2006) 2006/07/12 第55回全国ナシ研究大会で講演  今日は栃木県那須塩原で行われる第55回全国ナシ大会で「ナシの機能性と健康」の講演の予定である。 2006/07/11 OECD-FAO:世界農業見通し2006  経済協力開発機構(OECD)と国連食糧農業機関(FAO)は、2015年までの世界農業見通しOECD-FAO Agricultural Outlook2006-2015を発表した。OECDは世界の農産物需要の伸びが主要15品目のうち14品目で世界人口の年平均増加率見通しである1.1%以上に達すると述べている。特に最貧国で輸入への依存が高まり、食糧の調達が国際商品相場の変動による影響を受けやすくなると予測している。  将来の農畜産物の貿易ではブラジル、インド、中国の重要性が増すとした。また、中国の輸出動向が世界の食糧需給のカギを握ると指摘している。  エネルギー関連では、化石燃料の代替えとしてバイオ燃料の需要が増すと予測している。 OECD-FAOのプレスリリース下記のサイトで読める。 http://www.fao.org/newsroom/en/news/2006/1000349/index.html 2006/07/10 仕事のストレスとメタボリックシンドロームは関連  仕事にストレスがある人は、メタボリックシンドローム(肥満、高血圧、高コレステロール値など心血管系の危険因子が重なった病態)を発症しやすいとイギリス・ロンドン大学の研究グループが発表した。  35~55歳の英国公務員10,308人を14年間追跡した結果、仕事のストレスが増加するにつれ、メタボリックシンドロームの発症率が徐々に上昇することが分かった。特に、長期にわたりストレスがある男性では、ストレスがないと答えた人よりメタボリックシンドロームの発症率が2倍であった。  過去の研究では、職場で公平に扱われていると感じている公務員は心臓病リスクが低く、職場で権限がない人はリスクが高いという報告がある。労働者の仕事に対するコントロール力と参加意識を高めるよう職場を設計し直したところ、病欠で休む日が少なくなった。 【文献】 Chandola, T. et al.: Chronic stress at work and the metabolic syndrome: prospective study. BMJ, 332: 521-525. (2006) 2006/07/08 長野県栄養士会で講演  長野県松本市で「果物と生活習慣病予防」について長野県栄養士会主催の研修会で講演した。 2006/07/08 夜の血圧は心不全と関係している  スウェーデンに住む951人の男性を対象に1990年~1995年まで追跡調査を行った結果、夜に高血圧気味である人は、うっ血性心不全を発症するリスクがそうでない人に比べて約2~3倍高く、潜在的に危険であるとスウェーデンの研究チームが発表した。 【文献】 Ingelsson, E. et al.: Diurnal Blood Pressure Pattern and Risk of Congestive Heart Failure. JAMA. 295: 2859-2866. (2006) 2006/07/07 40代は孤独を感じている  孤独感は、心臓病やうつ病などの疾患や、家庭内暴力など他の問題のリスクを上昇させると考えられているが、成人の3分の1以上は孤独を感じており、特に40歳代でその傾向が強いと、イギリスとオーストラリアの研究グループが発表した。  オーストラリアに住む18歳以上の成人1,289人を対象に30分の電話インタビューを実施した結果、成人の35%が孤独感をもっており、そのレベルは20代で上昇し始め、40~49歳でピークに達することが明らかになった。一方、50歳以上ではレベルが最も低かった。退職した人より失職中の人で孤独感が強く、世帯収入が低い人ほど強く感じていた。また、今回の調査結果は、退職で社会的接触が減少し、年齢とともに孤独感が増すというこれまでの見解とは異なっていた。 【文献】 Lauder, W. et al.: Social capital, age and religiosity in people who are lonely. J. Clinical Nursing 15: 334-340 (2006) [doi: 10.1111/j.1365-2702.2006.01192.x] 2006/07/06 オーストラリア・タスマニア産リンゴの輸入解禁  農水省は7月5日付けでオーストラリア・タスマニア産リンゴの全品種について輸入を解禁すると発表した。輸入するためには、害虫のコドリンガを完全に殺すためのくん蒸処理を行ったリンゴに限られる。また「ジョナゴールド」は、輸入解禁されている「ふじ」と同様の消毒基準を適用し輸入を認める。  オーストラリアはコドリンガの発生国のため、日本は同国からのリンゴ輸入を禁止してきた。しかし、現地確認試験の結果、試験の有効性が認められたことから輸入を解禁した。リンゴで全品種の輸入解禁を認めたのは米国に次いで2カ国目である。 農林水産省プレスリリースは下記のサイトにある。 http://www.maff.go.jp/www/press/2006/20060705press_4.html 2006/07/05 サクランボ果汁で運動による筋肉の回復が早い  サクランボ果汁を飲むと運動後の筋力の回復が早いことがアメリカ・バーモント大学の研究から明かとなった。  14人の男性に対してサクランボ果汁を含む混合飲料を飲む群と、サクランボ果汁を含まない飲料を飲む群に分け、12オンスの飲料を1日2本、3日間飲用し、4日目に片腕の筋肉を20回収縮緊張させる運動を行ったのち、その後4日間、同じ飲料を飲んだ。  その結果、サクランボ果汁には運動で誘発された筋肉損害を緩和する効力があることが分かった。特に、筋力は、サクランボ果汁を含まない飲料群で22%の低下したが、サクランボ果汁入り飲料群では4%であった。 【文献】 Connolly, D. et al.: The efficacy of a tart cherry juice blend in preventing the symptoms of muscle damage. Br. J. Sports Med. Online 21 June 2006 [doi: 10.1136/bjsm.2005.025429] 2006/07/04 日本が高齢化、少子化ともに世界一  日本の人口に占める65歳以上の高齢者の割合は21.0%と世界最高になり、15歳未満は13.6%と世界最低で、高齢化・少子化ともに世界で最も進行した国になったことが、平成17(2005)年国勢調査抽出速報集計から分かった。5年前の平成12(2000)年の調査では、いずれもイタリアに次いで2番目だったが今回逆転した。  昨年の人口は1億2776万人で、5年前より83万人増えた。年齢別では、15歳未満が1740万人、15~64歳は8337万人と、ともに前回より減ったが、65歳以上は481.5万人増の2682万人だった。  日本の高齢者の割合を各国と比べると、1980年に9.1%と先進7カ国で最低だったが、平均寿命の伸びと出生率の低下で急伸した。2000年は17.3%で、人口10万人以上の192カ国・地域中最高だったイタリア(18.2%)に迫り、今回イタリアの20.0%を抜いた。  一方、15歳未満は、前回最低だったイタリアが14.0%で下から4番目になり、日本が最低になった。出生率が改善傾向にあるフランスは18.2%、出生率が2を上回る米国は20.8%となっている。 平成17(2005)年国勢調査抽出速報集計の少子・高齢化のデータは下記のサイトで読める。 http://www.stat.go.jp/data/kokusei/2005/sokuhou/01.htm 2006/07/03 ノルウェーが種子バンク「ノアの箱舟」  ノルウェー政府は北極圏の島に設けた貯蔵庫に、世界各地の農作物300万種類の種子を集め、絶滅の危機に備えて保管する計画であるとBBCなどが伝えている。種子バンクは、自然災害や戦争、病害、気候変動などによってその土地の農作物が絶滅し、多様性が失われる事態を防ぐためノルウェーが建設する。  建設地は北極点から約1000kmのノルウェー領スバルバル諸島で、永久凍土の中にコンクリート製の貯蔵庫を作り種子を保管する。庫内の気温は温度維持システムで低温に保たれるが、万一システムが故障しても、気温が0℃を超えることはなく、種子は数百年または数千年先まで保管できるという。  植物の絶滅に備える種子バンクは、世界各地にすでに約1400カ所設けられているが、その大半は自国の植物のみを対象としている。災害や戦争、財源不足などによって貯蔵施設を維持できない可能性があることから、20年以上前から世界規模のバンク設立が検討されていたものの、種子の遺伝子の所有権などをめぐる問題が解決せず、実現が遅れていた。  スバルバル諸島の構想では、種子を提供する国が所有権を保持し、銀行の貸金庫を使うような形でノルウェー所有のバンク施設を利用する。種子の受け入れは、07年9月に開始される予定である。 ノルウェー農業食料省のプレスリリースは下記のサイトで読める。 http://odin.dep.no/lmd/english/news/news/049051-070027/dok-bn.html 2006/07/02 アリは体内の「歩数計」で距離を把握  アリは、歩数を数えることで、移動距離を正確に把握している可能性の高いことをドイツのウルム大などの研究チームが発表した。  研究チームは、距離測定は歩数で行うとの仮説を立て、アフリカのサハラ砂漠に生息するアリの脚の長さを変えて実験した。  巣穴から10m離れた場所でエサを与えたアリを、1)ブタの毛を竹馬のように履かせて脚を長くする、2)一部を切断して脚を短くする、3)何もしない、の3群に分け、巣穴に戻れるか調べた。ところ、足を長くしたアリは10mを越え、足の短いアリは10mより短い位置で巣を探す行動をした。  次に、巣穴からエサの位置まで歩かせて、戻る距離を測ったところ、3つの群ともに正確に10mの位置の巣穴に戻った。  以上の結果から、研究者らはアリは巣までの距離を把握するのに体内の「歩数計」を利用していると結論づけた。 【文献】 Wittlinger, M. et al.: The Ant Odometer: Stepping on Stilts and Stumps. Science 312: 1965-1967. (2006)  この研究の特徴的な点は、アリの足の長さを長くするテクニック、巣穴を探す行動などアリの生態の理解、統計的な手法である。理科自由研究の延長のような研究であるが興味深い。 2006/07/01 雷雨の中での携帯電話は危険  雷雨の中で携帯電話を使うのは危険であるとイギリスの医師たちが医学雑誌で警告している。携帯電話の金属が雷を誘導し、そのためショックを受けて死亡する可能性があると述べている。15歳の少女はロンドンの公園で電話中、落雷に打たれて心臓停止になった。この場合は、その後の蘇生により回復したが、注意が必要としている。 【文献】 Esprit, S. et al.: Injury from lightning strike while using mobile phone. BMJ. 332: 1513 (2006) [doi: 10.1136/bmj.332.7556.1513-b]