2005年2月


2005/02/28
 カリフォルニア大ロサンゼルス校のチームが、緑茶から抽出した成分に、初期のぼうこうがんの進行を抑える効果があると発表した。研究チームでは、発がん性物質と緑茶成分を人のぼうこう細胞と接触させて反応をみた。その結果、たとえがん細胞が発生しても、緑茶成分がその増殖を阻害することが分かったと、がん研究の専門誌「Clinical Cancer Research 」に報告した。
 緑茶成分はがん細胞中の「アクチン」に作用するとみられる。アクチンは細胞の形を維持したり、細胞運動の原動力となったりするたんぱく質で、これを制御する「Ryo」という別のたんぱく質が、緑茶成分によって活性化され、がんが周囲の健康な細胞まで広がるのを抑えるのではないかと説明している。

▽ 細胞レベルの試験なので、科学的には緑茶を飲めば、ぼうこうがんを予防できるとまでは言えない。人でも効果があるとするためには、今後、動物試験を行ってから疫学調査、ヒト介入研究などの研究が必要である。


2005/02/27
 国産大型ロケット「H2A」7号機が26日、鹿児島県・種子島の宇宙航空研究開発機構種子島宇宙センターから打ち上げに成功したと各メディアが伝えている(05/2/26)。打ち上げは午後5時9分の予定だったが、地上との通信系統に異常が生じたため、午後4時すぎに作業が一時中断。午後6時25分に繰り下げられた。打ち上げ2分7秒後に大型固体補助ロケット(SRB)の切り離しに成功し、40分2秒後に衛星を分離した。
 03年11月の失敗から1年3カ月ぶりの打ち上げ成功で、揺らいでいた信頼をつなぎとめ、停滞していた日本の宇宙開発が再び動き出す。

▽ 背水の陣だった関係者は、今回の成功でほっとしていることだろう。おめでとうと言いたい。 このミッションに係わった人たちの努力と苦悩について、もっと、もっとマスメディアが取りあげ伝えてほしいと思う。


2005/02/26
 JA全国農業協同組合中央会は、食料自給率の目標年次を2015年度だけでなく、10年度の目標設定も求めることを提起したと日本農業新聞が伝えている(05/2/22)。中間年の目標を定めることにより施策の徹底した検証を行い、確実な自給率向上を求めていく。自給率については、国民の生存を支えるカロリーベースがあくまで基本との立場をあらためて示した。その上でカロリーベースの大きな要素である米の消費拡大、麦・大豆の生産拡大につながる施策強化を求めていくとしている。特に飼料作物は戦略的に最重要作物と位置づけ、粗飼料ベースで自給率100%を目指すことを求めている。
 長期的な自給率目標としては、現行計画が掲げるカロリーベースで50%以上を堅持するよう求めるとともに、世界貿易機関(WTO)農業交渉などで食料安全保障などを主張する上で、国の基本理念として不可欠だとしている。


2005/02/25
 米テキサス州の米航空宇宙局(NASA)ジョンソン宇宙センターで24日、スペースシャトルの飛行再開1号機ディスカバリーに乗る野口聡一飛行士らの船外活動(宇宙遊泳)の訓練が公開されたと朝日新聞が伝えてる(05/2/25)。体を慣らすため、野口さんらは宇宙服で訓練用プール(幅30メートル、長さ60メートル、深さ12メートル)に5時間ほど潜り、ISSの実物大模型で訓練した。 野口さんは「準備は万端」と、5月15日の打ち上げ目標に向けて、笑顔で自信を見せた。 このニュースは下記のサイトに掲載されています。
 http://www.nasa.gov/news/agency/thisweek_022105.html
 野口さんと一緒に乗るクルーは7人です。その顔ぶれは下記のサイトで見ることが出来ます。
 http://spaceflight.nasa.gov/gallery/images/shuttle/sts-114
    /lores/sts114-s-002.jpg



2005/02/23
 名城大の高倍昭洋教授らの研究グループは、塩分の多い死海に生育するラン藻に含まれているN-メチルトランスフェラーゼ(N-methyltransferase)の遺伝子を淡水性のラン藻に組み込み、形質転換したラン藻が海水の中でも生育できることを見いだした(Proc Natl Acad Sci USA. 102: 1318-23.(2005))。
 N-メチルトランスフェラーゼはグリシン(アミノ酸の1つ)からベタイン(トリメチルグリシン)を合成する酵素である。ベタインは死海で生育するラン藻に多く含まれおり、細胞への塩分侵入を防ぐ働きがある。シロイズナズナに組み込むと高温や酸化などのストレスに強くなり、枯れる速度が遅くなった。


2005/02/23
 倉本聰脚本の連続ドラマ「優しい時間」に出演中の大竹しのぶへのインタビューから(朝日新聞05/2/22)
 大竹しのぶは喫茶店を経営する夫を優しく見守る亡妻の役。夫はかつて商社の猛烈エリートサラリーマン。が、18歳だった長男、拓郎の運転する乗用車の事故で同乗していた妻を亡くし、その3年後、妻のふる里、富良野に喫茶店を開く。その夫が思い悩むとき、そばにふと現れて、静かに言葉を交わす。 たとえば、富良野の近隣の町にやってきて陶芸作りに励んでいる長男、拓郎との関係について。

 夫役の寺尾聰が言う。「だれかあいつを、愛してくれてるかな」。妻役の自分が答える。「きっと、だれかに愛されてるわ」


2005/02/22
 お酒の飲み方と肥満との関係を調査した結果、たまにしかお酒は飲まないが、飲んだときは深酒する人は太りやすいと米国立アルコール依存研究所が発表した(National Institute on Alcohol Abuse and Alcoholism )。一方、少量の晩酌を習慣にする人の飲み方は太りにくいという。
  1997-2001年の国民健康面接調査に参加した男女のうち、一度も煙草を吸ったことがなかった約3万7千人について「1回の酒量」と「飲酒の頻度」を調べた。その結果、太りにくいのは、1回に1杯しか飲まず、週に3~7日飲む人で、反対にたまにしかお酒を飲まないが、量を過ごす人が最も太りやすいことが分かった。NIH Newsのサイトは下記。
 http://www.niaaa.nih.gov/press/2005/Drinking-Patterns.htm


2005/02/21
 日本三名園の一つ、水戸市の偕楽園で20日から「水戸の梅まつり」が始まった。園内には約100種3000本の梅があり、3月31日まで開催。梅は現在三分咲きで平年より若干早い程度という。3月上旬が見ごろだとのこと。
 ホームページ:http://www.mitokoumon.com/sisetu/kairakuen.htm


2005/02/20 コラム カンキツのグリーニング病は温暖化の影響?
 最近、地球温暖化の例としてカンキツのグリーニング病の拡大(北上)が上げられているが、本当だろうか。この温暖化説には違和感を感じている。

 カンキツのグリーニング病とは、植物体の師部に局在する細菌様微生物によって引き起こされる病害である。グリーニング病は接木によって伝染するほか、媒介昆虫(ミカンキジラミ)、寄主植物(ゲッキツ)により媒介・伝染される。この病害に罹病すると矮化しやがて枯死してしまうため、深刻な被害を与える。

 1988年に沖縄県西表島で初めてグリーニング病が確認され、徐々に分布が拡大し、2001年までに大東諸島を除く沖縄全域に広がり、2002年には奄美大島などでも確認された。簡単に言えば、グリーニング病の分布地域が南から北へ北上した。どうもこのことをもって地球温暖化の影響と解釈しているようだが、温暖化の影響としては北上速度が速すぎるように感じられる。

 地球温暖化のため北上したなら、グリーニング病に係わる細菌様微生物、媒介昆虫、寄主植物などのどれかが温度感受性である必要がある。また、その温度感受性は非常に正確なものであると予想される。なぜなら、地球温暖化の調査結果では100年間で地球の温度が0.8℃上昇しただけなので、温度上昇に伴う北上であるとすればこの温度差を認識する生体システムの存在を証明する必要があるだろう。さらに、この温度感受性生物の北上とグリーニング病の分布拡大が一致する必要もあるのではないか。

 ところが、グリーニング病の侵入以前に沖縄には、ミカンキジラミとゲッキツは存在していた。そして、その分布に沿ってグリーニング病が拡大しており、温度分布に従っているようには見えない。また、調べた範囲では温度上昇とグリーニング病の北上速度が一致しているとする科学的データも見つけられなかった。もちろん、調査が不十分なのかも知れないが。

 我が国は、地理的に南北に長いため、南から侵入してきた伝染性病害は北上するのが普通である。侵入したグリーニング病は通常の伝染と同様に、接木や媒介昆虫や寄主植物を介して侵入していると考えるのが常識的で、地球温暖化とは直接関係がないとする方が科学的に無理がない。地球温暖化とグリーニング病の北上が結びつくと確かにおもしろいが、可能性はごくごく小さいだろう。


2005/02/19
 40~69歳の日本人の男女約9万人について追跡調査した結果、コーヒーをよく飲んでいる人の肝がんの発生率が低いことが分かった。調査開始時には、対象者の33%はコーヒーをほとんど飲まず、一方37%はほぼ毎日コーヒーを飲んでいた。調査開始から約10年間で、334名(男性250名、女性84名)が肝がんになった。コーヒーをほとんど飲まない人と比べ、ほぼ毎日飲む人では肝がんの発生率が約半分に減少し、1日の摂取量が増えるほど発生率が低下し、1日5杯以上飲む人では、肝がんの発生率は4分の1にまで低下していた。発生率の低下は男女に関係なく見られた。しかしながら、現在よりもコーヒーを多く飲むようにすると肝がんの発生率が低くなるか否かについては、さらなる研究が必要である。

 コーヒーは、炎症を和らげる作用があり、肝炎の進行を防ぐことによって、肝がんを予防するのではないかと考えられる。また、コーヒーにはクロロゲン酸など抗酸化物質が含まれており、動物実験などでは、これが肝臓のがん化を防御するという報告がある。また、本研究の分析では、コーヒーと同じくカフェインの多く含まれている緑茶の場合、多く飲んでいる人でも肝がん発生率の低下がほとんど認められなかったことから、カフェインというよりは、コーヒーにのみ含まれている別の成分が関与しているものと思われる。

 文献:Inoue, M., et al., (2005) Influence of Coffee Drinking on Subsequent Risk of Hepatocellular Carcinoma: A Prospective Study in Japan. J. Nat. Cancer Inst,, 97: 293-300.


2005/02/18
 学力低下論と教師の負担が大きいと「総合的な学習の時間(総合学習)」の見直しに文部科学省が着手したと日本農業新聞が伝えている(05/2/17)。農業関係者は食・農教育を目玉にしてもらうように働き掛けてきた経緯があるだけに、気をもんでいる。

 総合学習の時間は開発途上中なので、時間数が削減されたら、食・農教育は10年前に戻るとの危機感がある。食と農をテーマにした学習を進める学校は多いが、教える立場にある三、四十代の教諭も児童の親と同様に農業体験の乏しい世代だけに、具体的な計画が立てにくいのが実態だ。

 食・農教育には他教科も関連するが、学科には細かい学習指導要領が定められており、それが足かせになっている。味覚教育の一環として調理をしようとしても、家庭科で蒸す、煮る、焼くを学ぶのは5年生なので、4年生には教えづらいが、幅広いテーマを体験重視で実践できる点で、総合学習の役割は大きい。


2005/02/17
 ほぼ日刊イトイ新聞で毎週水曜日更新される山田ズーニー氏の「おとなの小論文教室」を楽しみにしている。今週のテーマは「意志のある選択が人生を創る」である(下記サイト)。
 「選んだことが、結果的にすごく良かったとか、よくなかったとか、自分の選択が、あとあと、まちがっていたとか、いなかったとか、そんなことはどうでもいい。その先がどうこうではなく、意志のある選択こそが、自分の人生を創っていくんだ。」
 選択とは何かを具体的に述べている。意志のある選択を人生の支えにしていこう。
 http://www.1101.com/essay/index.html


2005/02/16
 日向市で7日からキャンプをスタートした欽ちゃん率いる社会人野球クラブ「ゴールデンゴールズ」は、市民との交流を図ろうと「欽トレ」と称して農作業などを手伝っていると日本農業新聞が伝えている(05/2/12)。欽ちゃんはじめ、元プロ野球選手でタレントのパンチ佐藤さんら約20人が、畑でダイコンを収穫した。重量感のあるダイコンに、欽ちゃんは「足腰を鍛える良いトレーニングになった。ダイコンがこんなに重いと思わなかった」と話した。
 おにぎりや千切大根サラダ、大根の甘酢漬けなどの球団への差し入れに「おいしい大根料理や、おにぎりをいただいてとてもうれしい」と味わった。ハウスで完熟キンカンの収穫もしたという。


2005/02/15
 群馬県・草津温泉から希少金属(スカンジウム、バナジウム、ヒ素)を採取する日本原子力研究所高崎研究所と群馬県草津町の共同研究が4月から始まる。工業用触媒に使われるバナジウムや、1キロ200万円もするスカンジウムなど産出量が少なく高価な金属を、同研究所が開発した捕集用の布を使い、温泉から取り出すという試みである。

 同研究所環境機能材料研究グループは、ポリエチレンでできた不織布に放射線を当て、さまざまな金属と結びつきやすい性質を加える技術を開発した。この布をフィルターに使うと、液体中に含まれる微量の金属元素を集めることができる。

 この不織布の製造方法は放射線グラフト重合法で下記のサイトでその原理を知ることが出来る。
 http://www.dmd.taka.jaeri.go.jp/j637/graft_j.html


2005/02/13
 現在、地球温暖化防止に向けた対策や法整備等の各種の取り組みが進められています。温暖化防止対策とは、温室効果ガスを削減し、基準年に戻すことです。2002年度における我が国の温室効果ガス総排出量は13億3,100万トン(二酸化炭素換算)で、 京都議定書の規定による基準年(原則1990年)の総排出量と比べて7.6%上回っています。この総排出量の約94%は二酸化炭素(CO2)が占めており、CO2の多くは化石燃料のエネルギー利用に伴って排出されたものです。CO2排出量は1990年度から約11.2%増加しています。

 このため、環境省では中核的温暖化防止対策技術として、(1)技術的に有効・確実で早期の効果が見込めること、(2)ソフトに頼る手法ではないこと、(3)公平で普及対象の大きいこと、(4)体系的な普及促進が図れること、(5)新規対策または対策強化が必要であることを上げています。

 温暖化防止対策の対象となる主な分野は、温室効果ガスの増加の著しい民生部門と運輸部門としています。具体的には、民生部門における一般住宅全般(家庭部門)およびオフィスビルや商業施設等(業務その他部門)、運輸部門におけるCO2排出量の約9割を占める自動車です。

 そのため、技術開発が必要ですがその対象となる技術は以下の3つのカテゴリーに分類されています。(1)エネルギー利用効率を高めてCO2を排出する化石燃料消費を抑制するもの(省エネルギー対策)、(2)化石燃料の替わりにCO2を排出しない再生可能エネルギーや未利用エネルギーを活用するもの(代替エネルギー対策)、(3)大気汚染防止等の他分野の環境保全対策であって、温暖化防止にも大きく寄与するもの(他の環境負荷対策)

 さらに詳しくは、中核的温暖化対策技術検討会・事務局の「中核的温暖化対策技術」ホームページをご覧下さい。
 http://www.srdi-eco.jp/chukaku/


2005/02/13 コラム 温暖化防止対策と温暖化対策の違い
 我が国の政府をはじめ各国が取り組んでいる温暖化防止対策の中核は、温暖化ガス(二酸化炭素など)の削減で、計画通り行けば、地球は温暖化しないと予測されています。そのため、上記、「中核的温暖化対策技術」の記述からも分かるように技術開発も含め早急な二酸化炭素削減が求められています。

 二酸化炭素削減の主な対象分野は、民生部門と運輸部門です。従って、二酸化炭素をあまり発生させない果樹農業においては温暖化防止に寄与出来る部分は限られており、果樹研究における重点研究対象ではないでしょう。また、計画が予定通り行けば、地球は温暖化しないわけで、温暖化することを前提とした研究を重点的に進めるのはちょっと変です。温暖化防止に努力している人はどう思うでしょうか。


2005/02/12
 農林水産省では「新たな食料・農業・農村基本計画骨子(案)」についての意見・情報の募集を始めた。締切日は平成17年2月20日。詳細は下記。
 http://www.maff.go.jp/www/public/cont/20050210pb_3.htm


2005/02/12 コラム 果樹農業の課題は何か
 農林水産省が作成している食料・農業・農村基本計画骨子(案)のポイントの中で、食料自給率の目標が上げられています。そこでは、食料自給率向上に向けた取組が十分な成果をあげていない要因を検証し、①消費面からは、「食生活指針」の取組が具体的な食生活の見直しに結びついていないこと、米等の消費拡大対策が、性別・世代別の消費動向やライフスタイルの変化等を踏まえていないこと、食の安全へ関心が高まっているが、国産農産物の有利さが活かされていないことを上げています。②生産面からは、加工・業務用需要を含め、消費者・実需者ニーズの把握・対応が不十分であること、担い手の育成・確保が不十分なこと、耕畜連携による飼料作物生産が進まなかったこと等から、効率的に農地が利用されず、不作付地・耕作放棄地が増加したこととしています。

 そのため、重点的に取り組むべき事項として以下の点が上げられています。消費面からは、①分かりやすく実践的な「食育」や「地産地消」の全国展開、②米を始めとした国産農産物の消費拡大の促進、③国産品に対する消費者の信頼の確保です。生産面からは、①経営感覚に優れた担い手による需要に即した生産の促進、②食品産業と農業の連携の強化、③担い手への農地の利用集積、耕畜連携による飼料作物の生産等を通じた効率的な農地利用の推進です。

 農林水産省が開示している上記のサイトは下記です。
 http://www.maff.go.jp/www/counsil/counsil_cont/kanbou/kikakubukai/29/01.pdf

 この文章を読むと今後の果樹農業において重点的に取り組む課題は、消費拡大策と省力低コスト化による生産の促進が必要と考えられます。果樹研究もその方向で考える必要があるのではないでしょうか。


2005/02/11 果樹研究の目標は何か?
 果実日本2月号(Vol60:56-57,2005)に長野県果樹研究会の植田稔昌会長が「『農は三位一体-哲学、経済学、生物学』で(14)」で、「日本農業にとって自信の湧く、安心できる農業の進路」について述べています。その最後に「主役の農家がいなくなった農業、農村はどうなっていくのか。既に農業生産から止むなく撤退し、細々と自給しながら消費面が増大していく山村の集落があちこちに見られる世になっている‥‥主役は誰なのだろうか」と問いかけています。
 農業を振興するとは、農家が元気になることではないだろうか。私たちの研究で言えば果樹農家が元気になる研究を推進することだろう。

 果樹研究所は現在、下記の3項目を研究計画に上げています。しかし、次期の研究計画では、このうち1)省力・低コスト‥の課題と、2)消費者ニーズに対応した‥の課題を削除するという。この2つの課題は、果樹農業の発展のために必要不可欠な課題です。今までの研究により、この2つの課題が解決したのかというとそうではないだろう。やっと、研究の端緒がつかめ、研究が発展しようとしているところです。そして、研究技術の開発による価格競争力の付与、果実の消費拡大が望まれています。

 1)省力・低コスト・安定生産技術の開発
 2)消費者ニーズに対応した品質・機能性・貯蔵性の向上技術の開発
 3)環境負荷低減技術の開発

 では、この2つの課題に代えて次期研究計画で行う課題を下記に記しました。温暖化対策などの新しい3つの研究目標は果樹農業の主役が現在最も困っている技術開発や果物の消費拡大に応えられる課題なのでしょうか。植田氏の言葉を借りれば、果樹農業の主役が元気になり、自信の湧く、安心できる農業のための研究課題となっているのだろうかと思う。

 1)気候変動に対応した高品質果実の安定生産・流通技術の開発
 2)生物機能等を利用した果樹の環境負荷低減技術の開発
 3)ゲノム情報等を活用した効率的な育種選抜手法の開発及び生理機能の解明


2005/02/10
 都会の子どもたちに農業・農村の魅力を感じてもらおうと、農林水産省東海農政局は、農村を舞台にした人形劇を名古屋市内の小学校や幼稚園で開催していることを日本農業新聞が伝えている(05/2/10)。人形劇を見た子どもたちからは「実際に、田舎に行ってみたい」などの声も上がり、手応え十分のようでだ。
 人形劇は、女性7人の人形劇サークル「えぷろんろん」に委託しており、台本・人形作りから上演までを任せているとのこと。タイトルは「たけしの夏」。主人公たけしが田舎に行き、牛の世話や農産物の収穫、川魚捕りなどを通じて、自然と触れ合う楽しさを知り、野菜嫌いを克服していくという内容で、児童からは「野菜っておいしいんだ」「牛のブラッシングがしてみたい」と笑顔を見せたとのこと。えぷろんろんの平野時子代表は「肉や野菜など自分たちの食べているものが、実際にどこから来ているのか感じてほしい」と話している。


2005/02/09
 ミカンの女の子、ジャガイモの男の子、ハクサイの校長先生など旬の野菜を使った人形劇が福岡県内の小学校や保育園、公民館などで上演され、野菜好きが増えると評判になっていると日本農業新聞が伝えている(05/2/6)。
 「子どもの野菜嫌いがなくなった」「野菜に愛着を持つようになった」とのこと。野菜人形劇団「ベジタブル」の代表で農家の柴田多恵子さん(54)が絵本の読み聞かせ活動をしていた時、ニンジンに手芸用のボタンで目を付けて人形にして、「わたしニーコちゃん、食べてみてね」と話し掛けると、子どもが「かわいー」と大喜びしたのがきっかけとなり、13年前に結成された。
 劇団員は10代から70代まで23人の男女で、年に35回ほど公演し、持ちネタは17あるそうである。


2005/02/08
 先端医療振興財団(神戸市)は、世界のがん治療の最新情報を掲載する「がん情報サイト」を開設した。治療成績のほか、国内外で実施されている抗がん剤などの臨床試験の進行状況も検索できる。財団の臨床研究情報センター(TRI)が全国のがん専門医と協力し、米国立がん研究所が運営するがん情報データベースを翻訳し、1カ月程度の遅れで掲載していくとのこと。
 情報は専門的でやや難しいが一度アクセスしてはどうだろう。
 がん情報サイトは下記
 http://cancerinfo.tri-kobe.org/


2005/02/08
 googleの検索結果が前と変わったように思う。数日前までは、「果物 健康」で上位にランクされたが、今日はそれほど上位ではなくなっていた。なぜだろうか。


2005/02/07
 心臓血管疾患に係わる因子と痴呆との関係について、1964-1973年に健康であった8.845人(40-44歳)を対象に追跡調査(コホート研究)が行われた。その結果、1994-2003年に心臓血管疾患の危険因子である高コレステロール、糖尿病、高血圧、喫煙のうち1つの因子をもつ人の痴呆のリスクは、20-40%高くなることが分かった。また、4つの因子を同時にもつ人の痴呆症になるリスク(2.37)は、1つしかもたない人(1.27)の2倍以上となる。
(Whitmer, RA, et al., (2005) Midlife cardiovascular risk factors and risk of dementia in late life. Neurology. 64:277-281. )


2005/02/06
 医学雑誌ランセットに発表されたミネソタ大の研究によると、18-30歳のアメリカ人3,031人を15年間追跡したところ、ファーストフードのレストランに週2回より多く通うグループは、週1回未満のグループと比べて、体重が4.5kg、インシュリン抵抗性が2倍に増えていた。この結果から、ファーストフードに通う回数が増えると肥満と2型糖尿病になるリスク(危険)が高まるとしている。

下記をクリックすると論文全文を見ることが出来る。
Pereira, MA, et al., (2005) Fast-food habits, weight gain, and insulin resistance
(the CARDIA study): 15-year prospective analysis. Lancet, 365:36-42.



2005/02/05
 和歌山県の特産「柿酢」の健康面での機能性を実証し、販売促進の目玉にしようと、県内の生産者やJAの職員らが柿酢を半年間飲むモニター調査を3月から始めると日本農業新聞が伝えている(05/2/3)。和歌山県と和歌山県立医大、JA和歌山の取り組みで、一般の住民を対象として、柿酢による動脈硬化や高血圧の予防効果を解明するとしている。


2005/02/04-05
 くだもの・科学・健康ジャーナルのトップロゴを作成しました。今後時間をかけてさらによいロゴを作っていこうと思っています。また、サイト表示の文字サイズを「小」などにしていると画面に空白が出来る不具合を修正しました。これは、私がまだよくHTMLのタグを知らないために起こった不具合でした。テーブルタグにheight指定を入れていると、表示文字を小さくすると空白が出来てしまうことを知りました。今回の修正でheight指定を削除したので、文字の大きさによってテーブルの高さが自動的に変更されるので、今までより見やすくなったと思います。概してウエブサイトは若い人が作っているためか字が小さすぎると思っています。そのため、本誌ではIEでの表示で「大」を基本に作成して、字の大きさを変更出来るようにしているのですが、それが裏目にでてしまいました。今回、他のサイトも読みやすいように修正しましたので、今後ともご愛読お願いします。
 google、Yahoo!JAPAN、MSNで「果物 健康」で検索すると本誌がかなり上位(1-3番目)に表示されるようになりました。さらに内容の充実を図っていきたいと思っています。


2005/02/03
 果物供給量の多い上位3カ国はどんな国?

ドミニカ(Commonwealth of Dominica)
 カリブ海にある小アンティル諸島のドミニカ島(佐渡と同じくらい)がドミニカで、首都はロゾーです。1493年コロンブスにより「発見」され、1978年に独立しました。皆さんがよくご存じのハイチの隣にあるドミニカ共和国(Dominican Republic)ではありません。主要産業は農業でバナナ、マンゴー、ココナツ、柑橘類の生産が多い国です。面積は790km2、人口は69,278人です。
 ドミニカの人は、1日にグレープフルーツを447g、オレンジを196g、バナナを70gなどを食べています。

ベリーズ(Belize)
 中央アメリカにありカリブ海に面した国で、首都はベルモバンです。1502年コロンブスにより「発見」され、1981年に独立しました。面積は22,963km2(四国より少し大きい)で、人口は24.1万人です。主要産業は、バナナ、柑橘類、砂糖などの農業で、フルーツジュース、バナナ、砂糖などを輸出しています。
 ベリーズの人は、1日にオレンジを349g、レモン・ライムを254gなどを食べています。

バハマ(Commonwealth of The Bahamas)
 バハマは、カリブ海の西インド諸島北部の群島からなる国(700余りの小島から成る)で、首都はナッソーです。1492年コロンブスにより「発見」され、1973年に独立しました。主要産業は観光です。面積は13,878km2で、人口は303,000人です。
 バハマの人は、1日にオレンジ387g、リンゴ93gなどを食べています。リンゴはすべて輸入ですが、ハバナの人たちは、日本人が1日当たり食べているリンゴの量(47g)の倍くらい多く食べているのには驚きます。

日本
 日本人の1日当たりの果物供給量は154gで、オレンジ・ミカンを34g、リンゴを47g、バナナを17gなどを食べています。


2005/02/02 世界における果物供給量
 生活習慣病を予防するため、WHO(世界保健機関:国連の専門機関)では果物の摂取を積極的に推進しています。2004年5月にジュネーブで開催された第57世界保健総会で「食事と運動と健康に関する世界戦略」を採択し、生活習慣病(心血管疾患、タイプ2型糖尿病、ガン、肥満など)を予防するため、果物の摂取を増やすことを勧告しました。
 そこで、世界の国々では、果物をどのくらい食べているのかについて紹介します。FAO(国連食糧農業機関)が作成しているFAOSTATデータベースのうちFood Balance Sheets 2002年度のデータ (栄養出納表:更新日August 27, 2004)から、各国の1人1日当たりのワインを除いた果物の供給量(Fruits - Excluding Wine)について紹介します。

 2002年版のFAOSTATのデータベースに統計数値が記載されている国は171カ国ありますが、そのうち供給量の多い順に並べると日本は100番目です(表1)。1位はドミニカで1日当たり871.8g、2位はベリーズで809.6g、3位はバハマで750.1gです。先進諸国ではイタリア、カナダ、ドイツ、アメリカが300g以上で、イギリス、フランスが49、50位で274-5gです。日本は、154.2gなので、こうした先進諸国のおおよそ半分くらいです。

表1 各国の果物供給量
------------------------------------------
順位 国名    年間供給量(kg) 日供給量(g)
------------------------------------------
 1 ドミニカ    318.2     871.8
 2 ベリーズ    295.5     809.6
 3 バハマ     273.8     750.1
 ------------------------------------
23  イタリア    131.2     359.5
25  カナダ     124.1     340.0
34  ドイツ     115.5     316.4
39  アメリカ    110.3     302.2
49  イギリス    100.3     274.8
50  フランス    100.0     274.0
 -------------------------------------
100 日本       56.3     154.2
-----------------------------------------

171カ国すべてのリストは下記のサイトで見られます。
http://www.kudamononet.com/LifeStyle/statistics/FAO_171.html

 果物供給量の世界平均は1日当たり167.1gで、先進国(Developed Countries)は230.1g、発展途上国(Developing Countries)は149.9gです(表2)。北アメリカにおける1日当たり供給量は305.8g、15カ国で構成している欧州連合では1日当たり317.5g供給されています。

表2 経済状況と果物供給量
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           年間供給量(kg) 日供給量(g)
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世界           61.0       167.1
先進国          84.0        230.1
発展途上国       54.7       149.9
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 我が国の1日当たりの果物供給量は、1972年の172.7gを最大として下がり続け、1991年の127.7gを最低として低迷が続いていました。ただ、2001年、2002年とやや増加傾向が認められます。

我が国の1961-2002年のデータは下記のサイトで見られます。
http://www.kudamononet.com/LifeStyle/statistics/FAO_Japan_sup.html

 FAOSTATにおける果物の供給量は、生産量から輸出量を差し引き、輸入量を加えた総数から、飼料用、種子用、減耗量などを差し引いた総果物重量を人口で割った数値です。従って、上記の数値は各国の1人当たりの果物の供給量を示す数値で、果物を実際に摂取した量を表しているわけではありません。そのため、アメリカなどの先進諸国では、生活習慣病を予防するにはもっとたくさんの果物を食べる必要があるとしています。

 我が国で、現在定められている果物摂取の目標値は、1日当たり200gとしているので、年間では73kgとなりますが、この量でも残念ながら先進諸国の平均値に達しません。

 また、このデータベースを使うと各国の摂取熱量、動物性食品と植物性食品の比率、栄養バランス(PFCバランス)を知ることが出来るほかに、毎年公表されているエネルギーやたんぱく質、脂質、炭水化物の自給率の根拠も知ることができます。

 FAOSTATのサイトは下記です。
 http://faostat.fao.org/faostat/form?collection=FBS&Domain
=FBS&servlet=1&hasbulk=&version=ext&language=EN



2005/02/01
 食べ過ぎや運動不足などの生活習慣が原因でおきる2型糖尿病は、p27と呼ばれるタンパク質の働きを抑えれば改善することを、神戸大院医の春日雅人らがマウスを使った実験で突き止めた(Uchida, T., et al. Nature Medicine published online: 30 January 2005 (doi:10.1038/nm1187))。
 研究グループは、遺伝子操作で糖尿病にしたマウスのβ細胞を調べたところp27が異常にたまっていることを見つけた。今までの研究から、p27はβ細胞の細胞分裂を抑える働きをすることが知られていた。そこで、糖尿病で生まれつきp27を作れないマウスと、p27を作っている糖尿病マウスを比較したところ、p27を作れないマウスの血糖値は糖尿病マウスの4分の1で、正常に近かった。
 糖尿病が進むと、血糖値を正常に保つインスリンを分泌する膵臓のβ細胞が減少する。この研究から、糖尿病の発症はp27がβ細胞の細胞分裂を抑制するためと考えられる。そのため、p27を抑える薬が開発されれば、β細胞の減少を食い止め、糖尿病を治療できる可能性がある。
 2型糖尿病は、過食や運動不足でエネルギー(ブドウ糖)を消費しきれなくなって発症する。初期段階では、ブドウ糖を筋肉などに取り込ませる働きをするインスリンの分泌も増え、高血糖とならないが、この状態が長く続くとβ細胞が疲弊し、糖尿病に至ると考えられている。