2006年6月


2006/06/30 チーズを食べる頻度が急増
 中央酪農会議は、2005年度の「ナチュラルチーズ嗜好(しこう)実態調査報告書」をまとめたと日本農業新聞が伝えている(06/6/27)。チーズを食べる頻度が過去5年間で「増えた」と答えた割合は全体のほぼ5割。男性は34%、女性は52%で、女性にチーズを食べる習慣が浸透していることが分かった。
 頻度が増えた理由は、「店頭での品ぞろえが増えた」が最も多く44%で、「チーズを使う料理が増えた」(41%)、「健康によい」(39%)とのことである。

 乳業関係は、牛乳が生産過剰となるなど苦戦が続いているが、チーズは消費拡大が望めるようだ。


2006/06/30 本日発行のメルマガの特集は「果物と糖尿病」
 本日発行のメールマガジン「果物&健康NEWS」では果物と糖尿病の関係を扱います。果物を食べ過ぎると糖尿病になるとの説は誤解であることや予防のための摂取法などを紹介する予定です。午後3時ころまでに、メルマガのご登録いただければ今日中に読めます。


2006/06/29 果物を含む食生活は大腸ガンを予防する
 男性の自衛隊員1,341人を対象に大腸ガンと食事のパターンとの関係を解析した結果、果物、野菜、乳製品、デンプンを多く摂取し、アルコールの摂取量が少ない人は大腸ガンになりにくいことが九州大学と自衛隊病院との共同研究から分かった。
 研究では1)果物、野菜、乳製品、デンプンを多く摂取し、アルコールの摂取量が少ない(DFSAパターン)、2)動物性食品を多く摂取しているパターン、3)日本型食生活の三つの食事パターンに分けて解析したところ、DFSAパターンの食事をしている人は大腸ガンの前駆体である腫瘍ができるリスクが38%少ないことが分かった。一方、他の二つの食事パターンではこうした傾向は認められなかった。

【文献】
Mizoue, T. et al.: Dietary Patterns and Colorectal Adenomas in Japanese Men - The Self-Defense Forces Health Study. Amer. J. Epidemiol. 2005 161: 338-345. (2005) [doi:10.1093/aje/kwi049]


2006/06/28 体色変える新種のヘビをボルネオで発見
 世界自然保護基金(WWF)は、インドネシア・ボルネオ島のカプアス川の湿地帯でカメレオンのように体の色を変える新種のヘビを発見したと発表した。体の色を変えるヘビは世界的に珍しいという。
 体長50cmほどの毒蛇で、通常は赤褐色だが、白色に変化するが、どうして色が変わるかは分からないとしている。このヘビは新種と確認され、カプアス・マッド・スネーク(Kapuas Mud Snake)と名付けられ、科学研究雑誌に掲載された。

WWFによる記者発表は下記のサイトで読める。
http://www.wwf.or.jp/news/press/2006/p06062701.htm

【文献】
Murphy, J. C. et al.: A New Species Of Enhydris (Serpentes: Colubridae: Homalopsinae) From The Kapuas River System, West Kalimantan, Indonesia. Raff. Bull. Zoo. 53: 271-275. (2005)


2006/06/27 偏った食生活は喫煙と同じくらい健康に悪影響:オランダ
 オランダの国立公衆衛生・環境保護研究所(RIVM)は、果物、野菜、魚をほとんど食べない食生活は喫煙と同じくらい健康に悪影響お及ぼすと発表した。
 報告では、現在オランダでは、深刻な病気や死亡の原因となっている食習慣のうち、最大のものが果物、野菜、魚の摂取不足と指摘している。また、何年もの闘病生活を強いられるリスクまで考慮に入れると、不健康な食生活は喫煙と同じくらい健康に大きな害を及ぼすとしている。
 オランダでは、約75%が十分に果物や野菜を摂取していない。そのため、不健康な食生活が糖尿病や心疾患、ガンを引き起こしているとしている。

報告書は下記のサイトで読める。
http://www.rivm.nl/bibliotheek/rapporten/270555009.pdf


2006/06/26 ロボットのW杯でチームオオサカが3連覇
 ドイツ・ブレーメンで開かれていたロボットによるサッカーの世界大会「ロボカップ」(6月14-18日)で、大阪大学と関西の中小企業でつくる「チームオオサカ」が制作したヴィジオン・トライズがヒューマノイドリーグで優勝し、2004年のリスボン大会、2005年の大阪大会での優勝に続く3連覇を達成した。2位はドイツのTeam NimbRoであった。

チームオオサカの優勝のプレスリリースは下記サイト。
http://www.robo-labo.jp/modules/weblog/details.php?blog_id=114
2006年のW杯の試合結果は下記サイト。
http://www.humanoidsoccer.org/results_all.html

第2位になったドイツのNimbRoチームのサイト。ここではチームオオサカとの決勝戦の様子などがビデオで見られる。
http://www.nimbro.net/


2006/06/25 コエンザイムQ10:安全な上限量決定は困難
 コエンザイムQ10について、内閣府食品安全委員会は「データ不足のため、食品として摂取する際の安全な上限量を決めることは困難」との評価書案をまとめた。ただし、健康食品の製造にあたっては、医薬品としての用量(1日当たり30μg)を超えないよう配慮する必要があるとしている。
 コエンザイムQ10は動植物の体内で合成されている物質で、抗酸化作用があり、心不全治療では用量が決められているが、健康食品用としては基準がなかった。
 コエンザイムQ10入りの食品を摂取した消費者が胃痛やおう吐を訴えたとの報告もあり、厚生労働省が食品安全委員会に食品としての健康影響評価を依頼した。
 安全委員会は「健康被害との因果関係がはっきりせず、評価できなかった。医薬品としての用量を超えても、必ずしも健康被害が出るわけではない。消費者は、医薬品の用量を認識しつつ、摂取後に具合が悪くなることがあれば医療機関へ相談してほしい」としている。

食品安全委員会のコエンザイムQ10の審議結果は下記のサイト
http://www.fsc.go.jp/iken-bosyu/pc_coq10180622.pdf
食品安全委員会のコエンザイムQ10に関する意見募集は下記のサイト
http://www.fsc.go.jp/iken-bosyu/pc_coq10180622.html


2006/06/24 カンキツ果汁は骨を強くする
 骨粗しょう症モデルのネズミの朝食にオレンジジュースとグレープフルーツジュースを与えたところ、骨が強くなったとアメリカ・テキサスA&M大学の研究グループが発表した。ジュースに含まれている抗酸化成分が骨をもろくするオキシダントの働きを抑制するためではないかとしている。

【文献】
Deyhim, F. et al.: Citrus juice modulates bone strength in male senescent rat model of osteoporosis. Nutrition 22: 559-563. (2006)


2006/06/23 DNAワクチンとは
 遺伝子免疫とも呼ばれ、一種の遺伝子治療である。
 今までのワクチンは、病気の原因であるウイルスを不活化あるいは弱毒化したものを体内に注入し、体内で自然に抗体を作らせ、免疫の働きを利用して感染を予防する。
 DNAワクチンは、ウイルスの抗原になる部分の遺伝子を体内に導入し、体内で抗原を作らせ免疫を誘導する方法である。従来の方法はウイルス全体を接種する必要があったが、この方法によると特定のタンパク質のみが生成されるので、毒性を示す部分を取り除くことができる。
 DNAワクチンは研究段階で、マウスでは効果的であるが、人ではまだテスト中である。


2006/06/22 アルツハイマー病予防の新DNAワクチン
 アルツハイマー病の原因タンパク質・β-アミロイドが脳に蓄積するのを抑える新しいDNAワクチン(nonviral Aβ DNA vaccine)を開発したと東京都神経科学総合研究所などの国際研究チームが発表した。
 アルツハイマー病は、脳にβ-アミロイドと呼ばれるタンパク質が蓄積して起こる。β-アミロイドをつくるDNAを含んだワクチンを筋肉に注射するとβ-アミロイドが体内で作られるが、同時に、β-アミロイドに対する抗体もできる。この抗体がβ-アミロイドの蓄積を抑える。
 そこで、研究チームは、開発したDNAワクチンをアルツハイマー病モデルマウスに投与してβ-アミロイドの蓄積を調べたところ、投与しなかったマウスに比べて3分の1~半分程度に減った。また、このワクチンは長期間投与しても、免疫に関する細胞の過剰な活性化や髄膜脳炎といった副作用がなく安全性が高いことから遺伝子を用いた治療薬としての可能性が期待されている。

【文献】
Okura, Y. et al.: Nonviral Aβ DNA vaccine therapy against Alzheimer's disease: Long-term effects and safety. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 103: 9619-9624. (2006) [doi: 10.1073/pnas.0600966103]


2006/06/21 世界初のDNA二重らせん構造の橋
 シンガポールに世界で最初のDNA二重らせん構造をした橋ができる。オーストラリアの建築家コックス教授を中心とする国際グループが設計したものでシンガポールの開発計画の1つとしてマリナ湾にかかる歩行者専用の橋が建設される。長さ280mで5カ所の展望台が付いていて、シンガポールのスカイラインを楽しめる。2009年完成予定である。

 シンガポールはアジアにおける生物医学の拠点を目指しているが、そんな背景もあるようだ。完成したら渡ってみたいと思う。

DNA二重らせん橋の完成図下記のサイトで見られる。
http://www.ura.gov.sg/skyline/skyline06/skyline06-02/text/pg2.html


2006/06/20 女性の場合、睡眠不足が体重増と関連
 睡眠不足は体重の増加につながるとアメリカ胸部学会国際会議(American Thoracic Society International Conference, in San Diego)で報告されたとCBSなどが伝えている(06/05/23)。
 Nurses Health Studyに参加した女性6万8,183人を16年間追跡した結果、睡眠時間が5時間以下の女性は、7時間の女性に比べ、2.3ポンド以上(約1kg)体重が増加していた。また、睡眠時間が6時間の女性は、7時間睡眠の女性よりも1.5ポンド以上(約0.7kg)体重が重かった。
 さらに、毎日7時間以上睡眠をとる女性は5時間しかとらない女性よりも食事量が多く、運動の習慣は、両グループの間にほとんど差がみられなかった。
 以上の調査結果は、睡眠不足は体重の増加につながることを示唆しているが、その因果関係はまだ明らかではない。

 男性については調査が行われていないので睡眠不足が体重増につながるかどうか明かではない。


2006/6/19 肝臓から脳に信号が伝わり肥満を抑制
 肝臓と脂肪組織の情報のやりとりに関与する神経経路を同定したと東北大の研究グループが科学研究雑誌Scienceに発表した。
 モデルマウスに対し遺伝子操作を行い、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)-γ2を肝臓に発現させると、脂肪の蓄積が著しく減少した。また、迷走神経を手術で切断して実験すると、脂肪肝にしても内臓脂肪は減らなかった。
 以上のことから、脂肪肝になると神経を通して肝臓から脳に信号が伝わり、体のエネルギー消費を増やしたり、脂肪を減らしたりして、肥満が進むのを抑える調節機構が働くと研究者らは考えている。

【文献】
Uno, K. et al.: Neuronal Pathway from the Liver Modulates Energy Expenditure and Systemic Insulin Sensitivity. Science 312: 1656-1659. (2006) [doi 10.1126/science.1126010]


2006/06/18 水陸両生鳥類の祖先の化石見つかる
 中国北西部の白亜紀前期(1億1500万年~1億500万年前)の地層から、現代の水陸両生鳥類の祖先にあたる真鳥類の化石(Gansus yumenensis)が見つかったと中国とアメリカの国際研究チームが科学研究雑誌Scienceに発表した。
 見つかったのは5羽の化石で、頭部を除くほぼ全身の骨格が確認された。体長は約30cm、胸骨の特徴から現代の鳥類の直接の祖先である真鳥類の仲間とみられ、真鳥類の化石の中でも最も古い時代のものと考えられている。水かきや飛ぶのに適した風切り羽を持っていた。
 鳥類は、陸上で生活する恐竜から進化したと考えられているが、現代の鳥につながる真鳥類は、ごく初期の段階から水辺の生活に適応する進化をしていたと推測されている。

【文献】
You, H. et al.: A Nearly Modern Amphibious Bird from the Early Cretaceous of Northwestern China. Science 312: 1640-1643. (2006) [DOI: 10.1126/science.1126377]


2006/06/17 NHK総合「りんごの花咲くころ」
 今日は梅雨の合間の晴れ、久しぶりによい天気となった。NHK総合の「課外授業 ようこそ先輩」を見た後、11時から「新日本紀行ふたたび」を見た。今回のテーマは「りんごの花咲くころ~青森県弘前市~」であった。
 過去と現在の接点を手編みのセーターでつなぎ、りんご作りの良かった頃の話や、苦しかった頃の映像で長い歴史が表現されていた。そして、品種「ひろさきふじ」を育成した農家の素顔を通じてりんご農家の未来が語られていた。
 津軽のりんご作りはすでに4代目に入っているとのことであるが、それは「家族の絆」に支えられていたとのナレーションを理解できた。
 未来に多くのりんご農家の笑顔を見てみたいと感じた。そのために私たちは研究を通じて貢献したいと思う。


2006/06/16 ガン化を促進タンパク質が特定される
 大腸ガンの進行や悪性化で中心的な役割を果たすタンパク質が特定されたと、金沢大などの国際共同研究チームが発表した。
 CRD-BP(coding region determinant-binding protein)と呼ばれるタンパク質は、大腸ガンの細胞内で、ガン進行や悪性化につながるタンパク質を合成するリボ核酸(RNA)を安定化し、ガン化を促進することが分かった。
 大腸ガン細胞の培養実験では、遺伝子操作によりCRD-BPの働きを阻害すると、ガン化を促進する伝達経路が衰え、ガン細胞の自殺率(アポトーシス)が上昇し、増殖率が大幅に抑えられた。
 大腸ガンを促進する仕組みについては、これまで不明な部分が多かったが、大腸ガンの病巣から多く検出されるCRD-BPが、ガン化促進するタンパク質であることを解明した。 
 今後、発ガンとガン悪性化の伝達経路の解明や新たな治療、診断法の開発が期待される。

【文献】
Noubissi, F. K. et al.: CRD-BP mediates stabilization of βTrCP1 and c-myc mRNA in response to β-catenin signalling. Nature 441, 898-901 (2006) [doi: 10.1038/nature04839]


2006/06/15 ガンなどの闘病記:ネットで無料検索
 図書館司書や医療従事者が選書した700冊の闘病記を無料で検索できる「闘病記ライブラリー」(国立情報学研究所)がスタートした。仮想本棚に闘病記がガン、脳、心、血液など12項目に大分類し、病名ごとに小分類されている。
 著者、出版社、目次、概略や解説もあり、著者の性別や年齢、生死などの情報が記載されている。サブタイトルは「病気と闘う患者・家族・患者を支える人へ」である。

闘病記ライブラリーは、下記のサイトにある。
http://toubyoki.info/


2006/06/14 W杯使用の新サッカーボールは試合結果を変える!?
 ワールドカップで初めて使用される新しいサッカーボールは試合結果に影響を与えるかも知れないとイギリス・Bath大学の研究者が述べている。
 従来のサッカーボールは五角形と六角形の32枚のパーツを糸で縫い合わせていたが、新サッカーボールはパーツを14枚に減らし接着剤を熱で溶かして張り合わせる独特の製造法を採用したため、継ぎ目の凹凸が最小限になり、従来より球形に近く、野球のボールのようになった。
 そのため、ゆっくりした回転でキックされるとホールは不安定となり予測できない軌道を描きゴールキーパーがボールをとらえにくくなると予想されている。例えば野球のナックルのような動きになる。ワールドカップのゴール前のフリーキックで、従来とは異なるサッカーボールの軌道を見ることができるかも知れないと研究者は述べている。
 イギリスのゴールキーパー、ロビンソン選手やドイツのレーマン選手もこうしたサッカーボールの今までと違った動きについて発言しているとのこと。


2006/06/13 生活習慣病予防対策:沖縄県読谷村
 増大した医療費の抑制などを目的に、沖縄県読谷村が4月から生活習慣病対策班を発足させ、具体的な対策実施に向けた準備を進めていると琉球新報が伝えている(06/6/5)。市町村の自治体が同様のプロジェクト班を設置するのは珍しく、対策班は「医療情報と健診情報をうまく活用し、村民の健康増進に役立てたい」と意気込んでいる。
 過去3年間に心臓病に罹患した人の生活習慣を分析し、それを基に、村が行っている健康診断などを通じて分かった生活習慣病予備軍の住民に対して、保健師や栄養管理士と連携してこれらの住民を訪問し、生活習慣の改善について相談・指導に当たる。
 同村では、2005年度に入院費が急増し、12月時点の入院費が、前年度同月比で約1億6000万円(19.1%)増と高い伸び率を記録したため、急きょ対策班を設置することを決めたという。


2006/06/12 乳業各社が自ら健康増進運動の実践
 牛乳・乳製品を食べて健康を目指す「3‐A‐Day」運動を、乳業メーカーなど関連企業が自ら実践に乗り出していると日本農業新聞が伝えている(06/6/10)。従業員への牛乳の無償支給や、同運動を実践した人に景品を提供するなど、企業側が積極的に支援している。そして、この運動を定着させて消費拡大に結び付けようという目指している。
 オリオンは5月から、本社工場などの社内食堂で昼食時に牛乳200ミリリットルを支給している。また、チチヤス乳業も昼食時、同社製ヨーグルトを支給しており、3‐A‐Day運動の効果を調べるための骨密度測定などを行う方針とのことである。


2006/06/11 科学技術振興機構のサイエンスポータル
 科学技術振興機構(JST)が、科学に関する400以上のサイトにつながる「サイエンスポータル」を開設した。サイエンスポータルは、毎日更新する「ニュース」、週1回更新する「特集」、随時更新する「情報」から構成されている。一般向けと研究者や理工系学生向けとがあり、我が国の科学技術の今が分かる。

サイエンスポータルのサイトは下記。
http://scienceportal.jp/


2006/06/09 低カロリー食で老化を抑制できる
 十分にタンパク質と微量成分が含まれていて低カロリー(1800kcal)な食事を続ければ老化が抑制できるとアメリカ・セントルイスのワシントン大学医学部の研究グループが科学研究雑誌に報告した。
 低カロリー食を続けるとT3と呼ばれる甲状腺ホルモンと炎症性たんぱく質腫瘍壊死因子(TNF-α)のレベルが低下した。T3ホルモンは、体温、細胞代謝の制御と細胞にダメージを与えるフリーラジカルに関与していることから、T3ホルモンの減少は老化速度を遅くすると研究者らは述べている。

【文献】
Fontana, L. et al.: Effect of Long-term Calorie Restriction with Adequate Protein and Micronutrients on Thyroid Hormones. J. Clin. Endocrinol. Metab. Online May 23 (2006) [doi: 10.1210/jc.2006-0328]


2006/06/08 歩行能力は寿命と関係する
 高齢者の歩行能力が、将来の健康状態および寿命まで予測する重要な指標となることがアメリカ・ピッツバーグ大学などの調査から分かった。400メートルを短時間で歩き切ることができる人は、長生きする確率が高く、心血管疾患および身体障害を来す確率が大幅に低かった。
 健康な70~79歳の被験者3,075人(男性48%、女性52%)に対し歩行テストを行った結果、歩行速度上位25%のグループに比べ、最下位のグループでは死亡リスクが3倍高かったほか、心疾患、運動制限および障害を生じるリスクも高かった。
 この結果から著者らは、歩行テストが、高齢者の死亡リスクや疾病リスクを予測する方法として有用であり、かつ、健康状態をテストする指標として役立つとしている。

【文献】
Newman, A. B. et al.: Association of Long-Distance Corridor Walk Performance With Mortality, Cardiovascular Disease, Mobility Limitation, and Disability. JAMA. 295: 2018-2026. (2006)

 健康の維持には歩くことが大切であることを裏付けた研究である。特に、高齢者の場合、歩行能力の維持が大切であることをこの研究は示している。


2006/06/08 食料供給コスト削減を目指す委員会:農水省
 農水省は食料供給コストを縮減するため、専門家らを集めた「食料供給コスト縮減検証委員会」を6月12日に設置、具体策の検討に入ると公表した。5年で2割縮減が目標である。生産や流通分野にメスを入れ、割高とされる供給コストの圧縮を目指す。
 同委員会では農産物の価格構造の現状把握とともに、生産経費、流通経費、加工経費、小売り経費など、広範な分野にかかわる食料コスト縮減の具体策を検討する。重点課題には、生産資材費など生産経費の低減などが上がっている。
 農業の魅力が引き出され、儲かるようにするために、現在取り組まなくてはならない重要課題は、省力化栽培技術の開発であると農水省が指摘し、私たちも指摘している。にもかかわらず、前Ka-Fu当局はその課題を避けているとしか思えない計画を作成した。研究の現場にねじれ現象が起きている。


2006/06/07 農業白書:団塊世代が新規就農の主体
 平成17(2005)年度農業白書が公表された。農業の構造改革を加速して競争力を強化するため、一定規模以上の農地を持つ「担い手」と呼ばれる大規模農家を育成していく必要性を強調し、新規就農者として、「意欲と能力のある人材を、多様な形態で農業労働力として確保していくことが重要」と定年退職を迎える団塊世代に強い期待を示した。
 2003年に新規就農した人のうち50歳代の割合は21%、60歳以上は53%を占めており、定年や早期退職を選んだ中・高年層が新たな農業の担い手となっている。
 そのため、都会で暮らしてきた団塊世代で定年後に「田舎暮らし」を希望する人などを対象とする農業研修の充実や、集落営農支援といった施策を通じて、中高年層の就農を促していくとしている。
 また、食育や地産地消の推進を通じて、食料自給率(カロリーベース)を現状の40%から15年度に45%まで引き上げる。このほか、国内の農林水産物や食品について新品種などを知的財産として保護、活用する取り組みも打ち出されている。

農業白書は下記のサイトで読める。
http://www.maff.go.jp/www/press/2006/20060606press_5.html

 農業の新しい魅力をアッピールすることが必要だろう。農業の魅力が引き出され、儲かるとなれば若者の新規就農も増えるのではないか。糸井重里氏の活動が参考になると思う。


2006/06/07 民間における食育活動促進
 平成18年度「民間における食育活動促進支援事業」の採択課題が決まった。新たな視点、発想に立った食育実践活動を行うNPOや消費者団体等を支援する事業として公募を行い(平成18年5月1日から5月17日まで)、115件の応募があり、27件の提案が採択された。

採択課題一覧は下記のサイトで読める。
http://www.maff.go.jp/www/press/2006/20060602press_5b.pdf

残念ながら今回採択された課題には果物関係の課題はなかった。


2006/06/06 冬眠ホルモンの発見
 三菱化学生命科学研究所の近藤宣昭氏らの研究グループは、シマリスの血液中に存在する冬眠特異的タンパク質(HP)複合体が、冬眠をコントロールするホルモン候補因子であることを世界で初めて発見した。この冬眠特異的タンパク質複合体は、脳で冬眠を制御すると考えられている。
 冬眠は、体温が低下しても死なないように心臓などを強化し、病原体の感染や発がん物質への抵抗力が高まることが知られていた。この冬眠特異的タンパク質(HP)複合体は、人間にはないが、研究が進めば、体温を下げ脳へのダメージを減らす脳低温療法や、長期の宇宙旅行への応用などが期待されている。

【文献】
Kondo, N., et al.: Circannual Control of Hibernation by HP Complex in the Brain. Cell 125: 161-172. (2006)

SFの世界の話が身近に感じられる研究成果である。今後の研究が楽しみである。


2006/06/05 5500万年前の北極海は亜熱帯レベル
 約5500万年前の北極の海面温度は23℃で亜熱帯レベルの暖かさだったが、約4500万年前から氷におおわれ始めたと国際共同チームが発表した。
 国際共同チームに参加している国は20カ国で、北極海のロモノソフ海嶺(かいれい)と呼ばれる海底山脈を地下430メートルまで掘削し、堆積(たいせき)物を採取した。
 堆積物を解析しした結果、当時の海面温度は23℃で亜熱帯レベルの暖かさで、約4900万年前には淡水で生きる浮草が北極海をおおっていたこともわかった。
 その後、気温が下がり、氷で被われるようになったのは、氷が運んだと思われる石が見つかった約4500万年前と推定された。
 約5500万年前は大気中の二酸化炭素濃度が上がり、温暖だったと推定されていたが、今回の堆積物の解析で、直接的な証明がなされた。

【文献】
Moran, K. et al.: The Cenozoic palaeoenvironment of the Arctic Ocean. Nature 441: 601-605. (2006) [doi:10.1038/nature04800]


2006/06/04 世界最古の作物はイチジク
 約1万1000年前のヨルダンの遺跡から見つかったイチジクが、小麦などよりも約1000年古く、人類最古の作物である可能性が高いとハーバード大などの研究チームが発表した。
 これまで、イチジクの栽培は約6500年前とされていたが、新石器時代初期の遺跡で出土した9つのイチジクの実を調べたところ、野生種と異なり、虫を媒介とした受粉がなくても実を付ける変種で、実も甘くて落ちにくいものだったことが分かった。
 この変種は種を作らないため、自然のままでは繁殖できず、人間が枝を切り取って植えるなどの方法で増やす必要があるため、当時の人々がこうした変種の性質を理解し、作物として栽培していたと結論付けた。

【文献】
Kislev, M. et al.: Early Domesticated Fig in the Jordan Valley. Science 312: 1372-1374. (2006)

果物と人との関係はかなり昔から密接であったことが分かる。


2006/06/03 モデルが果物で:サマーサラダファッションショー
 アメリカ・ニューヨークで果物と野菜とで作られたドレスを披露する「サマーサラダファッションショー」が開かれと毎日デイリー・ニュースが伝えている(06/6/3)。トマトの帽子やレタスのスカートなどユニークな衣装を身にまとったモデルたちが登場した。
 ショーの司会はダイエットと運動療法で知られる俳優リチャード・シモンズさんで実物や模造品の野菜と果物で作られた衣装を次々と紹介した。収益金の一部は、米の貧困者救済団体に贈られるとのこと。

下記のサイトサラダファッションが見られる。
http://mdn.mainichi-msn.co.jp/photospecials/
graph/060603salad/12.html


こうした宣伝方法があるのだと参考になった。日本でも注目を集めるのではないか。


2006/06/02 レモネードが腎臓結石の予防に役立つ可能性
 アメリカ・ウィスコンシン大学の研究チームとデューク大学の研究チームがアメリカ泌尿器協会年会(アトランタ:06/5/24)でレモネード(レモンジュースを水で薄めた飲み物)を飲むと腎臓結石を予防できると報告した。
 ウイスコンシン大学の研究チームは、120mlのレモンジュースを含む2.5Lの飲料か960mlのレモネードを40ヶ月飲んでもらったところ尿中のクエン酸塩が多くなり量も増えたと報告した。
 デューク大の研究チームは、低クエン酸症の患者に120mlのレモンジュースを含む2Lの飲料を摂取してもらったところ12人中11人で尿中のクエン酸塩が増加したと報告した。
 腎臓結石ができやすい人にはしばしばクエン酸カリウムが処方されるが、レモンにはクエン酸が含まれているので腎臓結石の予防に役立つと考えられている。
 しかし両グループとも、レモネード療法が代替え治療になるかについては、さらに研究を続ける必要があるとしている。


2006/06/01 鳥インフルエンザ、ヒトからヒトへの感染を否定WHO
 世界保健機関(WHO)は、インドネシアの一家7人が高病原性鳥インフルエンザに感染し、うち6人が死亡した事態について、ウイルスが人間から人間に感染した可能性があると5月23日に発表したが、その後の研究から人から人への感染は確認されていないと否定し、5月31日に見解を修正公表した。
 当初、周囲に鳥インフルエンザに感染した動物がいないとされていたが、その後の調べで数羽の鶏を飼っており、最初の病状が現れる前に3羽が死んでいることが分かった。
 以上の結果から鳥インフルエンザの警戒レベルは現状のままでよいとした。

5月31日発表の鳥インフルエンザに関するWHOの見解は下記のサイトで読める。
http://www.who.int/csr/don/2006_05_31/en/index.html

鳥インフルエンザがもし人に移ると大変なこと(世界中で多数の死者が出ると予測されている)になるが、今回は感染は確認されていないようだ。