2005年12月


2005/12/31 大晦日
 風もなく暖かい大晦日である。車の数もかなり少ない。特に、トラックにはほとんどすれ違わなかった。

 今年最後のメールマガジン「果物&健康NEWS」85号は6994部発行した。科学と健康の情報誌として受け入れられつつあるのではないかと思う。
 ホームページのトップの数字は24700で、最近は1日平均70-80件のアクセスがある。Alexaのトラッフィク・ランクは80万前後なので、個人のページとしてはまずまずと思うが、もう少しアクセス数を上げたいところだ。

 研究所に上意下達のフラット制組織が導入されようとしている。この組織により研究員は二極に分けられる。下へ追いやられた研究者たちは、研究の希望も、生活の権利を奪われるだろう。また、研究に必要な「出る杭」を紡ぐ奇人変人も減るだろう。
 反対に、たくさんの外形的な点数を挙げた優等生は勝ち組となり、でかい顔をして優先席に座り、下流の研究員に命令するのだろう。
 この制度のもとでは、科学や技術を飛躍的に前進させる画期的な成果はほとんど出ないだろう。新しい時代を切り開くエポックメーキングには反逆の思想があるからだ。また、例えそうした成果を上げても勝ち組にはなれない。なぜなら、そうした反逆者を評価するシステムにはなっていないからだ。


2005/12/31 今年の科学の画期的進歩
 アメリカ科学誌サイエンスは、今年の科学の画期的進歩として「進化研究」を選んだ。進化研究は、国際チームによるチンパンジーのゲノム(全遺伝情報)解読や、ヒト遺伝子の個性を探る大規模共同研究の成果などから、進展著しい分野としてトップになった。

上記サイエンスの記事は下記サイトにある。
http://www.sciencemag.org/cgi/content/full/310/5756/1878

また、次点として9つ研究成果を選んだ。その記事は下記のサイトで読める。
http://www.sciencemag.org/cgi/content/full/310/5756/1880a


2005/12/30 「ヘッドライト・テールライト」を聞きながら
 中島みゆきの「ヘッドライト・テールライト」を聞きながら今年を振り返っている。

  語り継ぐ 人もなく
  吹きすさぶ 風の中へ
  紛れ散らばる 星の名は
  忘れられても ‥‥

 虚しく、はかない想いが漂う。燃えるような理想は衰退し、創造力は軽視され、借り物の感覚的「原理」や「組織体制」が導入され、科学の客観性が軽んじられる。

 しかし 旅はまだ終わらない


2005/12/30 食事からのマグネシウムの摂取で骨密度が高まる
 2,038人の男女(70-79歳)を対象に骨密度と食事との関係を調査したところ、白人の女性と男性では、マグネシウムの摂取量が多いとこと密度が高まることが分かった。一日100mg多く摂取すると骨密度が1%高くなる。しかし、黒人ではこの関係は見いだせなかった。

【文献】
Ryder, K.M., et al.: Magnesium Intake from Food and Supplements Is Associated with Bone Mineral Density in Healthy Older White Subjects. J. Amer. Geriatrics Soc. 53: 1875-1880. (2005) [doi: 10.1111/j.1532-5415.2005.53561.x]


2005/12/26 物忘れとホモシステイン
 年配のイギリス人の記憶喪失のリスクは血液中のホモシステインの増加と葉酸の減少と関係していることがオックスフォード大学の調べで分かった。
 すでに、ホモシステインは冠状動脈性心臓病、脳卒中などのリスクを上げることが知られており、血液の中のホモシステインのレベルは食事の内容と遺伝に強く影響される。一方、葉酸とビタミンB群は、ホモシステインのレベルを下げる。
 2,100人(65~67歳)以上を対象に1992-1993年、及びその6年後に血液中のホモシステイン、葉酸、ビタミンB12と記憶力を測定した。その結果、標準テストで記憶障害が認められたヒトはホモシステインレベルが高く、葉酸レベルが低いことが分かった。

【文献】
Nurk, A., et al.: Plasma total homocysteine and memory in the elderly: The Hordaland Homocysteine study Ann. Neurology. 58: 847-857. (Published Online: 27 Oct 2005) [DOI: 10.1002/ana.20645]


2005/12/24-25 サンタさん北極に帰る
12/25 18:00 サンタさんはハワイに到着した。このあと、眠っていなかった子供のところをもう一度回ってプレゼントを届けたあと北極に帰るとのこと。メリークリスマス。
16:30 サンタさんをのせたそりは、ヨーロッパを回り終わり、夏の南アメリカへ行き、今はカナダを移動中。
7:00 現在朝7時、太陽が東の空に出てきた。少し雲があるがまずまずの天気である。日本はすでに25日クリスマスであるが、イタリアは今が夜中。サンタさんはローマを移動中。これから大西洋を渡って南北アメリカへと移動する。
12/24 23:00 サンタは東京上空を通過中、新幹線より100倍速いスピードで移動しているとのこと。
19:15 ニュージーランドの北島から南島へ移動中。
18:17 サンタさん北極から南へ
 北極に現れたサンタさんはベーリング海峡を南下している。ニュージーランドへ向かうのか。

サンタさん発見情報は下記のサイトで。
http://www.noradsanta.org/jp/tracking.php


2005/12/24 サンタはいる
 今日はクリスマスイブ。子供たちはサンタクロースが来るのを待ちかねているだろうか。小学生になるとサンタさんはいるか、いないかの議論が始まる。4年生では、いる派が優勢で、5年生になると劣勢になるように思うが、最近はもっと早いのだろうか。
 いる派の子供たちも、町で見かける白いひげをつけて赤い服を着ているサンタが本物のサンタではないことを知っている。また、いない派の子供たちにサンタは両親だといわれているので、いる派の子供たちは、ほしいものを絶対、両親にはいわないと誓っている。
 それでも、クリスマスの朝、ほしかったプレゼントが枕元にちゃんとあるではないか。父さんや母さんはほしいものを知らないはずだ。やっぱりサンタさんはいるのだ。それ以外考えられないではないか。
 次第に、サンタがいる派が少数派となってしまうのだが、このことで少数派がいじめられたということは聞かない。何故だろう。確かに、プレゼントをくれたのはサンタではなく両親かも知れない。でも、それがサンタクロースがいない証拠になるのだろうか。
 やがてサンタはいない派も知ることになる。サンタとは、両親の子供たちに対する無償の愛や優しさのことではないのかと。だから、サンタは見えなくてもいる。

 クリスマスに合わせて、北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)が「サンタ追跡プログラム」のウェブ・サイトを開設した。いよいよ今夜追跡が始まる。昨年は日本時間で夕方5時頃、北極上空でサンタさんが発見された。

追跡サイトは下記。
http://www.noradsanta.org/jp/default.php



2005/12/24 日本の人口が減少
 厚生労働省が2005年人口動態統計の推計値を公表した。出生数は過去最低の106万7000人で、統計を開始した1899年以来初めて死亡数(107万7000人)を下回った。減少幅は1万人で、推計値段階ではあるが、日本は「人口減少社会」に突入したとみられる。厚労省の国立社会保障・人口問題研究所は日本の人口が2007年から減少すると予測していたが、これが2年早まることになりそうだ。
 合計特殊出生率(一人の女性が一生に産む子どもの平均数に相当)は2004年に過去最低の1.28台を記録したが、05年はさらに下回る見通し。国立社会保障・人口問題研究所が2002年に公表した人口推計(中位)の出生率は2007年に1.306で底を打ち、その後は徐々に回復するとみていたが、実態はそれよりも少ない。
 結婚件数は前年比7000組減の71万3000組、離婚件数も前年比9000組減の26万2000組。離婚件数の減少は2003年以降3年連続。

平成17年人口動態統計の年間推計のサイトは下記
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/suikei05/index.html


2005/12/23 勝利に優るもの
 朝起きて外を見ると南西の空に月が出ていた。月の動きを調べると昨日の午後10時34分に出て今日の11時23分に沈むとあった。昨日と違い風も吹いていないので自転車での通勤が楽であった。23日は、東京タワー(1958(昭和33)年)が正式な営業を開始した日である。
 午前中、NHK BS1のドキュメント番組「勝利に優るもの~延長18回 松山商-三沢」をみた。その日(1969年(昭和44年)8月18日)のテレビ画面がそのまま写っていた場面があったが、これがNHKの底力なのかも知れない。
 勝利に優るものを実感した番組であった。三沢高校の太田投手の延長18回は記憶にあったが、相手が松山商業であったことはすっかり忘れていた。勝者と敗者とに分かれるのは試合の直後だけなのだろう。それがすぎても残るもの、それが勝利に優るものなのだと思う。


2005/12/23 鳥インフルエンザ治療薬タミフルに耐性菌
 人間への感染拡大が懸念されている鳥インフルエンザについて、治療薬タミフル(一般名オセルタミビル)が効かない耐性ウイルスが発見された。
 最初のタミフル耐性ウイルスについての報告は、東大医科学研究所の河岡義裕教授らで、タミフル服用から4日目に死亡したベトナムの14歳少女から発見された(文献1)。
 次いで、イギリス・オックスフォード大学などの研究チームが、H5N1型の鳥インフルエンザに感染したベトナム人患者8人について調べた。8人は感染発覚後にタミフルの投与を受けたが、4人が死亡した。死亡した4人のうち13歳少女と18歳少女の2人から、タミフルに耐性のあるウイルスが検出された(文献2)。
 13歳少女の場合は発症2日目に入院しすぐにタミフル治療を開始したが、6日後に死亡した。投薬効果が最も高いとされる感染初期からタミフルの治療を受けていたにもかかわらず、治療効果があがらなかったことが注目されている。
 一方で、回復した4人のうち3人については、タミフル投与によるウイルス量の減少が確認された。 タミフルは効果的な治療薬であるがそれだけでは完全ではないようだ。

【文献】
1) Le, Q.M., et al.: Avian flu: Isolation of drug-resistant H5N1 virus. Nature 437: 1108-1108. (2005)
2) de Jong, M.D., et al.: Oseltamivir Resistance during Treatment of Influenza A (H5N1) Infection. N. Engl. J. Med. 353:2667-2672. (2005)


2005/12/22 今年一番の北風
 今日は冬至。風が強い。朝も吹いていたけれど、午後の風はとても強く、研究棟裏の自転車置き場の自転車が軒並み倒されている。起こしてもまた倒されるので今日はそのままにしておく。北の方を見ると薄茶色に見える。恐らく、風に吹き飛ばされた砂のためではないかと思う。今年一番の北風である。
 次回のメルマガにはブドウの収穫期と気候との関係を取り上げる予定で、その資料を読んでいる。中心は科学雑誌ネーチャーに報告された論文で、1370年からのブドウの収穫期から推定した気温の推移である。1680年代は今より暑かったようだ。


2005/12/22 ガン促進遺伝子が、ガン転移を抑制
 膵臓ガンや肺ガンなどを引き起こす遺伝子「N-ras」に、ガンを悪性化させたり、転移を抑える働きもあることが発見された。
 N-ras遺伝子は、突然変異が起きたり、「Rb」と呼ばれるガンを抑制する遺伝子がなくなると、さまざまなガンを引き起こすことが知られていた。
 そこで、マウスの体に二つずつあるN-rasとRbの遺伝子を一つ、あるいは二つ欠損させ、体のどの部位にどんなガンができるかを調べた。
 Rbだけを二つとも欠損したマウスは脳下垂体に悪性のガンができたが、Rbに加えてN-rasもすべて欠損すると、ガンは良性腫瘍になった。しかし、同じマウスで、のどの甲状腺にできたガンの場合は、Rbが二つ、N-rasが一つ欠損すると良性腫瘍ができ、さらにN-rasもすべてなくなると、他の臓器に転移を起こす悪性のガンに変化した。
 そのため、N-rasは単純なガン促進遺伝子ではなく、組織によって正反対の働きもすることが分かった。N-rasの機能を制御すればより効果的な、新しいガン治療開発の手がかりとなる可能性があるとしている。


【文献】
Takahashi, C., et al.: Nras loss induces metastatic conversion of Rb1-deficient neuroendocrine thyroid tumor. Nature Genetics (Published online: 20 December 2005) [doi: 10.1038/ng1703]


2005/12/21 少ない肥料でもイネの収量が増加
 葉がほぼ垂直に育つために、太陽のエネルギーが下の葉までまんべんなく及ぶので光合成の効率が良くなるため、肥料を増やさなくても収量が増加するイネの仕組みが解明されたと報告された。
 葉が垂直のため、間隔を狭めて植えるのにも適していることから、田植えの必要のない直播(じかまき)による省力化で、生産者の高齢化対策としても期待できる成果である。
 イネ(日本晴)の突然変異体の中から、葉が直立するイネの遺伝子を解析した結果、葉が直立したイネでは、植物ホルモンの一種であるブラシノステロイドを作る酵素のうち、同じ働きをする二つの酵素の一方が機能しなくなっていることを突き止めた。
 通常の2倍の密度で栽培したところ、普通の日本晴は1ヘクタール当たりの推定収量が5.31tだったのに対し、このイネは6.19tで、植え付け間隔を狭めた栽培にも適していることを実証した。

【文献】
Sakamoto, T., et al.: Erect leaves caused by brassinosteroid deficiency increase biomass production and grain yield in rice. Nature Biotech. (online: 20 December 2005) [doi: 10.1038/nbt1173]


2005/12/20 一人こんにゃく問答
 昨日より寒さがゆるんでいる。青く澄んだ空で風もなく穏やかな日である。
 今日は霧笛記念日とのことである。1879年(明治12年)12月20日、霧深い津軽海峡にある青森県尻屋崎灯台に、日本で初めて霧笛が設置されたのを記念して定められた。航路標識の中で、視界が悪いとき、船舶に位置を知らせるのが霧信号所(灯台)が鳴らす霧笛である。しかし、最近は電波標識の整備に伴い霧笛を鳴らす灯台が少なくなっている。
 霧笛が、船舶の安全を示す道標だとしたら、研究基本計画や研究組織は、研究者の道標だろう。ところがどうも研究管理責任者は、自分ひとりでこんにゃく問答をしているらしい。
 研究員や職員に組織改変について説明があった。研究管理責任者曰く、「果物の輸出など全体からみればたいした問題ではない」そうである。ところが同じ管理者が作った研究基本計画では、「果物輸出のための研究を推進する」そうな。また、研究管理責任者曰く、「消費者のための研究が必要である」そうである。ところが、同じ管理者が作った研究基本計画では、「消費者の望む果物を安くするための省力化技術の開発は行わない」そうな。
 落語で、こんにゃく問答といえば、お互いに話が通じているつもりだったのに、全然違うことを了解していたという話だが、「一人こんにゃく問答とはこれいかに」である。こんにゃく屋の六兵衛と旅の僧とのうわべは噛み合っているが、じつはちぐはぐな問答をしている落語噺は面白おかしいが、知性や信念がとんちんかんでは笑えない。船舶なら座礁し、沈没してしまうだろう。


2005/12/20 高血圧予防のため若くても果物など植物性食品摂取
 果物など植物性食品の摂取は高血圧のリスクを減少させ、肉の摂取はリスクを高めるとアメリカ・ミネソタ大学の研究グループが発表した。
 若い男女(18~30歳)4304人を対象に調査した結果、植物性食品の摂取量に従って5つのグループに分けて解析したところ、摂取量が一番少ないグループに比較して最も多いグループは高血圧のリスクが36%低かった。さらに、植物性食品のサブグループの分析では、全穀粒、果物、ナッツが有意にリスクを下げることが分かった。一方、赤肉と加工肉の間には正の相関が認められた。
 以上の結果から、研究者は、果物など植物性食品を多く摂取し、赤肉と加工肉を摂取を減らせば高血圧の発症を防ぐことができると結論づけている。

【文献】
Steffen, L.M., et al.: Associations of plant food, dairy product, and meat intakes with 15-y incidence of elevated blood pressure in young black and white adults: the Coronary Artery Risk Development in Young Adults (CARDIA) Study Am. J. Clin. Nutr. 82: 1169-1177. (2005)


2005/12/19 厳冬の中で
 寒い日が続いている。飛行機や新幹線が遅れているという。研究室も暖房が止まるととたんに寒くなる。
 最近の10年の気温の変化から、気象庁は、10月末に今年を暖冬と予想していた。ところが、東京では11日夜に初雪が降り、これは平年より22日も早く、昨年より18日早かった。各地でも12月としては記録的な雪が降っている。また、高知県室戸岬では、18日に-2.1℃まで下がり、12月としては1920年の-2.0℃を下回り記録を更新した。島原市などでも12月の最低気温の記録を更新したという。
 この想定外の寒さは今の組織改悪を映しているようだ。研究員や職員をむちを打つような上意下達の研究組織体制が導入されようとしている。でも、朝の来ない夜はないように、どんに厳しい冬でも春はやってくる。どんな春が、いつやってくるか分からないがその日を待とう。必ず研究者が、使命感に燃えて研究に打ち込め、農業の発展を支えることを喜びとするような春がやってくる。


2005/12/19 観測史上2番目の暑さ
 国連の世界気象機関(WMO: World Meteorological Organization)は、2005年は、観測史上2番目に暑い年だったとする報告書「2005年の地球気候の現状に関する声明」を発表した。
 報告書によると、これまでのところ2005年は、陸地や海を含めた地球表面の平均気温が、観測記録の残る1861年以来2番目に高く、比較の基準としている1961~90年の平均(14度)を0.48度上回った。特に北半球は、同平均を0.65度上回る史上最高を記録した。

プレスリリースは下記のサイトで読める。
http://www.wmo.ch/news/news.html
プレスリリースのワード版は下記のサイト。
http://www.wmo.int/web/Press/Press743_E1.doc


2005/12/18 マヤ文明:最古の壁画を発見
 ナショナルジオグラフィック協会(本部・ワシントン)は、約2000年前に描かれたマヤ文明最古の壁画(王権を授けられるトウモロコシの神々)を公表した。
 中米グアテマラ・サンバルトロの密林に残された高さ25メートルのピラミッド神殿かり発掘が進められていた。見つかった壁画は、大きさ縦1メートル、幅9メートルで、現在も鮮やかな赤い色彩が残る。調査に当たったウィリアム・サターノ研究員は「宇宙の木にささげられた七面鳥の血」と解説し、マヤの世界観を示す資料の一つとして注目している。

マヤ最古の壁画が初期の王たちの存在を実証したナショナルジオグラフィックの日本語サイトは下記。
http://nng.nikkeibp.co.jp/nng/topics/n20051213_1.shtml


2005/12/17 WHOとFAOは果物と野菜の摂取促進を推奨
 世界保健機関(WHO)と国連食料農業機関(FAO)は、果物と野菜の摂取を促進する行動計画を共同で実施している。
 WHOの非伝染病予防、健康促進ディレクターのPekka Puska博士は、「果実と野菜の十分な摂取は、多くの病気を予防し、健康を促進するが、世界のかなりの地域で人々は少ししか消費していない。」と述べている。WHOは、果物と野菜の摂取を増やせば、心血管疾患、2型糖尿病、肥満、いくつかのガンを予防できるとしている。

【文献】
Eaton, L.: WHO launches initiative to encourage eating fruit and vegetables. BMJ. 327:1125 (2003) [doi: 10.1136/bmj.327.7424.1125-a]


2005/12/16 卵を抱える雌イカ
 アメリカ・カリフォルニア州のモンタレー湾水族館研究所が、腕(脚)の間に2000から3000個の卵を抱えるテカギイカの雌を撮影することに成功したと発表した。イカ類は海底に卵を産み落とすと考えられており、卵を抱き続ける種類が撮影されることは極めて珍しいという。
 遠隔操作できる潜水探査機を水深1500~2500メートルに沈め、卵を抱いているテカギイカ5匹を撮影、2匹を捕獲した。撮影された雌は体長約14.5センチ。卵の塊を抱き、内部のすき間に口から海水を流し込んでいた。深海では少ない酸素を卵に与えるためと考えられるという。また、卵を抱いた雌は動きが鈍く、研究者は「子育てには貢献しているものの、クジラやアザラシの餌食になりやすいようだ」と推測している。

【文献】
Seibel, B.A., et al.: Post-spawning egg care by a squid. Nature 438: 929 (15 December 2005) [doi:10.1038/438929a]

卵を抱いたテカギイカの写真は下記のサイトで見られる。
http://www.nature.com/nature/journal/v438/
n7070/fig_tab/438929a_F1.html



2005/12/15 夫婦間の不和は健康にも良くない
 夫婦間の不和によるストレスは、傷害回復に関係した血液中のタンパク質(サイトカイン)が元に戻るのが遅くなるとアメリカ・オハイオ州立大の研究チームが発表した。
 研究は、オハイオ州に住む22歳から77歳の42組の夫婦を対象に、真空ポンプを被験者の皮膚に押しつけふくれさせ、その傷害回復タンパク質サイトカインを測定した。1度目は普通に、2度目は互いの意見が合わない問題を議論して測定した。その結果、カップルが口論すると、口論していなかった時より回復が一貫して遅くなることが分かった。不和度が高いカップルは低いカップルに比べて回復度が60%であった。
 夫婦間の不和によるストレスは、傷害回復タンパク質であるサイトカインレベルを下げること、また、サイトカインは、心血管疾患、骨粗しょう症、関節炎など様々な病気と関係していることから、夫婦間の不和は健康に良くないと結論づけている。

【文献】
Janice, K., et al.: Hostile Marital Interactions, Proinflammatory Cytokine Production, and Wound Healing. Arch Gen Psychiatry. 62: 1377-1384. (2005)


2005/12/14 大動脈瘤の原因たんぱく質を究明
 破裂すると大出血して多くの患者が死亡する大動脈瘤の原因となる細胞内のたんぱく質の異常を、山口大学の研究グループが突き止めた。動物実験でこのたんぱく質の働きを抑える薬を与えると大動脈瘤が縮小したという。
 腹、胸部などにできる大動脈瘤は、血管の壁が弱くなり、血圧に押されて風船のように膨らむ病気である。コラーゲンなど血管壁構成物質が分解されやすくなったり、血管壁構成物質を合成する能力が落ちると血管壁が弱くなると考えられている。
 研究グループは、その原因が「JNK」というたんぱく質の働きが異常に高まることにあると考え、大動脈瘤を持ったマウスにJNKの働きを抑える薬を与えたところ、血管壁をつくり直す能力が回復し、大動脈瘤が小さくなった。

【文献】
Yoshimura, K., et al.: Regression of abdominal aortic aneurysm by inhibition of c-Jun N-terminal kinase. Nature Medicine. online 27 Nov. 2005 [doi:10.1038/nm1335]


2005/12/13 上意下達では研究が衰退する
 研究棟の北側の桜の木の葉はすべて落ちてしまった。寒い日が続いている。
 研究の進展は、自由闊達な議論をとおした知識の交流が不可欠である。一方、自由闊達な議論が封じ込められると、緩慢ではあるが、確実に衰退の運命をたどることになる。そのため、研究に対する自分の意思をきちっと持つということが、私は科学研究が栄えていくための絶対の必要条件と思う。
 研究機関へのフラット制の導入で画策されているのは上意下達である。上の者の命令や意志を下位の者に通じさせるための組織の弊害は、自由な議論がなくなることにある。その結果導かれるのは、自らの研究の進展を自らの手で決定しなくなることである。
 こうした組織の研究者は、科学の精神や研究の目的意識を冷笑、ないがしろにするようになる。その結果、農業の現場を嫌うようになり、本来の研究者の居場所から離れ、根なし草のようになる。
 具体的にいうと、こうした組織の研究者は、いつも周りを見て、上司の顔をうかがいながら、ちまちまとした研究で点数を稼ぐようになってしまうだろう。


2005/12/13 カルシウムは、錠剤より食事から摂取する方が効果的
 カルシウムを摂取するなら錠剤から摂取するより食事から摂取した方がよいと報告された。1日当たりのカルシウムの推奨量900mgより低い量しか摂取していない10~12歳の195人の健康な少女を4つのグループに分け調査した(錠剤から1000mg摂取したグループ、1000mgのカルシウムと200IUビタミンDの錠剤を摂取したグループ、低脂肪チーズ(1000mgのカルシウム含有)、偽薬の錠剤グループ)。その結果、チーズを摂取したグループは他のグループより骨への利用率が統計的に有意に高いことが分かった。
 また、同時に、必要以上にカルシウムを摂取しても、より骨が丈夫になるわけではないことも明らかになった。

【文献】
Cheng, S., et al.: Effects of calcium, dairy product, and vitamin D supplementation on bone mass accrual and body composition in 10-12-y-old girls: a 2-y randomized trial. Am. J. Clin. Nutr. 82: 1115-1126. (2005)


2005/12/12 イヌのゲノム解読
 アメリカ・国立ヒトゲノム研究所などは、雌のボクサー犬のゲノム(遺伝情報全体)の高精度の解読が完了したと発表した。
 イヌのゲノム配列、比較解析などは、イヌの進化に関する重要な情報をもたらすとともに、現存の系統が形態的、生理的、行動的形質の表現型に非常に大きな多様性を示すため、非常に興味深い研究対象である。
 Lindblad-Tohらは、イヌゲノムの高品質概要配列と、系統間のいくつかの遺伝的差異を明らかにするとともに、イヌゲノムとヒトやげっ歯類のそれとの比較解析を行い、遺伝子やゲノムの進化についての全体的な展望を明らかにした。
 さらに、今回のイヌのゲノムを構成する塩基24億個の解読によって、がんや心臓病、糖尿病など様々な病気に関連する遺伝子の解明が進むと期待される。また、イヌのゲノム情報とヒトのゲノム情報を組み合わせることで、人間の病気の遺伝的原因の解明にもつながると期待されているという。
 ゲノム解読に選ばれたのは、「ターシャ」という名前の雌のボクサー犬、そのため、Y染色体の解析は行われていない。犬種ごとの違いについては、ビーグルなど9犬種と違いを比べたところ、塩基約24億個の中で違いは塩基約800~900個につき1個で、ヒトの個人差と同程度の違いだった。

【文献】
Lindblad-Toh, K. et al.: Genome sequence, comparative analysis and haplotype structure of the domestic dog. Nature 438: 803-819 (2005) [doi:10.1038/nature04338]

全文は下記のサイトで読める。
http://www.nature.com/nature/journal/v438/
n7069/full/nature04338.html



2005/12/11 アルツハイマー病は糖尿病と似た病気?
 アルツハイマー病の発生機序の解明と治療法の開発について、アメリカ・ブラウン大学のMonteらは、インスリンが膵臓だけではなく脳内でも産生され、アルツハイマー病患者では脳内のインスリン産生能が障害されていると発表した。
 ラットを用いた実験で脳のいくつかの領域でインスリンが産生されているのを発見し、またインスリンの産生低下による脳神経細胞の機能低下を認めた。さらにアルツハイマー病で死亡した患者の脳組織を検討した結果、インスリン産生量の著しい低下と、インスリン受容体の減少を発見した。
 Monteらは、インスリンは脳細胞機能の維持にきわめて重要であり、不足するかインスリン応答性が低下すると、ニューロンの機能が阻害されてニューロン死を引き起こすと述べている。
 そのため、脳内インスリンの代替物質の投与や、インスリン受容体の再活性化によるアルツハイマー病の治療法につながるとしている。

【文献】
Steen, E., et al.: Impaired insulin and insulin-like growth factor expression and signaling mechanisms in Alzheimer's disease --- is this type 3 diabetes? J. Alzheimer's Disease. 7: 63-80. (2005)


2005/12/10 三陸鉄道の干し柿
 雲ひとつないよい天気である。風は少しあるが暖かい。昨日の朝は一面白くなっていたが、今日はそれもなかった。三陸鉄道の三陸駅には干し柿(コロ柿)がつるされているとニュースで伝えていた。ホームは日陰で風通しがいいので干し柿を作るには絶好の場所とのことである。鉄道に愛着を持つ地元の有志が毎年つるし、乗客に自由にもいで食べてもらっているのだという。

三陸駅の干し柿は下記のサイトで見られる。
http://www.sanrikutetudou.com/news/031210/korogaki.html


2005/12/10 授乳によって母親の糖尿病発症リスクが低下
 アメリカで行われた調査から子供を母乳で育てた母親は2型糖尿病の発症リスクが低いことが分かった。今までに、母乳で育てた子供は小児疾患の発症率が低く、調合乳で育てた小児よりもぜい肉が付きにくいことが分かっていたが、母親にもよい影響が出ることも今回の研究から明らかとなった。
 今回の研究は、授乳が母体の糖尿病リスクに及ぼす影響について調べた。看護師の健康調査(Nurses' Health StudyおよびNurses' Health Study II)」の実施期間に出産を経験した女性15万例以上のデータをもとに検討を行った。
 このうち2型糖尿病と診断されたのは6000例以上で、2型糖尿病発症のリスクが授乳期間が1年増えるごとに15%低下した。何故そうなるのかは分からないが、授乳が血糖値の均衡を維持する役割を果たしているのではないかと考えられている。
 ただ、この結果の解釈に対して、授乳期間が長い女性は健康に対する意識が高く、それが結果的に糖尿病の発症リスクの低下につながっているとの見方もある。

【文献】
Stuebe, A.M., et al.: Duration of Lactation and Incidence of Type 2 Diabetes. JAMA. 294: 2601-2610. (2005)


2005/12/09 高学歴者ほどパーキンソン病の発症リスクが高い
 高学歴であるほどパーキンソン病の発症リスクが高く、職業別にみると医師は最もリスクが高いグループに分類されるとする研究結果が公表された。
 アメリカ・ミネソタ州オルムステッド(Olmsted)地区に住むパーキンソン病患者の教育レベルと職業を、一般集団におけるものと比較する研究を実施した。
 ロチェスター疫学プロジェクト(Rochester Epidemiology Project)の医療記録からデータを収集し、1976~1995年にパーキンソン病の発症をみた同地区の居住者を洗い出した。これに基づいて、電話による質問や医療記録の見直しを実施し、学歴および職業を確認した。
 その結果、9年以上教育を受けている人はパーキンソン病の発症リスクが高く、年数が長くなるにつれてリスクは増大した。医師では発症リスクが有意に高いことがわかった。建設作業員や鉱員、油井作業員、製造業作業員、金属工、技師など肉体労働の度合いが高いと思われる職種は、リスクが有意に低かった。

【文献】
Frigerio, R. : Education and occupations preceding Parkinson disease: A population-based case-control study. Neurology 65: 1575-1583. (2005)


2005/12/08 インターネット掲示板は糖尿病の治療に役立つ
 アメリカ・ボストンのジョスリン糖尿病センターの研究からインターネット掲示板は糖尿病の治療に有効であることが分かった。
 インターネット掲示板(ジョスリンインターネットフォーラム)では、糖尿病患者やその家族の糖尿病関連の質問やコメントを掲載するとともに、医師、栄養士、および心理学者を含む専門家のチームのアドバイスを載せている。
 このインターネット掲示板を6年間で33万人以上が利用しいるが、1999年と2004年の利用者を対象に満足度に対するアンケート調査を行った。その結果、75%の人が糖尿病の治療に役立つと回答した。また、71%の人は、この掲示板によって治療への希望を感じたと回答した。
 以上の結果から、研究者は、インターネット掲示板は糖尿病の治療に有効であると結論づけている。

【文献】
Zrebiec, J.F.: Internet Communities: Do They Improve Coping With Diabetes? Diabetes Educator 31: 825-836. (2005) [DOI: 10.1177/0145721705282162]


2005/12/07 研究と自由な言論
 暦の上では大雪。朝は、霜が降りて大地は白くなっている。北海道や東北地方の日本海側は雪が積もっているとニュースでいっていた。研究所は暖房の入っている5時頃までは暖かいが、切れると急に寒くなる。
 優れた研究は自立した研究者から生まれるが、自立した研究者が存分に研究を行うためには研究環境が保証されている必要がある。研究環境には、研究費や施設だけでなく、自由な言論も重要な要素であるが意外と忘れられている。しかし、研究所の権力者が強権によって研究者の自由な言論を押さえつけると、いずれその強権の故にその研究所は衰退することになる。
 秘密裏に研究組織を作り上げ、「さぁ何かを言え」では自由な言論が保証されているとは言い難い。むしろ、権力者による強権が発動されたと見るのが常識的だろう。


2005/12/07 未知の肉食動物、インドネシアで発見
 世界自然保護基金(WWF)は、インドネシア・カリマンタン(ボルネオ)島の熱帯雨林で、ネコほどの大きさの「未知の肉食動物」を発見したと発表した。この未知の肉食動物は、全くの新種か、これまで知られていなかったテンかオオジャコウネコの仲間ではないかとしている。
 この未知の動物は、カヤン・メンタラン国立公園にWWFが設置したカメラが撮影した。体毛の濃い赤茶色で、ふさふさした細長い尾が特徴的。耳は小さく、後足が発達している。
 インドネシア政府は、この動物が発見された地域を含むカリマンタン島中心部の熱帯雨林に、世界最大のアブラヤシ栽培林を作ると発表したが、WWFはこの栽培計画によってカリマンタン島の生態系が損なわれ、この動物の正体も不明なままで終わってしまうと警告し、今回の発表に踏み切ったと説明している。またWWFは、アブラヤシの大規模栽培はカリマンタン島中心部の土壌にも地形にも適していないと警告している。

下記のWWFのサイトで未知の肉食動物の写真を見ることができる。
http://panda.org/news_facts/newsroom/index.cfm?uNewsID=52960


2005/12/06 クレディビリティが失われた1年
 少し早いが研究部の忘年会があった。美味しい中華料理で楽しいひとときであった。
 今年を振り返ってみるとクレディビリティが失われた年であったように思う。テーマ別フラット制の提案のやり方などはその最たるもので信義、信頼の軽視には幻滅している。どのような世界にも破ってはならない仁義があるのではないか。果樹農業の発展のためにと思い研究を続けてきた。そしてその研究組織や環境などは信頼に足るものと考えていたが、実はそうではなくまったくの幻想だったということなのだろう。


2005/12/06 どうなる食育推進基本計画の数値目標
 食育基本法の理念を実践に移すための食育推進基本計画づくりの検討会が行われている。栄養教諭の役割や学校での農業体験の重要性の明記など積極的な意見が上がっているという。来年3月までにまとめる基本計画案に向けて、欠食率の低減や給食での地場産物の使用割合といった、具体的な数値目標をどれだけ盛り込めるかが焦点になる。

第2回食育推進基本計画検討会の資料は下記のサイト
http://www8.cao.go.jp/syokuiku/suisin/2nd/sidai2.html

食育に関連する主な既存の指標は下記のサイト
http://www8.cao.go.jp/syokuiku/suisin/2nd/ronten_bessi2.html


2005/12/05 コウモリがエボラ出血熱を媒介か
 致死率が90%にも達する感染症のエボラ出血熱は、アフリカで食用にもされるコウモリが広めている可能性があると発表された。ガボンなどの国際チームが、症状が全くない3種類のオオコウモリからエボラウイルスの遺伝子や抗体を検出した。
 エボラウイルスの自然宿主や感染ルートは謎だったため、有効な予防策が取れなかったが、コウモリが感染源なら、食用を避けることで人への直接感染を大幅に減らせる可能性がある。
 チームは2001年以降のガボンとコンゴ共和国での流行期間中に、森林で野生のコウモリや鳥類、小動物など1000匹余りを捕獲してウイルス感染の有無を詳しく調べた結果分かった。

【文献】
Eric M. Leroy, E.M., et al.: Fruit bats as reservoirs of Ebola virus. Nature 438: 575-576. (2005) [doi:10.1038/438575a]


2005/12/04 時雨降る
 自転車でいつもの道を走っていたら、3~4頭のがっしりとしたイヌに出会った。珍しいなぁと思っていたら、後から猟銃を抱え、オレンジ色のジャケット着た中年男性が数人現れた。いつも通っている道であるがハンターにあったのは初めてである。こんな近郊で危なくないのだろうか。
 朝は曇っていたが、昼頃から時雨の雨に変わった。寒いので今までより少し厚いコートに着替えた。


2005/12/04 動物療法で心不全患者の心肺機能が改善
 動物療法が心不全を来す入院患者の肺機能を改善し、神経内分泌量を抑えて、急性かつ重症な症状に対する不安を緩和する補助療法として有効であることを、アメリカ・カルフォルニア大学のチームがアメリカ心臓協会の年次集会(2005.11.13-16)で発表した。
 今回、医療センターに入院している心不全患者計76例(18~80歳)を対象に、イヌを連れたボランティアの訪問を受けるグループ(26例)、ボランティアのみの訪問を受けるグループ(25例)、対照群として訪問を受けないグループ(25例)の3つのグループにについて評価した。訪問はいずれも12分間とし、イヌはいすの横に座らせるか、患者の隣に約60cm離れてベッドに横たわらせた。患者はイヌをなでたり話しかけたりした。
 イヌ同伴の訪問を受けたグループは、不安スコアが24%低下したのに対して、ボランティアのみのグループはわずか10%の低下であった。一方、訪問なしの対照群はスコアに何ら変化は認められなかった。
 ストレスホルモンであるエピネフリン値は、イヌ同伴のグループが平均17%低下し改善がみられたのに対して、ボランティアのみのグループが2%の低下、一方、対照群は7%増大した。このほか、肺機能に関連する左心房圧値、肺動脈収縮圧値においても、イヌ同伴のグループには改善が認められた。


2005/12/03 農学研究にフラット制は適さない
 夕方6時をすぎると、外の雰囲気がひんやりとしてくる。雲がなく夜空には星が瞬いている。研究所の建物の北に植えられているカシの木からドングリが落ちている。
 人の生活・命と関係のある農学研究は、医学研究や栄養学研究などと同様に、必ず対応しなくてはならない分野は多岐にわたっており、その点が工学研究と異なっている。工学研究は、ある分野だけに集中することは可能であるが、医学・農学研究は、例えその時代に注目が集まっていなくともやらなくてはいけない分野がある。端的な例を上げれば小児科は人気がないから研究をやめるなどできない。一方、自転車は人気がないから研究をやめるとしても問題は少ない。
 また、この違いは研究対象の違いにもいえる。生物を対象とした研究か、そうでないかである。生物を対象としないならある一定期間研究をやめても、必要があれば新たに研究を立ち上げるのが容易である。しかし、生物を対象にした研究はそうはいかない。果樹なら新しい研究をするためには、材料をつくるのに少なくとも3年以上かかる。そして、ただ樹を植えればよいのではなく、高度な栽培技術がなくては話にならない。
 そのため、研究テーマを絞ったフラット制は、人の生活・命とかかわる農学研究には適さない。


2005/12/03 始祖鳥は鳥類ではなく恐竜?
 長く最古の鳥とされてきた始祖鳥(Archaeopteryx)が、鳥ではなく恐竜だった可能性があることをドイツと米国のチームが発表した。保存状態のよい化石を調べたところ、脚の親指が恐竜と同じ前向きだった。従来は、現代の鳥類と同じように、枝にとまりやすいように後ろ向きになっていたと考えられており、鳥類に分類する最大の根拠とされていた。
 この化石はドイツの約1億5000万年前(ジュラ紀後期)の地層から見つかった10体目の始祖鳥で、羽毛や尾羽の痕跡や骨格の大部分が残っており、従来の化石では不明確だった脚の構造が確認できた。
 脚の親指はドロマエオサウルス類などの羽毛を持つ獣脚類恐竜と同様に前向きに伸びていた。さらに人さし指も獣脚類恐竜同様、上下に大きく動かせる構造と分かった。いずれも鳥類とは異なっている。
 始祖鳥は、最初の化石が見つかった19世紀以来の研究で、現在の鳥類の直系の祖先ではないものの、最も原始的な鳥類と位置付けられてきた。その最大の根拠の一つが脚の構造だったが、今回の研究でその根拠が崩れたことになる。
 始祖鳥が鳥類と認められなくなると、鳥類の起源は、中国で羽毛恐竜や原始的な鳥「孔子鳥」が見つかっている白亜紀前期(約1億3000万年前)まで約2000万年新しくなる可能性も出てきた。

 今回発表された始祖鳥の化石は科学雑誌サイエンスの下記のサイトで見られる。写真右下にあるスケールは5cm。右の写真は紫外線を照射して撮影した写真。
http://www.sciencemag.org/content/vol310/
issue5753/images/large/310_1483_F1.jpeg


【文献】
Mayr, G., et al.: A Well-Preserved Archaeopteryx Specimen with Theropod Features. Science 310: 1483-1486. [DOI: 10.1126/science.1120331]


2005/12/02 読者投稿欄の新設
 朝起きて西側の窓を開けるとイチョウの葉がすべてなくなっていました。今週の初めには葉があったように記憶しているのですが。窓の先の空き地には霜が降りていました。師走も2日目です。
 ご要望がありました読者投稿欄「い・つ・か・の声」を新設しました。皆様のご投稿をお待ちしています。テーマの制限はありません。
 「い・つ・か・の声」とは、「いいたいこと」、「つたえたいこと」、「かたりたいこと」、の最初の文字からとりました。この欄が読者との親睦と交流につながればと考えています。


2005/12/02 世界最大の水族館がオープン
 アメリカ・米ジョージア州アトランタに屋内では世界最大とされる水族館「ジョージア・アクエリアム・イン・アトランタ」がオープンしたとCNNが伝えている(05/11/30)。今後1年間で240万人の来館が見込まれているとのこと。
 事務局長のジェフ・スワナガン氏はオープンに先立つ会見で、「世界一魅力的な水族館にしたい」と抱負を語った。総量3万トンに上る水の中で飼育される生物は12万5000匹。これまで最大とされてきたシカゴ・シェッド水族館の2万匹をはるかにしのぐ規模だ。
 総工費2億ドルで波間から姿を現す船舶をかたどったダイナミックな外観が特徴。館内は5つの展示エリアと、最新型の立体画像シアターに分かれている。水槽には曲面が多用され、見学者は魚の世界に飛び込んで一緒に泳いでいるような感覚を味わうことができるという。

水族館のサイトは下記
http://www.georgiaaquarium.org/


2005/12/01 ロマンチックな愛はちょうど1年?
 イタリアのパヴィア大学の研究チームは、人の恋する感情は神経成長因子(NGF)という分子の働きが影響しているとする研究結果を発表した。
 恋におちた人は血中の神経成長因子(NGF: nerve growth factor)濃度が有意に高まるという。ところが、その状態は長くは続かず、一年以内に元に戻ってしまう。これは、恋愛が最初の興奮期を脱して安定期に入るためではないかと研究者らは考察している。
 最近、恋に落ちた58人(18~31歳)の血液中に含まれている神経と関係する58種類のタンパク質を検査したところ、NGFの血中濃度は、交際相手のいない人のグループや長期間交際をしている人のグループに比べ、統計的に有意に高かったが、他のたんぱく質では有意な差はなかった。また、NGFはロマンチックな愛の強度とも正の相関を示した。しかし、同じ恋人との交際期間が1年を超えると、NGFの血中濃度は他のグループと同程度まで低下した。

【文献】
Emanuele, E., et al.: Raised plasma nerve growth factor levels associated with early-stage romantic love. online 10 Nov. 2005 [doi:10.1016/j.psyneuen.2005.09.002]