2006年10月


2006/10/31 地中海ダイエットはアルツハイマー病のリスクを下げる
 アメリカ・ニューヨークで行われた研究によると果物、野菜、オリーブオイルと少量の肉を食べる地中海ダイエットは、アルツハイマー病のリスクが統計的に有意に減少することが分かった。

【文献】
Scarmeas, N. et al.: Mediterranean Diet, Alzheimer Disease, and Vascular Mediation. Arch. Neurol. online Oct. 9, 2006 [doi: 10.1001/archneur.63.12.noc60109]


2006/10/30 「発掘!あるある大事典2」と「ためしてガッテン」の視聴率
 10月16日~22日の教育・教養・実用部門の視聴率(関東地区)の世帯視聴率が発表された。それによると 「発掘!あるある大事典2 あなたのダイエットフルーツはどっち?」も「ためしてガッテン -甘さ6倍!栗・感動の新調理術-」もなかなかよい世帯視聴率であったようだ。

順位 タイトル             放送日  放送局  世帯視聴率
1  真相報道バンキシャ!        10月22日 日本テレビ 14.8%
1  発掘!あるある大事典2      10月22日 フジテレビ 14.8%
3  水トク!・激闘大家族東京下町五つ子ちゃん成長記’
  06秋・嵐と涙の13年すべて見せます 10月18日 TBS     13.9%
4  開運!なんでも鑑定団        10月17日 テレビ東京 13.8%
5  ためしてガッテン         10月18日 NHK総合  13.6%
6  サンデーモーニング         10月22日 TBS     13.5%
7  スタ・メン             10月22日 フジテレビ 13.3%
8  クローズアップ現代         10月17日 NHK総合   12.9%
9  THE・サンデー           10月22日 日本テレビ 11.9%
10  さわやか自然百景         10月22日 NHK総合   11.6%



2006/10/29 クルミはオリーブ油より心臓健康のために良い
 オリーブ油は炎症版のによいことが知られていたが、24人を対象にクルミの効果について調べた結果、クルミを食べたヒトの動脈は、コレステロールが適正値になり。オリーブ油を摂取したヒトに比べて、脂肪過多の食事の後でも柔軟で弾力的なままであったという結果が報告された。

Cirtes, B. et al.: Acute Effects of High-Fat Meals Enriched With Walnuts or Olive Oil on Postprandial Endothelial Function. J. Am. Coll. Cardiol. 48: 1666-1671. (2006) [doi: 10.1016/j.jacc.2006.06.057]


2006/10/28 明日を元気に くだもの教室
 クレオ大阪南(大阪市平野区喜連西6-2-23)
 2006年10月28日(土曜日)
 午前 くだもの料理教室 フードプロデューサー 土井善晴氏
 午後 シンポジウム「知っトク、納得、おいしいくだものの不思議」
 パネラー:和洋女子大副学長 坂本元子氏 農研機構果樹研究所 田中敬一 
       大果大阪青果株 藤原裕司氏  フードプロデューサー 土井善晴氏
   問合せ先:03-3586-1381 (財)中央果実生産出荷安定基金協会



2006/10/27 魚の摂取は健康に良く、リスクは小さい
 アメリカ・ハーバード大学のMozaffarianらは、過去の論文を精査し、脂肪の多い魚なら、週1~2回摂取するだけでも死亡率が17%低下し、冠動脈疾患による死亡率は36%低下すると報告した。心疾患予防には、サケを週1回、6オンス(約170g)食べるだけでも十分であると述べている。
 ただし、オオサワラ、サメ、メカジキ、アマダイなど水銀含有率の高い魚は、妊婦は避けるようにとしている。

【文献】
Mozaffarian, D. et al.: Fish Intake, Contaminants, and Human Health - Evaluating the Risks and the Benefits. JAMA. 296: 1885-1899. (2006)


2006/10/26 シリカに由来する肺疾患の進行抑制
 シリカ由来の肺疾患は、長期の間、シリカを吸入することによって、引き起こされる。鉱山、 鋳造場、ガラス製造プラント、爆破作業現場などでシリカダストが発生しており、吸引すると活性酸素の生成される。アメリカでは、100万人以上の労働者がシリカダストにさらされていると考えられている。
 ヘム鉄を分解する反応の補酵素であるヘムオキシゲナーゼ(heme oxygenase)の発現はストレスなどの刺激で誘導されることが知られていたが、横浜市立大学の研究チームが、この酵素がシリカ由来の肺疾患と関係していると発表した。ヘムオキシゲナーゼ1(heme oxygenase-1)はシリカ由来の肺疾患で増加し、活性酸素の分解して病気の進行を遅らせる働きがあることが分かった。
 この研究はシリカ由来の肺疾患とヘムオキシゲナーゼ1との関係を最初に示した研究である。

【文献】
Sato, T. et al.: Heme Oxygenase-1, a Potential Biomarker of Chronic Silicosis, Attenuates Silica-induced Lung Injury. Am. J. Resp. Critic. Care Med. 174: 906-914. (2006)


2006/10/25 赤いリンゴでもダイエット効果は十分
 「あるある大事典Ⅱ」放映後、赤いリンゴはダイエット効果はないの?との質問が寄せられている。赤いリンゴでもダイエット効果は十分にある。なぜなら、リンゴのダイエット効果は、カロリー密度(体積が大きくてカロリーが少ない)が低いことと食物繊維が多いことが主因のためである。そのため、青いリンゴでも赤いリンゴでもダイエット効果は十分に期待できる。
 食前に食べると効果的なのは、リンゴを食べると満腹感が得られるため、主食の摂取量が意識せず自然と少なくなるためである。


2006/10/25 ハリー・ポッターのマント、それともスタートレック遮蔽装置
 不可視な遮蔽、言い換えると物質の透明化が原理から一歩踏みだした。ハリー・ポッターの透明マントやスタートレックの不可視な遮蔽装置(cloaking device)のメカニズム仮説は、すでにイギリスの研究者が発表していた。その原理とは、光波(あるいは電磁放射)を物体の周囲に導き、あたかもその物体によって散乱していないように進ませることである。

 アメリカ・デューク大などの研究グループが、特殊な微細構造の金属素材で物体を囲うことにより、物体に当てた電磁波を反射させずに裏側へ迂回(うかい)させる実験に成功した。
 この研究は、電磁放射線から物体を隠す原理を立証する初の遮蔽装置で、磁放射線が排除、回避され、あたかも存在していないような空間を作り出した。しかしまだ、不完全で二次元レベルの実験に過ぎないが、それでも後方散乱(反射)および前方散乱(影)双方を減少させることができる(ビデオ参照)。

デューク大学のプレスリルースプレスリリースは下記のサイトで読める。
http://dukenews.duke.edu/2006/10/cloakdemo.html

ビデオ:研究チームによる説明と装置、透明化の実験経過などを下記のサイトで見ることが出来る(ビデオを見るためにはReal Playerが必要)。
http://realmedia.oit.duke.edu/ramgen/news/invisibility.rm
リアル・プレーヤー(Real Player)がない場合は下記のYoutubeでも見ることが出来る(ただし、画質が悪い)。
http://www.youtube.com/watch?v=Ja_fuZyHDuk

【原著】
Schurig, D. et al.: Metamaterial Electromagnetic Cloak at Microwave Frequencies. Science. Online Oct. 19, (2006) [doi: 10.1126/science.1133628] (Science Express Reports)


2006/10/24 果物と野菜の摂取は女性の胆石リスクを減らす
 果物と野菜を食べている女性は、胆石形成のリスクが低いことが、77,090人の女性看護師を対象としたアメリカ・ハーバード大学の研究から明らかになった。果物と野菜の摂取量の多い人は摂取量の低い人に比べて胆石手術の必要性が21%低かった。最も多く摂取しているグループの果物と野菜の摂取量は1日あたらい7サービング以上で、最も低いグループは3サービング以下であった。

【文献】
Tsai, C-J., et al.: Fruit and Vegetable Consumption and Risk of Cholecystectomy in Women. Am. J. Med. 119: 760-767. (2006) [doi:10.1016/j.amjmed.2006.02.040]


2006/10/23 睡眠時間が短い人に肥満が多い
 睡眠時間の長短が体重に影響することがアメリカ・アイオワ州で行われたの疫学研究(1999年-2004年)から明らかになった。990人を調査した結果、睡眠時間とBMI値は逆相関が認められた。睡眠時間が6時間以下の人のBMI値は30.24だったのに対して9時間以上睡眠を取った人のBMI値は28.25であった。
 以上の結果から研究者らは、睡眠時間中に起きる穏やかな変化が体重のコントロールと関係している述べている。

【文献】
Kohatsu, N. D. et al.: Sleep Duration and Body Mass Index in a Rural Population. Arch. Intern. Med. 166: 1701-1705. (2006)


2006/10/22 フジテレビ・関西テレビ「発掘!あるある大事典Ⅱ」
 あなたのダイエットフルーツはどっち?
 10月22日(日)PM10:20-11:20(日本シリーズの試合が延びたため繰り下げ)
 リンゴとミカン、見直してみたらダイエット効果がすごい。食べ方に秘密が。WHOの果物と中性脂肪に ついての報告も紹介(当サイトも番組の取材に協力しました)。
 トピックス:果物摂取でダイエット、肥満予防

本サイトのフルーツ・ダイエットに対するサプリメントついての見解
 ダイエットにはリンゴなど果物が有効であると考えていますが、サプリメントではその効果はありません。その科学的根拠は上記トピックスをご覧下さい。


2006/10/22 チャールズ・ダーウィンの資料電子化・公開
 進化論で知られるイギリス科学者チャールズ・ダーウィン(Charles Darwin )の文献や資料などを電子化し、ネットで公開された。「ビーグル号航海記」や「種の起源」を読むことができる。
 2009年は、ダーウィンの生誕200年と、進化論のきっかけとなった「種の起源」の出版150周年にあたる。そこで、この年までに2年をかけ、ほぼすべての資料を電子化して公開する予定とのことである。

ダーウィンの文献・資料を公開しているサイトは下記である。
http://www.darwin-online.org.uk/


2006/10/21 食バランス重視でリンゴの健康効果は伝わるか
 健康志向の中で機能性成分(サプリメント)がブームである。そのため、「疾病に対してこの機能性成分は有効である。従って、この機能性成分が含まれている食品は健康によい」とするサプリメントを重視する考え方がある。
 しかし、リンゴでは、食バランスを重視した研究を行っている。「リンゴを食べると食バランスが改善されるため健康によい。」とする立場である。
 こうした研究方向に疑問を呈する人がいる。いわく「アッピール性が弱い」、「宣伝のしようがない」などなど。そうだろうか。
 果樹研究所が行った果物の健康効果についてのアンケート結果は下記のようになっている。

問 健康のためを意識して食べている食品はありますか
  (複数回答可:2005年4月調査)
-------------------------
       全体   男性   女性
1.リンゴ  50.5%   45.8%  52.8%
2.バナナ  48.7%   43.4%  51.3%
3.ミカン  37.8%   38.6%  37.4%

-------------------------
http://www.kudamononet.com/Kudamono&Kenko/
back_number/K&K_No58.html


 また、日本バナナ輸入組合の調査では下記のようになっている。

問 健康・美容に良いと思う果物は?
 (第2回バナナ・果物消費動向調査2006年6月)
-----------------------
1.リンゴ       43.7%
2.バナナ       43.4%
3.キウイフルーツ   37.3%
4.ミカン       37.0%*

-----------------------
*グラフからの読み取り値
http://www.banana.co.jp/chousa2/

 両調査ともリンゴが果物の中で1位である。こうした調査から機能性成分(サプリメント)のアッピール度は高いが、食バランスを重視する人たちも大勢いることを示しているように思う。
 果物の健康機能を伝える場合、食バランスを重視するのか、サプリメントを重視するのかを考えておく必要があるのではないかと思う。食バランス重視でリンゴの健康効果は十分に伝わっている。


2006/10/21 世界的な減塩キャンペーン始まる
 48カ国194人の医療専門家により世界的な減塩キャンペーンが開始された(World Action on Salt and Health (WASH) )。高血圧は脳卒中の62%、心臓病の49%の原因となっている(文献1)。世界では、脳卒中と心臓病で1270万人が死亡しており、他の疾病よりも死亡率が高い(文献2)。また、摂取する食塩を6gまで減少させると脳卒中で24%、心臓病で18%死亡率を下げることが出来ると示唆されている(文献3)。そのため、高血圧予防の観点からWHOでは1日当たりの食塩摂取量を5g以下にすることを目標としている。

World Action on Salt and Health (WASH) のホームページは下記にある。
http://www.worldactiononsalt.com/index.htm

イギリス政府のFood Standards Agencyによる「Salt - eat no more than 6 g a day」キャンペーンは下記のサイトで読める。
http://www.salt.gov.uk/index.shtml

【文献】
1) World Health Organisation: World Health Report 2002: Reducing Risks, Promoting Healthy Life. World Health Organisation (2002) www.who.int/whr/2002
2) World Health Organisation: The Atlas of Heart Disease and Stroke. Sep. 27, (2006)
http://www.who.int/cardiovascular_diseases/
en/cvd_atlas_01_types.pdf.

3) He, F. J. & MacGregor, G. A.: How far should salt intake be reduced? Hypertension. 42: 1093-1099. (2003)


2006/10/20 フラボノイドの一種「フィセチン」に記憶力向上効果
 野菜や果物に広く含まれるフラボノイドの一種「フィセチン(fisetin)」を摂取すると、記憶力が向上することを、武蔵野大と米ソーク研究所の共同チームが発表した。
 ラットから記憶をつかさどる海馬を取り出して生きた状態に保ち、フィセチンの水溶液を細胞にかけると、長期増強を担う分子が活性化した。そこで、マウスを使って実験を行った。2個の物体を健康なマウスに記憶させ、24時間後、2個のうち1個を別のものに替えて再び見せる。前日、物体を見せる前にフィセチンの水溶液を飲ませたマウスは、替えた物体にだけ興味を示した。しかし、この水溶液を飲まなかったマウスは、どちらの物体にも均一に興味を示し、前日に見たことを忘れていた。
 このことから、著者らは、フィセチンが脳の海馬に達し、記憶力向上物質として働いたと考えられると結論づけている。

【文献】
Pamela Maher, P. et al.: Flavonoid fisetin promotes ERK-dependent long-term potentiation and enhances memory. Proc. Natl. Acad. Sci. USA. online Oct. 18, (2006) [doi: 10.1073/pnas.0607822103]


2006/10/19 NHK「ためしてガッテン」
 -甘さ6倍!栗・感動の新調理術- 10月18日(水)PM8:00-8:43
 http://www3.nhk.or.jp/gatten/archive/2006q4/20061018.html
 栗のビタミンCはグレープフルーツ並み、食物繊維はさつまいも以上という健康食材! 縄文時代には主食として栽培されてきた。ところが、「殻をむくのが面倒」、「思ったほど甘くない」と、中国産の甘栗にすっかり押され気味。調べてみると、ほんの少しの工夫で甘さがメロン並みにアップし、殻も渋皮も指で簡単にむけちゃう方法を発見!(当サイトも番組の取材に協力しました)

   ニホングリの渋皮はどうして剥けないか
   続・ニホンナシの渋皮はどうしてはげないか


2006/10/18 睡眠不足は肥満、高血圧、心不全などと関連
 アメリカ国立補完・代替医療センター(NCCAM)の研究チームは成人3万1,044人を対象とした健康調査データから不眠症や睡眠障害と肥満、高血圧、心不全、不安障害、うつ病との関連性が認められたと発表した。これまで不眠症は単独の疾患とみなされていたが、不眠症患者で他の疾患を有していなかったのはわすか4%であった。
 睡眠の質と心身の健康との間に強い関連性を認めるエビデンス(証拠)が増えているがこの報告もその1つである。

【文献】
Nahin, R. L. et al.: Insomnia, Trouble Sleeping, and Complementary and Alternative Medicine: Analysis of the 2002 National Health Interview Survey Data. Arch. Intern. Med. 166: 1775-1782. (2006)


2006/10/17 果物・野菜の摂取は摂取カロリーや体重を減らす
 今までの研究によるとエネルギー密度(Kcal/g)の低い食品(果物や野菜)は、摂取カロリーを下げると示唆しているが、体重との関係は明かではなかった。そこで、アメリカに住む7,356人を対象に摂取カロリーや体重と摂取している食品との関係を調査した。
 その結果、低エネルギー密度の食品を摂取している人は、高エネルギー密度の食品(脂肪)を摂取している人より、摂取カロリーが1日当たり男性で425kcal、女性で275kcal低いことが分かった。ところが、低エネルギー密度の食品を摂取している人の1日当たりの食品の摂取重量は、男性で400g、女性で300g多かった。また、標準体重の人は肥満の人に比べて低エネルギー密度の食品(果物と野菜)を多く摂取していた。
 以上のことから、研究者らは果物と野菜の摂取は体重のコントロールに重要な働きをしていると述べている。

【文献】
Ledikwe, J. H. et al.: Dietary energy density is associated with energy intake and weight status in US adults. Am. J. Clin. Nutr. 83: 1362-1368. (2006)


2006/10/16 最小ゲノムを持つ共生細菌の発見
 生物が生きるために最低限必要なゲノムはいったいどのくらいなのか?
 理研中央研究所などの研究グループは、半翅目昆虫「キジラミ」に共生する細菌「カルソネラ」のゲノムがたった16万塩基対であることを発見した。これは、これまで知られている生物界のゲノムのなかで最小である。
 カルソネラは、キジラミの特殊な細胞(菌細胞)の細胞質内で生きており、この細胞の外では生存していけない。そのため、現在のカルソネラは2億年前に菌細胞内に侵入し、キジラミの親から子へと垂直感染することだけで生き続け、受け継がれてきたと考えられている。
 発見したゲノムは、単に遺伝子の数が少ないだけではなく、遺伝子の長さが短く、さらに遺伝子同士がオーバーラップしているという、これまでに知られていなかった極限まで切り詰められた特殊な構造をしていた。ゲノムからは生命活動を維持するのに必須と思われる遺伝子の多くが失われているが、失った分を昆虫の遺伝子や代謝産物に依存していると考えられる。
 今回の発見によって、かつては共生細胞だったと考えられているミトコンドリアや葉緑体はどのように細胞小器官になったのかについての疑問の回答にもなると期待されている。

【文献】
Nakabachi, A. et al.: The 160-Kilobase Genome of the Bacterial Endosymbiont Carsonella. Science 314: 267. (2006) [doi: 10.1126/science.1134196]


2006/10/15 南アメリカ・コロンビアで新種の鳥を発見
 南アメリカ・コロンビアの密林地帯で、頭のてっぺんがオレンジ色、目の回りは黒色で、のど元から腹部にかけて黄色というカラフルな新種の鳥が見つかった。ヤブシトド(Brush-Finch)の仲間で、手のひらににすっぽり収まる大きさの鳥で、コロンビア北東部のサンタンデル州の密林地帯で見つかった。名前は、かつてこの地域で暮らしていた先住民族の名をとり、ヤリギエスヤブシトド(Yariguies Brush-finch)と名付けられた。

【文献】
Donegan, T. M. & Huertas, B.: A new brush-finch in the Atlapetes latinuchus complex from the Yariguies Mountains and adjacent Eastern Andes of Colombia. Bulletin of the British Ornithologists' Club 126: 94-116. (2006)
http://www.proaves.org/IMG/pdf/Donegan_Huertas_
Atlapetes_latinuchus_yariguierum.pdf



2006/10/13 国際稲研究所が研究目標を転換:貧困の解消を目指す
 国際稲研究所(IRRI:本部フィリピン)は、かんがい地帯での稲作改善を目標としてきた方針を見直し、かんがい設備にない地域での稲作改善を重点目標とする「希望を呼び込み、豊かな暮らしを」と題した戦略計画(2007~2015年)を発表した。こうした地域は貧困が深刻なため、干ばつや水害、塩害に耐える品種の育成により生産安定を図り、貧困の解消を目指す。

国際稲研究所の新しい研究戦略は下記のサイトで読める。
http://www.irri.org/BringingHope/ImprovingLives.pdf?id=138


2006/10/12 民間団体TIが30カ国の「わいろ指数」を公表
 行政や企業などの腐敗について調査・提言している民間団体「トランスペアレンシー・インターナショナル(TI)」(本部ベルリン)が今年の「わいろ指数」を発表した。
 125カ国のビジネスマン11,000人以上の回答をもとに、主要輸出国30カ国の「わいろ指数」を求めた。
 1位はスイスで、以下スウェーデン、オーストラリアの順。イギリスは6位、アメリカは9位、日本は11位、フランスは15位、イタリアは20位だった。
 TIは、国際的大企業によるわいろの利用は国際法違反であるにもかかわらず、なおも一般的だと指摘してる。汚職やわいろは、貧困国が貧困状態から抜け出せない一因となっているとしている。

Rank Country    Average     Percentage
  territory   score     of globa
          (0-10)     exports (2005)
1 Switzerland    7.81      1.2
2 Sweden       7.62       1.3
3 Australia     7.59       1.0
4 Austria      7.50      0.5
5 Canada       7.46      3.5
6 UK         7.39      3.6
7 Gemany       7.34      9.5
8 Netherlands    7.28      3.4
9 Belgium      7.22      3.3
 US         7.22      8.9
11 Japan       7.10      5.8
12 Singapore     6.78      2.2
13 Spain       6.63      1.9
14 UAE        6.62      1.1
15 France      6.50      4.3
16 Portugal     6.47      0.3
17 Mexico      6.45      2.1
18 Hong Kong     6.01      2.8
  Israel      6.01      0.4
20 Italy       5.94      3.6
21 South Korea    5.83      2.8
22 Saudi Arabia   5.75      1.8
23 Brazil      5.65      1.2
24 South Africa   5.61      0.5
25 Malaysia     5.59      1.4
26 Taiwan      5.41      1.9
27 Turkey      5.23      0.7
28 Russia      5.16      2.4
29 China       4.94      5.5
30 India       4.62      0.9


TIが発表したリストは下記のサイトで読める。
http://www.transparency.org/news_room/in_focus/bpi_2006


2006/10/11 フルーツジュースの飲用と体重とは関連しない
 アメリカ・疾病管理予防センター(CDC)が就学前の子供を調査した結果、100%フルーツジュースを飲むことと過体重との関連性は見られなかったと発表した。
 就学前の子供〈2-5歳)1572人を対象に1999?2002 年の間調査を行った結果、子供たちは100%ジュースを1日当たり4.70 oz 飲用していた。そこで、100%フルーツジュースと小児用BMI判定基準を用いた体重との関係を調べたところ、統計的な関連性は見られなかった。

【文献】
O'Connor, T. M. et al.: Beverage Intake Among Preschool Children and Its Effect on Weight Status. Pediatrics 118: e1010-e1018. (2006) [doi: 10.1542/peds.2005-2348]


2006/10/10 果物摂取は男性の口腔ガン発症のリスクを下げる
 アメリカ・ハーバード大学の研究チームが行った調査によれば、果物(ビタミンCを多く含む果実、カンキツ果実、カンキツジュースなど)の摂取量が多い男性は、口腔ガン発生のリスクが統計的に有意に低いことが分かった。
 男性42,311人を対象に1986年から2002年の間、4年ごとに調査を行った結果、果物を多く摂取している人は、摂取量が少ない人に比べて30-40%口腔ガン発症のリスクが少なかった。

【文献】
Maserejian, N. N. et al.: Prospective Study of Fruits and Vegetables and Risk of Oral Premalignant Lesions in Men. Amer. J. Epidem. 164: 556-566. (2006) [doi: 10.1093/aje/kwj233]


2006/10/09 果物と野菜の摂取は中性脂肪を減らす
 インドで行われた研究によると、果物(107.3g/日)と野菜(緑色の葉菜34.4/日、根・塊茎93.7/日、他の野菜193.6/日)の摂取は血清中の中性脂肪と負の相関があった(p<0.05)。一方、 ミルクの摂取は、血清中の中性脂肪(p<0.01)、LDL-C(p<0.05)、血糖レベル(p<0.1)と正の相関があった。また、飽和脂肪酸の摂取は、血清中のLDL-C(p<0.05)、中性脂肪(p<0.05)と正の相関があった。

【文献】
Bains, K. et al.: Food and nutrient intake in relation to cardiovascular disease among rural males of Punjab, India. Asia Pac. J. Clin. Nutr. 13(Suppl): S95. (2004)


2006/10/08 糖尿病は肥満より死亡リスクが高い
 アメリカで行われた15,408人(44-66歳)を対象とした調査から、太っているか否かにかかわらず糖尿病患者は、非糖尿病患者と比較して死亡リスクが3倍高いことが分かった。一方、糖尿病に罹患していない肥満の人の死亡リスクは非肥満者と変わらなかった。
 この結果は、糖尿病の死亡リスクが高いことと、肥満、糖尿病、疾病の関係は複雑であることを示している。そのため、研究者らは、肥満と疾病との関係についてさらなる研究が必要と述べている。

 この研究で注目されるところは、糖尿病でない肥満の人の死亡リスクが、非肥満者と変わらないとしている点で、従来の予測と一致しない。生活習慣病に係わる血圧、コレステロールなどの危険因子が正常であれば、単純な肥満は死亡リスクにつながらないことを示しているのかも知れない。

【文献】
Slynkova, K. et al.: The role of body mass index and diabetes in the development of acute organ failure and subsequent mortality in an observational cohort. Critical Care 10: R137 (2006) [doi: 10.1186/cc5051]

上記論文は下記のサイトに公開されており全文を読める。
http://ccforum.com/content/10/5/R137


2006/10/07 女性のための骨粗しょう性骨折リスク判定の予測式
 オーストラリア・メルボルン大学の研究チームは、女性の骨粗鬆症性の骨折を予測する式を開発したと発表した。開発された予測式は骨密度だけでなく、様々な危険因子を考慮して作られており、この予測式を用いて2年以内に起こる骨折リスクを75%予測できた。
 予測式を用いてヒップ、背骨、上腕、前腕に障害のある231人の年配の女性と、障害のない448人の年配女性に対して調査を行った結果、2年以内の骨折を75%予測できた。
 以上のことから、この予測式は、骨粗しょう症の女性の治療に役立つと、研究者ら述べている。

【文献】
Henry, M. J. et al.: Fracture Risk (FRISK) Score: Geelong Osteoporosis Study. Radiology 241: 190-196. (2006) [doi: 10.1148/radiol.2411051290]


2006/10/06 メルマガ第122号に特集記事がなかった理由
 今日配信したメールマガジン「果物&健康NEWS」第122号に予定していた特集「カキ酢の作り方」の掲載を見送りました。

 記事は完全にできあがっており、果樹花き課に転送しました。しかし、もう一度再読したとき、カキ酢の製造途中のアルコール発酵が酒税法に触れるのではないかと気づきました。そこで、インターネットで調べたのですがよく分からなかったので、国税庁に問い合わせたところ、やはり酒税法に触れるとの回答でしたので掲載をあきらめました。

 製造過程で出来たアルコールを酒として飲まなくても、アルコール分が1%を越える場合は製造許可が必要と分かりました。そのため、食酢製造業者は、もろみ製造の許諾を受ける必要があるとのことでした。

 以上のことから、家庭でカキから食酢を作ると密造ということになります。メルマガの読者からカキ酢の作り方を取り上げてほしいとのメールをいただいたのですが、残念ながら期待に応えられませんでした。


2006/10/05 簡単に渋皮むけるクリ品種「ぽろたん」の育成
 渋皮がぽろっとむける新品種「ぽろたん」が農研機構果樹研究所で育成された。甘栗のように渋皮がむきやすいニホングリの新品種の育成は画期的な成果である。クリの実を加熱したあと、渋皮がポロンと簡単にむけることから、「ぽろたん」と名付けられた。
 ただし、これからな苗木として販売され、実がなるまでに時間がかかるので、くりご飯や菓子の具など秋の味覚を手軽に楽しめるヨウになるまでは、早くて7,8年後となる。

渋皮が簡単にむける画期的なニホングリ新品種「ぽろたん」のプレスリリースは下記にある。
http://www.fruit.affrc.go.jp/announcements/kisya/
h18-10-04/porotan.pdf



2006/10/04 ノーベル物理学賞:ビックバン理論の証明に
 今年度のノーベル物理学賞は、アメリカ航空宇宙局(NASA)ゴダード宇宙飛行センターのジョン・マザー博士(John C. Mather: 60)とカリフォルニア大のジョージ・スムート教授(George F. Smoot: 61)が受賞した。
 受賞理由は「宇宙背景放射の不均一性の発見("for their discovery of the blackbody form and anisotropy of the cosmic microwave background radiation")」である。1989年に打ち上げられた観測衛星COBE(コービー)で、宇宙全体から届くマイクロ波(宇宙背景放射)を観測し、宇宙が爆発的に膨張して生まれたとするビッグバン理論を観測で裏付けたことと、放射が全天から均一に来るのではなく、10万分の1レベルの温度の違い(ゆらぎ)があることを発見した。

ノーベル財団のサイトは下記にある。
http://nobelprize.org/nobel_prizes/physics/laureates/2006/


2006/10/03 「RNA干渉」の発見にノーベル医学生理学賞
 スウェーデンのカロリンスカ研究所は、2006年のノーベル医学生理学賞をアンドルー・ファイアー(Andrew Z. Fire)・スタンフォード大医学部教授(47)と、クレイグ・メロー(Craig C. Mello)・マサチューセッツ大教授(45)の2氏に授与すると発表した。
 生物の遺伝情報を伝える役のRNA(リボ核酸)が対になった「二重鎖RNA」で、遺伝子の発現が阻害される「RNA干渉」という現象を線虫で発見し、1998年に発表した。この現象は人間にも共通しており、二重鎖RNAを人工的に作ることで新薬開発などに道を開いたことが評価された。

 当初、この研究は特殊な現象と考えられ、生体内では働かないと思われ、マユツバな研究とされた。ところが、最近では、網膜の加齢黄斑変性症やC型肝炎、エイズ、ガン、ホルモン異常などの治療薬の研究へと発展している。
 今回のノーベル賞受賞対象の研究も当初の評価は低かった。このことは、研究を1年単位で評価することが誤りであることを示している。

ノーベル財団のプレスリリースは下記のサイトで読める。
http://nobelprize.org/nobel_prizes/medicine/laureates/2006/


2006/10/02 糖尿病患者はガン罹患リスクが高い
 糖尿病患者はガンの罹患リスクが高いと考えられてきたが、その証拠はほとんどなかった。そこで、日本人97,771人(男性46,548人、女性51,223人:40-59歳)を対象に調査を行った結果、男性の糖尿病患者では、非糖尿病の人に比べてガン罹患リスクが27%高かった。特に、肝臓ガン、すい臓ガン、腎臓ガンの発症が多く見られた。
 女性の糖尿病患者は、男性ほど高くなかったが、非糖尿病の人に比べてリスクが21%高く、胃ガン、腎臓ガン、卵巣ガンが多かった。
 糖尿病患者にガンの発生が多い理由として、ガン細胞の成長を促進するインシュリンが多いためにガンの発症が多くなった可能性と、糖尿病患者に肥満が多いためガンの発症が多くなった可能性が考えられるとし、今後の検討が必要としている。

【文献】
Inoue, M., et al.: Diabetes Mellitus and the Risk of Cancer - Results From a Large-Scale Population-Based Cohort Study in Japan. Arch. Intern. Med. 166: 1871-1877. (2006)


2006/10/01 火星探査車オポチュニティーはまだ元気に活躍
 火星の地表を調査しているアメリカ航空宇宙局(NASA)の無人探査車オポチュニティー(Opportunity)が、9月27日から28日にかけてビクトリア・クレーターの端に到着した。火星に着陸(2004年1月)してから火星時間で952日(約31ヶ月)かけて移動した。このクレーターは幅800m、深さ70mで、砂丘で覆われているが一部、岩石が露出しており、ででこぼこしている壁が見える。

ビクトリア・クレーターの写真は下記のサイトで見られる。
http://photojournal.jpl.nasa.gov/catalog/PIA08783

 「地質学者の夢が実現するかも知れない。壁にある地層を調べられるなら、火星の環境に関する新しい発見があるのではないか」と、コーネル大学のSteve Squyres 博士は述べている。

 同時期に着陸したスピリット(Spirit)は、火星の砂とほこりに苦戦しているようである。2006年4月4日の様子が下記のサイトで読める。
http://www.nasa.gov/mission_pages/mer/mer-20060404.html

 探査機の寿命3カ月と考えられていたが、2年半以上も探査を続けている。当初、太陽電池パネルに砂ぼこりが積もって動かなくなると見られていたが、強風で砂ぼこりが払われるなどして寿命が延びているらしいとのことである。