2006年9月


2006/09/30 ぜん息のリスクは肥満の女性で高い
 カナダで行われた86,144人の調査から、肥満の女性は、肥満の男性よりぜん息になるリスクが高いことが分かった。また、肥満の女性は、標準体重の女性よりぜん息のリスクが85%高く、肥満の男性は、標準体重の男性より21%高かった。BMIが1ユニット増加するとリスクが女性では6%増加し、男性では3%増加した。
 以上のことから、ぜん息は肥満と関係するが、女性と男性とでは異なっていることが明らかとなった。

【文献】
Chen, Y. et al.: The Association Between Obesity and Asthma Is Stronger in Nonallergic Than Allergic Adults. Chest 130: 890-895. (2006)


2006/09/29 サラダの栄養価
 17,500人以上の男(8,282人)女(9,406人)の食事データを分析したところ、生野菜のサラダの摂取量は、血中の葉酸、ビタミンC、ビタミンE、リコピン、α-カロテン、β-カロテンの濃度と相関していることがアメリカ・カリフォルニア大学とルイジアナ州立大学の共同研究から明らかとなった。

【文献】
Su, L. J. and Arab, L.: Salad and Raw Vegetable Consumption and Nutritional Status in the Adult US Population: Results from the Third National Health and Nutrition Examination Survey. J. Amer. Diet. Assoc. 106: 1394-1404. (2006)


2006/09/29 バランス派とサプリメント派のそれぞれの目標
 健康の維持・増進のためにバランス派は、どの食品をどのくらい食べたらか良いかを科学的に明らかにして、それぞれの食品の摂取目標値を決めることである。「食事バランスガイド」や「毎日くだもの200グラム」に代表される。
 一方、サプリメント派は、機能性成分を濃縮し、加工食品などに添加して成分を強化し、特定保健用食品としての認可が目標である。果物など食素材そのものは特定保健用食品の対象外である。
 従って、この両者は食品に対する考え方も異なる。バランス派は、果物など食素材を重視するのに対し、サプリメント派は、成分を高含有する加工食品を重視することにある。


2006/09/28 糖尿病予防には減量が最適
 糖尿病予防のため肥満の人(1079人、平均BMI=33.9)を対象に3.2年間調査を行った結果、減量が糖尿病の発症リスクを減らすのに最も効果的だあることが分かった。1キログラム体重を減らすと糖尿病の発症リスクが16%減る。また、体重を減らすには脂肪の摂取を減らし、運動が効果的であるとしている。

【文献】
Hamman, R. F. et al.: Effect of Weight Loss With Lifestyle Intervention on Risk of Diabetes. Diabetes Care 29: 2102-2107. (2006) [DOI: 10.2337/dc06-0560]


2006/09/27 バランス派、それともサプリメント派?
 大豆に含まれているイソフラボンは骨粗しょう症を予防できると注目されていた。しかし、イソフラボンを含む豆乳などの売れ行きが鈍っているという。
 イソフラボンは女性ホルモンのような働きをする成分である。しかし、イソフラボンのサプリメントを女性が大量に摂取した場合、子宮内膜が厚くなるなどの研究報告から、厚生労働省食品安全委員会は、「妊婦、授乳中の女性、乳幼児、小児は、大豆イソフラボンを凝縮した錠剤やカプセル、粉末などを摂取しないこと」とした。
 イソフラボンを含む豆乳の生産量が減少に転じたのはこうした厚生労働省の通知が影響したと考えられる。フジッコ(神戸市)による首都圏と近畿圏の男女500人を対象に大豆イソフラボンの意識調査によれば、安全性論議が気になった人の約6割が「豆乳の購入を控えた」と答え、かつ、約4割が「普通の大豆食品の取り過ぎにも注意した方がよい」と答え、大豆食品そのものが危険と誤解している人が少なからずいる傾向がうかがわれる。

 サプリメントの場合、安全性論議は避けられない。一方、消費者は、「安全・安心」に敏感で議論されただけで、安全・安心に疑いを持つ現状がイソフラボンの例からも明かである。
 特定成分は特定の場所で働くが、健康の維持・増進の主役ではない。なぜなら、バランスよく栄養素を摂取していなければ特定成分だけを大量に摂取しても生体内では働かず意味がないからである。

 食品安全委員会などでは、バランス重視派が増えているようである。バランス重視派は、「最終的には消費者の判断だからサプリメントを飲むな、とは言えないが、臆病になるぐらいに慎重であってほしい」との医師の意見に代表される。


2006/09/26 ビタミンD不足は高齢者の転倒リスクを高める
 男女1231人(65歳以上)を調査したオランダの研究から、血液中のビタミンDが不足している高齢者は、十分にビタミンDを摂取している高齢者に比べて、転倒する回数が多いことが分かった。また、ビタミンD不足の人は、1年間に2回転倒するリスクが78%高くなる。
 ビタミンDは骨の健康維持に重要な役割を果たすが、筋肉質量や強度にとっても重要であり、筋肉を損なうと転倒リスクが高まるためと考えられている。

【文献】
Snijder, M. .B. et al.: Vitamin D Status in Relation to One-Year Risk of Recurrent Falling in Older Men and Women J. Clin. Endocrinol. Metabol. 91: 2980-2985. (2006) [doi: 10.1210/jc.2006-0510]


2006/09/25 将来5人に1人は肥満児:アメリカ
 アメリカ医学研究所(IInstitute of Medicine: OM)が、アメリカの児童の17%が肥満であるが、今後10年で子どもの5人に1人が肥満児になる可能性があるとが報告したとCNNが伝えている(06/09/16)。
 IOMによると、プログラムは肥満傾向にある児童を対象として、保護者や学校、地域社会、食品産業、政府が連携して取り組んできた。アメリカ疾病対策センター(Centers for Disease Control and Prevention: CDC)の実施した「Verb」プログラムでは、外遊びが減り始める9-13歳の児童の運動を30%も増やすことが出来た。しかし、予算削減に伴い、今年打ち切りに追い込まれた。
 IOMの報告書は、最善策を見極めるためにはさらなる調査が必要だと述べ、子供の肥満が増えている現状を改革するのに必要な国の指導力が不足していると指摘している。
 アメリカ疾病対策センターの元長官で、IOMの委員会のエモリー大学のジェフリー・コプラン博士は、「急性感染症への対応とは性質が異なるが、こうした疾病と同様に子供の肥満対策を重視するべきで、予算削減は問題だ」とコメントしている。また、カリフォルニア大学の研究者トニ・ヤンシー氏は、健康的な食習慣と運動が必要だという認識を定着させるため、社会全体の変化が必要と述べた。

上記CNNの記事は下記のサイトで読める。
http://www.cnn.com/2006/HEALTH/09/13/
child.obesity.ap/index.html



2006/09/24 リンゴは今も人工的なワックス処理しているのでしょう?
 青森で栄養師さんに対してリンゴの健康効果について講演したとき、会場から「リンゴは今も人工的なワックス処理しているのでしょう?」と質問された。もちろんこの質問者は、リンゴの表面の白い粉やべとべとが「果粉」といわれるものでリンゴ自身が作り出すろう物質(脂肪に似た物質)であることはご存じです。
 質問者は、かってリンゴの日持性を向上させるために人工的なワックス処理(ポストハーベスト農薬)が行われていたことを覚えておられてこの質問となったわけです。
 この質問には驚きました。使われたのはもう20年以上も前の話です。日持性のよい品種が作出されたことと、消費者の志向に合わせて現在では全く使われていません。でも「安全・安心」に係わることなので覚えておられたのです。
 リンゴの生産量が日本一の青森に住む食の専門家である栄養師さんのこの質問は大変重いと思いました。「安心・安全」に関する感情を軽く考えてはいけないと思い知らされました。

 一方、新しく開発されたポストハーベスト農薬には、日持性向上効果があるため美味しいリンゴが長く食べられる。それは、消費者のメリットだから受け入れられるとの説があります。本当でしょうか。
 昨年、天候不順で「つがる」の収穫が遅れ、次の品種の出荷と重なり供給量が増加した結果、リンゴの価格が暴落してしました。そして下がったまま、その後も回復することはありませんでした。このことは、「つがる」の販売日数が延びてもそれを吸収するだけの消費が市場にはないことを示しています。

 「消費量を伸ばせばよいではないか」とすぐに反論されます。しかし、消費を伸ばすための「毎日くだもの200グラム」運動は、「安心・安全」と深いつながりがあり、ポストハーベスト農薬の使用とは両立しにくいのです。
 青森の栄養師さんの「リンゴは今も人工的なワックス処理しているのでしょう?」の質問の重い意味がここにあります。我が国の果物は諸外国に比べて安全・安心であるとの認識が覆ると、せっかくの「毎日くだもの200グラム」運動も前に進まなくなるのではないでしょうか。

 そのため、ポストハーベスト農薬はいらないと考えています。

 ポストハーベスト農薬によるリンゴの日持性向上の研究は大変興味深い領域です。しかし、研究のおもしろさと消費者の志向とは一致するとは限らないのです。


2006/09/24 イギリスの給食改革:毎日、給食に果物・野菜を2品目
 子供たちの肥満を防ぐためにイギリスでは、9月から学校給食にジャンクフード(チョコレート、ポテトチップス、炭酸飲料、質の悪い肉など)の利用が禁止され、果物と野菜を毎食ごとに2品以上とし、揚げ物は週2回までとする給食改革がスタートしたとBBCが伝えている(06/09/19)。
 イギリスでは2-15歳までの約30%が太り過ぎとされ、子どもの肥満が大きな問題になっている。そこで、政府は学校給食の改善のために2.8億ポンドの支出を約束し、テレビの人気シェフであるオリバー(Oliver)さんを使ったキャンペーンが行われている。
 イギリス教育技能省のアラン・ジョンション(Alan Johnson)長官は、今回の改革で示した新しい規格により、学校が提供する食べ物は健康的であることを保障すると語った。また、生徒たちは、学校給食から健康的なバランスのよい食事について学び、正しい選択が出来るようになると述べている。

BBCの上記記事のサイトは下記
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/education/4995268.stm


2006/09/23 マラソンランナーは渇きを感じたら給水が必要
 マラソンランナーが走っているときどのくらい給水する必要があるかについては色々な考え方がある。例えば、アメリカンカレッジ・スポーツ医学(American College of Sports Medicine: ACSM)のガイドラインでは、1時間当たり600-1200mlの給水を推奨している。
 一方、国際マラソンドクター協会(International Marathon Medical Directors Association: IMMDA)の専門家は、状況に応じ柔軟な対応が必要であり、最も普遍的な基準は「渇き」であると報告した(文献)。

【文献】
Hew-Butler, T. et al.: Updated Fluid Recommendation: Position Statement From the International Marathon Medical Directors Association (IMMDA). Clin. J. Sport Med. 16: 283-292. (2006)


2006/09/22 アルツハイマー病になっても新しい記憶が出来る:マウスで
 アルツハイマー病が発症したトランスジェニック・マウスに酵素(ubiquitin C-terminal hydrolase L1 (Uch-L1))を注射したところ、マウス新しい記憶を作る能力が回復したとアメリカ・コロンビア大学の研究チームが報告した。今後、治療法への進歩が期待される。

【文献】
Gong, B. et al: Ubiquitin Hydrolase Uch-L1 Rescues β-Amyloid-Induced Decreases in Synaptic Function and Contextual Memory. Cell 126: 775-788. (2006)


2006/09/21 食事からのビタミンEの摂取量が低いとぜん息になりやすい
 イギリスで2,000人の妊婦とその子供を5年間追跡調査したところ、妊娠中に食事からのビタミンEの摂取量が最低であった群の母親の子供は、最高であった群の子供の5倍もぜん息になるリスクが高いことが分かった。妊娠16週目までが特に重要な期間であると研究者らは述べている。
 この研究結果から研究者らは、ビタミンEだけを摂取するべきではなく、バランスの良い健康的な食事から毎日のビタミンEの推奨量を摂取することが重要であると述べている。

 果物摂取とぜん息との関係について近々、果物&健康NEWSで取り上げる予定。

【文献】
Devereux, G. et al.: Low maternal vitamin E intake during pregnancy is associated with asthma in 5-year-old children. Am. J. Respir. Crit. Care Med. 174: 499-507. (2006) [doi: 10.1164/rccm.200512-1946OC]


2006/09/20 リンゴが肺機能を良好に保つ
 イギリスで行われた45~49歳の男性2,500人以上の食事と肺機能の調査から、良好な肺機能はビタミンC、E、ベータカロテン、カンキツ、リンゴ、果物ジュースの高摂取と関係があるらしいことが分かった。しかしながら、統計的に有意差が見られたのはリンゴだけであった。
 1週間当たり5個以上のリンゴを食べている人は肺機能が良好で、そうでない人に比べて肺容量が138ml大きかった。

【文献】
Butlanda, B.K. et al.: Diet, lung function, and lung function decline in a cohort of 2512 middle aged men. Thorax 55: 102-108. (2000)


2006/09/19 果物を無料で学校に提供:意外な調査結果
 アメリカ・ミシシッピー州で、リンゴ、オレンジなど新鮮果物を学校の子供たちに無料で提供した結果、果物の摂取量が増えたことが分かった。
 2004-2005年にグレード5(小学5年)、グレード8(中学2年)、グレード10(高校1年)の学生851人に果物と野菜を無料で提供した。その結果、グレード8とグレード10の学生で果物の摂取量が増加し、果物の無料提供が効果的であると考えられた。しかし、グレード5では消費は増えたようには見えなかった。グレード5で摂取量が増えなかった理由として、幼い子供は、果物や野菜などカロリーに低い食品より、カロリーの高いバターなどの食品を好む傾向にあるためではないかと考えられている。一方、野菜ではどの学年でも消費が増えたとは認められなかった。

 この調査結果は意外であった。小学生の方が学校の先生の言いつけを守るのではないかと思っていたが、むしろ、中高生に果物を配布する方が消費拡大につながることが分かった。思春期になると食生活がかわることと関係しているのかも知れない。この調査結果から考えると、ダイエットと結びつけて中高生に果物を配ることは有効ではないか。

【文献】
Schneider, D.J. et al.: Evaluation of a Fruit and Vegetable Distribution Program - Mississippi, 2004-05 School Year. Morbidity and Mortality Weekly Report 55: 957-961. (2006)


2006/09/19 果物の消費拡大にポストハーベスト農薬はいらない
 安全と安心への関心が高まっている。安全は科学的な証明が可能であるが、安心は消費者の心の問題であるので簡単には変えることは出来ない。また、消費者に科学的な知識のないことを指摘しても始まらない。
 国産果物の消費拡大には、安心感の醸成が不可欠である。現在、果物の国内流通と日本以外の諸外国の流通で最も異なる点はポストハーベスト農薬についての扱いの違いである。諸外国では果物を収穫した後に農薬を処理し流通過程での果物の損失を防いでいるが、我が国ではほとんどこうしたポストハーベスト農薬の処理を必要としない。このことが、国産果物の安心感を形成している。
 日本だけポストハーベスト農薬を使用する必要がない理由は、単純化していえば収穫が丁寧だからである。1つ1つ丁寧に収穫し、選果をしっかりしているのでポストハーベスト農薬を使う必要がない。
 国際化に合わせて、この安心感を古くさいイメージとして払拭する必要があるとの考え方があるが得策とは思えない。むしろこのイメージを大切にして果物の消費を拡大する必要があるのではないか。


2006/09/18 やせ過ぎモデル規制の動き、広がる
 スペインでやせ過ぎのモデルがファッションショーへの出演を禁止されたが、イギリスでも同様の動きが出ている。
 ロンドン・ファッションウィークが18日から始まるが、食事障害防止団体や閣僚がやせ過ぎのモデルへの懸念を相次いで表明した。スペインと同様に、身長と体重の比率BMIが18にを満たないやせ過ぎのモデルをショーに出さないよう求めている。
 ガーディアン紙やデーリーメール紙によると、ジョウェル(Tessa Jowell)文化相は、もっと現実的な体型の健康な女性になるよう呼び掛けている。同相は「若い女性の行動や感情を形づくる上で、ファッションが果たす力を一瞬たりとも過小評価してはならない」と語っている。また、食事障害協会のスポークスマンは、規制は増大している拒食症や病的飢餓のレベルを減らすのに有益であると語った。
 しかし、ファッションショーの主催者はこうした要請を拒否している。その理由として、ファッションに対して創造的な自由がデザイナーに与えられる必要があるとしている。また、モデルを決めるのはデザイナーで、こうした要請に冷淡というわけではないと述べている。

ガーディアン紙の上記記事は下記のサイトで読める。
http://observer.guardian.co.uk/uk_news/story/0,,1874322,00.html
デーリーメール紙の上記記事は下記のサイトで読める。
http://www.dailymail.co.uk/pages/live/articles/news/news.html?
in_article_id=405431&in_page_id=1770


 毎日新聞(06/9/18)が、「少女らに誤ったメッセージを送る」としてスペイン・マドリードのファッションショーでモデル5人がやせ過ぎ禁止で失格となったと伝えている。
 事前の身体測定では、モデル68人中5人が規定値に達せず出場禁止となった。身体測定はBMIが18以上とする拒食症防止のための地域規定に基づいて実施された。イタリア・ミラノのファッションショーも規定導入の動きがあるという。


2006/09/17 ネアンデルタール人と現生人は長く共存
 約3万年前までに地上から姿を消したと考えられていたネアンデルタール人が2万8000~2万4000年前まで生存していたことを示す証拠がイベリア半島で発見された(文献1)。
 このことは、現生人(現代型ホモ・サピエンス)の進出で滅んだとする従来の考え方を覆し、現生人との共存が数千年にわたって続いていたことを示す結果である。
 国際研究チームは、イベリア半島南部ジブラルタル沿岸の洞窟(どうくつ)から、ネアンデルタール人の文化を示す石器類103個と火の使用跡を発見、地層中の放射性炭素などの分析で年代を特定した。

 この科学的発見は、色々な想像を喚起する。ネアンデルタール人と現生人の交流はあったのか。コミュニケーションは可能だったのか。ネアンデルタール人は環境不適合などで自滅したのか、それとも、現生人に滅ばされたのか。食料を取り合ったのか。などなど。共存していた時代のそれぞれの文化程度の差も知りたいと思う。
 南カリフォルニア大学のPlagnolらの研究では、ヨーロッパ人はネアンデルタール人の遺伝子を受け継いでいるのでないかと示唆している(文献2)。科学的に大変面白い状況になっている。

【文献】
1) Finlayson, C. et al.: Late survival of Neanderthals at the southernmost extreme of Europe. Nature Online Sep. 13 (2006) [doi: 10.1038/nature05195]
2) Plagnol, V. etal.: Possible Ancestral Structure in Human Populations. PLoS Genetics 2: e105. (2006) [DOI: 110.1371/journal.pgen.0020105]


2006/09/16 ヤングアダルトに対する果物・野菜摂取への動機づけ
 アメリカ・南ダコタ州立大学の研究グループは、栄養学を学んでいない大学生(18-24歳)に対し、果物と野菜の摂取の動機づけを行った。
 参加した大学生に対し、4回のニュースレター、1回のインタビュー、E-mailによる個別のフォローアップを4ヶ月間行った。対象グループの果物と野菜の摂取の増加量は1日当たり0.4サービングであったが、動機づけが行われたグループの果物と野菜の摂取の増加量は1日当たり1サービングと統計的に有意に摂取量が増加した。
 以上のことから、コンピュータなどを使った上記の方法は、ヤングアダルトに対する果物と野菜の摂取量を増やすのに効果的であると著者らは述べている。

【文献】
Richards, A. et al.: Motivating 18- to 24-Year-Olds to Increase Their Fruit and Vegetable Consumption. J. Am. Diet. Assoc. 106: 1405-1411. (2006)


2006/09/15 高カロリー、低食物繊維食が子供の肥満の原因
 高カロリー、低食物繊維食はホルモンのインバランス(不均衡)を招き、子供の過食につながると、アメリカ・カリフォルニア大学のRobert H. Lustig教授が述べている。
 アメリカでは、子供の最も一般的な疾患は肥満であり、以前は成人にのみ見られた2型糖尿病などの疾患が、現在では子供の間で広がりを見せている。
 現在の食品環境は、カロリーの摂取量が多く、食物繊維の消費量が低下しており、そのため、 脂肪組織へのエネルギーの蓄積や レプチンによる情報伝達などによりインシュリンの分泌に影響を及ぼし結果として肥満になるとしている。

【文献】
Lustig, R. H.: Childhood obesity: behavioral aberration or biochemical drive? Reinterpreting the First Law of Thermodynamics. Nature Clinic. Prac. Endoc. Metabol. 2: 447-458. (2006) [doi: 10.1038/ncpendmet0220]


2006/09/14 アメリカ31州で成人肥満率が増加
 アメリカでは成人肥満率が31の州で増加し、およそ3分の2の人々が糖尿病、脳卒中、がんといった致命的疾患で亡くなっているとTrust for America's Health (TFAH)2006年版に掲載された。アメリカ・連邦政府や州政府が過体重を抑制する努力をしているにもかかわらず、成人肥満率は1980年の15%から、2004年には32%と増加した。

下記のサイトで報告の要約が読める。
http://healthyamericans.org/reports/obesity2006/


2006/09/13 果樹研究所と京都府立医科大のウンシュウミカンの研究がBBCに掲載
 BBC(2006.9.11)は、果樹研究所で行われたカロテノイドを含むウンシュウミカンは肝疾患、動脈硬化、インシュリン抵抗性のリスクを下げる研究と、京都府立医科大学で行われたウンシュウミカンジュースを飲み続けると慢性ウイルス性肝炎の患者の肝臓ガン発症のリスクを減らす研究を、イギリスの二人の研究者のコメントともに報道した。

 果樹研究所の研究では、三ケ日町に住む1,073人を調査した結果、ウンシュウミカンを多く摂取している人は、重篤な疾患と関係する化学マーカーの値が低いことを見いだした。
 イギリス・ハート財団(BHF)のCathy Rossは、「この研究は、イギリス・ハート財団が推奨している果物と野菜を1日あたり少なくとも5単位食べることを支持する結果である」と述べている。そして、「異なった色の果物と野菜には、異なったビタミンとミネラルを含んでいるので、食事の中に様々な果物や野菜を取り入れるのがよい」とコメントした。

 京都府立医科大学の研究チームは、30人の患者に対して慢性ウイルス性肝炎の患者にカロチノイド含んだウンシュウミカンジュースを毎日、1年間の飲用してもらったところ1年後に、肝臓ガンに罹患した人はいなかった。一方、ジュースを飲まなかった45人の患者のグループで8.9%の発症があった。今後この研究をさらに5年間を続けるのを計画している。
 イギリス・チャリティー・ガン研究所のEd Yongは、この研究の意義を認める一方、サンプルサイズを大きくする必要があると述べるとともに、喫煙やアルコールの過度の飲用による肝硬変が肝臓ガン発症により影響するように見えるので、何か特定の果実で特に強い利益があるかどうかは不明瞭であるとコメントした。

BBCの上記ニューストは下記のサイトで読める。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/health/5333898.stm


2006/09/12 果物にアニメキャラクター:売り上げアップ
 アメリカのスーパーマーケットで果物や野菜にアニメキャラクター(「ミッキーマウス」や「くまのプーさん」)が貼られている。子どもの肥満などに対する懸念を背景に、健康的なイメージ作りを図る娯楽業界と、市場拡大を目指す生産者らの思惑が一致し、キャンペーンが行われている。
 青果流通業者のイマジネーション・ファームズ(本社・インディアナ州)は娯楽・メディア大手ウォルト・ディズニーからライセンスを取得し、今年5月以来、全米15カ所の生産大手から届く野菜や果物を、「ディズニー・ガーデン」というブランド名で卸している。すでに店頭に並んでいるのは、人気キャラクターのデイジーダックやグーフィーのシールが付いたモモ、ミッキーマウスの箱に入ったブドウなど。くまのプーさんの印を付けたリンゴも発売予定。
 ディズニー・ガーデンの商品を青果売り場全体に広げ、子どもたちをファストフードから呼び戻し、果物の消費を伸ばしたいと同社は考えている。今のところ狙い通り、キャラクター付きのモモやスモモ、ネクタリンは、キャラクターのなかった昨年を上回る売れ行きを示しているという。
 過去にも「ポパイのホウレンソウ」といった例があるが、ライセンス契約のコストなどが壁になり、普及しなかった。ディズニーはイマジネーション・ファームとの契約内容を公表していないが、青果業界誌を編集する専門家は、娯楽業界の目的は家庭向けのイメージアップで、ライセンス料でもうけるつもりはないとみられ、料金は低く設定している可能性が高いとみている。

上記CNNの記事は下記のサイトで読める。
http://www.cnn.com/2006/HEALTH/conditions/09/05/
cartoon.fruit.ap/index.html



2006/09/11 食物繊維を摂取するために
 アメリカ・家庭医協会は、コレステロールを下げ、心臓病、糖尿病のリスクを減らす効果がある食物繊維の摂取を勧めている。健康の維持のための食物繊維を摂取するために、1)毎日、少なくとも4.5カップの果実と野菜を摂取する(食物繊維が豊富なのは、リンゴ、オレンジ、ベリー、セイヨウナシ、ブロッコリー、ニンジンなど)。2)精米されていない玄米や全粒小麦粉のパンを摂取する。3)朝食にふすまのシリアルを摂取する(ただし、食物繊維の量をラベルでチェックする)。4)小麦のふすまを他の食物に混ぜて摂取する。5)頻繁に料理した豆を摂取する。

アメリカ・家庭医協会のサイトは下記
http://familydoctor.org/099.xml


2006/09/10 長時間勤務は血圧を上げる
 アメリカ・カルフォルニアで55,000以上の家庭を対象とした調査によると、週40時間以上働いている人は、週11~19時間働いている人より血圧が14%高く、また、週41~50時間働いている人は血圧が17%高いことが分かった。職業別では、事務職と非熟練労働者は専門職より高血圧が高かった。事務職は専門職より23%高く、非熟練労働者は専門職より50%高いことが分かった。

【文献】
Yang, H. et al.: Work Hours and Self-Reported Hypertension Among Working People in California. Hypertension Online Aug. 28. (2006) [doi: 10.1161/01.HYP.0000238327.41911.52]


2006/09/09 食事摂取基準に関するガイド版の発行
 アメリカとカナダの専門家チームが「食事摂取基準:栄養所要量に関するエッセンシャルガイド(Dietary Reference Intakes:The Essential Guide to Nutrient Requirements」(2006年版)を発行した。推奨食事許容量、適量摂取レベル、生活習慣病予防のための許容限界摂取量、栄養表示の指導原理、食事摂取のための計画とその方法、食物繊維の新しい定義、摂取量確立のためのリスクアセスメントなど。

本の概要は下記のサイトにある(注文も出来る)。
http://newton.nap.edu/catalog/11537.html


2006/09/08 世界一高い木見つかる
 先月、アメリカ・カリフォルニア州北部にあるレッドウッド国立公園内で、世界一高い木が、Chris AtkinsとMichael Taylorにより 発見された。高さは378.1フィート(115.2m)で、ギリシャ神話の神の名を取って「ヒュペリオン(Hyperion)」と命名された。
 ギネスブックに記載されている最長の木は「ストラトスフィア・ジャイアンツ(Stratosphere Giant)」(112.5m)である。また、自由の女神像は93mである。

参照サイト
1)http://www.sfgate.com/cgi-bin/article.cgi?f=/c/a/
2006/09/07/MNGQRL0TDV1.DTL&hw=redwood&sn=001&sc=1000


2)http://www.nativetreesociety.org/bigtree/new_worlds_tallest.htm


2006/09/07 BMIやウエスト周り:高齢男性で健康リスクと関係
 BMIやウエスト周りなどの簡単な測定で、適切に健康リスクを判断することができかについて議論されているが、少なくともイギリスの高齢の男性では効果的であることが断面研究から分かった。60~79歳のイギリス人男性4242人を調査したところ、BMIやウエスト周りの寸法は、体脂肪量指数と密接に関係していた。

【文献】
Ramsay, S. E. et al.: The Relations of Body Composition and Adiposity Measures to Ill Health and Physical Disability in Elderly Men. Am. J. Epidemiol. 164: 459-469. (2006) [doi: 10.1093/aje/kwj217]


2006/09/06 抗酸化物質が網膜退化を抑制
 ビタミンE、ビタミンCなど抗酸化物質をマウスに投与したところ網膜退化の進行が抑制されたと、アメリカ・ジョンホプキンス大学の研究チームが発表した。
 網膜退化は失明の原因でアメリカには10万人の患者がいるとされている。果物や野菜には、こうした抗酸化物質が多く含まれているが、人に対する治療効果については今後の課題である。

【文献】
Komeima, K. et al.: Antioxidants reduce cone cell death in a model of retinitis pigmentosa. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 103: 11300-11305. (2006) [doi: 10.1073/pnas.0604056103]


2006/09/05 ビタミンB6はパーキンソン病のリスクを下げる
 ビタミンB6を多く含む食品を摂取するとパーキンソン病リスクが減少するとオランダの調査から分かった。
 5,289人の男女を対象に調べた結果、ビタミンB6の摂取が最も多い群では、もっとも少ない群に比較してパーキンソン病の発症リスクが半分であった。

 ビタミンB6は神経系の機能の代謝に必須で、牛のもも肉やナッツ、バナナなどに含まれている。また、カロリー単位で比較すると果物に含まれているビタミンB6は、牛乳などよりも多い。

【文献】
de Lau, L. M. L. et al.: Dietary folate, vitamin B12, and vitamin B6 and the risk of Parkinson disease. Neurology 67: 315-318. (2006)


2006/09/04 果物・野菜など低カロリーで体積の大きい食品は健康に有益
 アメリカで、成人7500人を調査した結果、果物や野菜など低カロリーで体積の大きい食品を摂取する人は、食べる量は多くても総摂取カロリーは低く栄養素のバランスも良いことが分かった。
 果物や野菜などを多く摂取している人は、肉やスナックなどを摂取している人に比べて摂取カロリーが1日当たり100kcal低いだけでなく、カルシウム、鉄、カリウム、ビタミンA、C、B6、葉酸の摂取量は逆に多かった。

 その理由は、高カロリーで体積の小さい肉やスナックなどに比べて、果物や野菜などはカロリーが低く、体積が大きいので、満腹感が得られるためである。

【文献】
Ledikwe, J. H. et al.: Low-Energy-Density Diets Are Associated with High Diet Quality in Adults in the United States. J. Am. Diet. Assoc. 106: 1172-1180. (2006)


2006/09/03 「やせ」は太り過ぎより心臓病の死亡リスクが高い
 80,845人の患者のデータから、心疾患や急性動脈症候群のリスクが高いのは「やや肥満(BMIが25-29.9)」や「肥満(BMIが30-39.9)」の人ではあるけれども、積極的な治療を受けて予後がよく、死亡率は「標準体重(BMIが18.5-24.9)」の人より低いことがアメリカ・カルホルニア大学の研究から分かった。
 一方、「やせ(BMIが18.5以下)」の人は極端な肥満症の人と同様に心疾患による死亡率が高いことが示された。

 若い人のみならず多くの人が「やせ」を目指しているが、その健康上の問題点も伝えていく必要があるように思う。

【文献】
Diercks, D.B. et al.: The obesity paradox in non-ST-segment elevation acute coronary syndromes: Results from the Can Rapid risk stratification of Unstable angina patients Suppress ADverse outcomes with Early implementation of the American College of Cardiology/American Heart Association Guidelines Quality Improvement Initiative. Am. Heart J. 152: 140-148. (2006)


2006/09/02 腎臓結石予防にはレモネードよりオレンジジュース
 毎日1杯のオレンジジュースで腎臓結石を予防でき、レモネードなど他のカンキツよりも優れているとアメリカ・ユタ州のSouthwestern Medical Centerの研究者が発表した。
 研究では、13人の被験者に対し、クエン酸塩、オレンジジュース、レモネードを飲用してもらい各段階の尿と血液を調べた結果、オレンジジュースが尿中へのクエン酸塩の排出レベルを上げ、尿酸血症の生成を抑える、レモネードよりも優れていることが分かった。

【文献】
Odvina, C. V.: Comparative Value of Orange Juice versus Lemonade in Reducing Stone-Forming Risk. Clin. J. Am. Soc. Nephrol. Online Aug. 30 (2006) [doi: 10.2215/CJN.00800306]


2006/09/01-2 健康な十代女子でもビタミンD不足
 イギリスで行われた研究によると、健康な十代女子でも、ビタミンDの血中レベルが不足気味であることが分かった。14人の白人と37人の非白人の少女(平均15.3歳)を対象に血液中のビタミンDとの関係について調査を行った結果、73%はビタミンD不足、17%は非常に不足していることが分かった。また、白人に比べ非白人でビタミンDの血中レベルが低いことも分かった。研究者らは、その原因として日光への暴露が少ないことが原因と分析している。

 この論文は骨の形成に必要なビタミンDが、多くの若い女性で不足していることを示している。同時に、カルシウムを十分に摂取していても、ビタミンDの不足が原因で骨の形成に問題があることも示している。

【文献】
Das, D. et al.: Hypovitaminosis D among healthy adolescent girls attending an inner city school. Arch. Dis. Child. 91: 569-572. (2006)[doi: 10.1136/adc.2005.077974]